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第21章 鍋釜や農具が置かれ、子犬や子猫が遊び
21-2 神殿
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「聖なる丘」は、沐浴場からさらに森を数分歩いたところにあった。打って変わって人気が無く、せわしなく鳴き続ける鳥の声しか聞こえない。
小高いところに石造の神殿があり、その下には沐浴場があった。
「ここ、聖なる丘。あれ、花園の神殿。それ、聖なる泉」
キジャンは次々と指をさしながら、何でもない当たり前の物みたいに言った。
しかし「花園の神殿」の名を聞いた瞬間、王女の顔に緊張が走った。無理もない。彼女は他でもないその神殿を訪れるために、ダラムに来ることを望んでいたのだ。
「花園の神殿」は、荒野で僕らが一夜を過ごした神殿とそっくりだったが、正面にぴったりとくっつくように竹造りの小さな家が立っていた。
家の戸口からは竹の梯子が斜めに降りて「聖なる泉」の前まで続いている。
泉は村の沐浴場に似ていたが、もっと狭く、青々と深く、朝の光は底まで届いていなかった。
僕と王女とアディは、キジャンに導かれるままに梯子の下に来た。
三人とも湿った髪のままで、僕とアディは腰に、王女は胸から下に巻衣一枚だけを着て、短剣を帯びていた。
キジャンは飛ぶように梯子を駆け上がって、家の中に向かってダラムの言語で何か叫んだ。
中から答えがあったらしく、キジャンは僕らを振り返り、手招きをした。
「カイヌウェラン様、話するよ」
そう言うとキジャンは梯子からひょいと飛び降り、中に入るよう僕らをうながした。
枝折戸のような竹編みの扉の中は薄暗く、あのお香の匂いが充満していた。いい香りなのだが、ここまで強烈だと体の中にまで匂いが染み込みそうで気持ちが悪い。
一見普通の家のようだった。素焼きの壺や竹の籠などがそこらに置いてある。部屋の中央に囲炉裏があり、何もかも黒く煤けていた。
しかし奥の壁だけは、竹ではなく全面が石造りで、彫刻を施された石の段の上に、神への供物なのか、果物や花などがきれいに積み上げられた籠が並んでいた。
中央にある階段の上には、草花模様が彫られた木の扉がある。
どう見ても、これは神殿の外壁だ。神殿の一部がそのまま家の中に取り込まれているのだ。
囲炉裏の向こうには、小柄だけれどたっぷりと太った老女が座っていた。
赤と黒の絣織の巻衣を腰に巻いて、例のごとく上半身は裸だったが、じゃらじゃらと何十本も身につけた真鍮やガラス玉の首飾りが、ほとんどベストを着ているみたいに見えた。真っ白な髪は頭の上に高く結われ、色とりどりの花が山盛りに飾り付けられて、それもまた供物のようだった。
「あなたが大祭司カイヌウェラン?」と王女が尋ねた。
「カイヌウェランはカイヌウェランさ。大祭司なんて、あんたち外の者が勝手に呼んどるだけだ」老女は、少し訛りはあったが流暢に言った。「そろそろ来ると思っとったよ」
小高いところに石造の神殿があり、その下には沐浴場があった。
「ここ、聖なる丘。あれ、花園の神殿。それ、聖なる泉」
キジャンは次々と指をさしながら、何でもない当たり前の物みたいに言った。
しかし「花園の神殿」の名を聞いた瞬間、王女の顔に緊張が走った。無理もない。彼女は他でもないその神殿を訪れるために、ダラムに来ることを望んでいたのだ。
「花園の神殿」は、荒野で僕らが一夜を過ごした神殿とそっくりだったが、正面にぴったりとくっつくように竹造りの小さな家が立っていた。
家の戸口からは竹の梯子が斜めに降りて「聖なる泉」の前まで続いている。
泉は村の沐浴場に似ていたが、もっと狭く、青々と深く、朝の光は底まで届いていなかった。
僕と王女とアディは、キジャンに導かれるままに梯子の下に来た。
三人とも湿った髪のままで、僕とアディは腰に、王女は胸から下に巻衣一枚だけを着て、短剣を帯びていた。
キジャンは飛ぶように梯子を駆け上がって、家の中に向かってダラムの言語で何か叫んだ。
中から答えがあったらしく、キジャンは僕らを振り返り、手招きをした。
「カイヌウェラン様、話するよ」
そう言うとキジャンは梯子からひょいと飛び降り、中に入るよう僕らをうながした。
枝折戸のような竹編みの扉の中は薄暗く、あのお香の匂いが充満していた。いい香りなのだが、ここまで強烈だと体の中にまで匂いが染み込みそうで気持ちが悪い。
一見普通の家のようだった。素焼きの壺や竹の籠などがそこらに置いてある。部屋の中央に囲炉裏があり、何もかも黒く煤けていた。
しかし奥の壁だけは、竹ではなく全面が石造りで、彫刻を施された石の段の上に、神への供物なのか、果物や花などがきれいに積み上げられた籠が並んでいた。
中央にある階段の上には、草花模様が彫られた木の扉がある。
どう見ても、これは神殿の外壁だ。神殿の一部がそのまま家の中に取り込まれているのだ。
囲炉裏の向こうには、小柄だけれどたっぷりと太った老女が座っていた。
赤と黒の絣織の巻衣を腰に巻いて、例のごとく上半身は裸だったが、じゃらじゃらと何十本も身につけた真鍮やガラス玉の首飾りが、ほとんどベストを着ているみたいに見えた。真っ白な髪は頭の上に高く結われ、色とりどりの花が山盛りに飾り付けられて、それもまた供物のようだった。
「あなたが大祭司カイヌウェラン?」と王女が尋ねた。
「カイヌウェランはカイヌウェランさ。大祭司なんて、あんたち外の者が勝手に呼んどるだけだ」老女は、少し訛りはあったが流暢に言った。「そろそろ来ると思っとったよ」
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