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第31章 ジャスミンのノート(その4)
31-1 朝9時ごろに 飛行機は マリムラティ空港に着いた
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朝9時ごろに 飛行機は マリムラティ空港に着いた。
キャリーバッグをがらがらと引っぱりながら 小さいけど新しくてきれいな 空港ビルを出たら 油っぽい空気と エンジンとクラクションの音が わーっと押しよせてくる。
意外と 暑くないじゃん。
と 思ったのは一瞬だけ。
すぐに 首すじにじわっと汗が出てきた。
空港ビルの前の広場は 3輪タクシーとか バイクとかワゴン車とかでいっぱいで 田舎なのに びっくりするほどにぎやかだ。
広場の向こう側には タバコとか 車とか 携帯会社とかの広告の ものすごく大きな看板が立っている。
その足元には トタン屋根の小さなお店がならんでる。
ミネラルウォーターやスナック菓子を売ったり 麺類を出したりしてて たくさんの人が外のテーブルで食事をしたり ひまそうに座ったりしてる。
キャリーバッグを引いて 空港ビルの正面を歩いてたら あっちこっちで おじさんたちが わたしにしゃべりかけてくる。「ホテル?」とか「タクシー?」とか「ニーハオ」とか。タクシーのキャッチらしい。
その中のひとりは わたしの胸とか脚をガンガン見てきた。
こっちはイスラム圏だから 女の人はたいてい 長そでのブラウスを着て 髪にスカーフをかぶって 顔だけ出してる。
わたしは ポニーテールにストローハット Tシャツとハーフパンツに素脚だから もしかしたら この国では露出しすぎなのかもしれない。
ちょっと不安になる。
──────────────
スマホをエアポートWI-FIにつないでFBにメッセージを送り 約束の人と会うことができた。
「ミナミ・マリさんですね。会いたかったですよ。疲れましたか?」
マリムラティ県伝統文化協会の アイシャさん。50代くらいの女性で 日本語が上手だ。
こっちの人の中でも 肌の色が濃いから あざやかな赤の スカーフがよく似合う。
小がらで 顔も体も丸っこいから マトリョーシカみたいで かわいい。
とか 思ってたら 逆にアイシャさんに言われた。
「マリさんはとても きれいですねえ。お人形みたい。」
たぶん 喜代子おばさんの家にあるような 陶器の日本人形をイメージしてるんだろう。純和風の。
「マリさんこれから ヌグリグデの村に 案内しますね。」
アイシャさんは すごく感がい深そうに わたしの手をとって 言った。
「わたしは マリさんに会うの とても楽しみにしていましたよ。ずっとずっと前から。」
「ずっとずっと前……?」
「後で話しましょうね。乗ってください。これは アイシャの愛車ですよ。」
そう言って 銀色のワゴン車の前で アイシャさんは笑った。
キャリーバッグをがらがらと引っぱりながら 小さいけど新しくてきれいな 空港ビルを出たら 油っぽい空気と エンジンとクラクションの音が わーっと押しよせてくる。
意外と 暑くないじゃん。
と 思ったのは一瞬だけ。
すぐに 首すじにじわっと汗が出てきた。
空港ビルの前の広場は 3輪タクシーとか バイクとかワゴン車とかでいっぱいで 田舎なのに びっくりするほどにぎやかだ。
広場の向こう側には タバコとか 車とか 携帯会社とかの広告の ものすごく大きな看板が立っている。
その足元には トタン屋根の小さなお店がならんでる。
ミネラルウォーターやスナック菓子を売ったり 麺類を出したりしてて たくさんの人が外のテーブルで食事をしたり ひまそうに座ったりしてる。
キャリーバッグを引いて 空港ビルの正面を歩いてたら あっちこっちで おじさんたちが わたしにしゃべりかけてくる。「ホテル?」とか「タクシー?」とか「ニーハオ」とか。タクシーのキャッチらしい。
その中のひとりは わたしの胸とか脚をガンガン見てきた。
こっちはイスラム圏だから 女の人はたいてい 長そでのブラウスを着て 髪にスカーフをかぶって 顔だけ出してる。
わたしは ポニーテールにストローハット Tシャツとハーフパンツに素脚だから もしかしたら この国では露出しすぎなのかもしれない。
ちょっと不安になる。
──────────────
スマホをエアポートWI-FIにつないでFBにメッセージを送り 約束の人と会うことができた。
「ミナミ・マリさんですね。会いたかったですよ。疲れましたか?」
マリムラティ県伝統文化協会の アイシャさん。50代くらいの女性で 日本語が上手だ。
こっちの人の中でも 肌の色が濃いから あざやかな赤の スカーフがよく似合う。
小がらで 顔も体も丸っこいから マトリョーシカみたいで かわいい。
とか 思ってたら 逆にアイシャさんに言われた。
「マリさんはとても きれいですねえ。お人形みたい。」
たぶん 喜代子おばさんの家にあるような 陶器の日本人形をイメージしてるんだろう。純和風の。
「マリさんこれから ヌグリグデの村に 案内しますね。」
アイシャさんは すごく感がい深そうに わたしの手をとって 言った。
「わたしは マリさんに会うの とても楽しみにしていましたよ。ずっとずっと前から。」
「ずっとずっと前……?」
「後で話しましょうね。乗ってください。これは アイシャの愛車ですよ。」
そう言って 銀色のワゴン車の前で アイシャさんは笑った。
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