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第四部 サムスピジャポン編
121 割り切れぬ想い 前編
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【サクセス視点】
上空のある一点に集まり始める龍頭たち。
その狙いは、龍の視線の先にいるセイメイである事は明らかである。
現在セイメイは地面に置かれた巻物に手を置き詠唱を開始しているため、完全に無防備な状態だ。
当然それに気づいているカリーはセイメイを守ろう前に立つが、残念ながら守りきる事はできないだろう。
カリーが一人で守るには、敵の数は多すぎた。
その危機に俺達は既に気付いている。
そして一刻の猶予もない。
「シロマ、俺に強化魔法をかけてくれ!」
ゲロゲロの上でその様子を見ていた俺は、切羽詰まった勢いでシロマの支援魔法を求める。
この状況はかなりやばい、既に龍頭達は集結を終えて地上に向かって急降下を始めていた。
このままだと間違いなく、下にいる二人は死んでしまうだろう。
そんな事は絶対にさせない!
敵は光属性に耐性がある。
だがカリー達の戦闘を見て、俺はわかっていた。
光属性攻撃であっても通常ダメージは効くであろうことに。
それであれば、この危機を脱する方法が一つだけ頭に浮かんだ。
そしてそれを成功させるには、できる限り俺の素早さを上げなければならない。
「はい。行ってきてください!【サイダーム】」
シロマは何を聞くでもなく、俺が一番欲しい強化魔法を即座にかける。
そう、素早さアップの魔法だ。
「助かる! 行くぞ!【疾風】」
シロマの支援を受けた俺は、更に速度を一時的に2倍にするスキル【疾風】を使用してゲロゲロから飛び降りた。
ゲロゲロに若干のダメージが入る程にゲロゲロを足場にして強く蹴り飛んだ俺は、音を置き去りにする速度で地上に向かって急降下していく。
そしてセイメイに向かって突撃してきた龍頭達に追いつくと、回転するように剣を薙ぎ払いライトスラッシュを乱れ撃った!
【ライトスラッシュ】【ライトスラッシュ】【ライトスラッシュ】
こいつらは数は多く、攻撃力こそ高いが、防御力も生命力もそこまで高くはない。
つまり聖属性の追加効果などなくても、俺の一撃で屠る事が可能だった。
とはいえ、やはり問題は数である。
如何に防御力が弱くとも、100を超える数の大軍が一気に襲い掛かってきたのでは、それを一瞬で蹴散らすのは容易ではない。
ゲロゲロの範囲スキルで一気に蹴散らすという考えもあったが、それだと地面にいるセイメイ達が巻き添えになる可能性もある。
それにそもそも急降下している龍頭達に確実に命中させられるかは賭けだった。
その為、俺が選んだのは俺が直接接近して、一気に敵を殲滅する事。
俺の速度を上げたのは、急降下する速度を上げるためではない。
この急降下中にも、体を素早く動かせるだけの速度が欲しかったのだ。
そして今、俺の考えが正しかったとわかる。
素早さを極限まで高める事で、高速移動中でも行動が可能になった。
それによって急降下中ではあるものの、俺はその高速過の中で攻撃スキルを連発している
結果、集まって落下している龍頭達は無数の光の刃によって全て切り刻まれていった。
ーー空に舞う無数の金の刃が闇を打ち払う。
今の状況はまさにその言葉がふさわしい。
セイメイ達の上に集まった闇は、徐々に光と共に消えていく……。
そして上空の闇が青色に戻った頃、俺は地面に着地した。
「あれほど無茶するなっていっただろ? カリー。」
俺は大斧を盾にし、防御しているカリーに声をかける。
すると、カリーは大斧をしまうと俺に向き合った。
「すまない、サクセス。敵の戦力を見誤った。力を貸してくれるか?」
「当然俺は仲間を守る。だけどやっぱり卑弥呼とは……なぁ、どうにかならないのかよ?」
苛立ちを隠せぬまま俺はカリーに再度確認するも、やはりカリーは首を横に振る。
「無理だ……。ウロボロスは人では倒せない。その為に卑弥呼は自分から犠牲になったんだ。それにもう遅い。既にあれは卑弥呼じゃない……。」
カリーは少しだけ辛そうな表情でそう言い捨てた。
俺だってカリーや卑弥呼が好きであんなことをしたわけではないのはわかっている。
だけど……だけど、ずるいじゃないか。
なんで俺に正直に話してくれなかったんだよ。
確かに俺はその作戦を聞けば反対しただろうけど……くそっ!!
何とも言えない感情が俺の中で渦巻いているのを感じた。
カリー達がとった行動が、本来正しいのはわかる。
それが俺の事を気遣った行動だってわかってた。
違う方法を提示できないくせに、周りの判断を否定する事が愚かな事も理解している。
だけど……それでも俺は、納得できないんだ。
仲間の死を前提に戦うなんて……俺には我慢できない。
そんなモヤモヤした気持ちを抱えていると、丁度そこにゲロゲロとシロマが降りてきた。
「サクセスさん、次が来ます! 備えて下さい!」
「げろぉぉーー(僕、行ってくる!)」
シロマがそう警告すると、ゲロゲロはそのまま空に羽ばたき、近づいてくる龍頭達を屠り始める。
頭と心の整理がままならないままだが、それでも戦闘は続いている。
立ち止まることはできない。
なら俺は……どうすればいいんだよ!
シロマとゲロゲロは既に次の行動に移っている。
にもかかわらず、俺はまだこの場でただ立ち止まるだけだった。
上空のある一点に集まり始める龍頭たち。
その狙いは、龍の視線の先にいるセイメイである事は明らかである。
現在セイメイは地面に置かれた巻物に手を置き詠唱を開始しているため、完全に無防備な状態だ。
当然それに気づいているカリーはセイメイを守ろう前に立つが、残念ながら守りきる事はできないだろう。
カリーが一人で守るには、敵の数は多すぎた。
その危機に俺達は既に気付いている。
そして一刻の猶予もない。
「シロマ、俺に強化魔法をかけてくれ!」
ゲロゲロの上でその様子を見ていた俺は、切羽詰まった勢いでシロマの支援魔法を求める。
この状況はかなりやばい、既に龍頭達は集結を終えて地上に向かって急降下を始めていた。
このままだと間違いなく、下にいる二人は死んでしまうだろう。
そんな事は絶対にさせない!
敵は光属性に耐性がある。
だがカリー達の戦闘を見て、俺はわかっていた。
光属性攻撃であっても通常ダメージは効くであろうことに。
それであれば、この危機を脱する方法が一つだけ頭に浮かんだ。
そしてそれを成功させるには、できる限り俺の素早さを上げなければならない。
「はい。行ってきてください!【サイダーム】」
シロマは何を聞くでもなく、俺が一番欲しい強化魔法を即座にかける。
そう、素早さアップの魔法だ。
「助かる! 行くぞ!【疾風】」
シロマの支援を受けた俺は、更に速度を一時的に2倍にするスキル【疾風】を使用してゲロゲロから飛び降りた。
ゲロゲロに若干のダメージが入る程にゲロゲロを足場にして強く蹴り飛んだ俺は、音を置き去りにする速度で地上に向かって急降下していく。
そしてセイメイに向かって突撃してきた龍頭達に追いつくと、回転するように剣を薙ぎ払いライトスラッシュを乱れ撃った!
【ライトスラッシュ】【ライトスラッシュ】【ライトスラッシュ】
こいつらは数は多く、攻撃力こそ高いが、防御力も生命力もそこまで高くはない。
つまり聖属性の追加効果などなくても、俺の一撃で屠る事が可能だった。
とはいえ、やはり問題は数である。
如何に防御力が弱くとも、100を超える数の大軍が一気に襲い掛かってきたのでは、それを一瞬で蹴散らすのは容易ではない。
ゲロゲロの範囲スキルで一気に蹴散らすという考えもあったが、それだと地面にいるセイメイ達が巻き添えになる可能性もある。
それにそもそも急降下している龍頭達に確実に命中させられるかは賭けだった。
その為、俺が選んだのは俺が直接接近して、一気に敵を殲滅する事。
俺の速度を上げたのは、急降下する速度を上げるためではない。
この急降下中にも、体を素早く動かせるだけの速度が欲しかったのだ。
そして今、俺の考えが正しかったとわかる。
素早さを極限まで高める事で、高速移動中でも行動が可能になった。
それによって急降下中ではあるものの、俺はその高速過の中で攻撃スキルを連発している
結果、集まって落下している龍頭達は無数の光の刃によって全て切り刻まれていった。
ーー空に舞う無数の金の刃が闇を打ち払う。
今の状況はまさにその言葉がふさわしい。
セイメイ達の上に集まった闇は、徐々に光と共に消えていく……。
そして上空の闇が青色に戻った頃、俺は地面に着地した。
「あれほど無茶するなっていっただろ? カリー。」
俺は大斧を盾にし、防御しているカリーに声をかける。
すると、カリーは大斧をしまうと俺に向き合った。
「すまない、サクセス。敵の戦力を見誤った。力を貸してくれるか?」
「当然俺は仲間を守る。だけどやっぱり卑弥呼とは……なぁ、どうにかならないのかよ?」
苛立ちを隠せぬまま俺はカリーに再度確認するも、やはりカリーは首を横に振る。
「無理だ……。ウロボロスは人では倒せない。その為に卑弥呼は自分から犠牲になったんだ。それにもう遅い。既にあれは卑弥呼じゃない……。」
カリーは少しだけ辛そうな表情でそう言い捨てた。
俺だってカリーや卑弥呼が好きであんなことをしたわけではないのはわかっている。
だけど……だけど、ずるいじゃないか。
なんで俺に正直に話してくれなかったんだよ。
確かに俺はその作戦を聞けば反対しただろうけど……くそっ!!
何とも言えない感情が俺の中で渦巻いているのを感じた。
カリー達がとった行動が、本来正しいのはわかる。
それが俺の事を気遣った行動だってわかってた。
違う方法を提示できないくせに、周りの判断を否定する事が愚かな事も理解している。
だけど……それでも俺は、納得できないんだ。
仲間の死を前提に戦うなんて……俺には我慢できない。
そんなモヤモヤした気持ちを抱えていると、丁度そこにゲロゲロとシロマが降りてきた。
「サクセスさん、次が来ます! 備えて下さい!」
「げろぉぉーー(僕、行ってくる!)」
シロマがそう警告すると、ゲロゲロはそのまま空に羽ばたき、近づいてくる龍頭達を屠り始める。
頭と心の整理がままならないままだが、それでも戦闘は続いている。
立ち止まることはできない。
なら俺は……どうすればいいんだよ!
シロマとゲロゲロは既に次の行動に移っている。
にもかかわらず、俺はまだこの場でただ立ち止まるだけだった。
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