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第一部 サクセス編(改稿版)

43 伝説の装備

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「サクセスさん! イーゼさんの意識が戻りました!」 


 俺が魔王の影を倒して、冒険者カードを見ていると後ろからシロマの声が聞こえる。
 どうやらイーゼは無事回復したようだ。
 俺は急いでイーゼに駆け寄る。 


「イーゼ! 大丈夫か!? まだ苦しいところはあるか?」 

「はい、おかげさまで大分良くなりました。」


 そう言ってイーゼは立ち上がろうとするも、やはり消耗が激しいのか、フラついて俺に寄りかかった。 


「無理するな、イーゼ。お前のお陰で俺は助かった、ありがとう……。でもな、俺の為に命をかけないでくれ……お前が死んだら俺は一生後悔する。だからもうあんな事はやめてくれ、お願いだ。」


 俺は、イーゼを受け止めながら優しく伝える。 


「サクセス様は流石です。やはり私のサクセス様です。魔王と名前のつく敵を倒せるのは、勇者しかいないと言われておりますわ。それを倒したのですから、周りがどう言おうと、私にとって勇者はサクセス様です。それに、もしも私が死んでサクセス様に一生思ってもらえるなら、それも悪くないですわね。」

「馬鹿! そんな事俺は、絶対に許さない! 俺が絶対守ってやる!」 


 そう言って、俺はイーゼを強く抱きしめた。
 俺はもう二度と、仲間を危険な目には合わせたくない!

 しかし、本当にイーゼは無茶をする。
 二度とやめて欲しい……と言っても、またやるだろうな。
 俺が同じ立場でも多分そうする。
 ならば、俺は強くならなければならない。
 もう誰も傷つけない為に……。 


「ほら、もういいでしょ! 二人とも離れて! それより宝箱を確認するわよ。」 


 リーチュンが俺とイーゼを引き離す。
 でも、その目には涙の跡が見えた。
 どうやらリーチュンも、大分心配していたようだ。

 それにしても、少し早いんじゃないか?
 もう少しラブシーンをさせてくれても……。
 今の雰囲気なら二度目のキスも許されたかもしれないのに……。
 いかんいかん!
 まだやる事が終わってないじゃないか。
 よし、財宝の確認だ!


「イーゼ……」 

「インパルス……サクセス様に抱いてもらって回復しましたからこの位は平気です。」

 イーゼは、俺が名前を呼んだだけで、俺が何を言おうとしたか察したようだ。
 やはり、イーゼば凄い。
 だがこれだけは言わせてくれ!

 俺はまだ抱かせてもらってないぞ!


「お、おう。あっ、両方青だな、みんなで一緒に中身を確認するか。」


 俺がそういうと、全員で宝箱の前に立つ。 


「開けるぞ!」


 俺が宝箱を開けると、中に入っていたのは……黄色い丸い玉だった。

 なんだこれ?

 俺は不思議に思い、その玉に触れる。


「イエローオーブ?」

「伝承で聞いたことがあります。六つの色のオーブを集めることで、空から龍が現れて願いを叶えてくれるとか……。昔の勇者はその龍に乗って魔王と戦ったようです。」


 俺が呟いた疑問にシロマが答えた。

 なるほど。
 つまりこれがアバロン王がマンダ神殿に運んでいた宝か。
 今、全て繋がった。
 だから、魔王が先手を打ってきたわけか。
 つまり他のオーブも魔王に狙われているかもしれない。
 これはアバロン王に伝えないとな。 


「じゃあもう一個はアタイが開けるね!」

 リーチュンはそう言うと、もう片方の宝箱の蓋を開けた。
 安全とは言え、勝手に開けないでほしい……。

 するとリーチュンがヤバイ物を宝箱から取り出す。 


「なんだろこれ? 紐?」


 そ、それは……。
 まさか……あの伝説の……。 


「か、貸してくれリーチュン! ダメだ! これはダメなやつだ!」


 俺は慌ててリーチュンからそれを奪った。
 そのアイテムは……。


【やっべぇ水着】 防御力3 スキル 魅了 レアリティH  


 初めて見た。
 レアリティがアルファベットだぞ!?
 まぁ、それはいい。
 それよりも……これは……。

 昔親父から聞いたことがある。
 伝説の装備について……。
 この装備は女性が装着すると、目の前の男を狼に変えてしまうらしい。

 こんな素敵な……こほん、やばいものをうちの女神に持たせるわけにはいかない。
 アバロン王は、一体何を考えてるんだ!
 俺と気が合いそうだっぺ!


「サクセス様、よろしければ私にも、それを見せていただけませんか?」 

「ダメだ! イーゼなら尚更ダメだ! これは俺が後で直々に王に返す。王の誇りは俺が守る!」


 まだ会ったことのない同志よ。
 俺はお前の誇りを守りきってみせるぜ!
 だから、いつか貸してこれを貸してくれ。


「サクセスさん、鼻血が出てます。大丈夫ですか!?」


 童貞には刺激が強すぎたようだ。
 見るだけで負傷させるとは、流石は伝説の装備。

 するとリーチュンが俺の服を引っ張る。 


「今更だけど、この装備どうしたの? 凄い格好いいじゃん!」 

「これな、なんか熟練度が溜まったとかで、装備が進化したらしい。俺にもよくわからん!」

「私にもわかりませんが……素敵ですわ。どんな装備をつけてもサクセス様は素敵でしたが、今はもう……たまりませんわぁぁ!!」


 イーゼが通常の変態に戻った。 


「真っ白い装備ですね。サクセスさんにお似合いです。」


 シロマは嬉しい事を言ってくれる。
 俺はまだ誰にも踏まれてない雪だからな……って!
 童貞馬鹿にすんな! 


「それと、俺の職業が聖戦士になっているんだが、誰か知らないか?」 

「すいません、聞いた事がありません。似たような職業だとパラディンという上位職はあるのですが……多分それとは別ですね。」


 どうやらシロマも知らないらしい。
 それなら当然俺にわかるはずがない。
 俺の知識は、親父から聞いたエロ話だけだ。

 俺たちがそんな話をしていると、塔の外から馬が駆ける音が聞こえてくる。


「思ったよりも早いな、多分アバロン軍だ。早速下に行って出迎えよう。」


 こうして俺達は、塔を降りていくのであった。
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