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第四部 サムスピジャポン編
29 性への渇望
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「こ、こ、こ、これは違うんだ! シロマ! 誤解だっぺ!」
「へぇ~、誤解……ですか。さっきから私の部屋の前で二人の声が聞こえたものですから、気になって出てきましたが……こ・れ・が、サクセスさんがイモコさんに頼んでいた芸術なのですね。」
俺の聖書……
いや性書の表紙を見て、目を細めるシロマ。
迂闊だった……。
まさか、イモコとやり取りをしていたのがシロマの部屋の前だったとは。
いや、今はそんな事はいい。
あれはイモコが俺の為にここまでして持ってきてくれた男の友情。今考えるべきは、あれをどうやって取り戻すかだ。
だがしかし、即座に良い言い訳など思いつくはずもない。
普通に考えれば、ここは諦めて退散するのがベストだが……例え諦めたとて、そういった本をイモコから受け取ろうとした事実に変わりはない。
つまりは、取り返しても変態。
取り返さずとも変態。
その烙印が消えることはないだろう。
ならば、ここは否が応でも取り返した方がいいのでは?
踊る阿呆と見る阿呆、同じ阿呆なら踊らにゃそんそん!
覚悟を決めた俺は、この際全ての腹を括ってシロマから性書を奪い戻す事を決意する。
「シロマ、それは俺……」
俺が思いのたけを伝えようとしたその瞬間、それよりも早くイモコが強引にシロマからそれを奪いとった。
「きゃっ! 何するのですか、イモコさん!!」
いきなり本をぶんどられたシロマは、キッとした目でイモコを睨みつける。
「それは某が借りた本でござる。如何にシロマ殿とはいえ、勝手に取るのは些か強引ではないでござるか?」
「そ、それは……そうですが。でも、今それをサクセスさんに渡そうとしていましたよね?」
「その通りでござる。某は、師匠が絵の描かれた芸術が見たいと仰られたので、短慮ながらもこのような本を選んだのでござる。それを本人に確認しようとしたところで、シロマ殿に取られてしまったのでござるよ。故に、これは返してもらうでござる。」
イモコは毅然とした態度でシロマと向かい合う。
そこには決して譲らないという意思が伝わってきた。
い、イモコさまぁぁぁ~!
その勇ましい光景を前に、目をキラキラさせる俺がいるが……これはまずい。
このままでは、イモコが俺のせいでいらぬ疑いを掛けられてしまう。
ここまでしてもらって、イモコに全てをなすり付けて逃げる程、俺はクズじゃない!
「違う! イモコは悪くない。俺が……そう、俺がそういった知識がないからイモコにお願いして頼んだんだ!」
「師匠!!」
俺の言葉に焦るイモコ。
だが、いつまでも弟子に甘える訳にはいかないだろう。
俺はイモコの肩に手をポンっと掛けると、全てを諦めた瞳で「もういいんだ」と言わんばかりの笑顔を向ける。
「ほら、イモコさん。やっぱりそうじゃないですか! どうして嘘をつくのですか?」
「いや、シロマ。イモコは嘘をついていないぞ。イモコは俺に頼まれて持ってきて、それを確認してもらおうとしたと言ってたじゃないか。」
「で、ですが……では、なぜサクセスさんはそんな不埒な本を頼んだのですか?」
少しだけ焦るシロマ。
イモコに怒るのはお門違いだと気付いたのであろう。
そうだ、その通りだ。
悪いのは俺だ、俺の事で仲間同士がぎくしゃくするのだけはいかん。
「それは……わからないか? シロマ?」
「わかりません! ですが、サクセスさんがエッチだというのはわかります。」
グサっと胸に刺さる一言。
確かに自分でもかなりエロいとは思っているが、好きな子に面と向かって言われるとダメージはでかい。
しかし、それで倒れる俺じゃないぞ!
「そうだ! 俺はエッチだ! だがしかし、それの何が悪い? 理解してくれとは言わない、けどな、いざという時に知識があるとないとでは、結果が変わるかもしれないだろ? ……ならば、それを求めるのは男の責務!!」
ドーーンっと胸を張って、完全に開き直る俺。
流石にこの言葉にはシロマも若干引いてしまい、言葉を失った。
だが、ここまできたらもう手遅れ。
ならばもう、開き直るしか方法はないだろう!
「……理解できません。」
シロマにはそれが限界だった。
どういう訳か、なぜかシロマが顔を真っ赤にして恥ずかしそうにしている。
ーーならば、追撃だ!
「ならはっきり言おう! 俺はシロマと子供を作る儀式をする時、何を参考とすればいい? それとも誰かに根掘り葉掘り聞くのか? 確かにイーゼあたりに聞けば……。」
「だめですっ!! それだけは絶対にダメです! 当然リーチュンもダメです!」
俺の考えを激しく拒絶するシロマ。
自分でもそんな事を言っていて、なんとなくだがイメージがわいた。
「あら、初めてですの? 嬉しいですわ。それではわたくしが手取り足取りあそこ取り教えてさしあげますわぁん。」
と言ってくるイーゼの姿が。
俺が想像できるという事は、シロマも同じ事を想像したのだろう。
だからこそ、あれほどまでに強い拒否を……。
だが、これはチャンスだ!
「なら、俺はどうすればいい? 何も知らずにそんな事できないじゃないか?」
「で、ですが……そうです! 今はそんな事をしている時じゃないです!」
思い出したように、正論を見つけたと言わんばかりの顔をするシロマ。
しかし、俺は負けない!
イモコとの友情の為にも、そして……さっきから元気になっている下半身の為にも!
「シロマ……俺が明るい未来を想像するのがそんなに嫌なのか? 俺はそういう未来の為に動いちゃだめなのか? 教えてくれシロマ。俺だって、そういう行為を今シロマとしようと言っている訳じゃない。ただ、明るい将来を夢みて行動しているだけなんだ……。」
悲しそうに俯きながら話す俺。
もちろん、全部演技でーーす。
普通にエロ本読みたいだけっす、てへ。
しかし、どうやらシロマには絶大な効果をもたらしたようで、かなり動揺し始める。
さっきから何かを言葉にしようとするも、いい言葉が浮かばないようだ。
おっしゃ!!
うまくいった、このままなら誤魔化し通せるぞ!
トドメだシロマ!!
「すまないシロマ。これはお前を大切に思っている為の事なんだ。許してくれとは言わない。だけど、信じてほしい。俺はシロマを大切に思っている……今その証明をみせよう。少しだけここで待っててくれ。」
俺はそう言うと走って自分の部屋に戻り、例のアレを手に持ってシロマのところに戻ってきた。
「シロマ、これを受け取って欲しい。昨日本を楽しそうに読んでいるシロマを見て、俺が街で探して買ったものだ。」
そう言って、ブックカバーの入ったピンク色の袋をシロマに差し伸べる。
「え? こ、これはどういう事ですか? 可愛い袋ですが……中を見ても?」
「あぁ、見てくれ。いつも俺の為に頑張ってくれているシロマへの、ささやかなお礼だ。」
その言葉を聞いて耳まで顔を赤くしたシロマは、そっと袋の紐を開けて中に入っている物を取り出す。
「これはブックカバー……。可愛い……。」
柄やイラストの入った可愛らしいブックカバーを見て、シロマはうっとりとした瞳を浮かべる。
どうやら、相当気に入ってくれたようだ。
「喜んでくれると嬉しい。こんな感じで渡すのもアレだったけどな……。でも感謝しているんだ、シロマ。」
俺は照れくさくて頭をポリポリかきながらそう告げると、シロマは目に涙を浮かべ始めた。
「ごめんなさいサクセスさん。いえ、ありがとうございます。私……こんなに大切に思ってもらっていたんですね。」
「当たり前だろ! シロマは俺の大切な女だ! 好きだ、シロマ。」
「サクセスさん……。」
見つめ合う二人。
まさかのあそこからの急展開であるが、これでどうにか切り抜けられたはずだ。
俺のエロに対する貪欲をなめてもらっては困る。
「お、おほん。師匠、流石にそれ以上はきついでござるよ。」
その光景をマジマジと見せつけられていたイモコは、苦言を述べた。
それによってシロマの頭はサッと冷え、俺から少し距離を取る。
「悪いイモコ。というわけで、さっそくそれを使ってくれないか? いくつか本を持ってきているんだろ?」
「はい!! 本当にありがとうございます。サクセスさん! 嬉しいです。……後、私も好きです。」
最後に小さくそれだけ言うと、シロマは恥ずかしそうに部屋の中へ戻ってしまった。
心の中でふぅっと安堵の息をこぼす俺。
シロマには悪いが、これでもう邪魔は入らない。
やっと……やっとあれが読める!
すると突然イモコが俺に頭を下げてきた。
「師匠……申し訳なかったでござる。某を庇う為に……。」
「しーーっ……! そんな事ないって。俺は何一つ嘘を言ってないし、それにイモコは全く悪くない。だから……それを……。」
俺はイモコに近づくと、耳元で小さく伝える。
「それでは……堪能するでござるよ。」
「ありがとう、イモコ。この恩はいつか返す。」
イモコから性書を受け取った俺は、速足で自分の部屋に戻った。
部屋に着いた俺は、早速布団の横にティッシュを準備すると、布団の上で正座をし、遂にそのページを開く……。
ーーがしかし
開いたページに映っていたのは
真っ黒な闇だった。
「ど、どういう事だ!? なんで? どうして?」
俺が不測の事態に焦っていると、黒く塗りつぶされたページに白い文字が浮かんでくる。
閲覧権限がありません。
直ちに返却願います。
「な、なんだとぉぉぉぉ!! そんな……ばかな……。」
どうやら、貸出用の本には特殊な術が掛かっていたようだ。
つまり、借りた本人しか中身を見れないという事。
シロマを煙にまいてまで、手に入れたというのに……。
「こんなのあんまりだ……サムスピジャポンなんか……大っ嫌いだ!!」
俺が悲痛の叫びをあげて仰向けに倒れると、見上げた先に奴が立って俺を見下ろしている。
「ざまぁだっぺよ。ウキャキャキャキャ!」
そう、俺を指差して笑っていたのは、思念体となって出てきたトンズラだった。
こんな時だけ出てきやがって!
許すまじ、トンズラ!
絶対大魔王を助けても、お前だけは助けてやらないからな!
俺は思いっきり、腹を抱えて爆笑している思念体をぶん殴ると、トンズラは最後まで俺を指差しながら笑って消えていく。
「最悪だ……。もう、泣いてもいいよね?」
悔しさを胸に……今日もまた俺は戦い続ける。
この、童貞の呪いと!
「へぇ~、誤解……ですか。さっきから私の部屋の前で二人の声が聞こえたものですから、気になって出てきましたが……こ・れ・が、サクセスさんがイモコさんに頼んでいた芸術なのですね。」
俺の聖書……
いや性書の表紙を見て、目を細めるシロマ。
迂闊だった……。
まさか、イモコとやり取りをしていたのがシロマの部屋の前だったとは。
いや、今はそんな事はいい。
あれはイモコが俺の為にここまでして持ってきてくれた男の友情。今考えるべきは、あれをどうやって取り戻すかだ。
だがしかし、即座に良い言い訳など思いつくはずもない。
普通に考えれば、ここは諦めて退散するのがベストだが……例え諦めたとて、そういった本をイモコから受け取ろうとした事実に変わりはない。
つまりは、取り返しても変態。
取り返さずとも変態。
その烙印が消えることはないだろう。
ならば、ここは否が応でも取り返した方がいいのでは?
踊る阿呆と見る阿呆、同じ阿呆なら踊らにゃそんそん!
覚悟を決めた俺は、この際全ての腹を括ってシロマから性書を奪い戻す事を決意する。
「シロマ、それは俺……」
俺が思いのたけを伝えようとしたその瞬間、それよりも早くイモコが強引にシロマからそれを奪いとった。
「きゃっ! 何するのですか、イモコさん!!」
いきなり本をぶんどられたシロマは、キッとした目でイモコを睨みつける。
「それは某が借りた本でござる。如何にシロマ殿とはいえ、勝手に取るのは些か強引ではないでござるか?」
「そ、それは……そうですが。でも、今それをサクセスさんに渡そうとしていましたよね?」
「その通りでござる。某は、師匠が絵の描かれた芸術が見たいと仰られたので、短慮ながらもこのような本を選んだのでござる。それを本人に確認しようとしたところで、シロマ殿に取られてしまったのでござるよ。故に、これは返してもらうでござる。」
イモコは毅然とした態度でシロマと向かい合う。
そこには決して譲らないという意思が伝わってきた。
い、イモコさまぁぁぁ~!
その勇ましい光景を前に、目をキラキラさせる俺がいるが……これはまずい。
このままでは、イモコが俺のせいでいらぬ疑いを掛けられてしまう。
ここまでしてもらって、イモコに全てをなすり付けて逃げる程、俺はクズじゃない!
「違う! イモコは悪くない。俺が……そう、俺がそういった知識がないからイモコにお願いして頼んだんだ!」
「師匠!!」
俺の言葉に焦るイモコ。
だが、いつまでも弟子に甘える訳にはいかないだろう。
俺はイモコの肩に手をポンっと掛けると、全てを諦めた瞳で「もういいんだ」と言わんばかりの笑顔を向ける。
「ほら、イモコさん。やっぱりそうじゃないですか! どうして嘘をつくのですか?」
「いや、シロマ。イモコは嘘をついていないぞ。イモコは俺に頼まれて持ってきて、それを確認してもらおうとしたと言ってたじゃないか。」
「で、ですが……では、なぜサクセスさんはそんな不埒な本を頼んだのですか?」
少しだけ焦るシロマ。
イモコに怒るのはお門違いだと気付いたのであろう。
そうだ、その通りだ。
悪いのは俺だ、俺の事で仲間同士がぎくしゃくするのだけはいかん。
「それは……わからないか? シロマ?」
「わかりません! ですが、サクセスさんがエッチだというのはわかります。」
グサっと胸に刺さる一言。
確かに自分でもかなりエロいとは思っているが、好きな子に面と向かって言われるとダメージはでかい。
しかし、それで倒れる俺じゃないぞ!
「そうだ! 俺はエッチだ! だがしかし、それの何が悪い? 理解してくれとは言わない、けどな、いざという時に知識があるとないとでは、結果が変わるかもしれないだろ? ……ならば、それを求めるのは男の責務!!」
ドーーンっと胸を張って、完全に開き直る俺。
流石にこの言葉にはシロマも若干引いてしまい、言葉を失った。
だが、ここまできたらもう手遅れ。
ならばもう、開き直るしか方法はないだろう!
「……理解できません。」
シロマにはそれが限界だった。
どういう訳か、なぜかシロマが顔を真っ赤にして恥ずかしそうにしている。
ーーならば、追撃だ!
「ならはっきり言おう! 俺はシロマと子供を作る儀式をする時、何を参考とすればいい? それとも誰かに根掘り葉掘り聞くのか? 確かにイーゼあたりに聞けば……。」
「だめですっ!! それだけは絶対にダメです! 当然リーチュンもダメです!」
俺の考えを激しく拒絶するシロマ。
自分でもそんな事を言っていて、なんとなくだがイメージがわいた。
「あら、初めてですの? 嬉しいですわ。それではわたくしが手取り足取りあそこ取り教えてさしあげますわぁん。」
と言ってくるイーゼの姿が。
俺が想像できるという事は、シロマも同じ事を想像したのだろう。
だからこそ、あれほどまでに強い拒否を……。
だが、これはチャンスだ!
「なら、俺はどうすればいい? 何も知らずにそんな事できないじゃないか?」
「で、ですが……そうです! 今はそんな事をしている時じゃないです!」
思い出したように、正論を見つけたと言わんばかりの顔をするシロマ。
しかし、俺は負けない!
イモコとの友情の為にも、そして……さっきから元気になっている下半身の為にも!
「シロマ……俺が明るい未来を想像するのがそんなに嫌なのか? 俺はそういう未来の為に動いちゃだめなのか? 教えてくれシロマ。俺だって、そういう行為を今シロマとしようと言っている訳じゃない。ただ、明るい将来を夢みて行動しているだけなんだ……。」
悲しそうに俯きながら話す俺。
もちろん、全部演技でーーす。
普通にエロ本読みたいだけっす、てへ。
しかし、どうやらシロマには絶大な効果をもたらしたようで、かなり動揺し始める。
さっきから何かを言葉にしようとするも、いい言葉が浮かばないようだ。
おっしゃ!!
うまくいった、このままなら誤魔化し通せるぞ!
トドメだシロマ!!
「すまないシロマ。これはお前を大切に思っている為の事なんだ。許してくれとは言わない。だけど、信じてほしい。俺はシロマを大切に思っている……今その証明をみせよう。少しだけここで待っててくれ。」
俺はそう言うと走って自分の部屋に戻り、例のアレを手に持ってシロマのところに戻ってきた。
「シロマ、これを受け取って欲しい。昨日本を楽しそうに読んでいるシロマを見て、俺が街で探して買ったものだ。」
そう言って、ブックカバーの入ったピンク色の袋をシロマに差し伸べる。
「え? こ、これはどういう事ですか? 可愛い袋ですが……中を見ても?」
「あぁ、見てくれ。いつも俺の為に頑張ってくれているシロマへの、ささやかなお礼だ。」
その言葉を聞いて耳まで顔を赤くしたシロマは、そっと袋の紐を開けて中に入っている物を取り出す。
「これはブックカバー……。可愛い……。」
柄やイラストの入った可愛らしいブックカバーを見て、シロマはうっとりとした瞳を浮かべる。
どうやら、相当気に入ってくれたようだ。
「喜んでくれると嬉しい。こんな感じで渡すのもアレだったけどな……。でも感謝しているんだ、シロマ。」
俺は照れくさくて頭をポリポリかきながらそう告げると、シロマは目に涙を浮かべ始めた。
「ごめんなさいサクセスさん。いえ、ありがとうございます。私……こんなに大切に思ってもらっていたんですね。」
「当たり前だろ! シロマは俺の大切な女だ! 好きだ、シロマ。」
「サクセスさん……。」
見つめ合う二人。
まさかのあそこからの急展開であるが、これでどうにか切り抜けられたはずだ。
俺のエロに対する貪欲をなめてもらっては困る。
「お、おほん。師匠、流石にそれ以上はきついでござるよ。」
その光景をマジマジと見せつけられていたイモコは、苦言を述べた。
それによってシロマの頭はサッと冷え、俺から少し距離を取る。
「悪いイモコ。というわけで、さっそくそれを使ってくれないか? いくつか本を持ってきているんだろ?」
「はい!! 本当にありがとうございます。サクセスさん! 嬉しいです。……後、私も好きです。」
最後に小さくそれだけ言うと、シロマは恥ずかしそうに部屋の中へ戻ってしまった。
心の中でふぅっと安堵の息をこぼす俺。
シロマには悪いが、これでもう邪魔は入らない。
やっと……やっとあれが読める!
すると突然イモコが俺に頭を下げてきた。
「師匠……申し訳なかったでござる。某を庇う為に……。」
「しーーっ……! そんな事ないって。俺は何一つ嘘を言ってないし、それにイモコは全く悪くない。だから……それを……。」
俺はイモコに近づくと、耳元で小さく伝える。
「それでは……堪能するでござるよ。」
「ありがとう、イモコ。この恩はいつか返す。」
イモコから性書を受け取った俺は、速足で自分の部屋に戻った。
部屋に着いた俺は、早速布団の横にティッシュを準備すると、布団の上で正座をし、遂にそのページを開く……。
ーーがしかし
開いたページに映っていたのは
真っ黒な闇だった。
「ど、どういう事だ!? なんで? どうして?」
俺が不測の事態に焦っていると、黒く塗りつぶされたページに白い文字が浮かんでくる。
閲覧権限がありません。
直ちに返却願います。
「な、なんだとぉぉぉぉ!! そんな……ばかな……。」
どうやら、貸出用の本には特殊な術が掛かっていたようだ。
つまり、借りた本人しか中身を見れないという事。
シロマを煙にまいてまで、手に入れたというのに……。
「こんなのあんまりだ……サムスピジャポンなんか……大っ嫌いだ!!」
俺が悲痛の叫びをあげて仰向けに倒れると、見上げた先に奴が立って俺を見下ろしている。
「ざまぁだっぺよ。ウキャキャキャキャ!」
そう、俺を指差して笑っていたのは、思念体となって出てきたトンズラだった。
こんな時だけ出てきやがって!
許すまじ、トンズラ!
絶対大魔王を助けても、お前だけは助けてやらないからな!
俺は思いっきり、腹を抱えて爆笑している思念体をぶん殴ると、トンズラは最後まで俺を指差しながら笑って消えていく。
「最悪だ……。もう、泣いてもいいよね?」
悔しさを胸に……今日もまた俺は戦い続ける。
この、童貞の呪いと!
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