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第27章 ジャスミンのノート(その2)
27-5 暑くなってきたからパーカを脱いで
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暑くなってきたからパーカを脱いで 作りものの川が流れてる横のベンチに座って ガラスの向こうの青空を ながめてたら リョウ君が 隣に座って 言った。
「ここ いいでしょ。」
「うん。べつの世界みたい。」
「ひとりで来るんだ。時々。あいつ こういうの興味ないから。」
「さそってくれて ありがとう リョウ君。」
リョウ君は いつもすぐに 照れくさそうな 顔をする。
「いや、僕のほうが 茉莉に会いたかったんだよ。」
わたしはまた 涙が出そうになって リョウ君のカットソーの袖の 二の腕のところを 思わずつかんで 甘えちゃいけない リョウ君に悪いと 思いながら つい 言ってしまう。
「……ねえリョウ君。お兄ちゃん 帰ってくると思う?」
「僕 高校の時 ちょっと好きっていうか タイプだった。」
「え?」
「茉莉のお兄さん。帰ってきたら 3人で ここ来よう。」
「……うん。」
「でも茉莉は 仕事忙しかったら 無理に来なくていいよ。お兄さんと2人で来るから。」
「何 それ。」わたしは ひさしぶりに ちょっと笑った。「だめよ。新藤君に言うよ。」
植物園の出口に 新藤君が 車でむかえに来てくれて わたしのアパートまで 送ってくれた。
わかれるとき 新藤君の目の前だから 逆にかまわないかな と思って わたしは 車の窓から 助手席のリョウ君に 軽くハグをして 彼の背中で
「ありがとう。」
って言った。
「茉莉やめて 緊張する。」とリョウ君が 言った。
「こら茉莉 リョウから離れろ。」と 新藤君が運転席から言う。
「いいじゃん。わたし女だよ。」
「茉莉はだめだ。なんかイヤだ。」
「なんでよ。ひどい。」
「よろこぶとこじゃない?」
「あはは。」
「じゃあ またな。」
2人が手をふって 車が 行っちゃうと わたしは アパートの前の 人通りの少ない 夕方の道の上に ぽつんと残された。
パーカの前を合わせて バッグの中の鍵を探してたら ひとりの部屋に帰るのが 急につらくなった。
今日あったこと 見たものを すぐにお兄ちゃんに話すことは できないのだ。
──────────────
カイヌウェランが夢に出てきたのは その夜だった。
「ここ いいでしょ。」
「うん。べつの世界みたい。」
「ひとりで来るんだ。時々。あいつ こういうの興味ないから。」
「さそってくれて ありがとう リョウ君。」
リョウ君は いつもすぐに 照れくさそうな 顔をする。
「いや、僕のほうが 茉莉に会いたかったんだよ。」
わたしはまた 涙が出そうになって リョウ君のカットソーの袖の 二の腕のところを 思わずつかんで 甘えちゃいけない リョウ君に悪いと 思いながら つい 言ってしまう。
「……ねえリョウ君。お兄ちゃん 帰ってくると思う?」
「僕 高校の時 ちょっと好きっていうか タイプだった。」
「え?」
「茉莉のお兄さん。帰ってきたら 3人で ここ来よう。」
「……うん。」
「でも茉莉は 仕事忙しかったら 無理に来なくていいよ。お兄さんと2人で来るから。」
「何 それ。」わたしは ひさしぶりに ちょっと笑った。「だめよ。新藤君に言うよ。」
植物園の出口に 新藤君が 車でむかえに来てくれて わたしのアパートまで 送ってくれた。
わかれるとき 新藤君の目の前だから 逆にかまわないかな と思って わたしは 車の窓から 助手席のリョウ君に 軽くハグをして 彼の背中で
「ありがとう。」
って言った。
「茉莉やめて 緊張する。」とリョウ君が 言った。
「こら茉莉 リョウから離れろ。」と 新藤君が運転席から言う。
「いいじゃん。わたし女だよ。」
「茉莉はだめだ。なんかイヤだ。」
「なんでよ。ひどい。」
「よろこぶとこじゃない?」
「あはは。」
「じゃあ またな。」
2人が手をふって 車が 行っちゃうと わたしは アパートの前の 人通りの少ない 夕方の道の上に ぽつんと残された。
パーカの前を合わせて バッグの中の鍵を探してたら ひとりの部屋に帰るのが 急につらくなった。
今日あったこと 見たものを すぐにお兄ちゃんに話すことは できないのだ。
──────────────
カイヌウェランが夢に出てきたのは その夜だった。
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