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第三部 オーブを求めて

第十二話 古龍狼

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 ゲロゲロを抱いた瞬間、ゲロゲロのステータスが俺の脳裏に表示される。


 エンシェントドラゴンウルフ レベル1

 攻撃力 500
 防御力 500
 素早さ 500
 知力  500

 スキル ライトブレス ホワイトシャウト ディバインクロー ホーリークラッシャー 自由変化


「マジか! 種族名恰好良すぎだろ! つか、ゲロゲロ、めっさつえぇぇ!」


 げろぉ?(どうしたの?)


「いや、今ゲロゲロのステータスがわかったんだけど、めちゃくちゃ強くなってるぞ。スキルも全部知らないモノばかりだし……。」


 ゲロォォォ!(僕強くなった!? ヤッター!)


「あぁ、でもそんな事は今はどうでもいい。俺はゲロゲロが生き返ってくれたことが嬉しいんだ。本当に……本当にありがとう……。」


 ゲロォォ(サクセス泣かないで! 僕はずっと一緒だったよ?)


「わかってる。でも違うんだ。やっぱりこうやってちゃんと声を聞いて、肌に触れられる事が大事なんだ。また沢山美味しい物食べような。」


 ゲロ!(うん!)



 ボフン!



 ゲロゲロがそう返事をした瞬間、なぜかゲロゲロは、前と同じ小さくてモフモフの姿に戻る。



 !?



「え? 今何したの?」


 ゲロォォン ゲロゲロ(沢山食べるならこの姿の方がいい!)


「えぇ? その姿にもなれるのか? あ! スキルの自由変化って……まさか!?」


 ゲロロン(うん、何かね、僕選べるの! 最初は驚かせたくて、あの姿になった!)


「そうなのか! じゃあ戦闘以外はその姿でいてくれると助かる。さっきの姿だと、宿屋入れないしな。」


 予想外な事に、ゲロゲロは元の姿に戻ることができた。
 格好いいゲロゲロもいいけど、俺はやっぱりこのモフモフのゲロゲロが好きだ。


「あのさ……感動しているところ悪いけどさ、もういいか? そろそろ俺も色々聞いてもいいよな? フェイル。」


 その時、突然後ろから、さっきの冒険者に声をかけられた。
 今まで静かだったのは、空気を読んでくれていたようである。


「あぁ。なんかごめん、ところでフェイルってのは俺の事?」

「はぁぁ? お前何言ってんだ? お前以外にフェイルがいるはずないだろ。って、もしかして記憶喪失なのか?」

「いや、記憶喪失も何も、幼い頃からの記憶は全てあるけど。人違いじゃないかな?」

「いやいやいや、間違いなくお前はフェイルだよ。俺の事を覚えてないのか? カリーだよ! カリー! よく俺の事、ソウルフードとか言ってからかっていたじゃないか!」

「いや、まじで記憶ないわ。カリー? ライス?」

「ほら、やっぱり覚えてるじゃねぇか。こんな時に冗談言ってるんじゃねぇよ。どれだけ心配したと思ってるんだ! バンバーラ姉さんだって、ずっと悲しんでたんだぞ!」


 バンバーラ?
 カリー?
 誰それ?
 全く記憶にございません。


「申し訳ないけど、冗談を言っているつもりはないんだ。とりあえずさ、詳しく聞かせて欲しいけど、こんなところで立ち話もなんだから、一度馬車をここまで運んできてもいいか? 馬車の中でゆっくり話そうか。」


「そうか……。お前も警戒しているんだな。わかった、俺も手伝う。またどこかに行かれても困るしな。」


 そういって、カリーは俺の後ろに続いて、馬車を置いているところまで戻っていく。

 さっきまで色々変な事を言っていたが、なぜかあれ以降、カリーは口を閉ざしている。
 ちょいちょい、付近を見回していることから、何かを警戒している感じだ。

 そして、馬車のところまで着くと、それからは遠回りをしながらも、なんとかT坊が住んでいた穴まで馬車を運ぶことができた。
 日も暮れてきたことから、丁度いいし、穴の中で野営をしようかな。


「なぁ、ここならもういいだろ。じゃあ、話してくれ。何があったかをだ。」


 穴の中に入り、さっそく食事を始めると、遂にカリーが口を開き、質問してきた。


 だが、相変わらず話がかみ合わない。
 話してくれと言われても、何を話せばいいのやら……。
 

「なぁ、カリー。まず俺の名前はフェイルではなくてサクセスだ。俺はアリエヘンの町の近くにある小さな村で育ち、16歳になってから冒険者として旅に出た。多分、お前の言っているフェイルとは違う人物だと思う。だから、カリーの方から何があったかを詳しく話してくれ。それこそ、俺が記憶喪失という前提で話してくれた方が都合がいいな。」


 とりあえずありのまま正直に話した。
 なんとなくだが、違うと言っても信じてくれそうもない気がする。
 いずれにしても、何か抱えてる感じだし、暇つぶしも兼ねて詳しく聞いてみるか。


「そうか、そうだな。どうやらお前の記憶は何者かによって改竄(かいざん)されているんだな。わかった、最初から話すぞ。長くなるけど、最後まで聞いてくれよな。」


 そう話し始めるカリーの目は、少しだけ悲しみを含んでいるのであった。

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