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第一部 サクセス編(改稿版)
第一部 最終話 本当の冒険の始まり
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俺たちがしばらくその場で立ち尽くしていると、謁見の間の扉が開く。
「はぁはぁはぁ……これは……一体?」
その声の主はボッサンだった。
ボッサン達は、カジノで偽物のヌーの鏡を交換した後、特別VIP室に案内され、そこで暗殺されそうになる。
しかし、最初からそうなる事を想定していた為、すぐにその場を逃げ出し、今まで町中を逃げ回っていたのだ。
そして兵士達から逃げている際中、突然、城から天に向かって光の柱が昇っているのを見ると、胸騒ぎがしたため、城に向かう事を決めた。
そして現在、やっと謁見の間に入ってこれたのである。
ボッサン達が謁見の間に入ると、そこは壁も天井も破壊され、兵士達が無数に倒れていた。
その場で如何に激しい戦闘があったのかが窺える。
だがそこは、あまりに静かであった。
そこにいる誰もが、黙って天を眺めている。
まるで、何かを見送るかのように……。
未だに止まることのない涙がその目から溢れているサクセス達。
ボッサン達が入ってきたことすら気づかない。
その光景を見たシロマは、なぜかそこにいるリーチュンと、一緒にいるはずのちびうさがいない事に気付いた。
そして、ここでたった今、何があったかをなんとなく察する。
シロマは俺に近づいて行くと、恐る恐る何があったかを尋ねた。
「サクセスさん……もしかしてちびうささんは……?」
その声を聞き、ようやく俺はその場にボッサン達が入ってきたことに気付いた。
そして目に涙を浮かべながら振り返る。
「シロマか……無事だったみたいだな。すまない……俺は……俺は守れなかった。」
俺はなんとか声を絞り出して、それだけを伝えた。
すると、イーゼが隣にきて、俺の代わりに説明する。
「サクセス様は最善を尽くしましたわ。偽王は八天魔王という恐ろしい魔王であり、それをサクセス様は倒したのです。しかし戦闘中、私達と一緒に行動をしていたちびうさの父親と、途中でここに入ってきたちびうさちゃんが殺されてしまいました……。ですが! サクセス様は悪くありません! サクセス様はできる事全てをやり切りましたわ!」
イーゼは、強い語気で俺を慰めながら言った。
しかし、俺は自分を許すことができない……。
この結果をまだ認める事ができなかった。
「そう……でしたか。やはりちびうささんは、もう……。」
全てを理解したシロマも、それだけ言って黙ってしまった。
ガツッ!!
それを聞いていたボッサンは、俺に近づくと、突然俺の顔面をぶん殴ってきた。
「なんでそんな顔をしてやがる! お前たちは誰にもできない事をやったんだ。そしてマモルやヌーウの仇をとり、この国を救った、それだけは間違いねぇ! ちびうさもマモルも笑って天に上ったに違いないはずだ。なのに……お前らがそんな顔してたら、天国に逝っちまったあいつらが心配するだろ! だから無理でも笑え! こういう時は、笑うんだよ! あはははは。」
ボッサンはそういうと、自分も涙を流しながら笑い声をあげている。
その笑い声には、悲しみ溢れていた。
俺は顔面を殴られ、ボッサンの言葉の意味を考える。
「そうだ……確かにマモルは笑っていたよ。そうだな、あいつらの為にも……世界の為にも俺はここで立ち止まっているわけにはいかない!」
俺はそう言うと、未だに茫然としているリーチュンに近づいていく。
リーチュンの手には赤く光る綺麗な玉が残されていた。
レッドオーブである。
抱きしめていたちびうさが消えた時、リーチュンの手にレッドオーブだけが残されていたのだった。
俺は、リーチュンを何も言わずに抱きしめる。
ちびうさと一番長く一緒にいたのはリーチュンだった。
自分の妹のようにちびうさを可愛がり、だれよりもちびうさを大事にしていた。
だから俺は、そんなリーチュンにかける言葉は見つからない。
黙ってリーチュンを力強く抱きしめることしかできなかった。
「うさが……うさが行っちゃったよ。ねぇサクセス……アタイは……アタイは……。」
「あぁ、みんな逝っちまったな……。でも三人とも幸せそうな顔だった。リーチュン……お前は悪くない。悪いのは俺だ。辛い思いをさせてすまなかった。」
「違うの! サクセスじゃない! アタイはあれだけ言われていたのに……一瞬目を離してしまったの。アタイがちゃんと言われたとおり宿屋にうさを閉じ込めておけば……。こんなことにはならなかった!」
リーチュンは、俺の腕の中で泣きながら叫ぶ。
「そうだな。俺もリーチュンも守れなかったな。だけど……俺な。ちびうさの父親に言われたんだ。なんて言われたかわかるか?」
リーチュンは何も言わずに俺の腕の中で首を横に振る。
そして俺は続けた。
「こう言われたんだ。いつまでも死ぬ事もできず、来ることのない自分を待たせることが本当にちびうさにとって幸せだと思うか? ちびうさが次に生まれ変わった時、平和な世界であってほしい。その為に俺は戦うとな。」
リーチュンは黙って俺の言葉に耳を傾けた。
「俺は今やっとその言葉の意味を理解した。だから俺は戦う! 魔王を倒し、必ずこの世界を救って見せる! もうこんな悲しい事は起こらせない、だからリーチュン。こんな無力な俺だけど力を貸してほしい。一緒に世界を救ってくれ! 俺は……お前がいないとだめなんだ!」
俺は思いの全てをリーチュンにぶつける。
「こんな……役に立たないアタイでいいの? 約束一つも守ることができないアタイだよ?」
「あぁ、いい。俺にはリーチュンが必要だ。そして、シロマもイーゼも、みんな必要だ。俺一人じゃ何も救えない。だけどみんながいれば……俺は何度だって立ち上がることができる!」
「わかったわ。うん、アタイもサクセスと一緒にこの世界を守って見せる! そして平和な世界になったら、絶対生まれ変わったうさを見つけて、また一緒に遊んであげる! だから……もう泣かない!」
リーチュンは、手に持っていたレッドオーブを空に向けて大きく掲げると、それに誓うように言った。
「がっはっは! そうだよ、その顔だよ! マモルたちが見たかった勇者の姿はな! よし! 俺は決めたぞ! 俺は王になるぞ! そして一緒には行けねぇが、俺もお前たちと一緒にこの世界を救う為に力を尽くす! さっそく大臣に会ってくらぁ!」
ボッサンは、そういうと謁見の間から出て行く。
「みんな! 顔をあげてくれ。そして聞いてくれ。俺は今まで何の目的もなく、ただ冒険をしていただけだった。だが、これからは違う。俺の冒険の目的は世界を救うことだ。俺は強くなる、今はまだ不甲斐ない俺だけど、必ず強くなってみせる。だから……俺についてきてくれ! 頼む!」
俺は、みんなに向かって頭を下げる。
「サクセス様、お顔をあげてください。私の心は、一生サクセス様と共に生きることをずっと前から決めていますわ。サクセス様がどんなに拒んでも絶対離れませんわよ。」
イーゼは笑いながら俺に言った。
「私も……二度とこんな悲しい思いはしたくありません。だから、私の方からお願いします。私を連れて行ってください。そして一緒に世界を救わせてください。」
シロマは瞳に涙をためてお願いした。
そして……
「アタイは……アタイも絶対サクセスと一緒にこの世界を救ってみせるわ! だってうさと約束したもん! 絶対に絶対に救ってみせる!」
リーチュンは、決意のこもった目で叫んだ。
「みんな、ありがとう。よし、俺達の冒険は本当の意味で今日から始まった。絶対にみんなで世界を救おう。まずはマーダ神殿に向かうぞ、今まさにマーダ神殿は魔物の大群に襲われているかもしれない。一刻の猶予もない。疲れているところ悪いが、早速準備をしたら旅に出る、いいな?」
はい!!
俺がそういうと全員が返事をした。
そしてその場から立ち去ると、マーダ神殿に向かうことにするのだった。
俺達にとって、本当の冒険はこれから始まるのだった……。
第一部 【最弱装備からのはじまり】 完
※ 告知
ここまでお読みいただきありがとうございます。
この後、第二部に突入するのですが、第二部では別で書いている
ツンデレ女勇者は、チート装備を携えて大好きな幼馴染を探しに出る。(2022年4月8日より公開)
というお話と途中で合流します。
こちらはサクセスの幼馴染で、サクセスを大好きな女勇者がメインのストーリーとなっています。
読まなくても話は繋がりますが、是非読んでいただくとより深く楽しめるものとなると思います。
今後とも宜しくお願いします。
「はぁはぁはぁ……これは……一体?」
その声の主はボッサンだった。
ボッサン達は、カジノで偽物のヌーの鏡を交換した後、特別VIP室に案内され、そこで暗殺されそうになる。
しかし、最初からそうなる事を想定していた為、すぐにその場を逃げ出し、今まで町中を逃げ回っていたのだ。
そして兵士達から逃げている際中、突然、城から天に向かって光の柱が昇っているのを見ると、胸騒ぎがしたため、城に向かう事を決めた。
そして現在、やっと謁見の間に入ってこれたのである。
ボッサン達が謁見の間に入ると、そこは壁も天井も破壊され、兵士達が無数に倒れていた。
その場で如何に激しい戦闘があったのかが窺える。
だがそこは、あまりに静かであった。
そこにいる誰もが、黙って天を眺めている。
まるで、何かを見送るかのように……。
未だに止まることのない涙がその目から溢れているサクセス達。
ボッサン達が入ってきたことすら気づかない。
その光景を見たシロマは、なぜかそこにいるリーチュンと、一緒にいるはずのちびうさがいない事に気付いた。
そして、ここでたった今、何があったかをなんとなく察する。
シロマは俺に近づいて行くと、恐る恐る何があったかを尋ねた。
「サクセスさん……もしかしてちびうささんは……?」
その声を聞き、ようやく俺はその場にボッサン達が入ってきたことに気付いた。
そして目に涙を浮かべながら振り返る。
「シロマか……無事だったみたいだな。すまない……俺は……俺は守れなかった。」
俺はなんとか声を絞り出して、それだけを伝えた。
すると、イーゼが隣にきて、俺の代わりに説明する。
「サクセス様は最善を尽くしましたわ。偽王は八天魔王という恐ろしい魔王であり、それをサクセス様は倒したのです。しかし戦闘中、私達と一緒に行動をしていたちびうさの父親と、途中でここに入ってきたちびうさちゃんが殺されてしまいました……。ですが! サクセス様は悪くありません! サクセス様はできる事全てをやり切りましたわ!」
イーゼは、強い語気で俺を慰めながら言った。
しかし、俺は自分を許すことができない……。
この結果をまだ認める事ができなかった。
「そう……でしたか。やはりちびうささんは、もう……。」
全てを理解したシロマも、それだけ言って黙ってしまった。
ガツッ!!
それを聞いていたボッサンは、俺に近づくと、突然俺の顔面をぶん殴ってきた。
「なんでそんな顔をしてやがる! お前たちは誰にもできない事をやったんだ。そしてマモルやヌーウの仇をとり、この国を救った、それだけは間違いねぇ! ちびうさもマモルも笑って天に上ったに違いないはずだ。なのに……お前らがそんな顔してたら、天国に逝っちまったあいつらが心配するだろ! だから無理でも笑え! こういう時は、笑うんだよ! あはははは。」
ボッサンはそういうと、自分も涙を流しながら笑い声をあげている。
その笑い声には、悲しみ溢れていた。
俺は顔面を殴られ、ボッサンの言葉の意味を考える。
「そうだ……確かにマモルは笑っていたよ。そうだな、あいつらの為にも……世界の為にも俺はここで立ち止まっているわけにはいかない!」
俺はそう言うと、未だに茫然としているリーチュンに近づいていく。
リーチュンの手には赤く光る綺麗な玉が残されていた。
レッドオーブである。
抱きしめていたちびうさが消えた時、リーチュンの手にレッドオーブだけが残されていたのだった。
俺は、リーチュンを何も言わずに抱きしめる。
ちびうさと一番長く一緒にいたのはリーチュンだった。
自分の妹のようにちびうさを可愛がり、だれよりもちびうさを大事にしていた。
だから俺は、そんなリーチュンにかける言葉は見つからない。
黙ってリーチュンを力強く抱きしめることしかできなかった。
「うさが……うさが行っちゃったよ。ねぇサクセス……アタイは……アタイは……。」
「あぁ、みんな逝っちまったな……。でも三人とも幸せそうな顔だった。リーチュン……お前は悪くない。悪いのは俺だ。辛い思いをさせてすまなかった。」
「違うの! サクセスじゃない! アタイはあれだけ言われていたのに……一瞬目を離してしまったの。アタイがちゃんと言われたとおり宿屋にうさを閉じ込めておけば……。こんなことにはならなかった!」
リーチュンは、俺の腕の中で泣きながら叫ぶ。
「そうだな。俺もリーチュンも守れなかったな。だけど……俺な。ちびうさの父親に言われたんだ。なんて言われたかわかるか?」
リーチュンは何も言わずに俺の腕の中で首を横に振る。
そして俺は続けた。
「こう言われたんだ。いつまでも死ぬ事もできず、来ることのない自分を待たせることが本当にちびうさにとって幸せだと思うか? ちびうさが次に生まれ変わった時、平和な世界であってほしい。その為に俺は戦うとな。」
リーチュンは黙って俺の言葉に耳を傾けた。
「俺は今やっとその言葉の意味を理解した。だから俺は戦う! 魔王を倒し、必ずこの世界を救って見せる! もうこんな悲しい事は起こらせない、だからリーチュン。こんな無力な俺だけど力を貸してほしい。一緒に世界を救ってくれ! 俺は……お前がいないとだめなんだ!」
俺は思いの全てをリーチュンにぶつける。
「こんな……役に立たないアタイでいいの? 約束一つも守ることができないアタイだよ?」
「あぁ、いい。俺にはリーチュンが必要だ。そして、シロマもイーゼも、みんな必要だ。俺一人じゃ何も救えない。だけどみんながいれば……俺は何度だって立ち上がることができる!」
「わかったわ。うん、アタイもサクセスと一緒にこの世界を守って見せる! そして平和な世界になったら、絶対生まれ変わったうさを見つけて、また一緒に遊んであげる! だから……もう泣かない!」
リーチュンは、手に持っていたレッドオーブを空に向けて大きく掲げると、それに誓うように言った。
「がっはっは! そうだよ、その顔だよ! マモルたちが見たかった勇者の姿はな! よし! 俺は決めたぞ! 俺は王になるぞ! そして一緒には行けねぇが、俺もお前たちと一緒にこの世界を救う為に力を尽くす! さっそく大臣に会ってくらぁ!」
ボッサンは、そういうと謁見の間から出て行く。
「みんな! 顔をあげてくれ。そして聞いてくれ。俺は今まで何の目的もなく、ただ冒険をしていただけだった。だが、これからは違う。俺の冒険の目的は世界を救うことだ。俺は強くなる、今はまだ不甲斐ない俺だけど、必ず強くなってみせる。だから……俺についてきてくれ! 頼む!」
俺は、みんなに向かって頭を下げる。
「サクセス様、お顔をあげてください。私の心は、一生サクセス様と共に生きることをずっと前から決めていますわ。サクセス様がどんなに拒んでも絶対離れませんわよ。」
イーゼは笑いながら俺に言った。
「私も……二度とこんな悲しい思いはしたくありません。だから、私の方からお願いします。私を連れて行ってください。そして一緒に世界を救わせてください。」
シロマは瞳に涙をためてお願いした。
そして……
「アタイは……アタイも絶対サクセスと一緒にこの世界を救ってみせるわ! だってうさと約束したもん! 絶対に絶対に救ってみせる!」
リーチュンは、決意のこもった目で叫んだ。
「みんな、ありがとう。よし、俺達の冒険は本当の意味で今日から始まった。絶対にみんなで世界を救おう。まずはマーダ神殿に向かうぞ、今まさにマーダ神殿は魔物の大群に襲われているかもしれない。一刻の猶予もない。疲れているところ悪いが、早速準備をしたら旅に出る、いいな?」
はい!!
俺がそういうと全員が返事をした。
そしてその場から立ち去ると、マーダ神殿に向かうことにするのだった。
俺達にとって、本当の冒険はこれから始まるのだった……。
第一部 【最弱装備からのはじまり】 完
※ 告知
ここまでお読みいただきありがとうございます。
この後、第二部に突入するのですが、第二部では別で書いている
ツンデレ女勇者は、チート装備を携えて大好きな幼馴染を探しに出る。(2022年4月8日より公開)
というお話と途中で合流します。
こちらはサクセスの幼馴染で、サクセスを大好きな女勇者がメインのストーリーとなっています。
読まなくても話は繋がりますが、是非読んでいただくとより深く楽しめるものとなると思います。
今後とも宜しくお願いします。
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