67 / 100
第三章 ダンジョンへ行こう
3-22 エムゼタシンテ・ダンジョン2階層
しおりを挟む その日、新海を呼び止めたのは後輩の遠藤瑞樹だった。常にトップを逃げ切っていた遠藤だが、今月は成績が芳しくない。その相談かと新海は思っていたのだが、意外なことに万葉の話題だった。
「先輩知っていますか、恵さんの旦那さんのこと?」
「ん? いや、全然知らないけど」
「親会社の役員ですよ、田中常務っていう有名な人です」
それに新海が度肝を抜かれていると、遠藤はため息を吐いた。
「はあ……どこで田中常務と出会ったんですかね。私も結婚したい」
「それ、マジ?」
「ええ、本当のことですよ。私の同期で総務の子がいるんですけど、聞いたら教えてくれました」
新海は渋い顔のまま固まり、なんとも言えないまま遠藤を見た。
「先輩なら恵先輩と仲がいいから、てっきり出会いのきっかけとかも知っているかと思ったんですけど」
それなら一人酒をする居酒屋だと言っていた、と新海は呟く。
「そうだったんですね。居酒屋かあ……なんか納得です。田中常務モテるって有名ですし、独身だから居酒屋で女の子誘って遊んでたんですかね」
「確かにモテそうだけど、遊んでるって感じには見えないけどな」
「そうですか? 女性泣かせで有名らしいですよ。恵先輩も、そのうちポイってされちゃうんですかね」
新海は顔には出さなかったが、内心青ざめる。ほら、言わんこっちゃない、とため息を吐いた。
万葉は仕事はバリバリできる割に、恋愛下手で奥手で鈍感だ。いいように遊び人の出来心に乗せられて、ノリで結婚してしまったようにしか思えなかった。
田中常務が手強すぎるのは、言われなくても見て取れる。それをまさか万葉が射落とすとは、新海には到底思えないことだったが、それはみんなおおむね同意見のようだった。
「遊ばれてるんだったとしたら、かわいそうですよね。恵先輩、田中常務の女泣かせっていう話知ってるのかな?」
「さあな。あいつ変なところでドジだから」
「笑えないですよ、女の子にとって、結婚ってかなり重要なことですから」
「それは男も一緒だと思うけど」
「遊び人の人が結婚するって、どういう心情ですかね。もう遊び飽きたか、奥さんを隠れ蓑にいい人っぽく見せておいて、他の女性と遊ぶ、なんてことも考えられますけどね」
遠藤の言い方がなぜか非常に現実的で、新海は肝を冷やす。
「どうせすぐ離婚するって、みんな言ってますけどね……あ、いけない。これ、恵先輩には言わないでくださいね」
遠藤はしまったという顔をして、口元を手で隠した。
「まあ、噂はほどほどにしておけ。あいつの問題なんだろうから、俺たちがとやかく言う話じゃないしな」
「そうですよね。でもいいな、田中常務と結婚。私も一度はあんな人にエスコートしてもらいたいです」
新海はそれに笑っておいた。
「新海先輩は、好きな人いないんですか?」
「はあ、俺? そういう遠藤はどうなんだよ……って、俺がきくとセクハラかパワハラか」
大丈夫ですよ、と遠藤はけらけら笑う。
「俺はまあ、いたけど」
「恵先輩ですか?」
「んー、さあな」
「何だ、恵先輩のことてっきり好きなんだと思っていました。いいじゃないですか、今の情報伝えて別れてもらって、先輩が奪っちゃえ」
「何言ってんだよ……」
「私、恵先輩と新海先輩の方が、お似合いだと思いますけど」
新海はそれに鼻で笑ってしまう。
「で、遠藤は恵の後釜で田中常務と結婚、っていうシナリオか?」
聞くと、遠藤は答えるかわりにニヤリと微笑んだ。その意味深な瞳に、新海は思わず「マジ?」と聞き返した。
「先輩知っていますか、恵さんの旦那さんのこと?」
「ん? いや、全然知らないけど」
「親会社の役員ですよ、田中常務っていう有名な人です」
それに新海が度肝を抜かれていると、遠藤はため息を吐いた。
「はあ……どこで田中常務と出会ったんですかね。私も結婚したい」
「それ、マジ?」
「ええ、本当のことですよ。私の同期で総務の子がいるんですけど、聞いたら教えてくれました」
新海は渋い顔のまま固まり、なんとも言えないまま遠藤を見た。
「先輩なら恵先輩と仲がいいから、てっきり出会いのきっかけとかも知っているかと思ったんですけど」
それなら一人酒をする居酒屋だと言っていた、と新海は呟く。
「そうだったんですね。居酒屋かあ……なんか納得です。田中常務モテるって有名ですし、独身だから居酒屋で女の子誘って遊んでたんですかね」
「確かにモテそうだけど、遊んでるって感じには見えないけどな」
「そうですか? 女性泣かせで有名らしいですよ。恵先輩も、そのうちポイってされちゃうんですかね」
新海は顔には出さなかったが、内心青ざめる。ほら、言わんこっちゃない、とため息を吐いた。
万葉は仕事はバリバリできる割に、恋愛下手で奥手で鈍感だ。いいように遊び人の出来心に乗せられて、ノリで結婚してしまったようにしか思えなかった。
田中常務が手強すぎるのは、言われなくても見て取れる。それをまさか万葉が射落とすとは、新海には到底思えないことだったが、それはみんなおおむね同意見のようだった。
「遊ばれてるんだったとしたら、かわいそうですよね。恵先輩、田中常務の女泣かせっていう話知ってるのかな?」
「さあな。あいつ変なところでドジだから」
「笑えないですよ、女の子にとって、結婚ってかなり重要なことですから」
「それは男も一緒だと思うけど」
「遊び人の人が結婚するって、どういう心情ですかね。もう遊び飽きたか、奥さんを隠れ蓑にいい人っぽく見せておいて、他の女性と遊ぶ、なんてことも考えられますけどね」
遠藤の言い方がなぜか非常に現実的で、新海は肝を冷やす。
「どうせすぐ離婚するって、みんな言ってますけどね……あ、いけない。これ、恵先輩には言わないでくださいね」
遠藤はしまったという顔をして、口元を手で隠した。
「まあ、噂はほどほどにしておけ。あいつの問題なんだろうから、俺たちがとやかく言う話じゃないしな」
「そうですよね。でもいいな、田中常務と結婚。私も一度はあんな人にエスコートしてもらいたいです」
新海はそれに笑っておいた。
「新海先輩は、好きな人いないんですか?」
「はあ、俺? そういう遠藤はどうなんだよ……って、俺がきくとセクハラかパワハラか」
大丈夫ですよ、と遠藤はけらけら笑う。
「俺はまあ、いたけど」
「恵先輩ですか?」
「んー、さあな」
「何だ、恵先輩のことてっきり好きなんだと思っていました。いいじゃないですか、今の情報伝えて別れてもらって、先輩が奪っちゃえ」
「何言ってんだよ……」
「私、恵先輩と新海先輩の方が、お似合いだと思いますけど」
新海はそれに鼻で笑ってしまう。
「で、遠藤は恵の後釜で田中常務と結婚、っていうシナリオか?」
聞くと、遠藤は答えるかわりにニヤリと微笑んだ。その意味深な瞳に、新海は思わず「マジ?」と聞き返した。
0
新作始めました!
【ハズレ職】【追放】【覚醒】【賢者】【無双】【ダンジョン攻略】に【成り上がり】【ざまぁ】そして【ハーレム】!
【男の欲望】【全部入り】の【本格】【エロティック】【ハイファンタジー】!!
ハズレ赤魔道士は賢者タイムに無双する
よろしくお願いします!!
【ハズレ職】【追放】【覚醒】【賢者】【無双】【ダンジョン攻略】に【成り上がり】【ざまぁ】そして【ハーレム】!
【男の欲望】【全部入り】の【本格】【エロティック】【ハイファンタジー】!!
ハズレ赤魔道士は賢者タイムに無双する
よろしくお願いします!!
お気に入りに追加
306
あなたにおすすめの小説

世界樹を巡る旅
ゴロヒロ
ファンタジー
偶然にも事故に巻き込まれたハルトはその事故で勇者として転生をする者たちと共に異世界に向かう事になった
そこで会った女神から頼まれ世界樹の迷宮を攻略する事にするのだった
カクヨムでも投稿してます
[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!
どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入!
舐めた奴らに、真実が牙を剥く!
何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ?
しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない?
訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、
なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト!
そして…わかってくる、この異世界の異常性。
出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。
主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。
相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。
ハーレム要素は、不明とします。
復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。
追記
2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。
8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。
2024/02/23
アルファポリスオンリーを解除しました。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)

追放されたギルドの書記ですが、落ちこぼれスキル《転写》が覚醒して何でも《コピー》出来るようになったので、魔法を極めることにしました
遥 かずら
ファンタジー
冒険者ギルドに所属しているエンジは剣と魔法の才能が無く、文字を書くことだけが取り柄であった。落ちこぼれスキル【転写】を使いギルド帳の筆記作業で生計を立てていた。そんなある日、立ち寄った勇者パーティーの貴重な古代書を間違って書き写してしまい、盗人扱いされ、勇者によってギルドから追放されてしまう。
追放されたエンジは、【転写】スキルが、物やスキル、ステータスや魔法に至るまで何でも【コピー】できるほどに極められていることに気が付く。
やがて彼は【コピー】マスターと呼ばれ、世界最強の冒険者となっていくのであった。

いずれ殺される悪役モブに転生した俺、死ぬのが嫌で努力したら規格外の強さを手に入れたので、下克上してラスボスを葬ってやります!
果 一
ファンタジー
二人の勇者を主人公に、ブルガス王国のアリクレース公国の大戦を描いた超大作ノベルゲーム『国家大戦・クライシス』。ブラック企業に勤務する久我哲也は、日々の疲労が溜まっている中、そのゲームをやり込んだことにより過労死してしまう。
次に目が覚めたとき、彼はゲーム世界のカイム=ローウェンという名の少年に生まれ変わっていた。ところが、彼が生まれ変わったのは、勇者でもラスボスでもなく、本編に名前すら登場しない悪役サイドのモブキャラだった!
しかも、本編で配下達はラスボスに利用されたあげく、見限られて殺されるという運命で……?
「ちくしょう! 死んでたまるか!」
カイムは、殺されないために努力することを決める。
そんな努力の甲斐あってか、カイムは規格外の魔力と実力を手にすることとなり、さらには原作知識で次々と殺される運命だった者達を助け出して、一大勢力の頭へと駆け上る!
これは、死ぬ運命だった悪役モブが、最凶へと成り上がる物語だ。
本作は小説家になろう、カクヨムでも公開しています
他サイトでのタイトルは、『いずれ殺される悪役モブに転生した俺、死ぬのが嫌で努力したら規格外の強さを手に入れたので、下克上してラスボスを葬ってやります!~チート魔法で無双してたら、一大勢力を築き上げてしまったんだが~』となります

食うために軍人になりました。
KBT
ファンタジー
ヴァランタイン帝国の片田舎ダウスター領に最下階位の平民の次男として生まれたリクト。
しかし、両親は悩んだ。次男であるリクトには成人しても継ぐ土地がない。
このままではこの子の未来は暗いものになってしまうだろう。
そう思った両親は幼少の頃よりリクトにを鍛え上げる事にした。
父は家の蔵にあったボロボロの指南書を元に剣術を、母は露店に売っていた怪しげな魔導書を元に魔法を教えた。
それから10年の時が経ち、リクトは成人となる15歳を迎えた。
両親の危惧した通り、継ぐ土地のないリクトは食い扶持を稼ぐために、地元の領軍に入隊試験を受けると、両親譲りの剣術と魔法のおかげで最下階級の二等兵として無事に入隊する事ができた。
軍と言っても、のどかな田舎の軍。
リクトは退役するまで地元でのんびり過ごそうと考えていたが、入隊2日目の朝に隣領との戦争が勃発してしまう。
おまけに上官から剣の腕を妬まれて、単独任務を任されてしまった。
その任務の最中、リクトは平民に対する貴族の専横を目の当たりにする。
生まれながらの体制に甘える貴族社会に嫌気が差したリクトは軍人として出世して貴族の専横に対抗する力を得ようと立身出世の道を歩むのだった。
剣と魔法のファンタジー世界で軍人という異色作品をお楽しみください。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる