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第7章 川を下る船団は大小三十隻以上に及び

7-4 称賛

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 ようやく自分も船によじのぼった僕は、アディや船頭や、彼女の姉たちをはじめとする周りの船の人々が称賛のまなざしとどよめきで僕を囲んでいるのに気づいた。
 船底に背中を丸めて横になったファジャルは、苦しい息の合間に何度も「ありがとうございます……ありがとう……ございます」と繰り返していた。

「驚いた。あんたは勇気がある」アディが僕の肩を揺さぶった。「あんたこそ戦士サトリアだ。俺は何もできなかったよ、情けない。宮中武官の名が泣く。このことは必ず姫様とご主人様トゥアンにご報告するからな」
「いや、まったくご立派な旦那だ」と船頭もうなずいた。「島の人間じゃねえのが残念だ」
「ちょっと大げさすぎるよ」と、だんだん居心地が悪くなってきた僕は言った。「こんなに浅い川じゃないか」
「そりゃそうだが……」とアディは困惑顔で言った。「あとちょっとで危ないところだったぜ」
「そうだ。足の一本も食われずに済んだのは、全能のアッラーか弁天様サラスワティか、とにかく神様の御加護に違いねえ」
「ああ。俺が見ただけでも四頭はいたな」
「……待ってくれ。四頭? 何が? なんの話だ」
「何言ってる。あんたあんなに的確な判断でワニブアヤを避けてたじゃないか」
「……ワニ?」
「ワニを知らないのか。さっきのあれだよ、馬鹿でかいヤモリチチャだよ。あれは人を食うやつだ」
「……ああ、ワニ? ワニ。うん……」

 僕が足や腕を失くしてアパートに帰ったら、茉莉はどんな顔をするだろう。余計な人助けなんて二度とするまいと僕は固く決意した。
 僕の妹以外の誰が溺れようが、頭からワニに食われようが、そんなの知ったことか。

 そのとき、何か冷たいものが僕の足首をがっちりと捕らえるのを感じて、僕は悲鳴さえ上げることができずに硬直してしまった。
「ありがとうございます……」
 もちろんそれはワニではなく、船底に横たわったファジャルが僕の足首にすがりつき、ほどけて濡れた冷たい髪が僕の足にまとわりついていたのだった。
「ミナミ様、この御恩は、決して……」

 足に頬ずりでもキスでもしかねない勢いのファジャルを、振りほどくわけにも押しのけるわけにもいかず、ワニの群れから美しき令嬢を救った英雄である僕は、船底にへたりこんでただ呆然とするばかりだった。
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