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第四部 サムスピジャポン編
43 最強の四天王
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「ぜぇはぁ……ぜぇはぁ……。」
現在百人組手をしているイモコは、残すところあと5人まで戦い抜いていた。
ここまで来るまで、想像を絶するような死闘の数々を繰り広げている。
今まで95人の侍達と戦ってきたが、どれ一つとっても楽な戦いはなかった。
既にイモコの体は、無数の打撲痕はもちろんの事、至る所から出血しており、満身創痍なのは言うまでもない。
しかし、それでもイモコは勝ち続けた。
疲労と痛みから何度も気を失いそうになるも、それでも膝を折る事はなく、最後には勝ってきたのである。
その姿を見ていた小次郎は、最初こそ酒を飲みながら笑って観戦していたが、今では真剣な眼差しで見入っていた。
「おやっさん。そろそろ休憩でもさせたらどうだい? もう見てらんねぇよ、おらぁ。」
「ダメだ。奴が勝ち続ける限り、休みなどない。それに見てみろ、奴の顔を。」
小次郎は、今にも倒れそうなイモコを見てスサノオに具申してみたが、答えはNOだ。
そしてスサノオが言うとおり、イモコの顔を見ると、その目は修羅の如くギラギラしている。
既に体はボロボロだし、まともに立つこともできないはずなのに……だ。
イモコの目は死んでいない。
それどころか、むしろその目の宿す闘志が強まっているように感じた。
「確かにありゃぁ、まだやれそうだなぁ。でもまぁ俺としちゃあ、元気な奴と戦いたいもんだがねぇ。」
「ふっ。お主も既に気付いているのだろう? むしろ、あの状態の方が手ごわいって事に。」
「あぁ、このままいけばいい勝負になるかもなぁ。とはいえ、あの4人を倒せたらの話だけどな。」
そこで小次郎は、残る4人の侍に目を向けた。
今回の組手で最後に戦うのは小次郎だが、その前の四人も小次郎と遜色ないほどの猛者である。
その一人目は、光速剣の使い手で有名な……通称「光る源氏義経」
ローラーブレイドという特殊な剣を使い、対する相手が斬られたという認識すらできない程の高速の剣を放つ。
だが、その生涯は悲惨そのもの。
兄を溺愛し、兄への愛を求めて強くなったのだが、強くなりすぎて兄に殺されるという悲惨な末路。
その伝承からも、現在のサムスピジャポンでも特に人気の高い侍だ。
二人目は、現在の農業にも大きく影響を与えたと言われる「植過献身」
過去一度として負けた事がないと言われる程の強さから、軍神とまで言われた男であるが、なぜかそれよりも違う事で有名となった男である。
その者は戦い以外にも農業を深く愛した事で有名であり、作物に対する献身的な働きは、見る者全てに感動を与えた。
しかし作物を愛しすぎるが故に、一つの畑に対して沢山の種を植えた事から作物は大きく育たず、むしろ収穫率を下げてしまう。
しかしそこから民は学び、以後、ある程度畑は休ませた方が良いという事が証明され、植過献身は農業の貧乏神として広く知れ渡った。
だが、その実力だけは本物である。
続けて三人目は、戦場が震える程、猛々しい戦いぶりを見せる事で有名な「猛田震源」
侍でありながらも、常に戦場ではマワシ一つの裸姿で現れ、剣を使わず相撲と呼ばれた無手の武術で戦い続けた。
侍と呼べるか否かについては、後の歴史においても議論がされていたが、職業が侍であったため、一応伝説の侍として名を残し、当時同世代だった植過献身とライバルであった事でも有名である。
特技は「塩つぶて」と呼ばれる塩を相手に投げつける技。
それは名前の通り、地味でしょっぱい技だが、なぜかこれをする事で震源は戦闘力が上がるらしい。
ちなみに献身が震源との一騎打ちの前に、皮肉を込めて塩を送った事は有名な話。
最後の四人目は……「おっす! オラ 信長!」が口癖の魔王オラ信長。
三段打ちと呼ばれた必殺技を持ち、常に強敵を求めて続け、日々戦いに明け暮れる戦闘狂。
そしていつの間にか魔王と呼ばれた男である。
魔王と呼ばれた由来については諸説ある。
一番有力な説は、ある強敵との戦いの中で、その敵が信長の愛して止まない栗きんとんを奪い取った事を知り、「栗きんとんの事か!」と髪を逆立てながら叫んでキレたらしい。
その姿が魔王に見える程恐ろしいものだった事から、それ以来魔王の称号を得たとの事。
以上の四人がイモコに立ちはだかる最後の四天王であり、今まで以上に一筋縄ではいかない相手である。
その四人は、今でもサムスピジャポンで、その四人が生きていたら誰が一番強かったか等と議論がされるほどの伝説の侍達だ。
その四人に勝つことで、イモコは小次郎と戦う事ができる訳だが……。
「小次郎、お前はどう思う? イモコは勝てると思うか?」
スサノオは尋ねる。
過去唯一、その四人を下した男である小次郎に。
そして質問された小次郎はというと……
残念そうに首を横に振った。
「3人までは勝てるかもしれねぇが、あいつは無理だな。今のままなら間違いなく負けるぜ。」
「ほう、あれはそこまでの男か?」
「あぁ、あいつはやべぇ。俺が本気を出してギリギリ勝てた相手だからな……特にキレるとまじでやべぇ。」
そう言いながら小次郎が見つめるのは、ここに召喚されてから、イモコの試合を見る事なく飯を食い続ける男……
オラ信長だ。
「だが……やってみなければわからんぞ。イモコはここまで戦い続け、そして多くの技を学び、その全てを体得している。」
「あぁ、それについては俺も驚いているぜ。あいつは戦う度に強くなってやがる。まるで、あの時の信長を見ているようだぜ。」
そう。
イモコはレベル99の為、ステータスが上がる事はなかったのだが、この試練で死闘をする度に、心技共にレベルアップしている。
今まで戦ってきた全ての侍が最高の技と心を持ち、その者達と全力でぶつかることで、イモコはそれら技術を吸収し続けた。
それがあったからこそ、イモコは勝ち続けたと言っても過言ではない。
つまり今のイモコは、ここに来た当初より格段に強くなっていた。
しかし、イモコにとってこれからが本当の勝負となる。
はたしてイモコは、伝説の侍4人を下し、小次郎までたどり着けることはできるのであろうか。
現在百人組手をしているイモコは、残すところあと5人まで戦い抜いていた。
ここまで来るまで、想像を絶するような死闘の数々を繰り広げている。
今まで95人の侍達と戦ってきたが、どれ一つとっても楽な戦いはなかった。
既にイモコの体は、無数の打撲痕はもちろんの事、至る所から出血しており、満身創痍なのは言うまでもない。
しかし、それでもイモコは勝ち続けた。
疲労と痛みから何度も気を失いそうになるも、それでも膝を折る事はなく、最後には勝ってきたのである。
その姿を見ていた小次郎は、最初こそ酒を飲みながら笑って観戦していたが、今では真剣な眼差しで見入っていた。
「おやっさん。そろそろ休憩でもさせたらどうだい? もう見てらんねぇよ、おらぁ。」
「ダメだ。奴が勝ち続ける限り、休みなどない。それに見てみろ、奴の顔を。」
小次郎は、今にも倒れそうなイモコを見てスサノオに具申してみたが、答えはNOだ。
そしてスサノオが言うとおり、イモコの顔を見ると、その目は修羅の如くギラギラしている。
既に体はボロボロだし、まともに立つこともできないはずなのに……だ。
イモコの目は死んでいない。
それどころか、むしろその目の宿す闘志が強まっているように感じた。
「確かにありゃぁ、まだやれそうだなぁ。でもまぁ俺としちゃあ、元気な奴と戦いたいもんだがねぇ。」
「ふっ。お主も既に気付いているのだろう? むしろ、あの状態の方が手ごわいって事に。」
「あぁ、このままいけばいい勝負になるかもなぁ。とはいえ、あの4人を倒せたらの話だけどな。」
そこで小次郎は、残る4人の侍に目を向けた。
今回の組手で最後に戦うのは小次郎だが、その前の四人も小次郎と遜色ないほどの猛者である。
その一人目は、光速剣の使い手で有名な……通称「光る源氏義経」
ローラーブレイドという特殊な剣を使い、対する相手が斬られたという認識すらできない程の高速の剣を放つ。
だが、その生涯は悲惨そのもの。
兄を溺愛し、兄への愛を求めて強くなったのだが、強くなりすぎて兄に殺されるという悲惨な末路。
その伝承からも、現在のサムスピジャポンでも特に人気の高い侍だ。
二人目は、現在の農業にも大きく影響を与えたと言われる「植過献身」
過去一度として負けた事がないと言われる程の強さから、軍神とまで言われた男であるが、なぜかそれよりも違う事で有名となった男である。
その者は戦い以外にも農業を深く愛した事で有名であり、作物に対する献身的な働きは、見る者全てに感動を与えた。
しかし作物を愛しすぎるが故に、一つの畑に対して沢山の種を植えた事から作物は大きく育たず、むしろ収穫率を下げてしまう。
しかしそこから民は学び、以後、ある程度畑は休ませた方が良いという事が証明され、植過献身は農業の貧乏神として広く知れ渡った。
だが、その実力だけは本物である。
続けて三人目は、戦場が震える程、猛々しい戦いぶりを見せる事で有名な「猛田震源」
侍でありながらも、常に戦場ではマワシ一つの裸姿で現れ、剣を使わず相撲と呼ばれた無手の武術で戦い続けた。
侍と呼べるか否かについては、後の歴史においても議論がされていたが、職業が侍であったため、一応伝説の侍として名を残し、当時同世代だった植過献身とライバルであった事でも有名である。
特技は「塩つぶて」と呼ばれる塩を相手に投げつける技。
それは名前の通り、地味でしょっぱい技だが、なぜかこれをする事で震源は戦闘力が上がるらしい。
ちなみに献身が震源との一騎打ちの前に、皮肉を込めて塩を送った事は有名な話。
最後の四人目は……「おっす! オラ 信長!」が口癖の魔王オラ信長。
三段打ちと呼ばれた必殺技を持ち、常に強敵を求めて続け、日々戦いに明け暮れる戦闘狂。
そしていつの間にか魔王と呼ばれた男である。
魔王と呼ばれた由来については諸説ある。
一番有力な説は、ある強敵との戦いの中で、その敵が信長の愛して止まない栗きんとんを奪い取った事を知り、「栗きんとんの事か!」と髪を逆立てながら叫んでキレたらしい。
その姿が魔王に見える程恐ろしいものだった事から、それ以来魔王の称号を得たとの事。
以上の四人がイモコに立ちはだかる最後の四天王であり、今まで以上に一筋縄ではいかない相手である。
その四人は、今でもサムスピジャポンで、その四人が生きていたら誰が一番強かったか等と議論がされるほどの伝説の侍達だ。
その四人に勝つことで、イモコは小次郎と戦う事ができる訳だが……。
「小次郎、お前はどう思う? イモコは勝てると思うか?」
スサノオは尋ねる。
過去唯一、その四人を下した男である小次郎に。
そして質問された小次郎はというと……
残念そうに首を横に振った。
「3人までは勝てるかもしれねぇが、あいつは無理だな。今のままなら間違いなく負けるぜ。」
「ほう、あれはそこまでの男か?」
「あぁ、あいつはやべぇ。俺が本気を出してギリギリ勝てた相手だからな……特にキレるとまじでやべぇ。」
そう言いながら小次郎が見つめるのは、ここに召喚されてから、イモコの試合を見る事なく飯を食い続ける男……
オラ信長だ。
「だが……やってみなければわからんぞ。イモコはここまで戦い続け、そして多くの技を学び、その全てを体得している。」
「あぁ、それについては俺も驚いているぜ。あいつは戦う度に強くなってやがる。まるで、あの時の信長を見ているようだぜ。」
そう。
イモコはレベル99の為、ステータスが上がる事はなかったのだが、この試練で死闘をする度に、心技共にレベルアップしている。
今まで戦ってきた全ての侍が最高の技と心を持ち、その者達と全力でぶつかることで、イモコはそれら技術を吸収し続けた。
それがあったからこそ、イモコは勝ち続けたと言っても過言ではない。
つまり今のイモコは、ここに来た当初より格段に強くなっていた。
しかし、イモコにとってこれからが本当の勝負となる。
はたしてイモコは、伝説の侍4人を下し、小次郎までたどり着けることはできるのであろうか。
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