聖弾の射手~会社が潰れて実家に帰ったら異世界へ行けるようになったのでクールビューティ-&黒猫娘を相手に二重生活を楽しみます~

平尾正和/ほーち

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第1章

10話 銃の説明

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「見たところ、ここに魔石を仕込んで弾を出すって感じだな」
「ああ、その通りだ」

 職員には銃の知識があるようなので、いままでわかっていることを話してみた。

 ゴブリンやコボルトの魔石では威力が弱く、1~2発で弾切れになること。

 オークの魔石は大きすぎて取り付けられないこと。
 元々はオークを数発で倒せるだけの光弾を何発も撃てていたこと。

 ただしそのときに取り付けられていた魔石がどういう物だったかを覚えていないこと。

「そりゃ魔結晶だったんじゃないか?」
「あー、やっぱりそうかしら」
「魔結晶?」

 魔結晶というのは、魔石を精製、圧縮して作られるエネルギー体だ。
 その純度や密度によって、内包するエネルギーは10倍にも100倍にもなるという。

「強い魔物になってくると、最初から魔結晶を宿しているやつもいるからな」

 おそらく最初に取り付けられていたのは、それなりに密度の高い魔結晶だったのだろう。

「オークの魔石に2万プラスで、同じ容量の魔結晶を用意できるぞ」
「じゃあお願いするわね」
「おい、ルーシー、いいのか?」
「もちろん。ケントの銃はあたしたちの生命線だもの。今後も魔結晶は優先して用意すべきよ」

 ずいぶん金のかかる武器だなと、ケントは内心で呆れる。
 これはもっと別の武器を用意したほうがいいのではないだろうか。

「〈射撃〉スキルがあれば、威力の調整ができるぞ」

 そんなケントの表情から内心を察したのか、職員は魔結晶と思われる黒い宝石のような石を受付台に置きながら、そう言った。

 大きさはゴブリンの魔石くらいだ。

「威力の調整?」
「そうだ。威力を弱めれば、回数を多く撃てる。それに、加護があればMPを消費して撃つこともできるはずだ」
「へぇ、そうなのね」

 職員の情報を聞いて、ルーシーは感心したように頷いた。
 MP消費で撃てるのなら、それなりに使えるのかもしれない。

(なんにせよ、ステータスを確認してからだな)

 加護板を受け取ったケントだが、まだそこに表示される情報は確認していない。
 加護に関わる情報は秘匿したほうがいい、ということなので、あとで確認することにしていたのだ。

「それじゃあ、報酬は山分けでいいか?」

 結局残りの魔石は銃弾として使えるので、持っておくことにして納品は控えた。
 魔結晶への加工代2万を差し引いて、報酬の合計は3万と少し。

「ルーシーにお金を返さないといけないから」
「なら、ルーシーに2万、ケントに1万だな」
「べつに急がなくてもいいんだけどね……」

 依頼を受けるにしても、まずはステータスの確認をしておこうということで、いったん宿に帰ることにした。

 そこでケントの能力を確認し、それに見合った依頼を受けよう、ということだ。

「じゃあ、またあとで」
「おう」

 簡単な挨拶を終え、ギルドを出ようとしたときだった。

「ルーシー!」

 出入り口のほうから甲高い声が聞こえたかと思うと、何者かがルーシーに向かって突進してきた。

○●○●

「ルーシー!」

 ギルドの出入り口から、ルーシーの名を呼びながら突進してきた人物は、そのまま彼女の腰のあたりに抱きついた。

「ごふっ……!」

 それは黒い三角帽子とローブを身につけた、魔女のような恰好をした少女だった。
 結構な勢いのまま抱きつかれたルーシーが、軽く咳き込む。

「い、いきなり飛び付いちゃ危ないじゃない、アイリ」
「ん、私は平気」
「あたしが平気じゃないんだけどね」

 と呆れ気味にこぼしながら、ルーシーはアイリと呼ばれた少女の背中を優しくトントンと叩いた。

 アイリは抱きついたまま、顔を上げる。

「ルーシー、元気だった?」
「もちろん、元気よ」

 その返事を聞いたあと、アイリは再びルーシーの身体をギュッと抱きしめた。

「ルーシー、帰ってきて」
「えっと……」
「うちのパーティーには、ルーシーが必要」
「えっと、でも……」
「ルーシー成分が足りない。だから帰ってきて」
「あー……そういうこと。そう言ってくれるのは嬉しいんだけど」
「残念ながらそれは無理だよ、アイリ」

 そんなふたりの会話に、別の者が割り込んできた。
 声の主は若い男性冒険者だった。
 さらさらの金髪に、青い瞳の美青年で、華美な白銀の鎧を身に纏っている。

 その半歩うしろに、メイドらしき女性の姿もあった。
 銀髪に新緑の瞳を持つ、薄褐色肌の女性で、ゴシック調のメイド服に身を包んでいる。

 彼女は青年冒険者に付き従っているようだった。

「ルーシーは我がパーティーにふさわしくない。そんなことくらいわかるだろう?」

 諭すようにそう言われたアイリは、ルーシーに抱きついたまま振り向き、青年に冷たい視線を送る。

「バートのいじわる」
「別に意地悪で言っているわけでは――」
「バカ、アホ、ホーケー、タンショー、ソーロー……」
「ま、待ちたまえっ! いくらなんでも言いすぎだぞアイリ!!」

 バートと呼ばれた青年は、顔を真っ赤にして抗議する。

「だいたいマリーもなんで黙っているんだよ! 主人が侮辱されているんだぞ!?」

 そして、彼の後ろで眉ひとつ動かさぬメイドに向かって、バートは文句を言った。

「では恐れながら」

 するとマリーと呼ばれたメイドが、すっと前に出て、アイリと対峙する。

「アイリさま、ご主人さまを侮辱された件、謝罪のうえ訂正願います」
「アイリは言ったのはすべて事実。間違ったことは言っていない」

 お互いが無表情のまま向かいあっている。
 にらみ合う、というほど険悪ではないが、少しばかり冷たい空気があたりに漂っていた。

「いいですか、アイリさま。そもそも仮性と真性をひとくくりにされているのが大間違いなのです」
「お、おい、マリー……?」
「ご主人さまはあくまで仮性。男性の7割が仮性ですので、それは侮辱されるべきものではありません」
「なにを言っているのだマリー!!」
「ごめんなさい。そこは訂正する」

「それに大きければいい、というものでもありません。過ぎたるはなお及ばざるが如しといいますし、大きすぎれば受け止める側にも負担が――」
「おいマリー、いい加減に――」
「マリー的にはどう?」
「少し物足りないかと」
「えっ……マリー!?」
「あと、早いことよりも一度で終わってしまうことのほうが問題でございますね。こちらの気も知らず満足そうに眠る姿に殺意を覚えたことがいったい何度――」
「も、もういい! やめてくれぇ……」

 バートは力なく膝をつき、うなだれていた。

 ケントは目の前で繰り広げられた意味深なやりとりにどう反応していいかわからず戸惑ったが、ルーシーはクスクスと笑っていた。
 もしかすると、よくある光景なのだろうか。

「ふたりとも、そのくらいにしときなさいよ」
「ん、ルーシーが言うならやめる」
「これはお見苦しいところを……」

 マリーはスカートをつまんでお辞儀をし、バートのうしろに下がった。
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