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第三部 オーブを求めて

第六十八話 覚悟と答え

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「ふ~ん。なるほどなぁ、なんとなく何かを隠している気はしてたけど、そう言う事だったのか。っと、キタキタァ~!! こいつぁぁでけぇぞ! サクセス、網持ってくれ!」


 イモコから話を聞いた俺は、早速釣りをしているカリーに話した。
 どうやら、カリーは何かを感づいていたらしい。
 それでいて聞かなかったのは、イモコを信頼してなのか……それとも後で聞こうと思っていたのか……。


 って、でけぇな おい!


「カリー! 絶対、この網に入らないからそいつ! 無理だから!」


 カリーが釣り上げたのは、5メートルくらいありそうな巨大な魚。
 そして、近くに置かれていた網はせいぜい2メートルの魚が入るかどうか。
 とてもじゃないが、無理だ。


「っち! 仕方ねぇな。あれを使うか……。あれすっと釣りの醍醐味が無くなるから嫌なんだが……それでも、このマグロはどうしても食いてぇぇぇぇ!」


【アイスジャベリン】


 カリーは右手で竿を持ったまま、左手に槍を持ち、そしてそれを浮かんできたマグロに向けて投げる。


 ザシュッ!
 パキパキパキパキ


 すると、槍がささったマグロが一気に凍ってしまった。


「あぁ~あ。つまんね。おし、サクセス。ちょっとこの竿を思いっきり引き上げてマグロを甲板に上げてくれ。」


 そういうと、カリーは持っていた釣り竿を俺に手渡す。
 いきなり竿を渡されて焦った俺だが、既にマグロは凍っていて逃げることもない。


「ちょっ! おい! ったく、しょうがないなぁ。ほらよっと!」


 ドスン!!


 俺が渡された竿を思いっきり引っ張ると、冷凍マグロが宙を飛び、甲板に落下する。
 水の中にいるのを見るのと、まじかで見るのとではインパクトが違いすぎだ。
 5メートルクラスの魚はまじでヤバイ。


「ヒョォォォ! 大物だな、こりゃ。これで夕飯がリッチになるぜ。」


 カリーも釣り上げた魚を見て、大喜びだ。
 マグロって食べたことあったけかな?
 うまいのか?


「すげぇな、カリー。つか、こんなデカいの、何を餌に釣ったんだよ?」

「あぁ? さっきとれた小ぶりの魚だよ。っといっても、50センチはあるけどな。」

「すごっ!」


 よく見ると、カリーの近くに置いてある四角い箱には、結構な数の魚が入ってた。
 この短時間でどれだけ、魚釣るんだよ。
 釣り仙人か!

 って、そうじゃねぇ。
 そんな事を話にきたわけじゃねぇ。
 魚のインパクトが凄すぎて、うっかり忘れそうになったわ。


「それよりもカリー! イモコの事なんだけど……。」

「あぁ~。まぁなんだ、あんま気にする事ないんじゃね? だってよ、元々未開の土地に行くんだ、危険があって当然だろ? それによ、3年間待てって言われて待つ馬鹿がいるか? んなもん、ほっとけよ。」

「いや、だって。そしたらイモコ達の立場がまずいだろ?」

「だから、そういうのもひっくるめて、あいつらは覚悟してるんだろ? 何も俺達が全てを背負う必要なんてなんだよ。それはただの傲り(おごり)だぜ、サクセス。なんでも全部救えると思うなよ? それにな、そいつの問題はそいつが解決するべきであって、サクセスが気に病む必要なんてどこにもねぇんだ。」


 傲りか……。
 耳が痛いな。


「まぁ、言いたい事はわかるけど……それでも俺は守ってやりたいんだ。」

「守ってやりたいねぇ~。まぁ、いいさ。どうしたいかはその時、お前が自分で決めろサクセス。お前が決めた事に俺は反対する気はねぇよ。だけどな、一方的に誰かに守られるってのは、案外辛いもんだぜ? そこんところだけは、よく考えておきな。んじゃ、俺はもうちょい釣りしてっから。」


「え? ちょっとカリー! もう少し話を聞かせてくれよ!」

「サクセス……確かに人の意見を聞くのも大事だ。でもな、人は人。自分は自分だ。周りがどう言ったからじゃない、自分がどうしたいかだ。でもな、何でもやりたいようにやればいいってもんじゃない。軽く考えて行動すれば、必ず痛いしっぺ返しがくる。そして、その時大切なものを失っても、もう過去には戻れないんだよ。だからこそ、自分の行動に責任を持て。俺から言えるのはそれだけだ。後は自分で考えろ。」


 そういってカリーは対話を打ち切った。


 守られるだけ……か。
 そういえば、カリーはフェイルに守られて、今生きているんだっけか。
 自分の行動に責任を……。
 一人を守れば、他の誰かを犠牲にすることもあるってことなのか?
 でも、そんなんどうすればいいんだよ。
 誰か教えてくれよ。

 
 !?
 っは! そういうことか。


 誰かの意見に従って動くってことは、その結果がどうあっても誰かのせいにできる。
 そうすれば、自分が傷つくことはない。
 つまりは、自分から逃げるってことだ。

 そんな奴が誰かを救えるのか?
 それが俺が目指す強さか?
 いや、違う。
 それだけは言える。

 俺は、自分の行動に伴う責任に対して覚悟ができていない。 
 だから、いつも誰かに頼って逃げてきたんだ。
 馬鹿か俺は……。
 いつまで甘えているんだ。

 散々痛い目を見てきたじゃないか。
 傲るなよ! 俺!


 でもな、一度知った仲間がヤバイ状況になったら、やっぱり助けたいと思ってしまうよ。
 だからこそ、全てを救う為に力を欲してきた。
 でも力さえあれば、全てを救えると考えていたのは、やっぱりカリーが言うように俺の傲りかもしれない。
 単純に力があるだけでは、全てを救うなんて無理だ。


 じゃあ、俺はどうすればいい?
 俺は……間違っているのか?
 わからない……でもわからないからって人に頼りきっちゃだめだ。
 よく考えろ、俺!


 俺は答えがでないまま、その場を後にする。
 そして、ハンモックで寝ているゲロゲロを見つけて、俺も一緒にハンモックに身を投げた。


 俺がハンモックに乗った衝動でゲロゲロが目を開ける。


 げろぉ?(どうしたの? 元気ないね。)


「いや、なんかよくわからなくてさ。何が正しくて何が間違ってるか。」


 ゲロロォン ゲロゲロ!
(よくわからないけど、サクセスは間違ってないよ。でも困ったらみんなで助け合えばいいと思う!)


「助け合う……そうか。ありがとな、ゲロゲロ。もう少しだけ、ゆっくり考えてみるよ。」


 あぁ、なるほどな。
 誰かの意見に従うではなく、色んな意見を聞いて決断すればいい。
 自分だけで何とかしようとしなくていいのか。


 難しいな、本当に。


 でも助け合った上で、俺が何かを決断をした時、俺はその全てを背負うべきなんだ。
 そしてその覚悟が今までの俺には足りていなかった……。


 あぁ、そうか。
 そういうことか。

 同じように俺以外の人も、みんな多かれ少なかれ自分で決断し、その覚悟を決めている。
 それらを全て蔑ろ(ないがしろ)にして、俺が全てを救う、できなかったら俺のせいってのは、俺以外の人を見下しているのと変わらないな。


 そう考えると、何様だよ、俺は。
 それこそ、俺のエゴじゃないか。


 ありがとう、カリー。
 なんとなくだけど、本当の強さについて少しわかった気がするよ。
 確かにこれは、自分で考えて導き出さないと意味がないな。

 

 俺は一つの答えを出すと同時に、ゲロゲロを抱きしめながらハンモックに乗ったまま目を閉じる。
 そして俺は、いつの間にかそのまま眠ってしまうのであった。



「サクセスさん! 起きて下さい。もう夜ですよ。」

「んんん……あ、え? 暗! あれ? いつの間に寝てたんだ?」

「もう! 食堂でみなさん夕食を食べてますよ。今日はカリーさんが沢山魚を釣ったみたいで、魚料理メインみたいです。早く行きましょう。」


 暗闇の中でうっすら見えるシロマの可愛い顔。
 シロマは、寝ている俺の顔を覗き込むように近づけていた。


 おもわずチューしちゃいそうだったぜ。


「おっけ。今行く。ゲロゲロ、起きろ。飯だぞ!」


 ゲロォン?(飯……?)


 シュタッ!!


「わっ! ちょっとゲロちゃん! ゲロちゃんも寝てたんですか? いきなり飛んでこないで下さい!」


 飯の言葉に反応したゲロゲロは、ハンモックから勢いよく飛び出してシロマの横に着地すると、そのまま船内の扉目掛けてダッシュし始めた。


 ゲロオ!(飯!!)


「おぉい! ゲロゲロ、待てよ!」


 そして俺とシロマもまた、ゲロゲロを追って食堂に行くのであった。



 
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