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第四部 サムスピジャポン編
8 災害級の魔獣①
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オオワライの町を出てから一週間。初めての違う大陸という事もあり、初めは若干緊張していたのだが、なんのことはない。今までの旅と特に変わることはなかった。道中、見たことがない魔物……いやこの大陸では魔獣というモンスターに襲われることもあったが、難なく倒す事が出来、移動を妨げるような事はなにも起きなかった。
魔獣についてだが、これも呼び名こそ違えども、倒せば魔石を落とすところも同じだし、敵の強さもそこまで強敵と呼べるものはいない。
現れたのは、ビッグリズリー、サーベルティガーと呼ばれる魔獣で、見た目は普通の熊やトラと同じである。違いがあるとすれば、魔獣は全て色が黒ということ。そして大きさも普通の動物に比べて2倍から3倍程大きく、力や速度も速いというところ。
ーーとは言えだ。
俺達のパーティは、一番弱いイモコでも90レベルを超えており、その戦闘力から考えれば、単純に速くて強いだけの魔獣など敵ではなかった。正直、10匹やそこらの魔獣に囲まれても、イモコ一人いれば10秒かからず戦闘は終わる。それでも、一応戦闘になった場合は、シロマとセイメイ以外の全員で戦うことにはしていた。理由は、例え敵が弱くとも、戦闘ができるという経験は必ず自分達の力になる。故にいくらオーバーキルであろうとも、俺達は常に最善手で敵を効率よく倒している。
ちなみにシロマが戦闘に参加していないのには理由があった。正確にいうと、参加しないのではなく、参加できないのである。当初はシロマも一緒に馬車から降りて戦おうとしていたのだが、シロマが戦う間もなく戦闘が終わってしまった。よって、シロマは後方待機というか援護の役を担うことになるのだが、その出番が訪れたことは今のところ一度もない。
ーーそして今日もまた……
「サクセス。」
「わかった。」
カリーの声が聞こえた瞬間、俺とゲロゲロは馬車から飛び降りる。それに続いて、イモコも馬を停めて降りた。
たったこれだけの言葉で、俺達は敵が近づいてきたとわかってしまうのだ。もはや条件反射に近い。
「11時に4匹、2時に2匹。2時にいる方は大型だ。」
「イモコとカリーは11時。俺とゲロゲロは2時。シロマは後方待機。」
俺がそう告げると、全員が一斉に走り出した。現在森を突き進んでいるため、木が邪魔でまだ敵の姿は見えないが、さっきのカリーからの情報で大体は把握できる。
敵の位置については、時計の針を見立てて伝えることにしていた。自分達の進行方向を0時とするため、11時は左前、2時は右前。方向と敵の大きさがわかれば、作戦も立てやすい。セイメイやイモコから聞いた話だと、魔獣は大きさで強さが決まるらしい。体内にためている魔素が大きくなるほど、狂暴性も力も上がる。故に、それに応じてメンバーの割り振りが決められるってことだ。
今回現れたのは、ビックリドンキーコングとウーマンモーと呼ばれる魔獣である。どちらも、何回か倒したことがあるが、俺達にとって強敵とは言い難い。前の大陸のレベルでいうなれば、11時方向にいるビックリドンキーコングが50レベル後半の敵。そして俺が向かっている2時方向にいる敵は70レベル相当であろうか。
セイメイ曰く、俺達が雑魚同然で倒している敵は、ベテランの戦士達がしっかりと装備を整えた上で、パーティを組むことでやっと1匹を討伐するレベルであるらしい。特にウーマンモーは災害クラスの魔獣であるために、大部隊を編成して討伐する対象だった。
これほど大きくて強い魔獣は滅多に出なかったらしいが、向かっている小江戸に近づくにつれて増えてきた。やはりなんらかの影響で魔獣が凶悪化し、大繁殖をしているというのは本当みたいである。
だがそんな相手も、俺達からすれば……。
「イモコ、4時木の上だ。」
「御意!!」
ドゴォオォォン!!
突然、カリーとイモコの前に巨大な岩石が凄い勢いで落ちてくる。しかし、岩石が地面にぶつかる時に、既にカリーもイモコもそこにはいない。ビックリドンキーコングは一発で仕留めたのを確信しつつ、落とした岩石の方を見渡すも……予想とは違い、そこに血潮も飛び交ってなければ、肉片一つ見つからない。
「ゴホ!?」
「抜刀斬!!」
ドンキーは、不思議に思い声を出した瞬間に、その胴体を真っ二つにされた。そう、イモコはカリーから敵の位置を聞いていたのと、岩石が飛んできた方向から適格に位置を把握し、一気に距離を詰めると共に技の準備をしていたのだ。
今回現れたビックリドンキーコングは、その名の通り体長5メートルはある巨大なゴリラであり、その巨体に似合わず俊敏な動きで、普通の猿以上の速さで木の上を移動する。普通の冒険者であれば、俊敏な動きで今回のような不意打ち攻撃に驚き、為すすべなくやられてしまう事も多いのだが、俺達に限っては当てはまらなかった。
そして同刻、イモコとは別方向に移動したカリーは、他の3体の位置を全て感知していたことから、巨大な弓を取り出すと、3匹同時に撃ち抜く。
「乱れうち【雷撃の矢】」
ズババァァン! ズババァァァン! ズババァァァン!!
「ゴッホォォォォ!!」
カリーが取り出した最強の弓【サジタリウス】から発せられる強烈な雷を纏う矢。カリーの乱れうちというスキルは、連続で大量の矢を放つことができるが、今回放った矢の本数は30本。そして、それぞれが10発づつ敵を貫くと、敵は一瞬で絶命した。むしろオーバーキルである。
この間、2秒。
強敵と呼ばれる魔獣4匹を相手にして、カリーとイモコはほんの2秒で戦闘を終わらせてしまった。やはりこのパーティは強すぎる。
魔獣についてだが、これも呼び名こそ違えども、倒せば魔石を落とすところも同じだし、敵の強さもそこまで強敵と呼べるものはいない。
現れたのは、ビッグリズリー、サーベルティガーと呼ばれる魔獣で、見た目は普通の熊やトラと同じである。違いがあるとすれば、魔獣は全て色が黒ということ。そして大きさも普通の動物に比べて2倍から3倍程大きく、力や速度も速いというところ。
ーーとは言えだ。
俺達のパーティは、一番弱いイモコでも90レベルを超えており、その戦闘力から考えれば、単純に速くて強いだけの魔獣など敵ではなかった。正直、10匹やそこらの魔獣に囲まれても、イモコ一人いれば10秒かからず戦闘は終わる。それでも、一応戦闘になった場合は、シロマとセイメイ以外の全員で戦うことにはしていた。理由は、例え敵が弱くとも、戦闘ができるという経験は必ず自分達の力になる。故にいくらオーバーキルであろうとも、俺達は常に最善手で敵を効率よく倒している。
ちなみにシロマが戦闘に参加していないのには理由があった。正確にいうと、参加しないのではなく、参加できないのである。当初はシロマも一緒に馬車から降りて戦おうとしていたのだが、シロマが戦う間もなく戦闘が終わってしまった。よって、シロマは後方待機というか援護の役を担うことになるのだが、その出番が訪れたことは今のところ一度もない。
ーーそして今日もまた……
「サクセス。」
「わかった。」
カリーの声が聞こえた瞬間、俺とゲロゲロは馬車から飛び降りる。それに続いて、イモコも馬を停めて降りた。
たったこれだけの言葉で、俺達は敵が近づいてきたとわかってしまうのだ。もはや条件反射に近い。
「11時に4匹、2時に2匹。2時にいる方は大型だ。」
「イモコとカリーは11時。俺とゲロゲロは2時。シロマは後方待機。」
俺がそう告げると、全員が一斉に走り出した。現在森を突き進んでいるため、木が邪魔でまだ敵の姿は見えないが、さっきのカリーからの情報で大体は把握できる。
敵の位置については、時計の針を見立てて伝えることにしていた。自分達の進行方向を0時とするため、11時は左前、2時は右前。方向と敵の大きさがわかれば、作戦も立てやすい。セイメイやイモコから聞いた話だと、魔獣は大きさで強さが決まるらしい。体内にためている魔素が大きくなるほど、狂暴性も力も上がる。故に、それに応じてメンバーの割り振りが決められるってことだ。
今回現れたのは、ビックリドンキーコングとウーマンモーと呼ばれる魔獣である。どちらも、何回か倒したことがあるが、俺達にとって強敵とは言い難い。前の大陸のレベルでいうなれば、11時方向にいるビックリドンキーコングが50レベル後半の敵。そして俺が向かっている2時方向にいる敵は70レベル相当であろうか。
セイメイ曰く、俺達が雑魚同然で倒している敵は、ベテランの戦士達がしっかりと装備を整えた上で、パーティを組むことでやっと1匹を討伐するレベルであるらしい。特にウーマンモーは災害クラスの魔獣であるために、大部隊を編成して討伐する対象だった。
これほど大きくて強い魔獣は滅多に出なかったらしいが、向かっている小江戸に近づくにつれて増えてきた。やはりなんらかの影響で魔獣が凶悪化し、大繁殖をしているというのは本当みたいである。
だがそんな相手も、俺達からすれば……。
「イモコ、4時木の上だ。」
「御意!!」
ドゴォオォォン!!
突然、カリーとイモコの前に巨大な岩石が凄い勢いで落ちてくる。しかし、岩石が地面にぶつかる時に、既にカリーもイモコもそこにはいない。ビックリドンキーコングは一発で仕留めたのを確信しつつ、落とした岩石の方を見渡すも……予想とは違い、そこに血潮も飛び交ってなければ、肉片一つ見つからない。
「ゴホ!?」
「抜刀斬!!」
ドンキーは、不思議に思い声を出した瞬間に、その胴体を真っ二つにされた。そう、イモコはカリーから敵の位置を聞いていたのと、岩石が飛んできた方向から適格に位置を把握し、一気に距離を詰めると共に技の準備をしていたのだ。
今回現れたビックリドンキーコングは、その名の通り体長5メートルはある巨大なゴリラであり、その巨体に似合わず俊敏な動きで、普通の猿以上の速さで木の上を移動する。普通の冒険者であれば、俊敏な動きで今回のような不意打ち攻撃に驚き、為すすべなくやられてしまう事も多いのだが、俺達に限っては当てはまらなかった。
そして同刻、イモコとは別方向に移動したカリーは、他の3体の位置を全て感知していたことから、巨大な弓を取り出すと、3匹同時に撃ち抜く。
「乱れうち【雷撃の矢】」
ズババァァン! ズババァァァン! ズババァァァン!!
「ゴッホォォォォ!!」
カリーが取り出した最強の弓【サジタリウス】から発せられる強烈な雷を纏う矢。カリーの乱れうちというスキルは、連続で大量の矢を放つことができるが、今回放った矢の本数は30本。そして、それぞれが10発づつ敵を貫くと、敵は一瞬で絶命した。むしろオーバーキルである。
この間、2秒。
強敵と呼ばれる魔獣4匹を相手にして、カリーとイモコはほんの2秒で戦闘を終わらせてしまった。やはりこのパーティは強すぎる。
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