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第二部 新たなる旅立ち
第三十五話 テイク・ツー
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「いやぁぁぁ!」
ガバっ!!
ビビアンは目覚めると、実家のペッドの中にいた。
全身からは嫌な汗が吹き出している。
ドガン!
「どうした!? ビビアン! 何があった!?」
父親がビビアンの叫び声を聞き、部屋に飛び込んできた。
「お、お父さん……。私……私……。」
「どうしたビビアン? 何があった? お父さんに話してみなさい。」
ビビアンは話せなかった。
当然である。
あんなとんでもない事を簡単に口になどできない。
そして、ふとベッドに置かれているカレンダーが目に入った。
このカレンダーは、サクセスを追いかけるために、その日になるまで毎日、その日が終わる度に×印をつけていたものだ。
そして、そのカレンダーに書かれている日付は、サクセスが村を出てから20日後である事を伝えてくれた。
良かった……。
夢だった……。
ほっとしたビビアンは、そのままベッドにグッタリと横たわる。
「どうしたっていうんだビビアン?」
「ごめんなさいお父さん。悪い夢を見て叫んでしまっただけだわ。心配させてごめんね。」
「いいんだよ。サクセス君がいなくなって、ビビアン元気なかったもんな。そうだ、今日はお父さんと一緒に山狩りでも行かないか? スカッとするぞ!」
「ありがとう。でも、今日はやめておくわ。少しこのまま寝たい気分なの。」
「わかった。でも気が変わったらいつでも言ってくれ。お前は俺の大事な娘なんだからな。」
それだけ言うと父親はビビアンの部屋から出て行った。
「こんな夢を見るなんて……不吉だわ。サクセスに何かあったんじゃ。」
すると今度は下から母親の声が聞こえてきた。
「ビビアーン! ビビアーン! お手紙来てるわよぉ~。誰かしらね? あ、サクセス君からだわ。」
ガバッ!
サクセスからの手紙と聞いて、一目散に一階に駆け降りた。
「どれ!? それね、貸して!」
母親の手に握られていた手紙を奪い取ると、また2階に駆け上がって、自分の部屋に入る。
封筒に書かれているサクセスの文字。
その手紙が間違いなくサクセスからの手紙である事を確信した。
すぅ~……はぁ~……。
「よし、開けるわ!」
心を落ち着けてから、手紙の封を開ける。
ビビアン様
ビビアン、元気してるか?
最後にあんな形で別れてしまったから、少し心配していたんだ。
ビビアンは寂しがりやだから、俺がいなくなって落ち込んでいるんじゃないかと……って俺が言える話じゃないな。
俺はさ、ずっとビビアンに守られてきた。
最初は嬉しかったよ。
でも、いつからかそんな自分が情けなくてさ……。
だから、ビビアンを守れる位強くなりたかったんだ。
「サクセス……そうだったんだ……。だから聞いても何も言ってくれなかったのね。でも、良かったわ。元気そうね。」
そこまで読んだビビアンは、さっきまでの不安から、サクセスから手紙が届いた事の嬉しさに変わり、笑みを漏らしていた。
そして、また続きを読み始める。
※続き
それでさ、とりあえず頑張ってみたんだ。
ずっと貯めていた300ゴールドで、ショボい装備買ってさ。
誰も俺みたいな弱そうな男の仲間になんかなってくれなくて、とにかく死ぬ気でスライムと戦ったさ。
でも、俺がやっと倒せたスライムは、大した金にならなくてね。
毎日パンの耳を少しかじって生活してたんだ。
ここで泣き言を言って帰れば、ビビアンに合わせる顔がないからな。
でもな、そんな俺に仲間が出来たんだ。
なんか俺が一人で苦労しているのを見て声をかけてくれた人達がいてさ。
これからその人達と一緒にダンジョンに行くことになる。
俺絶対強くなって、必ずビビアンを守れる男になるから!
だから待っててくれ!
サクセス。
「もう! サクセス! 無理しなくて良いのに! そっかぁ、サクセスは頑張ってるんだぁ。アタシの為に……。ふふふ。後十日ね、そしたらサクセスに会いに行けるわ。でも気をつけないとね、サクセスって見栄っ張りだから……。今度はあまり前に出ないようにしてあげようかしら。」
サクセスからの手紙を読み終えたビビアンは、手紙を抱きしめながら嬉しそうに微笑んでいる。
十日後が今から楽しみで仕方がない感じだ。
ビビアンが、手紙をもう一度封筒に入れて、ぶんぶんと振り回していると、案の定、封筒から入れたばかりの手紙が落ちてしまった。
「あれ? これなにかしら?」
それを拾おうとしたら、封筒の中にもう一枚手紙が入っていたらしく、それに気づく。
不思議に思いつつも、その手紙を手に取り内容を読んだ。
このたびは思いもかけないことで、まことに残念でなりません。お慰めの言葉もございませんが、どうかお力落としなさいませんように。
この手紙は、差出人が亡くなった時、その遺族の方等に冒険者ギルドから送られる手紙となります。
冒険者 サクセス 享年16歳
死亡場所 アリエヘン北側の森
遺体と冒険者カードにつきましては、この手紙が届く翌日にはご遺族までお届けする事となっております。
お悔やみ申し上げます。
…………。
…………。
「うそ……なんかの間違いだわ……。そんな……だって……。サクセスが死んだ? サクセスにもう会えない……。」
…………。
ビビアンは放心状態になった。
「サクセスのいない世界……。」
「サクセス……ごめんね。遅くなったけど、今……逢いにいくわ。」
そして花瓶の横に置いてあったハサミを手に取って、そのまま自分の首に切先をあてる。
ザシュ……。
ガバっ!!
ビビアンは目覚めると、実家のペッドの中にいた。
全身からは嫌な汗が吹き出している。
ドガン!
「どうした!? ビビアン! 何があった!?」
父親がビビアンの叫び声を聞き、部屋に飛び込んできた。
「お、お父さん……。私……私……。」
「どうしたビビアン? 何があった? お父さんに話してみなさい。」
ビビアンは話せなかった。
当然である。
あんなとんでもない事を簡単に口になどできない。
そして、ふとベッドに置かれているカレンダーが目に入った。
このカレンダーは、サクセスを追いかけるために、その日になるまで毎日、その日が終わる度に×印をつけていたものだ。
そして、そのカレンダーに書かれている日付は、サクセスが村を出てから20日後である事を伝えてくれた。
良かった……。
夢だった……。
ほっとしたビビアンは、そのままベッドにグッタリと横たわる。
「どうしたっていうんだビビアン?」
「ごめんなさいお父さん。悪い夢を見て叫んでしまっただけだわ。心配させてごめんね。」
「いいんだよ。サクセス君がいなくなって、ビビアン元気なかったもんな。そうだ、今日はお父さんと一緒に山狩りでも行かないか? スカッとするぞ!」
「ありがとう。でも、今日はやめておくわ。少しこのまま寝たい気分なの。」
「わかった。でも気が変わったらいつでも言ってくれ。お前は俺の大事な娘なんだからな。」
それだけ言うと父親はビビアンの部屋から出て行った。
「こんな夢を見るなんて……不吉だわ。サクセスに何かあったんじゃ。」
すると今度は下から母親の声が聞こえてきた。
「ビビアーン! ビビアーン! お手紙来てるわよぉ~。誰かしらね? あ、サクセス君からだわ。」
ガバッ!
サクセスからの手紙と聞いて、一目散に一階に駆け降りた。
「どれ!? それね、貸して!」
母親の手に握られていた手紙を奪い取ると、また2階に駆け上がって、自分の部屋に入る。
封筒に書かれているサクセスの文字。
その手紙が間違いなくサクセスからの手紙である事を確信した。
すぅ~……はぁ~……。
「よし、開けるわ!」
心を落ち着けてから、手紙の封を開ける。
ビビアン様
ビビアン、元気してるか?
最後にあんな形で別れてしまったから、少し心配していたんだ。
ビビアンは寂しがりやだから、俺がいなくなって落ち込んでいるんじゃないかと……って俺が言える話じゃないな。
俺はさ、ずっとビビアンに守られてきた。
最初は嬉しかったよ。
でも、いつからかそんな自分が情けなくてさ……。
だから、ビビアンを守れる位強くなりたかったんだ。
「サクセス……そうだったんだ……。だから聞いても何も言ってくれなかったのね。でも、良かったわ。元気そうね。」
そこまで読んだビビアンは、さっきまでの不安から、サクセスから手紙が届いた事の嬉しさに変わり、笑みを漏らしていた。
そして、また続きを読み始める。
※続き
それでさ、とりあえず頑張ってみたんだ。
ずっと貯めていた300ゴールドで、ショボい装備買ってさ。
誰も俺みたいな弱そうな男の仲間になんかなってくれなくて、とにかく死ぬ気でスライムと戦ったさ。
でも、俺がやっと倒せたスライムは、大した金にならなくてね。
毎日パンの耳を少しかじって生活してたんだ。
ここで泣き言を言って帰れば、ビビアンに合わせる顔がないからな。
でもな、そんな俺に仲間が出来たんだ。
なんか俺が一人で苦労しているのを見て声をかけてくれた人達がいてさ。
これからその人達と一緒にダンジョンに行くことになる。
俺絶対強くなって、必ずビビアンを守れる男になるから!
だから待っててくれ!
サクセス。
「もう! サクセス! 無理しなくて良いのに! そっかぁ、サクセスは頑張ってるんだぁ。アタシの為に……。ふふふ。後十日ね、そしたらサクセスに会いに行けるわ。でも気をつけないとね、サクセスって見栄っ張りだから……。今度はあまり前に出ないようにしてあげようかしら。」
サクセスからの手紙を読み終えたビビアンは、手紙を抱きしめながら嬉しそうに微笑んでいる。
十日後が今から楽しみで仕方がない感じだ。
ビビアンが、手紙をもう一度封筒に入れて、ぶんぶんと振り回していると、案の定、封筒から入れたばかりの手紙が落ちてしまった。
「あれ? これなにかしら?」
それを拾おうとしたら、封筒の中にもう一枚手紙が入っていたらしく、それに気づく。
不思議に思いつつも、その手紙を手に取り内容を読んだ。
このたびは思いもかけないことで、まことに残念でなりません。お慰めの言葉もございませんが、どうかお力落としなさいませんように。
この手紙は、差出人が亡くなった時、その遺族の方等に冒険者ギルドから送られる手紙となります。
冒険者 サクセス 享年16歳
死亡場所 アリエヘン北側の森
遺体と冒険者カードにつきましては、この手紙が届く翌日にはご遺族までお届けする事となっております。
お悔やみ申し上げます。
…………。
…………。
「うそ……なんかの間違いだわ……。そんな……だって……。サクセスが死んだ? サクセスにもう会えない……。」
…………。
ビビアンは放心状態になった。
「サクセスのいない世界……。」
「サクセス……ごめんね。遅くなったけど、今……逢いにいくわ。」
そして花瓶の横に置いてあったハサミを手に取って、そのまま自分の首に切先をあてる。
ザシュ……。
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