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第二部 新たなる旅立ち

第七話 釣り 対 釣り

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「おし、みんな準備はいいか?」

「アタイはオッケーよ!」
「後方に結界を張りましたので、敵を釣ったらこちらに。」
「サクセスさんにゲロちゃん。無理はしないでくださいね。」
 ゲロオ!!(いつでもいけるよ!)

 俺達は山を下りた先の岩場に陣地を張った。
 そして、目指すは森の中腹。
 そこに、現在沢山のモンスター達が集まりつつある。
 最初に見えたのは500匹程度であったが、降りている間にも続々と集まってきて、今では千匹近くになっていた。

 それなので、今回はモンスター集団の中までは行かずに、手前の奴らを倒す事で、できる限り数を減らす作戦だ。
 俺は早速能力解放を使い、ゲロゲロをキングフロッグウルフに変身させる。
 ゲロゲロの強さは、今回集まっているどのモンスターより強い。
 だが、それでも囲まれれば危険だ。

 それなので、本当は俺は自分の足で走った方が早いが、ゲロゲロに乗りながら戦うことにした。

「じゃあ、ゲロゲロ。行くぞ!」

 ゲロ!(あい!)

 ゲロゲロの素早さは早い。
 能力解放時は300を超えている。
 その為、敵の集まっている場所までかなり距離はあったが、10分もしない内に敵が見えて来た。

「お、最初はオークの集団か。ゲロゲロ! 駆けまわれ! 出会い頭に……斬る!」

 ゲロ(わかった!)

 目の前に見えるは、槍や剣を持ったオークたち。
 モンスターのくせに、鎧や武器を装備している。
 中心にいるのは、ハイオークか? それともオークキングか?
 多分、立派な装備をしている奴ほど、レベルの高いモンスターであろう。

 ウキャ! ウキャ!
 ギョ、ギョエエ!

 敵が俺達に気付いた。
 だが遅い!

 ゲロゲロはオーク達に一瞬で近づくと、俺は剣を薙ぎ払う。

 ファルファルファルファルッ!

 ズバッ! ズバッ! ズバッ!

 俺の斬撃は音を置き去りにした。
 どうのつるぎと違って、この剣はよく斬れる。
 俺は、オークの体や頭を一撃で一刀両断していく。

 ゲルゥゥゥ!!

 ゲロゲロが【おたけび】を使った。
 まものたちは おどろき すくみあがっている。

「ナイスだ! ゲロゲロ! 20秒したらここに戻れ!」

 俺はそう言うと、ゲロゲロから飛び降りて、一際豪勢な装備をしたオークに向かって飛び切りをした。

「お、お前らは何者だ!!」

 そいつは喋った。
 どうやら、オークキングのようだ。
 好都合!
 指揮系統を崩させてもらうぜ!

 ズバ!!

 オークキングは俺の空中斬りで、体の中心から防具ごと一刀両断された。
 その間にも、ゲロゲロは周りで戸惑っているオーク達を瞬殺していく。

 あれ? 俺達ってこんなに強いの?
 これ、俺らだけで全滅できるのでは?

 そう思った矢先に、ゲロゲロの足が凍った。

「ゲロゲロ!!」

 見ると、森の奥からお面を被ったシャーマンたちが魔法を唱えている。

 ゲロオ!(大丈夫!)

 ゲロゲロの体力は高いため、敵の氷魔法くらいじゃビクともしない。
 すぐに、氷を壊してシャーマンに襲い掛かっていった。

「待て! ダメだ!」

 確かにゲロゲロは強いが、一斉射撃を受けたら流石にきつい。
 しかし、俺の警告は間に合わずに、ゲロゲロは敵が散在している場所に入り込んでしまった。

「くそ、ダメだな。やっぱりゲロゲロに乗って戦わないと。」

 俺はゲロゲロを追った。
 追いしなに、近くのオークやハイオークを殲滅していく。
 そしてやっとゲロゲロにおいついた。

 見ると、ゲロゲロはギガントスライムの群に囲まれている
 最初に放ってきたシャーマンの魔法は、俺達がやろうとしていた釣りだった。

「ゲロゲロ! 戻れ!」

 俺は必死に叫ぶも、ゲロゲロは戦闘に夢中で俺の声に気付かない。
 ギガントスライムたち相手に、ゲロゲロは一匹で奮闘しているが、ところどころで飛んでくる魔法にダメージを負っていた。

「くそ、ディバインチャージはダメだな。ゲロゲロを巻き込んじまう。」

 俺は仕方なくそのまま、ゲロゲロに向かって走り出す。
 シャーマンの姿は見えない。
 だが近くに沢山いるはずだ。
 木の影から、こちらを狙っている。

「ゲロゲロ! こっちにこい!!」

 俺は叫びながらもギガントスライムを斬りつける。

 グニャ

 !?

 俺の攻撃に、ギガントスライムは一撃で倒れなかった。
 どうやらこいつは、斬撃に対する耐性が高いようである。
 しかも、斬りつけたダメージを、隣にいる赤色のギガントスライムブスが回復させている。

「やっかいだな。なら、これならどうだ!! 連撃!!」

 俺は目の前のギガントスライムとギガントスライムブスが邪魔でゲロゲロのところに向かえなかったことから、今度はブスの方を滅多斬りにした。
 回復役を先に潰すのは戦の定石。

「オラオラオラオラオラオラァァ!」

 流石に俺の連撃にブスは爆散した。

 その瞬間、俺の視界が暗くなる。

 影だった。

 ギガントスライムが大きく飛び上がり、俺を押しつぶそうとしたのだ。
 俺の防御力なら問題はなさそうだが、簡単につぶされる俺ではない。

「ディバインチャージ」

 俺は、上空に向けてディバインチャージで縦斬りした。
 ギガントスライムは、俺を押しつぶす瞬間に真っ二つに斬り裂かれ、爆散する。

「ゲロゲロ! 無事か!」

 すると、ゲロゲロの姿が見えた。
 思ったより怪我は少なかったが、この短時間にしては大分ダメージを負っている。

【ライトヒール】

 癒しの光がゲロゲロを包み込んだ。
 ゲロゲロの体にできた火傷等が一瞬で消える。

 ゲロ(ありがとう)

「前に出過ぎだゲロゲロ、俺を乗せて後退しろ。釣りは十分だ。」

 ゲロォォ(ごめん)

 俺はそういうと、再度ゲロゲロに飛び乗った。
 その瞬間にも俺に向かって、火や氷魔法が向かってくる。

 ゴウゥン! スパッ!

 だが、全て剣で切り伏せた。
 ここまでステータスに違いがあると、魔法も切れるみたいだ。
 ステータスのおかげか、装備のお蔭かわからないがけどな。

 俺はゲロゲロに飛び乗ると、一目散に仲間達のところに向かって駆け抜ける。
 すると、木々の間からシャーマンやシャーマンキングが姿を見せ始めた。

「何度も釣られるかよ!」

 俺はそう言うと、通り上にいる敵だけを斬り伏せて、他は無視をした。
 どうやらこのモンスター達はそれなりに頭がキレるらしい。
 深追いは禁物だ。

 そして俺達が逃走を始めると、案の定、森の中に散在していたモンスター達が俺達を追って走ってくる。
 その為、逃げる速度は抑えていた。
 離し過ぎたら、敵が俺達を見失っちまうからな。

 「見えたぞ! 目標地点だ。」

 俺達は最初に予定をしていた、森と山の間の広いスペースに辿り着いた。
 山側の岩場にはイーゼ達が見える。
 そして後方には300匹程のモンスターが俺達を追ってきていた。

 さっき俺達が倒したモンスターは100匹程度。
 つまり、まだ後方からどんどんモンスターが来る可能性が高い。

「サクセス様! こちらへ!」

 イーゼの声に俺は反応し、直ぐに結界の中に入った。
 
「遅くなった! すまない。」

「サクセスさん、怪我はないですか?」

「あぁ、俺は平気だ。思ったより敵の頭はキレる。みんな油断するなよ。」

「わかりました。とりあえず、私とイーゼさんの範囲攻撃で敵の数を減らします。余裕があれば、サクセスさんもお願いします。」

「わかった。イーゼも準備はいいか?」

「はい、いつでも大丈夫です。ここは任せてください。」

「よし、じゃあこれからみんなで一斉清掃だ。やるぞ!」

 迫りくるモンスターの大群。
 この後、俺達は更に壮絶な戦いを繰り広げるのであった。
 
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