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第一章 異世界で女子力について悩む

黒髪の貴公子

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 一話抜けておりました!
 ご迷惑をおかけいたしております。

 ご指摘ありがとうございます。

 このコメントは数日後消させていただきますが、本当に申し訳ありませんでした。


~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・


 軽やかな足音は、花々のクッションであまり響かなかった。

「うわっ、なんだそれ」

 宙に浮かぶステータス画面に驚いた人物が声を出してはじめて、ふたりは第三者に気付いたものの、もうどうしようもなかった。

 だって、ステータス画面どうやったらしまえるかわからなかったんだもんと、後にフローラは言った。

 
 ーー実はステータス画面なんてものは、この世界にはなかった。
 これはテンプレを守るため、ヘラ様のがフローラ仕様に作ってくれたもので、この世界では普通鑑定で調べるのみで、職業と称号、スキルなどしか見られない。
 まあ、鑑定能力の高いものはもっとたくさんの情報を得られるし、スキルを付加した道具などもあるので、それで調べられはするが。
 それでも能力値やスキル値は見られない。

 鑑定のない人は、ぼんやり自分のスキルを把握して、適当に使っていた。
 当然、己の体力値なども知らない。ていうか、能力値ってナニ?である。

 このへんは前世の地球と同じである。

 フローラ、最初は鑑定で自分を見てみるべきであった。
 鑑定はステータス画面のように、虚空に現れたりしない。

 ちなみに鑑定1でフローラが自身を見ると、名前と年齢、職業とヘラ様と孔雀さまの加護しか見えない。


「えっと……フローラ、4歳、女神の落し子……たいりょく、まりょく……おんみつ……」

 読み進めて、青ざめるどころか紙のように白い顔色で、フローラを見る闖入者。
 彼はフローラの美少女面に気が付く余裕などなく、フローラも彼の美少年ぶりに気をやる余裕がない。

 フローラとハイネは混乱のきわみ。
 まだ硬直していた。

 お互い、滝汗が止まらない。
 ヤバいものを見られた方と見た方で、同じことを考えていた。

(まずいまずいまずい)

 しかし、慌てたってどうにもならない。

 先に冷静になった神鳥にちょいちょいとつつかれて、やっと二人は現実に気が付いた。

 本来なら秘匿されるべき情報を見てしまった闖入者は、幼い少年であった。

 黒髪に蜂蜜色の目。六、七歳くらいの美少年であるが、意思の強そうなきりりとした眉の、良い仕立ての服を着た彼ーーどう考えても貴族の子息である。
 どこかの村の子ではない。

 勝手に覗き見てしまったと、彼は素直に謝った。

「すまない。見たことのない、めずらしいものが見えたので、思わず……誰にも言わない。約束する」

 小学校の低学年あたりの少年が言うには、大人びた言葉遣いである。
 彼に賢さと誠実さが感じられたため、フローラは少し笑顔を見せることができた。

「こちらこそ。こんなところで見てた、わたしも悪いの……」

 自分より小さな女の子にそんな風に言われて、幼いながら紳士たれと育てられている少年は、ますます罪悪感で謝罪に力を込めた。

「いいや。声もかけずに見た、僕が無礼だった。
 僕はオプシディアン・フレミア。
 フレミア家の名に懸けて、秘密は守る」

 騎士の所作を真似たのか、少年は胸の前に拳を握り、真っ直ぐにフローラを見つめて誓いを立てる。

 子どもとはいえ、美少年にそんなことをされて、喜ばない女はいない。むしろほほえましい。

 フローラも、今度こそ笑顔で名を名乗った。

「ありがとう。私はフローラ」

 オプシディアンは、花畑に座るフローラに手を差し出した。
 その手に掴まって、立ち上がる彼女。

 花畑にやさしい風が吹き、白い花弁が舞う。

 完璧な男女の出会いである。


 ーーしかし、フローラは呪われた喪女(女神お墨付き)。


「オプシディアン……わたし、さっき見たようにいろんなスキルがあるの♪」
(約・おまえわかってるよな? じゃないとやっべースキルでどうにかすんぜ)

 だから黙ってろ、というのは、意訳がわかりきらなかっあオプシディアンでも理解できた。

「うん。だから秘密だね?」

 オプシディアンのファインプレーで、二人の出会いはさわやか(そう)に終わった。


 実はまだフローラのステータス画面が出たままで、二人の間を阻むように浮かんでいたのは、未来の暗示ではない、と思いたい……。



~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・

 次回、

 能力を把握しよう!

 です。


 
 ご迷惑をおかけしました。

 
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