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第1章
7話 夢か現実か
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ルーシーの使っている宿はそれなりに大きいところだった。
3階建ての1階が食堂、2階と3階が客室になっている。
「おかえりルーシー。怪我はないかい?」
恰幅のいい中年女性が、ルーシーを出迎える。
「特に問題はなかったよ」
実際はオークに襲われて死にそうだったが。
「晩ごはんでいいかい?」
「いえ、その前に彼の部屋を取りたいんだけど」
「あら、恋人?」
「ばっ――違うわよっ……!」
チラリとケントを見て言った女性の言葉に、ルーシーは随分とうろたえた。
そんなルーシーを軽くからかいながら、女将と思われる女性が手続きを進めていく。
「なに、お金はルーシーが払うの? もしかしてヒモ?」
「だからそんなんじゃないってば!」
「あんた、ルーシーのことだましちゃだめよー」
「やめてよおばさんったら」
冗談めかして言う女将だったが、ケントを見る目は鋭かった。
どうやらルーシーは、彼女に好かれているらしい。
「ご心配なく。明日には正式に冒険者登録が終わりますし、立て替えてもらったぶんはすぐに返しますよ」
「あらぁ、随分と物腰が柔らかいのねぇ」
手続きはすぐに終わり、とりあえず10日間泊まることになった。
1泊あたり素泊まりで3000シクルだが、10日ぶんの3万シクル先払いで毎朝500シクルの朝食がサービスとなる。
ただし、朝食をとらない場合の返金はない。
ちなみに長期滞在だと30日で6万シクルとなり、ルーシーはそのプランでここに住んでいるとのことだった。
「207号室だよ。くれぐれも3階にはいかないように。見つけたらたたき出すからね」
各階に十数部屋あり、2階が男性用、3階が女性用フロアになっている。
「先に荷物を置いてきなよ。私も装備なんかを外すからさ」
「了解」
ルーシーに続いて客室への階段を上る。
「じゃあそっちにいけば客室ね。あたしは上だから」
「わかった。荷物を置いたら下で合流ってことで」
「おっけー。あ、そうだ」
ふと思い出したようにルーシーは腰のポーチへ手をやり、練りようかんを取り出した。
「これ、返すよ」
「いいよ。ここまで案内してくれたお礼にとっといて」
「でも……」
「いいからいいから。それ、そのままでも年単位で持つから、アイテムボックスに入れなくても大丈夫だよ」
「そういうつもりで言ったじゃないんだけど……」
それから少し問答を続けたが、結局ルーシーが折れて、彼女はようかんを受け取ることになった。
「じゃ、あとで」
「ええ」
少し薄暗い廊下を歩き、客室の前に立つ。
「えっと、このカードを当てるんだっけか」
加護板があればそこに認証情報を追加できるらしいが、あいにくケントは持っていないので、女将から1枚のカードを受け取っていた。
それをドアノブの近くにかざすと、カチャリと鍵が開く。
最近のビジネスホテルでも時々見かける、ICカード式ロックのようだと思いながら、ケントはドアを開けて部屋に入った。
「広さもビジホだな、こりゃ」
ケントの言うとおり、客室はビジネスホテルのシングルルーム程度の広さだった。
ベッドの他には小さなサイドテーブルとキャビネット、狭いクローゼットくらいしかない。
トイレは各フロア共用。
風呂はないが浄化施設なるものがあるらしい。
「ふぅ……」
防災グッズや魔石の入ったリュックサックをサイドテーブルに置いたあと、ケントはベッドに座り、息をついた。
「ジャケットは脱いでおくか」
ジャケットとネクタイを外し、クローゼットに備え付けられたハンガーに引っかける。
「さて、やっとメシだ」
宿に入ったときからいい匂いがしていた。
空腹もそろそろ限界だ。
1階で合流したルーシーとケントは、1000シクルの日替わりディナーを注文し、空いた席に座った。
夕食時と言うこともあってか客席は9割がた埋まっていたが、冒険者ギルドほど騒がしくはなかった。
「お待たせしましたー」
ウェイトレスの女性が、日替わりディナーの載ったトレイをふたつ、テーブルに置く。
メインは豚肉のステーキで、小さなパンがふたつ、野菜スープ、赤ワインがセットになっていた。
「なぁ、この豚肉って」
「ケントも今日見たでしょ。オークがドロップするあれよ」
「……つまり、オークの肉ってこと?」
豚に似ているからといって、人型の魔物の肉を食べるというのに、少し抵抗を感じる。
「バカなこと言わないでよ」
ケントの質問に、ルーシーはわずかに眉を寄せた。
「豚肉は豚の肉に決まってるじゃない。家畜の豚と一緒よ」
「そうか、家畜の豚と、ね」
ケントは感心したように呟く。
「とにかく、オークがいくら豚の頭をしてるからって、あれから肉が取れるわけじゃないわ。倒せば消えるの、見たでしょう?」
「たしかに。あれじゃあ肉はとれないな」
「そういうこと。オークが落とすのは豚肉なのよ」
なんだかよくわからないが、そういうことらしい。
「そんなことより、早く食べましょう。冷めるわよ」「そうだな」
料理はどれもしっかりと味付けがされて美味しかった。
○●○●
「じゃあ、明日の朝ここでごはんを食べてから、ギルドにいきましょうか」
「了解」
ルーシーと別れたケントは、一度部屋に戻ってジャケットを羽織り、ネクタイは首にかけた状態ですぐに部屋を出た。
そのまま廊下を突き当たりまで歩くと、浄化施設なる物があった。
なんでも、魔術とやらで身体や衣服をきれいにしてくれるらしい。
ここの利用客は、1泊につき1回無料でこの浄化施設を使えるのだとか。
服も綺麗になるというので、ケントはわざわざジャケットとネクタイを身につけたのだ。
「えっと、ここかな」
部屋と同じようにカードを当てると、浄化施設のドアが開く。
中は少し明るい半畳ほどのスペースで、特になにもなかった。
《浄化を開始します。しばらくお待ちください》
室内にアナウンスが流れる。
「おお……」
すると、身体全体が淡く光り始めた。
1分ほどで徐々に光が収まり、やがて完全に消える。
《浄化を終了しました。ありがとうございました》
アナウンスのあと、カチャリと入り口の鍵が開いた。
「……すごいな」
半日以上歩き通して身体中汗でベタベタだったが、シャワーを浴びて洗濯を終えた服を着たようにスッキリした。
驚いたことに口の中まで歯を磨いたようにさっぱりしていた。
「なるほど、だから食後なのか」
実は食事の前に身体をきれいにしておきたいとルーシーに言ったのだが、食後まで待つよう言われていたのだ。
「よっこいせ、と」
ルームウェアなどはないので、下着姿になってベッドに転がる。
脱いだときに確認したが、蒸れていた靴の中や靴下もさらさらに乾燥していた。
「さて……」
ジャケットのポケットから取り出していた、吸いかけのミントパイプを咥えた。
これも浄化施設で綺麗になっているはずだから、吸い口に付着していた唾液や雑菌などは気にしなくていいだろう
「すぅ……」
パイプを咥えたまま、大きく息を吸い込む。
ハーブの清涼感はまだ充分に残っていた。
うまく吸えば数日はもつ。
まだストックはたくさんあるが、補充のあてがないので、できるだけ大切に吸ったほうがいいだろう。
「ふぅー……」
寝転がってミントパイプを咥えたまま、口の端から息を吐きながら、ぼんやりと天井を眺める。
部屋の四隅にランプのような照明器具があり、それが淡い光を放って室内を明るくしていた。
「異世界、だよなぁ……」
いまさらかもしれないが、ケントはそう呟いた。
突然景色が変わったときは、どこか遠くへきてしまったのかと思った。
あるいは、夢でも見ているのかと。
しかしそのあとに現れた、猫の耳と尻尾を持つルーシーという女性。
豚の頭に人の身体を持つオーク。
光の弾を放つマスケット銃。
その弾を受けて、ドロップアイテムを残して消える魔物。
加護板とかいうよくわからない板に表示された謎の文字。
なぜかそれが読めるという事実。
市壁に囲まれた欧風の町。
冒険者ギルド。
魔術で身体をきれいにしてくれる浄化施設。
「ゲームっぽい世界だ……」
ケントが幼少のころから親しんでいる、少し古いタイプのロールプレイングゲームみたいだと思った。
そして最近ライトノベルやアニメなどで流行っている、異世界転移ものによくある状況だとも。
「もう、帰れないのかな……」
ふと、祖母の顔が思い浮かぶ。
そして視線を動かすと、祖母に持たされたリュックサックが目に入る。
「ばあちゃん、なにか知ってたのか?」
ケントが例の土地を訪れると知った祖母は、わざわざ防災セットの入ったリュックサックを自分に持たせた。
さらに、祖父の形見のスーツまで着るように言った。
もしかすると、スーツにもなにか意味があるのだろうか。
それとも偶然か?
「あと、アルファベット」
町に入って、いろいろなところを見た。
意識して文字を読んだりもしたが、どれも見たことのない文字だった。
それが読めるというのも不思議な話ではある。
ただ、ルーシーの持っていた加護板とやらに表示されたなかで、【HP】や【MP】、ほかにランクを示す【G】や【F】といった文字は、そのままアルファベットだった。
そしてルーシーはそれらを【神代文字】と呼んでいた。
この世界と自分が元いた世界に、なにか関係があるのだろうか。
「夢、かもな」
もしかすると、目覚めたら実家のベッドかもしれない。
あるいは会社が潰れるところからが夢で、引き払ったはずのアパートで目を覚まし、以前のような会社勤めが続くのだろうか。
「……それは、いやかも」
せめて美子とのことは、なかったことにしたくなかった。
ただ、あの出来事もまた、夢のようだとも思う。
財布の中には彼女の部屋の鍵が入っているのだが、いまは確認することができない。
どこまでが現実で、どこから夢なのか。
あるいはすべてが現実で、明日ここで普通に目覚めるのか。
どれが自分にとって幸せなのか、ケントはよくわからないまま、まどろみにまかせて意識を手放した。
3階建ての1階が食堂、2階と3階が客室になっている。
「おかえりルーシー。怪我はないかい?」
恰幅のいい中年女性が、ルーシーを出迎える。
「特に問題はなかったよ」
実際はオークに襲われて死にそうだったが。
「晩ごはんでいいかい?」
「いえ、その前に彼の部屋を取りたいんだけど」
「あら、恋人?」
「ばっ――違うわよっ……!」
チラリとケントを見て言った女性の言葉に、ルーシーは随分とうろたえた。
そんなルーシーを軽くからかいながら、女将と思われる女性が手続きを進めていく。
「なに、お金はルーシーが払うの? もしかしてヒモ?」
「だからそんなんじゃないってば!」
「あんた、ルーシーのことだましちゃだめよー」
「やめてよおばさんったら」
冗談めかして言う女将だったが、ケントを見る目は鋭かった。
どうやらルーシーは、彼女に好かれているらしい。
「ご心配なく。明日には正式に冒険者登録が終わりますし、立て替えてもらったぶんはすぐに返しますよ」
「あらぁ、随分と物腰が柔らかいのねぇ」
手続きはすぐに終わり、とりあえず10日間泊まることになった。
1泊あたり素泊まりで3000シクルだが、10日ぶんの3万シクル先払いで毎朝500シクルの朝食がサービスとなる。
ただし、朝食をとらない場合の返金はない。
ちなみに長期滞在だと30日で6万シクルとなり、ルーシーはそのプランでここに住んでいるとのことだった。
「207号室だよ。くれぐれも3階にはいかないように。見つけたらたたき出すからね」
各階に十数部屋あり、2階が男性用、3階が女性用フロアになっている。
「先に荷物を置いてきなよ。私も装備なんかを外すからさ」
「了解」
ルーシーに続いて客室への階段を上る。
「じゃあそっちにいけば客室ね。あたしは上だから」
「わかった。荷物を置いたら下で合流ってことで」
「おっけー。あ、そうだ」
ふと思い出したようにルーシーは腰のポーチへ手をやり、練りようかんを取り出した。
「これ、返すよ」
「いいよ。ここまで案内してくれたお礼にとっといて」
「でも……」
「いいからいいから。それ、そのままでも年単位で持つから、アイテムボックスに入れなくても大丈夫だよ」
「そういうつもりで言ったじゃないんだけど……」
それから少し問答を続けたが、結局ルーシーが折れて、彼女はようかんを受け取ることになった。
「じゃ、あとで」
「ええ」
少し薄暗い廊下を歩き、客室の前に立つ。
「えっと、このカードを当てるんだっけか」
加護板があればそこに認証情報を追加できるらしいが、あいにくケントは持っていないので、女将から1枚のカードを受け取っていた。
それをドアノブの近くにかざすと、カチャリと鍵が開く。
最近のビジネスホテルでも時々見かける、ICカード式ロックのようだと思いながら、ケントはドアを開けて部屋に入った。
「広さもビジホだな、こりゃ」
ケントの言うとおり、客室はビジネスホテルのシングルルーム程度の広さだった。
ベッドの他には小さなサイドテーブルとキャビネット、狭いクローゼットくらいしかない。
トイレは各フロア共用。
風呂はないが浄化施設なるものがあるらしい。
「ふぅ……」
防災グッズや魔石の入ったリュックサックをサイドテーブルに置いたあと、ケントはベッドに座り、息をついた。
「ジャケットは脱いでおくか」
ジャケットとネクタイを外し、クローゼットに備え付けられたハンガーに引っかける。
「さて、やっとメシだ」
宿に入ったときからいい匂いがしていた。
空腹もそろそろ限界だ。
1階で合流したルーシーとケントは、1000シクルの日替わりディナーを注文し、空いた席に座った。
夕食時と言うこともあってか客席は9割がた埋まっていたが、冒険者ギルドほど騒がしくはなかった。
「お待たせしましたー」
ウェイトレスの女性が、日替わりディナーの載ったトレイをふたつ、テーブルに置く。
メインは豚肉のステーキで、小さなパンがふたつ、野菜スープ、赤ワインがセットになっていた。
「なぁ、この豚肉って」
「ケントも今日見たでしょ。オークがドロップするあれよ」
「……つまり、オークの肉ってこと?」
豚に似ているからといって、人型の魔物の肉を食べるというのに、少し抵抗を感じる。
「バカなこと言わないでよ」
ケントの質問に、ルーシーはわずかに眉を寄せた。
「豚肉は豚の肉に決まってるじゃない。家畜の豚と一緒よ」
「そうか、家畜の豚と、ね」
ケントは感心したように呟く。
「とにかく、オークがいくら豚の頭をしてるからって、あれから肉が取れるわけじゃないわ。倒せば消えるの、見たでしょう?」
「たしかに。あれじゃあ肉はとれないな」
「そういうこと。オークが落とすのは豚肉なのよ」
なんだかよくわからないが、そういうことらしい。
「そんなことより、早く食べましょう。冷めるわよ」「そうだな」
料理はどれもしっかりと味付けがされて美味しかった。
○●○●
「じゃあ、明日の朝ここでごはんを食べてから、ギルドにいきましょうか」
「了解」
ルーシーと別れたケントは、一度部屋に戻ってジャケットを羽織り、ネクタイは首にかけた状態ですぐに部屋を出た。
そのまま廊下を突き当たりまで歩くと、浄化施設なる物があった。
なんでも、魔術とやらで身体や衣服をきれいにしてくれるらしい。
ここの利用客は、1泊につき1回無料でこの浄化施設を使えるのだとか。
服も綺麗になるというので、ケントはわざわざジャケットとネクタイを身につけたのだ。
「えっと、ここかな」
部屋と同じようにカードを当てると、浄化施設のドアが開く。
中は少し明るい半畳ほどのスペースで、特になにもなかった。
《浄化を開始します。しばらくお待ちください》
室内にアナウンスが流れる。
「おお……」
すると、身体全体が淡く光り始めた。
1分ほどで徐々に光が収まり、やがて完全に消える。
《浄化を終了しました。ありがとうございました》
アナウンスのあと、カチャリと入り口の鍵が開いた。
「……すごいな」
半日以上歩き通して身体中汗でベタベタだったが、シャワーを浴びて洗濯を終えた服を着たようにスッキリした。
驚いたことに口の中まで歯を磨いたようにさっぱりしていた。
「なるほど、だから食後なのか」
実は食事の前に身体をきれいにしておきたいとルーシーに言ったのだが、食後まで待つよう言われていたのだ。
「よっこいせ、と」
ルームウェアなどはないので、下着姿になってベッドに転がる。
脱いだときに確認したが、蒸れていた靴の中や靴下もさらさらに乾燥していた。
「さて……」
ジャケットのポケットから取り出していた、吸いかけのミントパイプを咥えた。
これも浄化施設で綺麗になっているはずだから、吸い口に付着していた唾液や雑菌などは気にしなくていいだろう
「すぅ……」
パイプを咥えたまま、大きく息を吸い込む。
ハーブの清涼感はまだ充分に残っていた。
うまく吸えば数日はもつ。
まだストックはたくさんあるが、補充のあてがないので、できるだけ大切に吸ったほうがいいだろう。
「ふぅー……」
寝転がってミントパイプを咥えたまま、口の端から息を吐きながら、ぼんやりと天井を眺める。
部屋の四隅にランプのような照明器具があり、それが淡い光を放って室内を明るくしていた。
「異世界、だよなぁ……」
いまさらかもしれないが、ケントはそう呟いた。
突然景色が変わったときは、どこか遠くへきてしまったのかと思った。
あるいは、夢でも見ているのかと。
しかしそのあとに現れた、猫の耳と尻尾を持つルーシーという女性。
豚の頭に人の身体を持つオーク。
光の弾を放つマスケット銃。
その弾を受けて、ドロップアイテムを残して消える魔物。
加護板とかいうよくわからない板に表示された謎の文字。
なぜかそれが読めるという事実。
市壁に囲まれた欧風の町。
冒険者ギルド。
魔術で身体をきれいにしてくれる浄化施設。
「ゲームっぽい世界だ……」
ケントが幼少のころから親しんでいる、少し古いタイプのロールプレイングゲームみたいだと思った。
そして最近ライトノベルやアニメなどで流行っている、異世界転移ものによくある状況だとも。
「もう、帰れないのかな……」
ふと、祖母の顔が思い浮かぶ。
そして視線を動かすと、祖母に持たされたリュックサックが目に入る。
「ばあちゃん、なにか知ってたのか?」
ケントが例の土地を訪れると知った祖母は、わざわざ防災セットの入ったリュックサックを自分に持たせた。
さらに、祖父の形見のスーツまで着るように言った。
もしかすると、スーツにもなにか意味があるのだろうか。
それとも偶然か?
「あと、アルファベット」
町に入って、いろいろなところを見た。
意識して文字を読んだりもしたが、どれも見たことのない文字だった。
それが読めるというのも不思議な話ではある。
ただ、ルーシーの持っていた加護板とやらに表示されたなかで、【HP】や【MP】、ほかにランクを示す【G】や【F】といった文字は、そのままアルファベットだった。
そしてルーシーはそれらを【神代文字】と呼んでいた。
この世界と自分が元いた世界に、なにか関係があるのだろうか。
「夢、かもな」
もしかすると、目覚めたら実家のベッドかもしれない。
あるいは会社が潰れるところからが夢で、引き払ったはずのアパートで目を覚まし、以前のような会社勤めが続くのだろうか。
「……それは、いやかも」
せめて美子とのことは、なかったことにしたくなかった。
ただ、あの出来事もまた、夢のようだとも思う。
財布の中には彼女の部屋の鍵が入っているのだが、いまは確認することができない。
どこまでが現実で、どこから夢なのか。
あるいはすべてが現実で、明日ここで普通に目覚めるのか。
どれが自分にとって幸せなのか、ケントはよくわからないまま、まどろみにまかせて意識を手放した。
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