誰にでもできる異世界救済 ~【トライ&エラー】と【ステータス】でニートの君も今日から勇者だ!~

平尾正和/ほーち

文字の大きさ
上 下
42 / 100
幕間

デルフィーヌ 後編

しおりを挟む
 ギルドに戻って報告を終えた。
 そのとき、あの人のことを少し聞いたんだけど、彼は最近登録したばかりの新人で、『薬草名人』って呼ばれるみたい。
 薬草採取をメインにしてるってことは、私とおんなじね。

「ああ、デルフィーヌさんも、薬草採取がメインだったね。彼とは話が合うんじゃない?」
「そ、そうかしら?」
「彼すごく採取の効率がいいから、そのあたりの情報交換とか、いいんじゃないかな? 夕食時にはギルドの食堂に来るから、声かけてみたら?」
「え、ええ」

 ああ、いまはフェデーレさんの軽さが、ちょっと羨ましい。
 私はそのあと、部屋に戻って体を拭き、着替えたあとで、またギルドを訪れた。
 よくよく考えれば今日は一日走りっぱなしで、一息ついたら疲れがどっと出てきたのだ。

「あれ? デルフィーヌさん、ギルドの寝台使うんですか? 珍しい……」
「ちょっと、疲れたから」

 仮眠をとるくらいの時間はあるし、できるだけ疲れはとっておきたい。
 さすがに疲労回復効果のある寝台なんて、個人じゃ持てないし。
 寝台に入る前に浄化施設を使ったけど、とくに深い意味はないんだからね?
 汗だくだったし、体を拭いただけじゃ、キレイにならなかったから……。

**********

 ちょうどいい時間に目が覚めたので、食堂に降りる。
 客席を見回すと、彼がいた。
 そこに行こうとしたけど、なかなか足が動いてくれない。
 しょうがない、お酒の力を借りよう。

「なにか飲みやすいお酒はないかしら」
「おや、君がお酒とはめずらしい。ではこのスパークリングワインをおすすめしておこう」

 細長い磁器のグラスに、スパークリングワインが注がれる。
 ひと口飲んでみたら、本当に飲みやすくて美味しかったので、一気に飲み干した。

「ありがとう。おかわりいただけるかしら?」
「言い飲みっぷりだが、飲み過ぎにはきをつけなよ?」

 2杯目が注ぎ足されるころには、なんだか気分が落ち着いてきたので、グラスを片手に彼のいるテーブルへ向かう。
 4人がけのテーブルにひとりで座っていた、彼の向かいの椅子に座った。
 なんか私、すっごく見られてない? 恥ずかしいんだけど……。

「ちょっと……ジロジロみないでよ」

 ごめんなさい。
 でも無言で凝視されると居づらいわよ。

「あ、すいません」

 あら、素直に謝ってくれるのね。

「……なにか用です?」

 そういえば私、声もかけずに相席しちゃったわ……。
 とにかく謝らないと。
 あとお礼も。
 本当は私が襲われていたのに、まるで彼が襲われていたようなこと言っちゃったし。
 でも、実際あの後、彼も襲われたのよね?

「私……嘘はついてないから」
「はい?」
「だって! あのあと、あたなが狼の群れに襲われたのは事実でしょ?」

 ああああ……! 考えなしに怒鳴っちゃった……。

「ああ、まあ、そうですね」

 あれ……なんか呆れられちゃった?

「それに、あなたが逃げ延びたんだから、私だって大丈夫だったろうし……」

 ああ、こんなことが言いたいわけじゃないのに……。
 でも、意外と平然としてたし、案外大したことなかったのかしら?
 私が気にしすぎてるの?

「そうですね。今回はお互い、運が良かったということで」
「そ、そうね……」

 ふぅ……。
 なんか、あんまり気にしてみたいね。
 そうだ!! 私まだ名前も……。

「私、デルフィーヌ」
「え? あ、ああ。えーっと、俺はショウスケ」

 ――ショウスケ……、ショウスケね。

 忘れないようにしないと。

 ……いま私、声出てなかったよね?

「ああ、そういえば、どうしてあんなところにひとりでいたんですか?」
「ちょっと採取に没頭しすぎちゃって……」

 なに言ってのよ私!
 そんな恥ずかしいこと、言わなくてもいいじゃないの!!

「って別にあなたには関係ないでしょ!!」

 ああ、またキツい言い方しちゃった……。

「いや、まぁそうなんですけど……、気になっちゃって。たとえばパーティー組んでたのかな、とか」
「パーティー!? 組んでないわよ!! 文句ある?」

 私、こうみえても人付き合いは苦手なのよね。
 だからパーティーなんて無理。
 あ……もしかして、彼のパーティーに誘われてるのかしら?
 ショウスケも私と同じで、薬草採取をメインにしてるみたいだし。

「なに? 誘ってんの!?」
「め、めめ、めっそうもない!!」

 しまった……、私ったら、またキツい言い方しちゃって……。

「俺も、ソロですから」

 あら、彼もソロなのね。
 じゃあふたりで薬草採取っていうのも、悪くないわよね。

「まぁ……どうしてもって言うんなら――」
「当分はパーティー組む予定はないんで」
「え……? そうなの?」
「ええ、団体行動が苦手なんで。やっぱソロが気楽でいいですよね」

 ……私ったら、なにひとりで舞い上がってたのかしら。

「そ、そうね。ソロが気楽よね……」
「ですよね!?」
「う……」

 そんなに嬉しそうに言わなくてもいいじゃない……。

「あの、お互いソロ同士、これからもがんまりましょう」
「あ……、うん」

 なんでだろう。
 なんか私落ち込んでない?
 私がひとりで薬草採取するのなんて、いままでとなにも変わらないじゃない。
 なのに、なんでこんなに気分が落ちてるの……?
 自分でもよくわからないけど、いまは彼と一緒にいるのがちょっとツラい。

「じゃ……私行くわね……」

 あ……お礼言わなきゃ。

「あの……、ありがとう」
「あ、いえ、俺のほうこそ」

 なんで彼がお礼を言うのかしら。
 ああ、救援要請を出したから……。
 結局彼は自力で生き残って、意味はなかったけど。

 私はいつのまにかお酒を空にしていたみたいで、バーカウンターにグラスを返して、宿に帰った。
 宿につくころには酔いが回ってきたのか、ちょっと頭はポーッとするけど、気分はよくなってきた。
 私もショウスケも、薬草採取をしてるんだし、もしかしたら作業中に偶然会う、なんてこともあるかもしれないわね。
 そういえばフェデーレさんも、情報交換がどうこう言ってたし、話しかけても変じゃないわよね?

 よーし、明日からも、薬草採取頑張ろう!!
 あ、でも、森には近づかないようにしよう……。
しおりを挟む
新作始めました!
【ハズレ職】【追放】【覚醒】【賢者】【無双】【ダンジョン攻略】に【成り上がり】【ざまぁ】そして【ハーレム】!
【男の欲望】【全部入り】の【本格】【エロティック】【ハイファンタジー】!!
ハズレ赤魔道士は賢者タイムに無双する
よろしくお願いします!!
感想 31

あなたにおすすめの小説

[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!

どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入! 舐めた奴らに、真実が牙を剥く! 何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ? しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない? 訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、 なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト! そして…わかってくる、この異世界の異常性。 出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。 主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。 相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。 ハーレム要素は、不明とします。 復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。 追記  2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。 8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。 2024/02/23 アルファポリスオンリーを解除しました。

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

いずれ殺される悪役モブに転生した俺、死ぬのが嫌で努力したら規格外の強さを手に入れたので、下克上してラスボスを葬ってやります!

果 一
ファンタジー
二人の勇者を主人公に、ブルガス王国のアリクレース公国の大戦を描いた超大作ノベルゲーム『国家大戦・クライシス』。ブラック企業に勤務する久我哲也は、日々の疲労が溜まっている中、そのゲームをやり込んだことにより過労死してしまう。 次に目が覚めたとき、彼はゲーム世界のカイム=ローウェンという名の少年に生まれ変わっていた。ところが、彼が生まれ変わったのは、勇者でもラスボスでもなく、本編に名前すら登場しない悪役サイドのモブキャラだった! しかも、本編で配下達はラスボスに利用されたあげく、見限られて殺されるという運命で……? 「ちくしょう! 死んでたまるか!」 カイムは、殺されないために努力することを決める。 そんな努力の甲斐あってか、カイムは規格外の魔力と実力を手にすることとなり、さらには原作知識で次々と殺される運命だった者達を助け出して、一大勢力の頭へと駆け上る! これは、死ぬ運命だった悪役モブが、最凶へと成り上がる物語だ。    本作は小説家になろう、カクヨムでも公開しています 他サイトでのタイトルは、『いずれ殺される悪役モブに転生した俺、死ぬのが嫌で努力したら規格外の強さを手に入れたので、下克上してラスボスを葬ってやります!~チート魔法で無双してたら、一大勢力を築き上げてしまったんだが~』となります

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號
ファンタジー
 不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

ド田舎からやってきた少年、初めての大都会で無双する~今まで遊び場にしていたダンジョンは、攻略不可能の規格外ダンジョンだったみたい〜

むらくも航
ファンタジー
ド田舎の村で育った『エアル』は、この日旅立つ。 幼少の頃、おじいちゃんから聞いた話に憧れ、大都会で立派な『探索者』になりたいと思ったからだ。 そんなエアルがこれまでにしてきたことは、たった一つ。 故郷にあるダンジョンで体を動かしてきたことだ。 自然と共に生き、魔物たちとも触れ合ってきた。 だが、エアルは知らない。 ただの“遊び場”と化していたダンジョンは、攻略不可能のSSSランクであることを。 遊び相手たちは、全て最低でもAランクオーバーの凶暴な魔物たちであることを。 これは、故郷のダンジョンで力をつけすぎた少年エアルが、大都会で無自覚に無双し、羽ばたいていく物語──。

異世界に行く方法をためしてみた結果

古明地蒼空
ファンタジー
動画配信をしている高校2年生の古明地蒼空。 いじめにあって生きることが嫌になり、タヒぬことを決意。 しかし、たまたまネットで見かけた「異世界に行く方法」に興味を持ち どうせ最後だから...と試してみることに。 その後蒼空は異世界に行くことに成功して…!?

追放されたギルドの書記ですが、落ちこぼれスキル《転写》が覚醒して何でも《コピー》出来るようになったので、魔法を極めることにしました

遥 かずら
ファンタジー
冒険者ギルドに所属しているエンジは剣と魔法の才能が無く、文字を書くことだけが取り柄であった。落ちこぼれスキル【転写】を使いギルド帳の筆記作業で生計を立てていた。そんなある日、立ち寄った勇者パーティーの貴重な古代書を間違って書き写してしまい、盗人扱いされ、勇者によってギルドから追放されてしまう。 追放されたエンジは、【転写】スキルが、物やスキル、ステータスや魔法に至るまで何でも【コピー】できるほどに極められていることに気が付く。 やがて彼は【コピー】マスターと呼ばれ、世界最強の冒険者となっていくのであった。

処理中です...