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第三部 オーブを求めて

第四十三話 女神再び

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「それじゃあ、ちょっと行ってくるわ。午後には帰るから、ボッサンにはそう伝えておいて欲しい。」

「わかった……つぅ……頭が痛ぇぇ。俺もちょっと午前中は休んでおくわ。ということで、イモコ、お昼前に王様とギルドマスターがくるらしいから、頼んだ!」

 
 右手を頭に当てながら痛そうに伝えるカリー。
 どうやら昨日は飲み過ぎたようで二日酔いらしい。
 それでも、俺が出かけると言ったら凄い形相で起きて詰め寄ってくるんだから、大した根性である。


「師匠、王とギルドマスターの予定はわからないでござるが、とりあえず待っててもらった方がいいでござるか?」

「いや、忙しそうなら後で俺が冒険者ギルドに行くよ。簡単に用件だけ聞いてもらえるとありがたいかな。毎回、すまないね、イモコ。」

「いいでござる。このような雑務は弟子の務めでござる。ですが、稽古の件だけは忘れないで欲しいでござるよ。」

「オッケーオッケー。戻って時間があったら、少しやろうか。んじゃ、シロマ。行くぞ。」

「はい。それではみなさん、行って参ります。」


 ゲロ(僕も!!)


「あ、ごめんごめん。よし、ゲロゲロも一緒に行くよ。」


 俺はゲロゲロとシロマを連れて宿屋を出ると、予めキマイラの翼に登録してあるマーダ神殿に飛んでいく。
 戻る時は、この町をシロマに登録してもらったので、シロマに使ってもらう予定。


「お、なんだかそんな時間は経ってないのに、懐かしい気がするな。」


 2ヵ月ちょいぶりに戻って来たマーダ神殿の町。
 前回訪れた時は人で溢れかえっていたが、流石に今はそんなことはない。
 変わらず冒険者等はちょろちょろと歩いているが、兵士はほとんど見当たらなかった。


「大分人が減ったね。といっても、普通の町よりかは多いのかな?」

「そうですね。あの時は、人類の存続をかけた戦いで、各町の冒険者や兵士達がたくさんいましたからね、ところで向かっているのはサクセスさんが寝ていた宿屋ですか?」

「うん。そこで待ち合わせをしていたんだけど……もしかしたら俺に何かあったのかと思って、探しに行っているかもしれない。入れ違いは嫌だな。」


 一抹の不安を胸に、俺は宿屋に入る。


「すいませーーん、女将さん。マネアさん達は来ていますか?」


 宿屋に入ると早速フロントの女将さんに声を掛けた。


「あら、サクセス様。マネア様達はあれから一度も来ておりませんよ。その代わりに先月サクセス様宛の手紙が届いておりますので、どうぞご確認を。」


 女将はそう言って一通の手紙を俺に手渡す。

 とりあえず、その場で破って読むのも落ち着かないため、フロントの前にあるロビーのソファに座ってから封を破った。



 拝啓 サクセス様

 まず初めに、お約束を破ってしまった事をここに深くお詫びします。
 こちらは現在、無事に天空職であるバンバーラさんと会うことができました。
 そして、魔物化を解除する術も知ることができたのです。

 その為、しばらく3ヵ月程この町に来ることができなくなりました。
 何かありましたら、私宛に手紙で連絡を頂けると幸いです。
 それでは、サクセス様の旅の無事を遠くから祈っております。


 マネア



 ふむふむ。
 マネアは無事に魔物化の解除方法を知ることができたか。
 俺も、今回ゲロゲロをフュージョンしたことで、魔物化について少しわかった事があるが、この分なら報告はいらないかな。


「どうでした? サクセスさん。」

「あぁ、無事にこの世界にいる天空職の人と出会えたらしい。魔物化の解除方法も分かったみたいだ。」

「本当ですか! 良かったです。これでサクセスさんも、自分の事に集中できますね。」

「そうだな。今日のところは、現状を記した手紙を書いて女将に渡しておこうと思う。でも、一度会って話し合う事も必要だと思うから、次に返信の手紙が来たら日にちを決めて会う事にするよ。」

「それがいいですね。ところで、時間が大分余っちゃいましたけど、折角だから女神様に会いにいきませんか?」


 えぇ~~。
 どうすっかな、あの駄女神に今会った所でなぁ……。


「ダメ……ですか?」


 シロマが残念そうな顔で俯いている。
 
 うーむ、仕方ない。
 特に会いたくはないが、シロマを悲しませるのも嫌だし行くか。


「わかった。じゃあ行こうか。シロマ。」

「はい!」


 とりあえず俺は道具屋に赴き、紙と封筒を手に入れると、マネア宛に手紙を書いて女将に渡した。

 手紙に書いた内容は、新しく仲間が入った事。
 リヴァイアサンという化け物と戦った事。
 そしてガンダッダを討伐したこと。
 最後に、これからサムスピジャポンという町に向かう事。

 この4点だ。


 現在地を知らせておけば、何かあった時に向こうも把握できるだろう。

 ちなみに、女将には他にも2通の手紙を渡した。
 イーゼとリーチュン宛である。
 二人にも、俺の軌跡を知らせる事で、再会した時にスムーズになるはずだ。

 俺は二人を信じている。

 いつになるかはわからないが、きっと試練を乗り越えてこの世界に戻ってくるはずだ。
 だからこそ、俺は二人が戻ってくるまでは、こまめに手紙を書こうと決めるのであった。


「さて、用事も済んだし、神殿に行くかな。」


 まだお昼にはちょっと早すぎる。
 神殿に行って、お参りすれば丁度いい時間だった。

 それから俺達は、ゆっくり神殿まで歩いて向かい、女神の間に辿り着く。


「サクセスさん、私から挨拶に行ってもよろしいですか?」

「あぁ、かまわないよ。というか、俺は別にいかなくてもいいし……。」

「ダメですよ! ちゃんとサクセスさんも挨拶はしてください。」

「はーい。わかったよ。じゃあシロマが終わったら一応挨拶だけはするわ。」


 シロマは俺を戒めると、女神像の前まで行き、前回と同じ形で祈りを捧げた。


「女神様。無事、試練を乗り越えて天空職に転職することができました。ありがとうございます。」


「シロマさん。よくぞ無事にお戻りになりました。こんなに早く戻って来るとは思いませんでした。過酷な試練をよくぞ乗り越えましたね。今後、その力を誤った方向に使わぬよう、肝に銘じて下さい。あなたの行く末に女神の加護を与えます。」


 シロマは女神から言葉が返ってきたことに驚きつつも、その言葉を心に深く刻んだ。
 シロマが身につけた力は、人の範疇を越えている。
 故に、女神様のいうとおり、この力は無暗に使ってはならない。

 それを再度認識するのであった。


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