誰にでもできる異世界救済 ~【トライ&エラー】と【ステータス】でニートの君も今日から勇者だ!~

平尾正和/ほーち

文字の大きさ
上 下
96 / 100
第四章 パーティーを組もう

4-25 ダンジョン制覇

しおりを挟む
 SPだけじゃなく、お金にも余裕ができたので、たまに州都エムゼタに行っていろいろ魔術を覚えたり服を買ったりした。
 所持品にある傷用ポーションは、回復魔術を施した液体で、飲んでもかけても効く。
 魔力ポーションってのは魔石を溶かしこんだ液体で、くっそまずいけど一瓶(100mlくらい?)でMPが100くらい回復する。
 ヒトにしては魔力が多い俺と、魔力に関しては右に出るもののいないハイエルフのデルフィにとって、魔術なんて使い放題みたいなもんだから、どちらのポーションもあんま出番はないけど、いざというときのために備えてる感じかな。
 その他の荷物は、基本的に収納庫行き。

「ん、紅葉もみじ?」

 20階層台攻略も後半にさしかかったころ、最後にエムゼタへ行ったとき、赤く色づき始めた木が街のあちこちに見えた。

「もうすぐ紅葉こうようの季節なのね」

 なるほど、こちらの世界にも、紅葉とかあるんだな。

「樹海の紅葉は、それは見事なものよ」
「へえ、見てみたいな」
「でも、普通の人には見えないの」
「なんだそりゃ」
「でも私が一緒なら、見られるわ」
「よくわからないけど、一緒に見れるといいね」
「……そうね」

 そんなとりとめのない会話を、ふと思い出した。
 そのとき、デルフィはとても寂しそうな表情を浮かべていたような気がする。

 さて、探索のほうに話を戻すが、デルフィはうまい具合に天啓がおりてるようで、たぶん〈多重詠唱〉と〈詠唱短縮〉はそれなりのレベルになってると思う。
 魔弓で放つ《矢》のリロード時間が0.5秒くらいだし、たまに別属性の《矢》を2~3発同時に撃ったりしてるし。
 あと〈風魔法〉も習得できたみたいで、たまに範囲攻撃とかやってる。
 ちょっと恥ずかしい言い方になるけど、デルフィとふたりなら、怖いものなんてない。

**********

「ショウスケ、どうしたのぼーっとして?」
「いや、このまま進むか、いったん戻るか考えててね」

 いましがた俺たちは、29階層のボスであるリッチーを倒し、目の前には転移陣が出ている。
 通常であれば次の階層に進んで帰還玉で帰るんだが、30階層は外の転移陣からダイレクトに飛べないので、行ってすぐに帰るなら、いま帰っても同じことだ。

 ここでいったん戻っても、倒したボスは復活しないので、もう一回ボスエリアにさえ到着すれば、すぐに転移陣が現れるはずだ。
 しかしここ29階層はクッソ広いし、つぎ来たときはボスエリアの場所が変わっているので、1回戻ってもう一度、となるとさらに2~3日必要になる。
 そこまで消耗してないし、連戦もできるとは思うんだが、大事をとってスタート地点を更新しておきたい、という思いもある。

「私はこのまま、もう一戦いっても平気よ」

 デルフィもこう言ってるし、一気に行くか。

「そうだな。じゃ、行こう」

 うん、デルフィも大丈夫っぽいし、このまま行ってしまおう。

 転移陣に乗り、景色が一変する。
 先ほどまでの暗い夜の荒野から一転、快晴の草原が現れた。
 30階層はなんの遮蔽物もない、ただただ広い草原エリア。
 そして転移した直後にボスが現れる。
 光の粒子が集まって形成するのは……、

「おお、ドラゴン!!」
「話に聞いた通りね」

 体長10mはあろうかと思われる巨大なドラゴンだった。

「ガアアァァァ!!!」

 顕現するなり、耳をつんざく咆哮を上げるドラゴン。
 ここは最初っから、全力で挑ませてもらうぜ。

 俺はドラゴンに向かって走りながら《上級自己身体強化》をかけ、さらに《炎纏鎧えんてんがい》でファイアブレスへの耐性を上げておく。
 敵の情報については、事前にきっちり調べてあるからな。

 走る俺の脇を、あらゆる属性の《矢》が何発も通りぬけ、ドラゴンへ飛んで行く。
 このドラゴン、デフォルトで属性に対する耐性はないのだが、直前に食らった攻撃の属性に対して、多少の耐性を得る、という少々意地悪な仕様になっている。
 なので、複数の属性を持つ攻撃を、ランダムに当てていくのが攻略の糸口となるようだ。

 もしくは、物理で押し切るか。

 弓術を極め、長めの詠唱を加えたデルフィの《矢》は、一発一発が対物ライフル並の威力になっている。
 出現直後は粋がってこちらを威嚇していたドラゴンだったが、《矢》を一発食らうごとにのけぞり、よろめき、まだ開始から10秒とたっていないのにもうボロボロだった。

 ――このままでは俺の出番がなくなってしまう!!

 俺はさらに、体内へ巡らせる魔力量を上げて身体能力を強化し、《魔突飛剣》の詠唱を終えたレイピアに、無属性の魔力を上乗せする。

「そりゃぁーっ!!」

 ドラゴンの懐へ一気に踏み込み、刺突を繰り出す。
 レイピアから放たれた、物理と魔術を合わせた攻撃が、ドラゴンの顎から脳天を容赦なく貫いた。

「ガアアァァ……」

 断末魔の雄叫びを上げたドラゴンは、地面に倒れることなく消滅した。

「意外と楽勝だったわね」

 軽い足取りで、デルフィが近づいてくる。

「な。俺らってもしかして結構強い?」
「どうでしょうね。あんまり調子には乗らないほうがいいと思うけど」
「それもそうだね」

 ドラゴンがいたところには、魔石が山積みになっている。
 たしか、100kgくらいの魔石が手に入る、って話だったな。
 残念ながら、今回ドロップはないようだ。

 魔石を《収納》し終えて一息ついたところで、急に景色が変わった。
 なんか普通の部屋みたいなところだ。
 生活感のある部屋の奥にソファがあり、そこに人が座っている。

「やあ、ダンジョン制覇おめでとう」

 そのソファに座っている男が、声をかけてきた。
 ただ、そいつは顔つきといい服装といい、どうみても日本人だった。
しおりを挟む
新作始めました!
【ハズレ職】【追放】【覚醒】【賢者】【無双】【ダンジョン攻略】に【成り上がり】【ざまぁ】そして【ハーレム】!
【男の欲望】【全部入り】の【本格】【エロティック】【ハイファンタジー】!!
ハズレ赤魔道士は賢者タイムに無双する
よろしくお願いします!!
感想 31

あなたにおすすめの小説

世界樹を巡る旅

ゴロヒロ
ファンタジー
偶然にも事故に巻き込まれたハルトはその事故で勇者として転生をする者たちと共に異世界に向かう事になった そこで会った女神から頼まれ世界樹の迷宮を攻略する事にするのだった カクヨムでも投稿してます

[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!

どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入! 舐めた奴らに、真実が牙を剥く! 何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ? しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない? 訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、 なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト! そして…わかってくる、この異世界の異常性。 出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。 主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。 相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。 ハーレム要素は、不明とします。 復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。 追記  2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。 8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。 2024/02/23 アルファポリスオンリーを解除しました。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

追放されたギルドの書記ですが、落ちこぼれスキル《転写》が覚醒して何でも《コピー》出来るようになったので、魔法を極めることにしました

遥 かずら
ファンタジー
冒険者ギルドに所属しているエンジは剣と魔法の才能が無く、文字を書くことだけが取り柄であった。落ちこぼれスキル【転写】を使いギルド帳の筆記作業で生計を立てていた。そんなある日、立ち寄った勇者パーティーの貴重な古代書を間違って書き写してしまい、盗人扱いされ、勇者によってギルドから追放されてしまう。 追放されたエンジは、【転写】スキルが、物やスキル、ステータスや魔法に至るまで何でも【コピー】できるほどに極められていることに気が付く。 やがて彼は【コピー】マスターと呼ばれ、世界最強の冒険者となっていくのであった。

いずれ殺される悪役モブに転生した俺、死ぬのが嫌で努力したら規格外の強さを手に入れたので、下克上してラスボスを葬ってやります!

果 一
ファンタジー
二人の勇者を主人公に、ブルガス王国のアリクレース公国の大戦を描いた超大作ノベルゲーム『国家大戦・クライシス』。ブラック企業に勤務する久我哲也は、日々の疲労が溜まっている中、そのゲームをやり込んだことにより過労死してしまう。 次に目が覚めたとき、彼はゲーム世界のカイム=ローウェンという名の少年に生まれ変わっていた。ところが、彼が生まれ変わったのは、勇者でもラスボスでもなく、本編に名前すら登場しない悪役サイドのモブキャラだった! しかも、本編で配下達はラスボスに利用されたあげく、見限られて殺されるという運命で……? 「ちくしょう! 死んでたまるか!」 カイムは、殺されないために努力することを決める。 そんな努力の甲斐あってか、カイムは規格外の魔力と実力を手にすることとなり、さらには原作知識で次々と殺される運命だった者達を助け出して、一大勢力の頭へと駆け上る! これは、死ぬ運命だった悪役モブが、最凶へと成り上がる物語だ。    本作は小説家になろう、カクヨムでも公開しています 他サイトでのタイトルは、『いずれ殺される悪役モブに転生した俺、死ぬのが嫌で努力したら規格外の強さを手に入れたので、下克上してラスボスを葬ってやります!~チート魔法で無双してたら、一大勢力を築き上げてしまったんだが~』となります

食うために軍人になりました。

KBT
ファンタジー
 ヴァランタイン帝国の片田舎ダウスター領に最下階位の平民の次男として生まれたリクト。  しかし、両親は悩んだ。次男であるリクトには成人しても継ぐ土地がない。  このままではこの子の未来は暗いものになってしまうだろう。  そう思った両親は幼少の頃よりリクトにを鍛え上げる事にした。  父は家の蔵にあったボロボロの指南書を元に剣術を、母は露店に売っていた怪しげな魔導書を元に魔法を教えた。    それから10年の時が経ち、リクトは成人となる15歳を迎えた。  両親の危惧した通り、継ぐ土地のないリクトは食い扶持を稼ぐために、地元の領軍に入隊試験を受けると、両親譲りの剣術と魔法のおかげで最下階級の二等兵として無事に入隊する事ができた。  軍と言っても、のどかな田舎の軍。  リクトは退役するまで地元でのんびり過ごそうと考えていたが、入隊2日目の朝に隣領との戦争が勃発してしまう。  おまけに上官から剣の腕を妬まれて、単独任務を任されてしまった。  その任務の最中、リクトは平民に対する貴族の専横を目の当たりにする。  生まれながらの体制に甘える貴族社会に嫌気が差したリクトは軍人として出世して貴族の専横に対抗する力を得ようと立身出世の道を歩むのだった。    剣と魔法のファンタジー世界で軍人という異色作品をお楽しみください。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

処理中です...