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ドラゴン調査案件

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 魔法省に行くと、上司のローガー・ハーリッツさんに呼び出された。

「やあルイス君。復帰早々、こんな話をするのもあれなんだが……」

 と少し渋っているので何となく察する。

「危険な魔物の調査でしょうか?」
 と僕が言うとハーリッツさんは

「うむ……。実はヤタク地方の森の奥に危険なドラゴンがいるらしい。騎士団の討伐の前にどんなドラゴンかを把握しておきたい。近隣の村人からは夜中に酷い唸り声が聞こえ、森には近づいていない」

「ヤタク地方ですか。かなり遠いですね。僕の転移魔法は行ったことのある場所のみ。

 長旅になりますね」

「うむ。充分に準備を整えて出立してほしい。何せ得体の知れないドラゴンだ。2週間くらいは準備に徹してほしい。こちらも君の部下の人員を少し揃えよう。

 君を調査隊長として任命したい」
 とハーリッツさんが言う。
 僕は敬礼し

「はっ。謹んでお受けいたします!」
 と言う。

「本当はルイス君に行かせるのはどうかと思ったが……君は有能だしね」
 とハーリッツさんはチラチラこちらを見て心配している。
 この人は……初めて会った時から僕の事を結構子供扱いしてくる。僕は一応大人だが、どうしても見た目が少年に見えるからな。

「問題ありません。必ず生きて報告に戻りますので!」
 と言い、2週間後の遠征に向け準備をする事になった。

 *
 ガシャンと帰ってその話をイヴにするととても動揺してお皿を一つ割ってしまった。

「イヴ!大丈夫?怪我はない?」

「は、はい!ごめんなさい!驚いて……」

「すまない……。本当は結婚の準備を進めていたのにこんな事になり……」
 と後ろから抱きしめる。

 イヴは少し震えていた。

「そんな危険な調査なんて……。しかももし新種のドラゴンなら何があるか……」

「イヴ……。僕は死ぬつもりはない。ドラゴンを倒すのはその後の騎士団だし、僕達はなるべく気配を消し見つからず調査するだけ」

「ですが。危険な調査には変わりないです!」
 くるりと顔をこちらに向け涙目になっている。

「……ごめんね」
 イヴが心配してくれてるのが伝わり、頭を撫でる。
 耐えきれずツッと涙が溢れるイヴ。

 コツンと額を合わせ安心する言葉を言わないと。

「大丈夫。きっと無事で帰ってくるよ。僕はイヴ無しじゃもう生きられないんだ。帰ったら結婚してきちんと奥さんに……」
 と言うとイヴは首を振り

「だ、ダメです!!」
 と言うからガーンとなる。

「ええ!?なんでえ?」
 とショックで震えると

「結婚……今しましょう!!」

「ええっ!いや、でも!まだ指輪を注文してて!あっ」
 とサプライズプロポーズ失敗で焦る。

「そ、それは。後で大丈夫です。書類だけ出して欲しいです。私との結婚が嫌でなければ」
 と言うからガシだと肩を掴み

「何言ってるの?嫌なわけないでしょ?世界中ただ1人イヴだけしか奥さんにする気はないし、絶対に幸せにするから!」
 と言うとイヴは赤くなり

「わ、私、ルイスさんの奥さんとしてこの家で待ちます!!」
 と僕の肩にグリグリと額を押し付けた。

「遠征前にファイリスからの依頼も完了しておかないといけない……」
 最後のアクセサリーの効果を確かめなければならない。あんまり無茶させたくなく時期を少し伸ばしていたのだが、遠征前に片付けておきたいことの一つだ。

「あんまりつけたくないけどね。イヴにまた酷い事があると心配だし」

「では、今夜行いましょう」

「えっ!?き、急だね?」

「当たり前です!ルイスさんと離れ離れになるまで後2週間しかないんです!直ぐにファイリスさんの所に行きましょう」
 とイヴが言うので仕方なくエルフの村まで転移してファイリスの家を訪ねると無茶苦茶不機嫌なマイルドが顔を出した。
 いや、いつもか。

「夜分すまない」

「明日でもいいだろう?折角ファイリス様を風呂に入れてイチャイチャする前だったのに」

「はいはい。すまない」
 と言うとファイリスが顔を出して

「おお!助かった!!上がってくれルイス君!」
 とファイリスはにこにこだった。

「ちっ!」
 とマイルドが舌打ちした。

 *

「なるほど、ドラゴンの調査か。それは危険だね」
 とファイリスも一応心配してくれる。

「ふん、魔法省の人間として働いているのだから調査は当たり前だ」
 となんか偉そうなマイルド。

「それで今夜イヴと最後のアクセサリーを試そうと思う。早い方がいいからとりあえず明日には報告する」

「嫌な役目を押し付けてすまないね。帰ってからでもいいんだよ?」
 とファイリスは言うが

「イヴには言えなかったけど、万が一にもドラゴンに見つかるとただではすまないから元気なうちにしておきたい」

「これまで太々しく生きてきたのに随分弱気だな?」

「な、なにおう!?お前こそ太々しさの塊じゃないか!!」

 と睨み合うとファイリスが止めた。

「もー、やめなさいよ。とにかくそう言う事ならわかったよ。明日アクセサリーの効果を聞こう。

 はいこれ」
 と赤の魔石のついたピアスを渡された。

「いや普通に僕、ピアスした事ないんだが……」

 マイルドが無理やり耳を引っ張りピアスを開ける道具でブチブチと穴を開けた。

「ぎゃっ!!痛い!!優しくしろ!!」

「やかましい、男に優しくしてたまるか!!」
 一応ファイリスはヒールをかけた。

「乱暴ですまんね」

「まあ、いいよ。じゃあ帰ります」
 と言うとファイリスはどっさりとお土産に野菜果物肉を渡して

「いつもより多めに。ではまた明日に」
 とファイリス達と別れ家に帰る。
 イヴは僕の耳にピアスがついているのを見てポッとしながら

「それも、に、似合ってます……」
 と言ってくれた。
 イヴが喜ぶなら良かった。
 まあ、危険なアクセサリーかもだけど。
 なるべく酷くない効果だといいんだけど、サキュバスを苦しめるために開発されたものだから警戒はしないといけない。

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