リング??

OCHITAS

文字の大きさ
上 下
2 / 4
招かれざる

人生は奇なり

しおりを挟む
「……似合ってるよ」
 「うるさい」
 前髪を切られてからずっと部屋の隅で体育座りをして顔を俯かせている。
 「お前はなんなんだ、前髪位で泣きやがって」押してだめなら引けと言うように煽りに変えた。
 「なんだと!呪詛してやろうか!」前髪が無い綺麗な顔をキッと向けて言う
 「なんだ元気あるじゃないか」
 「……あれでも私にとってはかなり傷付いたんだ、好きな仕事だったし………」遠くを見る目でそう呟きはじめる。
 「まぁ自分の力量が足りなかっただけで仕方なかったんだ」此方に笑顔を向けたがそれがとても下手クソだった。


 「……Tシャツ?って言うのかこれは?」白装束姿じゃこの先、生きずらいので自分のクローゼットから服を選ばせているのだが……(Tシャツしかねぇ)オシャレに無頓着な自分のクローゼットの中は時期が夏であることも重なり服の九割がTシャツだった。
 「そうだよこれはTシャツだ、とりあえず上の服を仮で決めるぞ下はそれからだ」
 「分かったわ」
 「ところでお前の事はなんて呼べばいい?」服を選びながら聞く。
 「なんでもいいよ、リングでもサダコでもなんでもいいよ」
 「じゃあリンって呼ぶよ」名前の候補にツッコミたいのを抑えて質問を返す。
 「分かったわじゃあ貴方の事はなんて呼べばいい?」
 「ん?あぁそう言えば自己紹介してなかったな、俺は大貫涼だ涼でいい、ほらこれでも着てろ」無印要品で買った真っ白のTシャツを渡した。
 「向こう向いてるからちょっと着てみろ」
 「分かったわ涼」
 
 「ねぇ涼、上だけだと下ががら空きなんですが……」
 「!?、え?あぁすまないうっかりしてた…」
 狼狽を隠してクローゼットの下の引き出しを開けて適当にズボンを選び向こうを見ずにリンのもとへ投げ捨てた。
 「あっすいませんお借りします」
 「どっ……どうぞどうぞ……そっ……そう言えばお前は向こうで、どんな生活を送っていたんだ?」羞恥心を必死に押さえ込み、気になっていたことを聞いてみた。
 「貴女方人間と変わりませんよ、起きて仕事して、帰って寝てたまに奮発のご褒美でも自分にしている至って普通の生活です」楽しそうな口調で話すがどことなく寂しさが滲んでいた。
 「でっ、その仕事ってのがテレビから出てきて人を呪詛するってことか?」
 「結論から言えばそうなりますね……あっでも貴方の事は呪詛はしないので、と言うより今は貴方しか頼る人がいないのですよ」
 それは誉めてるのか?
 「とにかく、俺はお前に呪詛される事はないし、お前は俺に頼るしかないって事か」
 「はい、なにぶん此方に残るなんて予定もしてませんでしたから」
 「そうか、でお前は何処に住むつもりだ」
 「あっここに住み着こうと思います」
 間を開ける事なく即答したリンにちょっと呆れた。
 「お前はここに住むのか?まぁ行く宛がないのは分かるが……」
 「お願いします!涼さん!ここしかないのです、お願いします!家事もしますのでここに住まわしてください!」
 「べっ……別にいいけどよ」
 あんな目にあったんだ………俺も同情ぐらいする
 「ありがとうございます!家の家事はお任せください!」
 「おっ………おう」笑顔を向けるリンにとりあえず返事をした。
 今日から元幽霊との共同生活、変な話だ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】お父様に愛されなかった私を叔父様が連れ出してくれました。~お母様からお父様への最後のラブレター~

山葵
恋愛
「エリミヤ。私の所に来るかい?」 母の弟であるバンス子爵の言葉に私は泣きながら頷いた。 愛人宅に住み屋敷に帰らない父。 生前母は、そんな父と結婚出来て幸せだったと言った。 私には母の言葉が理解出来なかった。

冤罪をかけて申し訳ないって……謝罪で済む問題だと思ってます?

水垣するめ
恋愛
それは何の変哲もない日だった。 学園に登校した私は、朝一番、教室で待ち構えていた婚約者であるデイビット・ハミルトン王子に開口一番罵声を浴びせられた。 「シエスタ・フォード! この性悪女め! よくもノコノコと登校してきたな!」 「え……?」 いきなり罵声を浴びせられたシエスタは困惑する。 「な、何をおっしゃっているのですか……? 私が何かしましたか?」  尋常ではない様子のデイビットにシエスタは恐る恐る質問するが、それが逆にデイビットの逆鱗に触れたようで、罵声はより苛烈になった。 「とぼけるなこの犯罪者! お前はイザベルを虐めていただろう!」 デイビットは身に覚えのない冤罪をシエスタへとかける。 「虐め……!? 私はそんなことしていません!」 「ではイザベルを見てもそんなことが言えるか!」 おずおずと前に出てきたイザベルの様子を見て、シエスタはギョッとした。 イザベルには顔に大きなあざがあったからだ。 誰かに殴られたかのような大きな青いあざが目にある。 イザベルはデイビットの側に小走りで駆け寄り、イザベルを指差した。 「この人です! 昨日私を殴ってきたのはこの人です!」 冤罪だった。 しかしシエスタの訴えは聞き届けてもらえない。 シエスタは理解した。 イザベルに冤罪を着せられたのだと……。

妻の死を人伝てに知りました。

あとさん♪
恋愛
妻の死を知り、急いで戻った公爵邸。 サウロ・トライシオンと面会したのは成長し大人になった息子ダミアンだった。 彼は母親の死には触れず、自分の父親は既に死んでいると言った。 ※なんちゃって異世界。 ※「~はもう遅い」系の「ねぇ、いまどんな気持ち?」みたいな話に挑戦しようとしたら、なぜかこうなった。 ※作中、葬儀の描写はちょっとだけありますが、人死の描写はありません。 ※人によってはモヤるかも。広いお心でお読みくださいませ<(_ _)>

(完結)私より妹を優先する夫

青空一夏
恋愛
私はキャロル・トゥー。トゥー伯爵との間に3歳の娘がいる。私達は愛し合っていたし、子煩悩の夫とはずっと幸せが続く、そう思っていた。 ところが、夫の妹が離婚して同じく3歳の息子を連れて出戻ってきてから夫は変わってしまった。 ショートショートですが、途中タグの追加や変更がある場合があります。

「不吉な子」と罵られたので娘を連れて家を出ましたが、どうやら「幸運を呼ぶ子」だったようです。

荒瀬ヤヒロ
恋愛
マリッサの額にはうっすらと痣がある。 その痣のせいで姑に嫌われ、生まれた娘にも同じ痣があったことで「気味が悪い!不吉な子に違いない」と言われてしまう。 自分のことは我慢できるが娘を傷つけるのは許せない。そう思ったマリッサは離婚して家を出て、新たな出会いを得て幸せになるが……

裏切りを知った私は強くなります【完結】

恋愛
あなたの裏切りを知り私は強く生まれ変われました。 _____さようなら_____ ※2話完結です

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

断腸の思いで王家に差し出した孫娘が婚約破棄されて帰ってきた

兎屋亀吉
恋愛
ある日王家主催のパーティに行くといって出かけた孫娘のエリカが泣きながら帰ってきた。買ったばかりのドレスは真っ赤なワインで汚され、左頬は腫れていた。話を聞くと王子に婚約を破棄され、取り巻きたちに酷いことをされたという。許せん。戦じゃ。この命燃え尽きようとも、必ずや王家を滅ぼしてみせようぞ。

処理中です...