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神様がこの世界を愛さえあれば子どもが出来る世界に作り変えました

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 今から数百年も前の話。神様が世界を作り変えた。
 作り変わる前の世界では、人も他の動物と同じように交尾をして子どもを授かっていたらしい。
 だけど、今は違う。
 人は性行為では子どもを授かることが出来なくなった。
 お互いを深く愛し合えば自然と人は子どもを授かるように、そう変化した。
 そのせいで出生率は激減し、世界の人口は大きく減ったが、捨て子や虐待などの不幸な子どもの数もかなり減ったらしい。
 深く愛し合っていないと子どもが産まれない。ということは、愛の無い子どもが産まれてくることはないということ。
 快楽のオプションで望まれない子どもが出来ることはない。本当に愛し合っているのに、子どもを授かれない悲劇も起こることはない。
 小学生の頃の担任は変化したあとのこの世界を笑顔でこう語っていた。『この世界は愛に溢れた世界なのだ』――と。
 俺もそれを心の底から信じていた。




 月日は流れ俺は大人になり、大切に想える人に出会い、付き合い、ともに過ごし、そして俺たちはめでたく結婚した。
 結婚してからも俺は毎日妻に愛を伝えた。
 そのかいあってか、妻は結婚して1年も経たずに子どもを授かった。
 産まれてきた子は大きな病気や怪我も無しにすくすくと成長し、あっという間に時は流れ、小学生となり――そこで俺と妻はあることを疑問に思った。
 成長した子どもは俺と妻に似ていなかったのだ。
 取り違えの可能性を疑った俺たちはDNA鑑定を受けに3人で病院に行った。
 DNA鑑定の結果、子どもは妻と血は繋がっていた。しかし、俺とは血が繋がっていないことが判明した。
 妻は俺を愛してはおらず、どこぞの誰かも分からない男を本当に愛していたようだ。
 そしてまた、どこぞの誰かも分からない男も俺の妻を愛していた。
 産まれてきた子どもがそれを証明している。
 この世界は思っていたよりも残酷だ。
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