誰にでもできる異世界救済 ~【トライ&エラー】と【ステータス】でニートの君も今日から勇者だ!~

平尾正和/ほーち

文字の大きさ
上 下
82 / 100
第四章 パーティーを組もう

4-11 再びダンジョンへ

しおりを挟む
 結局あのあとのデルフィだが、乗り換え後の馬車に乗って30分くらいでようやく覚醒してきたようで、エムゼタシンテ・ダンジョンに着く頃にはしっかり目が覚めていた。

「ねぇ……、見たでしょ?」
「なにを?」
「……寝顔」

 ええ、ばっちり拝見したうえで心のメモリーに保存させていただきましたとも。
 それ以上に、起こしたときの感触とか体温とかのほうが――、

「ちょ……ニヤニヤしてんじゃないわよ!」
「あ、ああ、ごめん……」

 ――いかんいかん、せっかくパーティーを組めるようになったんだ。
 これ以上嫌われないようにしないとな。

「えーっと、なんといいますか、その……不可抗力と言いますか……と、とにかくごめんなさい!」

 女の人が機嫌を損ねたときは、男が謝るのが正解だって、ネットで見たから、ひたすら頭を下げることにした。

「べ、べつに謝らなくてもいいわよ……」

 その声に顔を上げると、頬を染めて視線を逸らし、綺麗な金髪を指でくるくるしてるデルフィがいた。

「減るもんじゃ、ないし……」

 俺の心のメモリー残量はガンガン消費されてますけどねー!
 というわけで、その表情もしっかり保存!

「だ、だからニヤニヤするんじゃないの!!」
「ごふっ……」

 デルフィのショートアッパーがみぞおちに突き刺さる。

「はぁ……それにしても、ちょっと汗かいちゃったわね」

 革張りのシートだったから、どうしても蒸れちゃうよね。

「《浄化》設備付きの宿があるから、軽く寄っていく?」
「いいわよ、自分で《浄化》するから」
「え、《浄化》使えるの!?」
「《下級浄化》だけどね。真っ先に覚えたわよ」

 そう言って胸を張るデルフィ。

「優先順位おかしくない?」

 《下級浄化》を覚えるお金で、いったい何本の矢が買えると思ってんのさ……。

「う、うるさいわね……」

 まぁ、女の子だし、清潔感は命より大事なのかも知れないけどさ。

「ほら、ショウスケにもかけてあげるから、そんな呆れたような顔しないでよ……」
「あ、いや……別に呆れては……」

 しまった、顔に出てたか。
 ほどなく、蒸れていた服の中が、少しスッキリするのを感じた。

「ありがとう」
「どういたしまして。さ、いきましょ」

 そんなこんなで、俺たちふたりは無事ダンジョンに到着した。

**********

 デルフィと一緒に、彼女のダンジョンカード発行に付き添ったあと、さっそく装備を整えて受付に向かう。

「おお、ソロで5階層まで言ったか。じゃあ次は7階層な」

 受付のおっさんに感心されつつ規制を解除してもらう。

「面倒だから10階層まで解除してくれません?」
「だめだめ。言っとくけど、Eランクソロの場合、8階層以降は1階層ずつの規制になるからな」
「ええー、マジっすか?」
「なに嫌そうな顔してんだよ。普通1回しか倒せない階層ボスと2回やれるのは、規制解除後の再アタックの時だけなんだぜ? むしろ1階層ごとに規制かけてくれ、って頼みを断ることのほうが多いのによ」

 そういやここのダンジョンの階層ボスは、原則1回しか倒せないんだったな。
 そうしないと、効率重視で階層ボスとばっか戦う連中が出てくるから、ダンジョンコア制圧時に設定を変更したとかなんとか。
 パーティーの中にひとりでも未経験のメンバーがいれば何度でも戦えるらしいが、そこまではさすがに規制しないらしい。
 ボスと戦いたいがためにメンバーを入れ替えるほうが、効率は悪いからね。

「まぁ冒険者ランクをDまで上げるなり、パーティー組むなりしたら規制は緩められるけどな。焦らず頑張れや」
「うっす、がんばります」

 俺のうしろに並んだデルフィが、おっさんの説明を聞き終えるのを待ち、一緒に入り口の転移陣へ。

「じゃあ俺はこっちだから」
「私はこっちに乗ればいいのね」

 俺たちは離れ、別々の転移陣に乗る。
 デルフィは1階層行き、俺は階層指定で5階層からだ。

「デルフィ、無理しないで」
「ええ。ショウスケもね」

 そんなわけで5階層から探索開始。
 6階層からは、トレントやマンドラゴラみたいな、植物系モンスターが出現するようになる。
 どっちもドロップアイテムが、そこそこ高額なのが嬉しいね。

 探索はいたって順調。
 剣での攻撃時はできるだけ《聖纏剣》を使うようにしている。
 1回斬るごとに効果が切れるのは面倒だし、聖属性が付与されるだけで攻撃力が上がるわけじゃないんだけど、それでも対象が刃に直接当たるのは防げるのでね。

 7階層を制覇した時点で、八刻半(午後5時)を過ぎていた。
今日のところはこれで終わりにしておこう。

「よう、今日も順調かい?」

 受付をのぞきに行くと、おっさんが声をかけてきた。
 ダンジョンは24時間営業なんだけど、夜に探索する人は少ないみたいで、この時間になると受付もヒマみたいだな。

「ええ、無事7階層まで」
「へええ、そりゃすげぇ」

 そういや、デルフィのほうはどうなんだろう。

「あの、最初俺の次に並んでた娘なんですけど……」
「おう、あのお嬢ちゃんなら、2時間くらい前に2階層を攻略して、再アタックに入ったぜ」
「あの、様子はどうでしたか?」
「なんだ、心配なのか? だったらパーティーでも組みゃいいだろうが」
「いや、いろいろありまして……。近々パーティーは組む予定なんですけど」
「へええ……まだパーティーメンバーじゃねえってんなら、あの嬢ちゃんはお前さんのコレか?」

 おっさんはそう言って小指を立てた。
 ……こっちでもそういうハンドサインはあるんだな。

「い、いやいや、そういうんじゃ……」

 っつーか、このおっさん、いきなりなに言い出すんだよ!

「はっはっは! ふたりして同じような反応しやがって、おもしれぇなぁ」

 いや、おっさん余計なことすんなって!
 嫌われちゃったらどうすんのさ!

「そ、そんなことより、彼女に変わった様子はなかったんですか? 無理してそうだとか」
「心配すんな兄ちゃん。俺だってこの道ウン十年のベテランだぜ? ヤバそうなやつは通さねぇよ」
「それなら、いいです」

 どうやら無理はしてなさそうなので、ここはおっさんを信じて換金にでもいくか。
しおりを挟む
新作始めました!
【ハズレ職】【追放】【覚醒】【賢者】【無双】【ダンジョン攻略】に【成り上がり】【ざまぁ】そして【ハーレム】!
【男の欲望】【全部入り】の【本格】【エロティック】【ハイファンタジー】!!
ハズレ赤魔道士は賢者タイムに無双する
よろしくお願いします!!
感想 31

あなたにおすすめの小説

追放されたギルドの書記ですが、落ちこぼれスキル《転写》が覚醒して何でも《コピー》出来るようになったので、魔法を極めることにしました

遥 かずら
ファンタジー
冒険者ギルドに所属しているエンジは剣と魔法の才能が無く、文字を書くことだけが取り柄であった。落ちこぼれスキル【転写】を使いギルド帳の筆記作業で生計を立てていた。そんなある日、立ち寄った勇者パーティーの貴重な古代書を間違って書き写してしまい、盗人扱いされ、勇者によってギルドから追放されてしまう。 追放されたエンジは、【転写】スキルが、物やスキル、ステータスや魔法に至るまで何でも【コピー】できるほどに極められていることに気が付く。 やがて彼は【コピー】マスターと呼ばれ、世界最強の冒険者となっていくのであった。

世界樹を巡る旅

ゴロヒロ
ファンタジー
偶然にも事故に巻き込まれたハルトはその事故で勇者として転生をする者たちと共に異世界に向かう事になった そこで会った女神から頼まれ世界樹の迷宮を攻略する事にするのだった カクヨムでも投稿してます

念動力ON!〜スキル授与の列に並び直したらスキル2個貰えた〜

ばふぉりん
ファンタジー
 こんなスキルあったらなぁ〜?  あれ?このスキルって・・・えい〜できた  スキル授与の列で一つのスキルをもらったけど、列はまだ長いのでさいしょのすきるで後方の列に並び直したらそのまま・・・もう一個もらっちゃったよ。  いいの?

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!

どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入! 舐めた奴らに、真実が牙を剥く! 何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ? しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない? 訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、 なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト! そして…わかってくる、この異世界の異常性。 出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。 主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。 相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。 ハーレム要素は、不明とします。 復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。 追記  2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。 8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。 2024/02/23 アルファポリスオンリーを解除しました。

スキル『日常動作』は最強です ゴミスキルとバカにされましたが、実は超万能でした

メイ(旧名:Mei)
ファンタジー
この度、書籍化が決定しました! 1巻 2020年9月20日〜 2巻 2021年10月20日〜 3巻 2022年6月22日〜 これもご愛読くださっている皆様のお蔭です! ありがとうございます! 発売日に関しましては9月下旬頃になります。 題名も多少変わりましたのでここに旧題を書いておきます。 旧題:スキル『日常動作』は最強です~ゴミスキルだと思ったら、実は超万能スキルでした~ なお、書籍の方ではweb版の設定を変更したところもありますので詳しくは設定資料の章をご覧ください(※こちらについては、まだあげていませんので、のちほどあげます)。 ────────────────────────────  主人公レクスは、12歳の誕生日を迎えた。12歳の誕生日を迎えた子供は適正検査を受けることになっていた。ステータスとは、自分の一生を左右するほど大切であり、それによって将来がほとんど決められてしまうのだ。  とうとうレクスの順番が来て、適正検査を受けたが、ステータスは子供の中で一番最弱、職業は無職、スキルは『日常動作』たった一つのみ。挙げ句、レクスははした金を持たされ、村から追放されてしまう。  これは、貧弱と蔑まれた少年が最強へと成り上がる物語。 ※カクヨム、なろうでも投稿しています。

処理中です...