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第四部 サムスピジャポン編
11 地獄絵図
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「サクセス様、この山を越えた所に【下尾】と呼ばれる町がございます。皮肥え程ではありませんが、比較的大きな町でございます。故にそちらで一泊してから皮肥えに向かう事をお勧めいたしますが、いかがなさいますか?」
橋を渡った先で、早速今後の予定についてセイメイが話し始めた。しかし、いかがしますかと言われても、この大陸について何もわからない俺としては「うん、そうだね。」としか言いようがないだろう。しかし、わざわざ伺いをたてるという事は、このままの速度で行けば野営を挟む事になる。町に行くなら飛ばすということだろうか。俺達は魔獣を警戒しているため、今までの速度は遅いとも言えないがそこまでは速くはない。
「セイメイが勧めるなら間違いだろ、それでいこう。ちなみにだけど、そこは何か有名な所があったりするの?」
「そうですねぇ……確か下尾は、奇跡の豚と呼ばれる特殊な品種の豚を繁殖させており、その養豚場直営の食堂では、それはもう絶品のトンカツがあると伺っております。サクサクの衣の中には、分厚くジューシーな肉が入っており、一口噛んだ瞬間に中から肉汁が溢れ出し、口の中一杯を幸せにするそうです。更にそのお肉は弾力があるにもかかわらず、数回咀嚼すると口の中から行方不明になるとか……。」
な、な、な、なんじゃそりゃーーーー!!
滅茶苦茶うまそうじゃねぇかよ! つか説明を聞いてるだけで涎が溢れ出てきたわ。
アンコウのから揚げとアンコウ鍋も半端なかったが、比じゃないぞ!
「……行こう。早く行こう! 今すぐ行こう! セイメイ、飛ばしてくれ!!」
「はい! 任せて下さい。それでは、イモコ殿の馬車の前に出て、速度を上げます。」
セイメイはそう言うと、馬に鞭を入れて速度を上げる。イモコはセイメイに抜かされたにも関わらず、特に何も言ってきたりはしなかった。本来、スカウト用の馬車としてカリーが乗る馬車は先頭でなくてはいけない為、色々聞かれるとは思ったのだが、どうやらセイメイの目配せだけで理解したっぽい。
そして逸る気持ちを胸に、俺達はさっきまでとは比べ物にならない程のスピードで駆け抜けていく。スピードが上がったのは何も鞭を入れて飛ばしている事だけが理由ではない。橋を渡った後、緩やかな傾斜がある山を下っているのも一つの要因だ。セイメイ曰く、山を下りたらもう町は見えてくるらしい。この速度なら降りるにもそんなに時間はかからないだろう。あぁ~楽しみだ。ワクワクが止まらない。さっきまで気を緩めるなとか自分を戒めていたのが……それはそれ、これはこれ……だ!
そんなこんなで、あっという間に山を下ると平地に辿り着いた。そして言われていた通り、平地になると直ぐに遠くの方に大きな町が見える……のだが、なんか町の外壁が変な形に見えた。
サムスピジャポンは、何か特殊な外壁構造でもしているのだろうか?
「あ、あれは……。」
すると遠目に見える光景を見て、何故かセイメイが一瞬言葉を失う。そして、それと同時にイモコが馬車を隣につけて叫んだ。
「師匠!! 町が襲われているでござる!! 否! あれは……もう襲われた後でござるよ!」
は!? まじかよ! 嘘だろ!? 奇跡のトンカツは……ってそんな事考えてる場合じゃねぇ!
「サクセス様。見て下さい、町の上の空が黒くなっております。つまりは……町が壊滅している可能性が高いと思われます。いかがなさいますか?」
セイメイは冷静に尋ねてきた。しかし、いかがしますかもなにも、答えは一つしかないだろ。
「助けるに決まってるだろ!! まだ生存者がいるかもしれない。 ゲロゲロ! シロマを背中に乗せてくれ! カリーは俺と一緒に走るぞ!」
俺はそう言うと、馬車から飛び降りる。それに続いてゲロゲロも降りると直ぐに古龍狼に変わり、その背にシロマが飛び乗った。
「イモコとセイメイは周りに注意しながら、後から来てくれ。俺達は先に向かう。シロマ! 助けられる者がいれば、魔法で回復させてくれ。カリーはアイテムを使え。」
「わかりました。サクセスさん。」
「わかったぜ。っつっても、流石にサクセスとゲロゲロ相手では遅れるから、気にせず進んでくれよ。」
シロマがそう返事すると、カリーも馬車から飛び降りて直ぐに走り出した。そして、俺とゲロゲロは並ぶようにして急いで町に向かう。俺とゲロゲロが本気で走れば馬車よりも圧倒的に速い。全力に近い速度で走ったせいか、町の外壁まで一気に近づいた俺は、そこでやっと町の状態に気づいた。町の外壁は遠くで見るのと違い、どこもかしこもボロボロになっている。そして、ここまで来ると、焦げ臭いにおい……そして腐敗した肉の匂いまで感じ始めた。
これはヤバイんじゃねぇか。とにかく急ぐしかねぇ!!
俺達は開いている門から町の中に入ると、町の中は外壁以上に酷い状況だった。建ち並ぶ家屋や建物は全て破壊され、そして所々で火がくすぶっている。そう、くすぶっているという事は既に燃える物はほとんど燃えきった後ということだ。瓦礫の下には黒くなった血が飛び散っており、正に地獄絵図そのものである。
「酷い……。これでは……もう私でも……。」
シロマはその状況を見て、顔を青くさせながら呟く。どうやら、時を操れるシロマでも流石にこの状況ではどうにもならないようだ。
「シロマ、生存者がいる可能性は少ない。けど、ゼロじゃない。ゲロゲロ、生きている者の呼吸が聞こえたらそこに向かって急いでくれ。俺は時計回りに捜索する。シロマは逆だ。そして、多分後からきたカリーは真っすぐ捜索してくれるはずだ。」
「ゲロ!(任せて!)」
俺はそう言うと、一縷の望みにかけて町の中を捜索する。確かにこの町は広い。しかし、こうまで建物が崩れているのであれば障害となるのも少ないため、移動自体は楽になっている……が、移動が目的ではない。生存者を探すために、できるだけ五感を研ぎ澄ませて進むのだ。生きていれば必ず呼吸をする、その音を聞き分けるしかない。まだ火がくすぶっている状況からも2,3日しか経過していないはず。いや、この場合は2,3日も……か。だが、諦めないぞ。助けを求める者がまだいるかもしれない!
そして俺達は、遅れてきたカリーやイモコ達も含めて全員で町中を探す。その結果、二人だけ生存者を見つけた。生存者と言っても、体中に大きな火傷や怪我をしていて、正に死ぬ寸前といった状況である。しかし、運が良い事に見つけたのシロマ達であり、直ぐに回復することができた。やはり野生の五感は凄い。流石ゲロゲロだ。
そして助けた二人はこの町の戦士……いやサムライであり、回復した今、状況を聞いているところだ。
「かたじけない! そなたらがいなければ、某は死んでいたでござる。しかし、町を守れず、町民の殆どが死んでしまった今、某に生きる資格はないでござる。御免!!」
イモコと同じゴザル語で話す中年のサムライは、それだけ言うと、近くに落ちていた刀を拾って自らの腹を切り裂こうとする。
ばかやろう!!
と俺が叫ぶ前に、自殺を図ろうとした剣をイモコが薙ぎ払った。
カキーーン!
「ふざけるのも大概にするでござる!! そなたらは拾われた命を無駄にするでござるか! 無駄にするなら戦って無駄にせよ!」
俺が言う前に、何故かイモコが切れた。俺達には見せない程の形相と迫力で、助けた二人に怒鳴りつける。その迫力に圧倒された二人のサムライは、さっきまでの情けない表情がしまりはじめる。
「……そ、そうでござるな。どうせ一度は無くした命。戦って散って見せるでござるよ!!」
「……はっ!! あなた様は……もしかして大将軍、大野大将軍様ではござらんか!?」
そしてどうやら気付いたようだ。この国では超有名人らしい、イモコに。自分を怒鳴ったのが大将軍と知った二人の目に闘志がみなぎってきた。
「もう大将軍等という肩書は捨てたでござる。今はただの剣闘士イモコ……否。英雄サクセス様の一番弟子イモコでござる!!」
バァァーーン!!
なぜか凄く誇らしそうに叫ぶイモコ。特に、一番弟子というフレーズだけがやけに強調されていたが、まぁいい。それよりも事情を聞くのが先だ。
「それで、何があったか教えてくれ。できるだけ詳しくだ。」
俺はそう言うと、二人からこの町で一体何が起きて、町が壊滅してしまったかを詳しく聞く事にするのであった。
橋を渡った先で、早速今後の予定についてセイメイが話し始めた。しかし、いかがしますかと言われても、この大陸について何もわからない俺としては「うん、そうだね。」としか言いようがないだろう。しかし、わざわざ伺いをたてるという事は、このままの速度で行けば野営を挟む事になる。町に行くなら飛ばすということだろうか。俺達は魔獣を警戒しているため、今までの速度は遅いとも言えないがそこまでは速くはない。
「セイメイが勧めるなら間違いだろ、それでいこう。ちなみにだけど、そこは何か有名な所があったりするの?」
「そうですねぇ……確か下尾は、奇跡の豚と呼ばれる特殊な品種の豚を繁殖させており、その養豚場直営の食堂では、それはもう絶品のトンカツがあると伺っております。サクサクの衣の中には、分厚くジューシーな肉が入っており、一口噛んだ瞬間に中から肉汁が溢れ出し、口の中一杯を幸せにするそうです。更にそのお肉は弾力があるにもかかわらず、数回咀嚼すると口の中から行方不明になるとか……。」
な、な、な、なんじゃそりゃーーーー!!
滅茶苦茶うまそうじゃねぇかよ! つか説明を聞いてるだけで涎が溢れ出てきたわ。
アンコウのから揚げとアンコウ鍋も半端なかったが、比じゃないぞ!
「……行こう。早く行こう! 今すぐ行こう! セイメイ、飛ばしてくれ!!」
「はい! 任せて下さい。それでは、イモコ殿の馬車の前に出て、速度を上げます。」
セイメイはそう言うと、馬に鞭を入れて速度を上げる。イモコはセイメイに抜かされたにも関わらず、特に何も言ってきたりはしなかった。本来、スカウト用の馬車としてカリーが乗る馬車は先頭でなくてはいけない為、色々聞かれるとは思ったのだが、どうやらセイメイの目配せだけで理解したっぽい。
そして逸る気持ちを胸に、俺達はさっきまでとは比べ物にならない程のスピードで駆け抜けていく。スピードが上がったのは何も鞭を入れて飛ばしている事だけが理由ではない。橋を渡った後、緩やかな傾斜がある山を下っているのも一つの要因だ。セイメイ曰く、山を下りたらもう町は見えてくるらしい。この速度なら降りるにもそんなに時間はかからないだろう。あぁ~楽しみだ。ワクワクが止まらない。さっきまで気を緩めるなとか自分を戒めていたのが……それはそれ、これはこれ……だ!
そんなこんなで、あっという間に山を下ると平地に辿り着いた。そして言われていた通り、平地になると直ぐに遠くの方に大きな町が見える……のだが、なんか町の外壁が変な形に見えた。
サムスピジャポンは、何か特殊な外壁構造でもしているのだろうか?
「あ、あれは……。」
すると遠目に見える光景を見て、何故かセイメイが一瞬言葉を失う。そして、それと同時にイモコが馬車を隣につけて叫んだ。
「師匠!! 町が襲われているでござる!! 否! あれは……もう襲われた後でござるよ!」
は!? まじかよ! 嘘だろ!? 奇跡のトンカツは……ってそんな事考えてる場合じゃねぇ!
「サクセス様。見て下さい、町の上の空が黒くなっております。つまりは……町が壊滅している可能性が高いと思われます。いかがなさいますか?」
セイメイは冷静に尋ねてきた。しかし、いかがしますかもなにも、答えは一つしかないだろ。
「助けるに決まってるだろ!! まだ生存者がいるかもしれない。 ゲロゲロ! シロマを背中に乗せてくれ! カリーは俺と一緒に走るぞ!」
俺はそう言うと、馬車から飛び降りる。それに続いてゲロゲロも降りると直ぐに古龍狼に変わり、その背にシロマが飛び乗った。
「イモコとセイメイは周りに注意しながら、後から来てくれ。俺達は先に向かう。シロマ! 助けられる者がいれば、魔法で回復させてくれ。カリーはアイテムを使え。」
「わかりました。サクセスさん。」
「わかったぜ。っつっても、流石にサクセスとゲロゲロ相手では遅れるから、気にせず進んでくれよ。」
シロマがそう返事すると、カリーも馬車から飛び降りて直ぐに走り出した。そして、俺とゲロゲロは並ぶようにして急いで町に向かう。俺とゲロゲロが本気で走れば馬車よりも圧倒的に速い。全力に近い速度で走ったせいか、町の外壁まで一気に近づいた俺は、そこでやっと町の状態に気づいた。町の外壁は遠くで見るのと違い、どこもかしこもボロボロになっている。そして、ここまで来ると、焦げ臭いにおい……そして腐敗した肉の匂いまで感じ始めた。
これはヤバイんじゃねぇか。とにかく急ぐしかねぇ!!
俺達は開いている門から町の中に入ると、町の中は外壁以上に酷い状況だった。建ち並ぶ家屋や建物は全て破壊され、そして所々で火がくすぶっている。そう、くすぶっているという事は既に燃える物はほとんど燃えきった後ということだ。瓦礫の下には黒くなった血が飛び散っており、正に地獄絵図そのものである。
「酷い……。これでは……もう私でも……。」
シロマはその状況を見て、顔を青くさせながら呟く。どうやら、時を操れるシロマでも流石にこの状況ではどうにもならないようだ。
「シロマ、生存者がいる可能性は少ない。けど、ゼロじゃない。ゲロゲロ、生きている者の呼吸が聞こえたらそこに向かって急いでくれ。俺は時計回りに捜索する。シロマは逆だ。そして、多分後からきたカリーは真っすぐ捜索してくれるはずだ。」
「ゲロ!(任せて!)」
俺はそう言うと、一縷の望みにかけて町の中を捜索する。確かにこの町は広い。しかし、こうまで建物が崩れているのであれば障害となるのも少ないため、移動自体は楽になっている……が、移動が目的ではない。生存者を探すために、できるだけ五感を研ぎ澄ませて進むのだ。生きていれば必ず呼吸をする、その音を聞き分けるしかない。まだ火がくすぶっている状況からも2,3日しか経過していないはず。いや、この場合は2,3日も……か。だが、諦めないぞ。助けを求める者がまだいるかもしれない!
そして俺達は、遅れてきたカリーやイモコ達も含めて全員で町中を探す。その結果、二人だけ生存者を見つけた。生存者と言っても、体中に大きな火傷や怪我をしていて、正に死ぬ寸前といった状況である。しかし、運が良い事に見つけたのシロマ達であり、直ぐに回復することができた。やはり野生の五感は凄い。流石ゲロゲロだ。
そして助けた二人はこの町の戦士……いやサムライであり、回復した今、状況を聞いているところだ。
「かたじけない! そなたらがいなければ、某は死んでいたでござる。しかし、町を守れず、町民の殆どが死んでしまった今、某に生きる資格はないでござる。御免!!」
イモコと同じゴザル語で話す中年のサムライは、それだけ言うと、近くに落ちていた刀を拾って自らの腹を切り裂こうとする。
ばかやろう!!
と俺が叫ぶ前に、自殺を図ろうとした剣をイモコが薙ぎ払った。
カキーーン!
「ふざけるのも大概にするでござる!! そなたらは拾われた命を無駄にするでござるか! 無駄にするなら戦って無駄にせよ!」
俺が言う前に、何故かイモコが切れた。俺達には見せない程の形相と迫力で、助けた二人に怒鳴りつける。その迫力に圧倒された二人のサムライは、さっきまでの情けない表情がしまりはじめる。
「……そ、そうでござるな。どうせ一度は無くした命。戦って散って見せるでござるよ!!」
「……はっ!! あなた様は……もしかして大将軍、大野大将軍様ではござらんか!?」
そしてどうやら気付いたようだ。この国では超有名人らしい、イモコに。自分を怒鳴ったのが大将軍と知った二人の目に闘志がみなぎってきた。
「もう大将軍等という肩書は捨てたでござる。今はただの剣闘士イモコ……否。英雄サクセス様の一番弟子イモコでござる!!」
バァァーーン!!
なぜか凄く誇らしそうに叫ぶイモコ。特に、一番弟子というフレーズだけがやけに強調されていたが、まぁいい。それよりも事情を聞くのが先だ。
「それで、何があったか教えてくれ。できるだけ詳しくだ。」
俺はそう言うと、二人からこの町で一体何が起きて、町が壊滅してしまったかを詳しく聞く事にするのであった。
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