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ナシュルク解放戦
錝将軍同士の一騎打ち、其の二
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東の陸地からは戀王国軍。北西の水上からは王国連合の艦隊。
ゲルファン王国軍が籠る虎壟水塞は両方向からの攻撃を受ける状態にあった。
シュクーズはどちらにも意識を向け、持てる全ての戦力を動員して迎撃に当たる。
そうなると、水塞の細部にまで目が行き届かないのが現状。
「はっ。準備万端です。始めましょう」
「………………!」
事もあろうに、ゲルファン王国軍は水塞内部に間者を抱えていた。
歩隲が予め潜ませていた工作兵達と、彼等を援護するべく密かに潜入した慾彭だ。
彼等は気配と音を殺して火薬庫に入り、見張りや出入りする輸送兵を静かに仕留める。
「完了です。お願いします」
「………………!」
工作兵達は集積された火薬の傍に爆薬瓶を隠して配置し、導線に火を付けると速やかに慾彭の許へ戻った。
魔法陣を顕現していた慾彭は全員が揃っている事を確認した後、直ちに転移魔法を発動。紫色の光の粒子を残して虎壟水塞を後にする。
一方、我昌明と白葯の一騎討ちは三十合にも及んでいた。
「ゴハハハハァ!! まったくもって固いのぅ! しぶといのぅ!! 何度も復活する火山と戦っておるようで熱く燃えてくるのォォーー!!」
振り下ろした大矛が白銀槍に防ぎ止められ、魔力で衝撃を流した白葯を経由して城壁に振動が伝わり、またもや足場の一角が崩壊。両者の得物が衝突して銀色の火花が盛んに散る度に、周囲の城壁は見るも無残に変わり果てていく。
表面の敷石は大分前に剥がれて吹き飛び、今は下層に踏み固められた土、砂利、岩等が剥き出しになっている状態だった。
「全てが無駄だ。お前が如何に年甲斐なく矛を振るった所で、所詮は翁の悪足掻き。弱者に慣れ親しんだ刃が、大いなる武を象徴する俺に通じるとでも、思うのかっ!」
大矛を跳ね返した白葯は僅かに身を下げると同時に一瞬で構えを整え、多量の魔力を込めた白銀槍を次の一瞬で突き出す。
スフッ! と風を切る軽やかさに反し、その一突きは岩盤を容易に貫く程の威力があった。
「ぬうっ!?」
大矛で受け止めた我昌明は大きく仰け反り、次いで繰り出された突きで左頬を切られる。
首を傾げて躱す事に成功したが、あれは完全に喉元を狙った一撃だった。
「我昌明様っ!?」
かなり離れた場所で見守る護衛兵達が我昌明の一挙一動に反応しており、見る角度によっては我昌明の喉が貫かれたとも見れる一撃に、一際大きな声をあげた。
「ゴハハァーー!!」
「おおおっ! 我昌明様ァー! 流石にございまする!!」
だがそうなった後は、決まって我昌明が白葯を押し返し、動揺の声が歓声に変わる。
「ゴハハハハ!! 我輩の貫禄が一つ増えた程度で一々喚くな! お主等、待っとれぃ! 直ぐにこやつを討ち取って大歓声を上げさせてやるわ!!」
「おおっ! 我昌明将軍! 我昌明将軍! 我昌明将軍! 我昌明将軍! 我昌明将軍!」
「我昌明将軍! 我昌明将軍! 我昌明将軍! 熊将軍!」
「我昌明将軍! 我昌明将軍! 我昌明将軍! うおおぉぉーー!!」
「誰じゃい、今熊って言った奴は。我輩は王国連合のマスコット兎だ」
言った傍から大歓声を上げている件について、当の我昌明は馬鹿者共と豪快に笑う。
然し、相対する白葯はそれが気に入らない様子で仏頂面を作る。
我昌明が簡単に倒せる相手ではないと理解しているが、それでも己の武力に絶対の自信を持つ彼は、弱者と一緒にアホな事をする我昌明と自分が互角である事実に苛立っていた。
「ふっ……見れば見るほど理解に苦しんどるのぉ! まぁ貴様の気持ちも分かるぞ。過去の我輩も、今の貴様と同じであったからなぁ!」
「減らず口を……ジオ・ゼアイ・ナイトに敗れて命惜しさに敵の狗となったお前が、私と同じ筈がないだろう」
「ふん……命惜しさ――かっ!」
瞬きの間に間合いを詰めた白葯の白銀槍を弾く我昌明。
彼がお返しとばかりに切り返せば、白葯はさっと防御を固めて威力を最小限に抑えながら後退る。その速さたるや、我昌明から繰り出される次の刃が空ぶる程だ。
防御はできても追撃を掛けられない我昌明と、速攻を以ても決定打を叩き込めない白葯。
両者の一騎討ちは終始これであった。
「ふん……まぁな、それに関してはなんにも言えんわ。何しろ負ける時が死ぬ時だと心に決めて戦ってきたのに、いざ負けた時にはこの世に未練が残ったのだからな」
肩を回して大矛を構え直す我昌明。
彼は白葯の言い分に意を唱えず、寧ろ戦いの手を休めて語りだした。
「あれは新鮮だったわ。生まれてこの方、戦争一筋に生きてきた男がそれ以外に生き甲斐を感じた瞬間、見える景色が変わったのだ。……人は恋をすれば世界が美しく見えると言うが、正にそれよ」
この男は戦場にあって何を浮わついた事を言っているのだ。
あらゆる欲を捨ててまで強さを求め続けた純粋な狂戦士・白葯には、我昌明の言わんとする事が百分の一も理解できなかった。
やっと表情を崩した彼からは、盛大な呆れと怒りが半々に窺い知れた。
「恋など、愛など、それは戦士に不要な存在に他ならない。…………何故お前は、純粋な戦士のままでいなかったのだ。聞くに相応しく、語るに心躍らせる、惰唖王国の破壊神であった方がよっぽど美しかったぞ!」
戀王国の前身国家・惰唖王国。我昌明は独立戦争序盤まで、同国の錝将軍だった。
「ふん、これまた懐かしい呼び名を言いよるわ。それと勘違いするでない。我輩の心躍らせたる恋は、貴様が思うような軽薄なものではない」
我昌明は大矛を地面に突き立てると、鎧の中に収めている長く清らかな茶髭を外に出し、感慨深い表情を浮かべながら徐に擦りだす。
その行動に白葯や護衛兵が唖然とする中、彼は大きく息を吸い込んで――
「我輩はァ!! 終わりなき大宴会に捧げる、人の笑顔に恋をしたァァーーーー!!!」
ドドガァーーーン!!!
虎壟水塞中に響き渡る馬鹿でかい咆哮を上げると同時に火薬庫が大爆発!
恐怖を抱かせる爆音と震動が水塞を大いに揺らし、内側から水門をぶち壊す!
事情を知らぬ両軍の兵士達は実体化した我昌明の覇気が水門を爆破したと勘違い。
主にゲルファン王国兵が、其処ら中で我昌明を化物扱いし始める。
こうやってまた、彼はマスコットキャラから遠ざかっていくのだ。
「何というタイミングの良さだ! 流石は慾彭! 口で語らず腕で語る最高の仕事人!!
――全軍に告ぐ!! 我昌明の名を高らかに叫ぶのだ!! 敵の心を穿ってやれェ!!」
『我昌明将軍! 我昌明将軍! 我昌明将軍! 我昌明将軍! 我昌明将軍! うおおぉぉーー!!』
帰陣した慾彭に親指を向けたナイトは、大熊の咆哮と水門破壊に便乗して敵の士気をズタボロにしてやろうと号令を下す。
子熊達の士気は爆発的に跳ね上がり、彼等は一様に雄叫びを上げて突撃を開始した。
「ゴハハハハァーー!! 盛り上がってきたわぃ!! 白葯! 守るべき存在を持たぬ貴様は弱い! 貴様は本当の強さを知らぬのだ! それを今から、この豪牙天剛・我昌明様が教えてやるわ!!」
戦場を席巻する熱風は仲間達のエールを我昌明の心に直に届け、笑わざるを得なくなった我昌明にもはや敵はない。
彼の本能は決着の時を感じ取り、握り直した大矛に最大の闘気が込められた。
「…………お前の境遇など知ったことではない。お前はただの死に損ない。俗欲に惑わされ、生きながらにして既に死んでおる哀れで虚しい翁に過ぎん。故にお前の語る強さは強さに非ず、本当の強さとは他を圧倒し続ける容赦なき武力!」
「ふっ……容赦なき武力か! その程度の低脳であるから、貴様はラエルの坊に負けたのよ」
「…………!!」
白葯が眉根を寄せるや否や、瞬迅極めし槍技が繰り出された。
明らかなる怒り、明らかなる焦り、明らかなる憎悪が、彼の顔一面に浮かんでいた。
「だから負けたっつっとろうがァーーー!!!」
だが激情込められし白銀槍を、我昌明は右手に持った大矛で弾き返す。
弾き返して、大矛と同時に繰り出した左の鉄拳で白葯の顔面に思いっきり殴り掛かり、咄嗟に顕現させた魔障壁を易々と打ち破って盛大に吹き飛ばした。
「ゴハハハハァーーーー!!! 大・爽・快!!!」
ゲルファン王国軍が籠る虎壟水塞は両方向からの攻撃を受ける状態にあった。
シュクーズはどちらにも意識を向け、持てる全ての戦力を動員して迎撃に当たる。
そうなると、水塞の細部にまで目が行き届かないのが現状。
「はっ。準備万端です。始めましょう」
「………………!」
事もあろうに、ゲルファン王国軍は水塞内部に間者を抱えていた。
歩隲が予め潜ませていた工作兵達と、彼等を援護するべく密かに潜入した慾彭だ。
彼等は気配と音を殺して火薬庫に入り、見張りや出入りする輸送兵を静かに仕留める。
「完了です。お願いします」
「………………!」
工作兵達は集積された火薬の傍に爆薬瓶を隠して配置し、導線に火を付けると速やかに慾彭の許へ戻った。
魔法陣を顕現していた慾彭は全員が揃っている事を確認した後、直ちに転移魔法を発動。紫色の光の粒子を残して虎壟水塞を後にする。
一方、我昌明と白葯の一騎討ちは三十合にも及んでいた。
「ゴハハハハァ!! まったくもって固いのぅ! しぶといのぅ!! 何度も復活する火山と戦っておるようで熱く燃えてくるのォォーー!!」
振り下ろした大矛が白銀槍に防ぎ止められ、魔力で衝撃を流した白葯を経由して城壁に振動が伝わり、またもや足場の一角が崩壊。両者の得物が衝突して銀色の火花が盛んに散る度に、周囲の城壁は見るも無残に変わり果てていく。
表面の敷石は大分前に剥がれて吹き飛び、今は下層に踏み固められた土、砂利、岩等が剥き出しになっている状態だった。
「全てが無駄だ。お前が如何に年甲斐なく矛を振るった所で、所詮は翁の悪足掻き。弱者に慣れ親しんだ刃が、大いなる武を象徴する俺に通じるとでも、思うのかっ!」
大矛を跳ね返した白葯は僅かに身を下げると同時に一瞬で構えを整え、多量の魔力を込めた白銀槍を次の一瞬で突き出す。
スフッ! と風を切る軽やかさに反し、その一突きは岩盤を容易に貫く程の威力があった。
「ぬうっ!?」
大矛で受け止めた我昌明は大きく仰け反り、次いで繰り出された突きで左頬を切られる。
首を傾げて躱す事に成功したが、あれは完全に喉元を狙った一撃だった。
「我昌明様っ!?」
かなり離れた場所で見守る護衛兵達が我昌明の一挙一動に反応しており、見る角度によっては我昌明の喉が貫かれたとも見れる一撃に、一際大きな声をあげた。
「ゴハハァーー!!」
「おおおっ! 我昌明様ァー! 流石にございまする!!」
だがそうなった後は、決まって我昌明が白葯を押し返し、動揺の声が歓声に変わる。
「ゴハハハハ!! 我輩の貫禄が一つ増えた程度で一々喚くな! お主等、待っとれぃ! 直ぐにこやつを討ち取って大歓声を上げさせてやるわ!!」
「おおっ! 我昌明将軍! 我昌明将軍! 我昌明将軍! 我昌明将軍! 我昌明将軍!」
「我昌明将軍! 我昌明将軍! 我昌明将軍! 熊将軍!」
「我昌明将軍! 我昌明将軍! 我昌明将軍! うおおぉぉーー!!」
「誰じゃい、今熊って言った奴は。我輩は王国連合のマスコット兎だ」
言った傍から大歓声を上げている件について、当の我昌明は馬鹿者共と豪快に笑う。
然し、相対する白葯はそれが気に入らない様子で仏頂面を作る。
我昌明が簡単に倒せる相手ではないと理解しているが、それでも己の武力に絶対の自信を持つ彼は、弱者と一緒にアホな事をする我昌明と自分が互角である事実に苛立っていた。
「ふっ……見れば見るほど理解に苦しんどるのぉ! まぁ貴様の気持ちも分かるぞ。過去の我輩も、今の貴様と同じであったからなぁ!」
「減らず口を……ジオ・ゼアイ・ナイトに敗れて命惜しさに敵の狗となったお前が、私と同じ筈がないだろう」
「ふん……命惜しさ――かっ!」
瞬きの間に間合いを詰めた白葯の白銀槍を弾く我昌明。
彼がお返しとばかりに切り返せば、白葯はさっと防御を固めて威力を最小限に抑えながら後退る。その速さたるや、我昌明から繰り出される次の刃が空ぶる程だ。
防御はできても追撃を掛けられない我昌明と、速攻を以ても決定打を叩き込めない白葯。
両者の一騎討ちは終始これであった。
「ふん……まぁな、それに関してはなんにも言えんわ。何しろ負ける時が死ぬ時だと心に決めて戦ってきたのに、いざ負けた時にはこの世に未練が残ったのだからな」
肩を回して大矛を構え直す我昌明。
彼は白葯の言い分に意を唱えず、寧ろ戦いの手を休めて語りだした。
「あれは新鮮だったわ。生まれてこの方、戦争一筋に生きてきた男がそれ以外に生き甲斐を感じた瞬間、見える景色が変わったのだ。……人は恋をすれば世界が美しく見えると言うが、正にそれよ」
この男は戦場にあって何を浮わついた事を言っているのだ。
あらゆる欲を捨ててまで強さを求め続けた純粋な狂戦士・白葯には、我昌明の言わんとする事が百分の一も理解できなかった。
やっと表情を崩した彼からは、盛大な呆れと怒りが半々に窺い知れた。
「恋など、愛など、それは戦士に不要な存在に他ならない。…………何故お前は、純粋な戦士のままでいなかったのだ。聞くに相応しく、語るに心躍らせる、惰唖王国の破壊神であった方がよっぽど美しかったぞ!」
戀王国の前身国家・惰唖王国。我昌明は独立戦争序盤まで、同国の錝将軍だった。
「ふん、これまた懐かしい呼び名を言いよるわ。それと勘違いするでない。我輩の心躍らせたる恋は、貴様が思うような軽薄なものではない」
我昌明は大矛を地面に突き立てると、鎧の中に収めている長く清らかな茶髭を外に出し、感慨深い表情を浮かべながら徐に擦りだす。
その行動に白葯や護衛兵が唖然とする中、彼は大きく息を吸い込んで――
「我輩はァ!! 終わりなき大宴会に捧げる、人の笑顔に恋をしたァァーーーー!!!」
ドドガァーーーン!!!
虎壟水塞中に響き渡る馬鹿でかい咆哮を上げると同時に火薬庫が大爆発!
恐怖を抱かせる爆音と震動が水塞を大いに揺らし、内側から水門をぶち壊す!
事情を知らぬ両軍の兵士達は実体化した我昌明の覇気が水門を爆破したと勘違い。
主にゲルファン王国兵が、其処ら中で我昌明を化物扱いし始める。
こうやってまた、彼はマスコットキャラから遠ざかっていくのだ。
「何というタイミングの良さだ! 流石は慾彭! 口で語らず腕で語る最高の仕事人!!
――全軍に告ぐ!! 我昌明の名を高らかに叫ぶのだ!! 敵の心を穿ってやれェ!!」
『我昌明将軍! 我昌明将軍! 我昌明将軍! 我昌明将軍! 我昌明将軍! うおおぉぉーー!!』
帰陣した慾彭に親指を向けたナイトは、大熊の咆哮と水門破壊に便乗して敵の士気をズタボロにしてやろうと号令を下す。
子熊達の士気は爆発的に跳ね上がり、彼等は一様に雄叫びを上げて突撃を開始した。
「ゴハハハハァーー!! 盛り上がってきたわぃ!! 白葯! 守るべき存在を持たぬ貴様は弱い! 貴様は本当の強さを知らぬのだ! それを今から、この豪牙天剛・我昌明様が教えてやるわ!!」
戦場を席巻する熱風は仲間達のエールを我昌明の心に直に届け、笑わざるを得なくなった我昌明にもはや敵はない。
彼の本能は決着の時を感じ取り、握り直した大矛に最大の闘気が込められた。
「…………お前の境遇など知ったことではない。お前はただの死に損ない。俗欲に惑わされ、生きながらにして既に死んでおる哀れで虚しい翁に過ぎん。故にお前の語る強さは強さに非ず、本当の強さとは他を圧倒し続ける容赦なき武力!」
「ふっ……容赦なき武力か! その程度の低脳であるから、貴様はラエルの坊に負けたのよ」
「…………!!」
白葯が眉根を寄せるや否や、瞬迅極めし槍技が繰り出された。
明らかなる怒り、明らかなる焦り、明らかなる憎悪が、彼の顔一面に浮かんでいた。
「だから負けたっつっとろうがァーーー!!!」
だが激情込められし白銀槍を、我昌明は右手に持った大矛で弾き返す。
弾き返して、大矛と同時に繰り出した左の鉄拳で白葯の顔面に思いっきり殴り掛かり、咄嗟に顕現させた魔障壁を易々と打ち破って盛大に吹き飛ばした。
「ゴハハハハァーーーー!!! 大・爽・快!!!」
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