南洋王国冒険綺譚・ジャスミンの島の物語

猫村まぬる

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第27章 ジャスミンのノート(その2)

27-4 土曜の昼 レモンとツナ缶のサラダパスタを作った

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 土曜の昼 レモンとツナ缶のサラダパスタを作った。
 自分で食事を作ったのは 久しぶりだ。
 料理ってほどじゃないけど。
 小さなお茶碗に 少し分けて お仏だんにもあげた。
 お兄ちゃんは ずっと海外だから 和食のほうがよかったかな。

 お昼のあと 洗い物をしてたら リョウ君から電話があった。

   ──────────────

 リョウ君と 熱帯植物園に行った。

 リョウ君は 今のわたしにとって たぶんたった1人の 男の子の友だちだ。高校の時の 同級生で 今は大学生。
 彼には 新藤君という彼氏がいるから 2人で会っても デートとかのカウントには 入らない。

 けど お兄ちゃんが出張に行っちゃって以来 久しぶりに 男の人(リョウ君だけど)と 2人で歩いてると すごく安心感を (リョウ君なのに)感じてる自分がいて ちょっと困った。

 熱帯植物園の 大きなガラスのハウスの中は もわっとあったかくて 熟しすぎた フルーツみたいな エギゾチックな エジプトの香水みたいな 熱帯の甘い匂いがした。

 わたしとリョウ君は あんまり しゃべらないで その中を ぶらぶら歩いた。

 見たことない いろんな植物が あった。

 いっぱい 根が垂れ下がってる恐い形の 木とか まん中から 何か ぴょろ って伸びてる 変な花とか。

 みんな「何とかビウム」とか「何とかアピアピ」みたいな カタカナの ふしぎな名前で タイとかマレーシアとかインドネシアとか お兄ちゃんが得意な方面の 国の言葉らしかった。


 ゆっくり 回ってると ひとつひとつの 木や花に それぞれの においがあるのが分かる。
 中に一つ なんとなく なつかしい においがする木があった。
 カユドゥパミンピっていう 舌をかみそうな名前の 小さな木だ。

 カユドゥパミンピ 
 カユドゥパミンピ

 枝に 鼻を近づけて くんくん においを吸ってみる。
 子どものころに 知ってたにおい なのかな。武蔵野の家を思い出す。

 もっとたくさん もっと胸の奥まで 吸いこんでみると もっと小さなときのことも 赤ちゃんのときのことも もっと前のことも 思い出せそうな気がする。

「どしたの 茉莉?」
「ううん。いいにおいだよ。リョウ君も におってみて。」
「そっかな。線香みたいなにおいだけど。」

 説明板には 「インドネシア・北ヌサトゥンガラ州・マリムラティ島内陸盆地にのみ分布。現地では原住民が儀式の際に香料として用いた。」って 書いてあった。

 マリムラティ……?
 マリ……ムラティ?

 なんだろう。
 すごく ひっかかる。
 お兄ちゃんなら こんなカタカナの 意味がぜんぶ分かるんだろうか。
 やっぱり今度 いっしょに来ないと。
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