ライギョマン

松ノ木下

文字の大きさ
上 下
28 / 35

覚醒

しおりを挟む
「上田くん、もうすぐ地原ダムや!ここから先は、一般人は侵入禁止や。」

「え?じゃどうやって入るんですか?洞窟ですか?」

「まさか(笑)僕はここの管理責任者と顔見知りなんだよ。」

「あっ、そういうことですか(笑)」

 笑顔で会話をしてるが、張りつめた空気が車中に漂っている。

「着いたで、ここが地原ダムや。」

「ここが地原ダム…」

 早朝の地原ダムは静寂に包まれていた。
 深山幽谷。確かに何かとてつもないものがいる。そう思わせる雰囲気がある。

 突如、沖で何かが蠢いた。

 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴー
 ズバっシャーーーーン 

 沖にいた鵜の群れが何かに飲み込まれた… 

「大浦さん!あれが??」

「せや、あれが地原ダムに棲む最古のビースト。ダリロフや!」

「だ、ダリロフ…」

 ゴクっ…大きさは五メートル程だろうか?確かに天竜湖のビーストと比べると見劣りするが、とにかく動きが早い。高台から見ていても、動きが補足しきれない。獰猛さも、天竜湖のビーストとは比べものにならなそうだ。手当たり次第に何かを捕食して動き回っている。

「さ、上田くん、山田くん、準備に取りかかろう。」

 そう言って、大浦さんは、僕にストレングスマイルドを手渡した。

 ストレングスマイルド…僕に使いこなすことが出来るのだろうか?


「なっ、奈緒美さーーーん!!!」

 奈緒美さんに危機が迫っている。どうしよう。やっぱり僕にはまだ早かったんだ。僕は成す術なく、呆然と立ち尽くしている。ダリロフは奈緒美さんにトドメを刺そうと距離を摘め始めた。

「上田くん!何しとんねん!早く、ライギョマンに変身せんか!ストレングスマイルドは飾りやあらへんぞ!」

 分かっている。分かっているが、どうしたらいいのか解らない…変身しようにも、変身の仕方がわからない。ストレングスマイルドを手にしても何も変わらない。マズイ、マズイぞ?このままだと、奈緒美さんは確実に殺られる!

「えーい、クッソー!上田くん、ストレングスマイルドを貸すんだ!俺が行く!早く!」

「え、あ、はい…あ、あーーー…」

 コロコロコロコロ…

 マズイ、ストレングスマイルドを崖から落とした…早く取りに行かないと!

「何グズグスしとるんや!俺が行く!」

 そう言うと、大浦さんは崖を下っていった。大浦さんは、ストレングスマイルドを拾い上げると、奈緒美さんに襲いかかろうとしているダリロフに攻撃した。
 バコっ!!
 大浦さんの攻撃でダリロフが怒りの矛先を大浦さんに変えた。

 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴォォォォォォォ! 

「君は、山田くんを救出してくれ!俺が時間を稼ぐ!早く!」

「はっ、はい!」

 奈緒美さんを救出し振り返った瞬間、ビーストは大浦さんを襲った。

 バシャッバシャッドっゴーーーン!

「大浦さーーーーん!」

「上田くん!後は任せた!ストレングスマイルドを受け取ってくれーー!」

バキバキッ!グシャグシャァァァァァ

「うわーーーー!大浦さーーーん!」

 ストレングスマイルドを放り投げ、大浦さんは、ダリロフに飲み込まれた。

「うわーーーー!まただーーー!また僕のせいでーーーー!」

 ゴホゴホっ、

 ?? 

「奈緒美さん!気がついたんですか?」

「なっ、何をしているんですか…?そうやって立ち尽くして…、ダっ、ダリロフにやられるのを…待っているだけですか…?そ、それともまた誰かが助けに来てくれると思っているんですか…?ゴホゴホっ…」

「もう喋らないで下さい。分かっています。分かっていますが、どうやったらいいのか解らないんです…」

「きっと、あなたは…いつもそうやって…逃げてきたんでしょうね…?」

「はい。その通りです…子供の頃から、何をやっても、全力を出すことをためらい…誰かが助けてくれることを願い、途中で投げ出してきました…」

「わかりました…ゴホゴホっ…そ、そうやって、いつまでも逃げ続けて下さい…」

 そう言うと奈緒美さんは、よろよろと立ち上がった。

「た、立ち上がるなんて無理です!早く逃げましょう!」

「わ、私は…最期まで戦います…上田さんは…に、逃げて下さい…」

「なぜそこまで??」

「あ、あなたには説明しても…り、理解できないでしょう…は、早く逃げて…」

 どうして?どうして皆、そんなにボロボロになってまで戦うんだ?ビーストなんて放っておけばいいよ…
 またか?また僕は逃げるのか?皆に助けてもらってばかりで、剛三さん、堤さん、飯見さん、大浦さん…、ダメだ!ダメだ!もう逃げる訳にはいかない!僕がやらないとダメなんだーーーーー!!!!

 ピカーー!!!!





 僕の全身が光に包まれた。
 その後のことはよく覚えていない。
 気がつくとダリロフの死骸が僕の脇に転がっていた。今まで味わったことのない、高揚感、全身にみなぎる力、どうやら僕はライギョマンに変身できたようだ?

「や、やれば、で、できるじゃないですか…」

「奈緒美さん!あなたのおかげです!あなたのボロボロになってまで戦う姿に心打たれた結果です!ありがとう!」

「お、お礼を言うのは、私の方です。父の敵を討ってくれてありがとう。」

 ニコっ。

 ホッ。よかった!やっと、奈緒美さんに笑顔が戻った!なんて、かわいいんだ!

「な、な、な、奈緒美さん?」

「なんですか?」

「あ、あのー…」

「ん?」

「ぜ、全部、終わったら…」

「終わったら??」

「ぼっ、ぼっ、ぼっ、僕とデートして下さい!」

 な、何を言っているんだ?僕は…

「いいですよ♪」

 え、え、え、えーーーーーー!!!

「ほんとですかーーーー!!!」

「はい♪でも、とりあえず私を病院に運んで下さいますか?」

 僕の中で燻っていたものが、全て解決できたような気がした。
 よし、待っていろ!天竜湖のビーストよ!

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

恥ずかしい 変身ヒロインになりました、なぜならゼンタイを着ただけのようにしか見えないから!

ジャン・幸田
ファンタジー
ヒーローは、 憧れ かもしれない しかし実際になったのは恥ずかしい格好であった! もしかすると 悪役にしか見えない? 私、越智美佳はゼットダンのメンバーに適性があるという理由で選ばれてしまった。でも、恰好といえばゼンタイ(全身タイツ)を着ているだけにしかみえないわ! 友人の長谷部恵に言わせると「ボディラインが露わだしいやらしいわ! それにゼンタイってボディスーツだけど下着よね。法律違反ではないの?」 そんなこと言われるから誰にも言えないわ! でも、街にいれば出動要請があれば変身しなくてはならないわ! 恥ずかしい!

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

とあるおっさんのVRMMO活動記

椎名ほわほわ
ファンタジー
VRMMORPGが普及した世界。 念のため申し上げますが戦闘も生産もあります。 戦闘は生々しい表現も含みます。 のんびりする時もあるし、えぐい戦闘もあります。 また一話一話が3000文字ぐらいの日記帳ぐらいの分量であり 一人の冒険者の一日の活動記録を覗く、ぐらいの感覚が お好みではない場合は読まれないほうがよろしいと思われます。 また、このお話の舞台となっているVRMMOはクリアする事や 無双する事が目的ではなく、冒険し生きていくもう1つの人生が テーマとなっているVRMMOですので、極端に戦闘続きという 事もございません。 また、転生物やデスゲームなどに変化することもございませんので、そのようなお話がお好みの方は読まれないほうが良いと思われます。

処理中です...