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第6章 窓枠に掴まってぶら下がっていたのは
6-2 視線
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結び直した髪に花を飾り終えると、王女はこちらに真っ直ぐに顔を向け、じっと僕の目を見た。
物怖じせずに相手を直視するまなざしは、明らかに普通の子どもとは違っていた。
「アディからあなたのこといろいろ聞いてるわ。妹さんのことも」
王族といっても十三、四歳くらいの子どもじゃないか。そう思うのだけど、真正面からムラティ王女の視線を受けると、情けないことに僕は急にどぎまぎして言葉がうまく出なくなってしまった。
「あの……」
「だからその話を聞きに来たわけじゃないの。あなたがどんな人か見に来ただけ」
「はい」
「アディがね、あなたの力になってくれって言うの。彼がわたしになにかお願いすることなんてすごく珍しいのよ」
「アディはいつも、あなたのお役に立ちたいと、それだけを考えているようです」
「そう?」ぱっと笑顔になると、さっきまでの力強い視線が嘘だったみたいに、今度は少女らしいあどけない表情になった。「そのアディがお友達のために、不敬を覚悟で王族のわたしに頼み事をしてきたのよ。だからきいてあげたいと思ったの」
「ありがとうございます」
僕は自分が立ったままで王女と話していることに気づき、床の敷物に座った。それがこの国の作法にかなっているのかどうかは分からないけど、「不敬」なんて言葉を聞くと気にしてしまう。
「お父さまとお母さまにも相談してみたわ。はっきり聞こえたわけじゃないけど、間違ってないって言ってくれてたと思う」
「ご両親は……」
「あなたの言いたいことは分かるわよ。たしかにお父さまとお母さまは、ご存命ではないわ。だから、はっきりとお話ができるわけじゃないの、この王都では」と、王女は不思議なことを言う。「ミナミ、あなたもご両親を亡くされたんですって?」
「はい。七年前に」
「お気の毒に」
まるで僕が七日前に両親を亡くしたと聞いたみたいに、王女はいたわりのまなざしで僕を見た。
「ミナミは、お父さまとお母さまに会いたい?」
「どうでしょう。もう分からなくなってしまいました。今は妹のことだけが気がかりです」
王女はしばらく何か考えていたけど、小さくうなずいてぴょんと椅子から降り、膝歩きで僕に近づいてきた。そして目の前にぺたんと座ると、声をひそめて言った。
「ねえ、わたしと、アディとあなたとで、内陸の神殿に行ってみない?」
物怖じせずに相手を直視するまなざしは、明らかに普通の子どもとは違っていた。
「アディからあなたのこといろいろ聞いてるわ。妹さんのことも」
王族といっても十三、四歳くらいの子どもじゃないか。そう思うのだけど、真正面からムラティ王女の視線を受けると、情けないことに僕は急にどぎまぎして言葉がうまく出なくなってしまった。
「あの……」
「だからその話を聞きに来たわけじゃないの。あなたがどんな人か見に来ただけ」
「はい」
「アディがね、あなたの力になってくれって言うの。彼がわたしになにかお願いすることなんてすごく珍しいのよ」
「アディはいつも、あなたのお役に立ちたいと、それだけを考えているようです」
「そう?」ぱっと笑顔になると、さっきまでの力強い視線が嘘だったみたいに、今度は少女らしいあどけない表情になった。「そのアディがお友達のために、不敬を覚悟で王族のわたしに頼み事をしてきたのよ。だからきいてあげたいと思ったの」
「ありがとうございます」
僕は自分が立ったままで王女と話していることに気づき、床の敷物に座った。それがこの国の作法にかなっているのかどうかは分からないけど、「不敬」なんて言葉を聞くと気にしてしまう。
「お父さまとお母さまにも相談してみたわ。はっきり聞こえたわけじゃないけど、間違ってないって言ってくれてたと思う」
「ご両親は……」
「あなたの言いたいことは分かるわよ。たしかにお父さまとお母さまは、ご存命ではないわ。だから、はっきりとお話ができるわけじゃないの、この王都では」と、王女は不思議なことを言う。「ミナミ、あなたもご両親を亡くされたんですって?」
「はい。七年前に」
「お気の毒に」
まるで僕が七日前に両親を亡くしたと聞いたみたいに、王女はいたわりのまなざしで僕を見た。
「ミナミは、お父さまとお母さまに会いたい?」
「どうでしょう。もう分からなくなってしまいました。今は妹のことだけが気がかりです」
王女はしばらく何か考えていたけど、小さくうなずいてぴょんと椅子から降り、膝歩きで僕に近づいてきた。そして目の前にぺたんと座ると、声をひそめて言った。
「ねえ、わたしと、アディとあなたとで、内陸の神殿に行ってみない?」
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