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17話 帰還と検査
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「じゃあまずは血液検査からだな…… 君も嫌だろうが、もう一度頼めるか?」
セラフィムさんはそう言いながら私に、注射器を見せた。それも、血液採取用のものだから、さっきの薬の時とはわけが違う。
もちろん嫌だったが、エリーが目を覚まさないのはもっと嫌だった。
私はその注射器を受けとり、再びエリーの腕を持つ。
「エリーごめんね」
私は寝ているエリーに再び謝り、注射器を刺した。
その瞬間、注射器には赤い血がたまっていき、ピストンを引けばより血がたまっていく。
その赤い血を見ると、痛い思いをさせて心苦しい気持ちよりも、エリーがちゃんと人間なんだと知れてうれしい気持ちの方がわいてくるのだ。
採取した血液をセラフィムさんに渡すと彼女はその血液を特殊な機械にかけたようだ。
「細かい検査をするために20分ほどかかるが少し待っててくれ。そわそわする気持ちもわかるがゆっくりしていてくれ」
私の心配を解くためなのだろうがセラフィムさんはそう言いながら私に微笑みかける。
「普通は30分くらいかかるんですよ!! ですがなんとこの機械は血液凝固から、遠心分離を中継して結果まですべてオートメーションで、ほかにも特殊な技術を使っているおかげで10分も短くできたんです! ちなみにちなみに、この機械はセラフィム先輩が作ったんですよ!! それに、セラフィム先輩、私の名前まで刻印してくれたんですよ!」
急にアルさんが目をキラキラさせてそう言った。
「あ、アル…… 恥ずかしいからやめてくれ…… それに君がいたからこそあの装置は出来たんだ。刻印するのは当然だろう」
「照れてる先輩もかわいいですよ!!」
頬を赤らめているセラフィムさんは確かにかわいかった。
ギャップ萌えというものだろうか。普段理論的なセラフィムさんがああやって照れているところはとても可愛らしい。
「さて、結果が出るまで何をしようか。何か聞きたいことはあるかい?」
私はもちろんエリーがちゃんと治るのかどうか聞きたかった。しかしそんなのが確実にわかるのは結果が出てからだろう。
「じゃあ、私たちがこの研究室を出発したあの時、何があったんですか?」
私は前々から気になっていたことを聞いた。
あの時というのは、私たちが偶然この研究室に入り、セラフィムさんと話をしているときだった。突然、外の階段を下る音が聞こえ、慌てるようにセラフィムさんは私たちを逃げさせたんだ。
「実はな、私がいた研究所の幹部がやってきたんだ。そう、あのダンタリオンを生み出した研究者がな。それから私は色々と聞いた。だが何を聞いても”知らない”の一点張りでな」
セラフィムさんは険しそうな表情をしていた。
「えっ、あの人たちがここへ!? なんでこの場所を……」
アルさんが驚いた様子でそんなことを聞いた。
「あぁ。おそらく前から場所には気がついていたのかもしれないな。何かとこのラボは電気代が高くついてしまってな。こんな畑だらけのところでは異常なんだ」
私はちらりと時計を見た。時計はまだ10分ほどしか進んでいなかった。おそらく待ち遠しくしていることがあるからなのだろう、時間がひどく長く感じられる。
私は新しく質問した。
「アルさんって、セラフィムさんと同じ孤児院だったのにどうやって同じ研究所に行けたんですか?」
「私は先輩とは違って天才ではないので無理かと思ったんですが、先輩が孤児院を出ていった翌年にテストもしていないのに呼ばれたんです」
「あぁ、そのことか…… そういえば謝らねばならないな。私がだだをこねて、アルがいないと研究に協力しないと言ったんだ。そのせいでこれほどまでに君の人生をゆがめてしまった。すまない」
セラフィムさんが申し訳なさそうな顔をしているのに対し、アルさんはひどく目を輝かせていた。
「そんなことないです! むしろ私を呼んでくれてうれしいですよ! ただ、一つ残念といえば、先輩がだだをこねているところを……」
アルさんが何かを言い切ろうとしているときだった。血液検査装置がピピっと電子音を鳴らした。
「さて、結果を見てみるか……」
セラフィムさんはそう言いながら私に、注射器を見せた。それも、血液採取用のものだから、さっきの薬の時とはわけが違う。
もちろん嫌だったが、エリーが目を覚まさないのはもっと嫌だった。
私はその注射器を受けとり、再びエリーの腕を持つ。
「エリーごめんね」
私は寝ているエリーに再び謝り、注射器を刺した。
その瞬間、注射器には赤い血がたまっていき、ピストンを引けばより血がたまっていく。
その赤い血を見ると、痛い思いをさせて心苦しい気持ちよりも、エリーがちゃんと人間なんだと知れてうれしい気持ちの方がわいてくるのだ。
採取した血液をセラフィムさんに渡すと彼女はその血液を特殊な機械にかけたようだ。
「細かい検査をするために20分ほどかかるが少し待っててくれ。そわそわする気持ちもわかるがゆっくりしていてくれ」
私の心配を解くためなのだろうがセラフィムさんはそう言いながら私に微笑みかける。
「普通は30分くらいかかるんですよ!! ですがなんとこの機械は血液凝固から、遠心分離を中継して結果まですべてオートメーションで、ほかにも特殊な技術を使っているおかげで10分も短くできたんです! ちなみにちなみに、この機械はセラフィム先輩が作ったんですよ!! それに、セラフィム先輩、私の名前まで刻印してくれたんですよ!」
急にアルさんが目をキラキラさせてそう言った。
「あ、アル…… 恥ずかしいからやめてくれ…… それに君がいたからこそあの装置は出来たんだ。刻印するのは当然だろう」
「照れてる先輩もかわいいですよ!!」
頬を赤らめているセラフィムさんは確かにかわいかった。
ギャップ萌えというものだろうか。普段理論的なセラフィムさんがああやって照れているところはとても可愛らしい。
「さて、結果が出るまで何をしようか。何か聞きたいことはあるかい?」
私はもちろんエリーがちゃんと治るのかどうか聞きたかった。しかしそんなのが確実にわかるのは結果が出てからだろう。
「じゃあ、私たちがこの研究室を出発したあの時、何があったんですか?」
私は前々から気になっていたことを聞いた。
あの時というのは、私たちが偶然この研究室に入り、セラフィムさんと話をしているときだった。突然、外の階段を下る音が聞こえ、慌てるようにセラフィムさんは私たちを逃げさせたんだ。
「実はな、私がいた研究所の幹部がやってきたんだ。そう、あのダンタリオンを生み出した研究者がな。それから私は色々と聞いた。だが何を聞いても”知らない”の一点張りでな」
セラフィムさんは険しそうな表情をしていた。
「えっ、あの人たちがここへ!? なんでこの場所を……」
アルさんが驚いた様子でそんなことを聞いた。
「あぁ。おそらく前から場所には気がついていたのかもしれないな。何かとこのラボは電気代が高くついてしまってな。こんな畑だらけのところでは異常なんだ」
私はちらりと時計を見た。時計はまだ10分ほどしか進んでいなかった。おそらく待ち遠しくしていることがあるからなのだろう、時間がひどく長く感じられる。
私は新しく質問した。
「アルさんって、セラフィムさんと同じ孤児院だったのにどうやって同じ研究所に行けたんですか?」
「私は先輩とは違って天才ではないので無理かと思ったんですが、先輩が孤児院を出ていった翌年にテストもしていないのに呼ばれたんです」
「あぁ、そのことか…… そういえば謝らねばならないな。私がだだをこねて、アルがいないと研究に協力しないと言ったんだ。そのせいでこれほどまでに君の人生をゆがめてしまった。すまない」
セラフィムさんが申し訳なさそうな顔をしているのに対し、アルさんはひどく目を輝かせていた。
「そんなことないです! むしろ私を呼んでくれてうれしいですよ! ただ、一つ残念といえば、先輩がだだをこねているところを……」
アルさんが何かを言い切ろうとしているときだった。血液検査装置がピピっと電子音を鳴らした。
「さて、結果を見てみるか……」
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