誰にでもできる異世界救済 ~【トライ&エラー】と【ステータス】でニートの君も今日から勇者だ!~

平尾正和/ほーち

文字の大きさ
上 下
38 / 100
第二章 冒険者活動

2-24 Re_初めての人助け 前編

しおりを挟む
《スタート地点を更新》

 スタート地点に戻った俺は、急いで門を出て、駆け出した。

 前回も森の中を走り回ってたから、正確な位置はわからないけど、それでも近い位置にいるような気はする。
 場所はともかく、時間的にはそろそろだ。
 そのときに備え、《魔槍》の詠唱を開始。

「イヤァァ!!」

 よし、前回より近い。
 〈気配察知〉で、おそらくは逃げている女性と、それを追いかけているグレイウルフ、さらに少し離れて女性を包囲している個体を確認した。
 うしろを追いかけているのはともかく、隠れて左右に展開している連中は、ウザいな。
 そろそろ射程に入りそうなので、とりあえず左の茂みに隠れている奴に向けて《魔槍》を放つ。

「ギャウンッ……!」
「よし!」

 〈気配察知〉と〈魔力感知〉を全開にしていたおかげで、ほぼ正確な位置を把握していた俺は、難なく最初のグレイウルフを仕留めた。
 そのまま俺は《魔槍》詠唱をしつつ、右の木陰に隠れているやつを標的にする。

「キャァァ! 誰か……」

 対象を狙える位置に移動した時点で詠唱が終わり、即座に《魔槍》を放つ。

「キャインッ……」

 2匹目も無事倒せた時点で、女性に姿が見える位置取りができ、先方も俺を見つけたのか、途中で悲鳴がおさまった。

「そのまま逃げて!」

 女性が、驚いたような表情を見せる。
 この時点で俺と彼女はまだ出会っていない、、、、、、、
 俺が一方的に知っているだけだ。

 いきなり現れた得体の知れん男に、逃げろなんて言われても、戸惑うばかりだろう。
 しかし、いまは緊急事態。
 とりあえずこの場から去って、安全を確保して欲しい。

「このまま走れば森を抜けられるから!! 急いで!!」

 彼女はあいかわらず戸惑っているようで、逃げ足が少し遅くなる。
 できれば、俺の魔術は見られたくない。

「とりあえず俺が引きつけとく! 大丈夫、逃げ足に自信はあるからっ!」

 そこまで言うと、彼女は渋々ではあるが無言で頷き、森を抜けるべく走る速度を上げた。
 何か言いたげにしていたが、少し距離があるからか、諦めたようだ。
 よし、それでいい。

 標的が彼女から俺に変わっていることを確認し、グレイウルフと対峙する。
 左右から包囲すべく茂みの中を走っていた連中は、それぞれ先頭をの個体を倒されたため、警戒してスピードを緩めていたが、うしろから追いかけていた連中はそのままの勢いで走ってくる。
 不意打ちができないなら、効果範囲の広い《魔刃》のほうが当たりやすかろう。
 ギリギリ詠唱を終えていた俺は、まず先頭を走る個体に《魔刃》を放つ。

「ギャッ……!」

 不可視の刃が、先頭を走る狼の首を飛ばした。

《レベルアップ》

 それを見て、続く狼どもは慌てて足を止める。
 もともと《魔刃》は無色透明だが、それでも魔力の塊である以上、なんらかの形で察知されるはずだ。
 なので、効果の程はともかく、〈気配隠匿〉を意識しつつ放っている。
 いまの一撃は、ほぼ不意打ちに近いのであっさり当たったが、向こうも俺がなんらかの攻撃を行うことに、警戒はしているだろう。
 次はかわされるかもしれない。

 しかし、向こうが足を止めてくれたおかげで、詠唱の時間は稼げた。
 2匹かたまって警戒していたので、そこに向けて、できるだけ動作でバレないように《魔刃》を放つ。
 手前にいた個体は首を、奥にいた個体は胸のあたりを切断され、悲鳴を上げる間もなく絶命する。
〈気配隠匿〉と〈無魔術〉の相性、もしかして凄いんじゃないだろうか。

 残った狼どもが、明らかに怯えた様子で後ずさる。
 ちょっとばかり哀れみを誘う光景ではあったが、無残に食い荒らされた彼女の姿を思い出すと、そんな哀れみは家ほども残らず消え去った。

「逃がさんよ」

 自分より弱いものを襲うからには、強いものに襲われても文句は言えんよな。
 まして俺の恩人に手を出したんだ。
 おとなしく死んで、俺の糧になれ。

《レベルアップ》

《スキルレベルアップ》
〈気配隠匿〉

 詠唱時間がネックになるかと思っていたが、正体不明の攻撃に対し、連中が戸惑って動きがとまったのは僥倖だった。
 もう少し数が多かったり、強かったりしたら危なかったかもしれないが、俺は思っていたよりあっさりと、グレイウルフの群れを全滅できたのだった。

 あたりに他の魔物の気配がないことを確認し、死骸を集めて解体して収納する。
 前回売った解体用ミスリルナイフは、死に戻りのおかげで、ちゃんとカバンに入っていた。
 さてと、このグレイウルフの死骸は、たまたま見つけたってことにして納品しよう。
しおりを挟む
新作始めました!
【ハズレ職】【追放】【覚醒】【賢者】【無双】【ダンジョン攻略】に【成り上がり】【ざまぁ】そして【ハーレム】!
【男の欲望】【全部入り】の【本格】【エロティック】【ハイファンタジー】!!
ハズレ赤魔道士は賢者タイムに無双する
よろしくお願いします!!
感想 31

あなたにおすすめの小説

[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!

どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入! 舐めた奴らに、真実が牙を剥く! 何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ? しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない? 訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、 なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト! そして…わかってくる、この異世界の異常性。 出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。 主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。 相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。 ハーレム要素は、不明とします。 復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。 追記  2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。 8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。 2024/02/23 アルファポリスオンリーを解除しました。

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

いずれ殺される悪役モブに転生した俺、死ぬのが嫌で努力したら規格外の強さを手に入れたので、下克上してラスボスを葬ってやります!

果 一
ファンタジー
二人の勇者を主人公に、ブルガス王国のアリクレース公国の大戦を描いた超大作ノベルゲーム『国家大戦・クライシス』。ブラック企業に勤務する久我哲也は、日々の疲労が溜まっている中、そのゲームをやり込んだことにより過労死してしまう。 次に目が覚めたとき、彼はゲーム世界のカイム=ローウェンという名の少年に生まれ変わっていた。ところが、彼が生まれ変わったのは、勇者でもラスボスでもなく、本編に名前すら登場しない悪役サイドのモブキャラだった! しかも、本編で配下達はラスボスに利用されたあげく、見限られて殺されるという運命で……? 「ちくしょう! 死んでたまるか!」 カイムは、殺されないために努力することを決める。 そんな努力の甲斐あってか、カイムは規格外の魔力と実力を手にすることとなり、さらには原作知識で次々と殺される運命だった者達を助け出して、一大勢力の頭へと駆け上る! これは、死ぬ運命だった悪役モブが、最凶へと成り上がる物語だ。    本作は小説家になろう、カクヨムでも公開しています 他サイトでのタイトルは、『いずれ殺される悪役モブに転生した俺、死ぬのが嫌で努力したら規格外の強さを手に入れたので、下克上してラスボスを葬ってやります!~チート魔法で無双してたら、一大勢力を築き上げてしまったんだが~』となります

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號
ファンタジー
 不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

ド田舎からやってきた少年、初めての大都会で無双する~今まで遊び場にしていたダンジョンは、攻略不可能の規格外ダンジョンだったみたい〜

むらくも航
ファンタジー
ド田舎の村で育った『エアル』は、この日旅立つ。 幼少の頃、おじいちゃんから聞いた話に憧れ、大都会で立派な『探索者』になりたいと思ったからだ。 そんなエアルがこれまでにしてきたことは、たった一つ。 故郷にあるダンジョンで体を動かしてきたことだ。 自然と共に生き、魔物たちとも触れ合ってきた。 だが、エアルは知らない。 ただの“遊び場”と化していたダンジョンは、攻略不可能のSSSランクであることを。 遊び相手たちは、全て最低でもAランクオーバーの凶暴な魔物たちであることを。 これは、故郷のダンジョンで力をつけすぎた少年エアルが、大都会で無自覚に無双し、羽ばたいていく物語──。

大国に囲まれた小国の「魔素無し第四王子」戦記(最強部隊を率いて新王国樹立へ)

たぬころまんじゅう
ファンタジー
 小国の第四王子アルス。魔素による身体強化が当たり前の時代に、王族で唯一魔素が無い王子として生まれた彼は、蔑まれる毎日だった。  しかしある日、ひょんなことから無限に湧き出る魔素を身体に取り込んでしまった。その日を境に彼の人生は劇的に変わっていく。  士官学校に入り「戦略」「戦術」「武術」を学び、仲間を集めたアルスは隊を結成。アルス隊が功績を挙げ、軍の中で大きな存在になっていくと様々なことに巻き込まれていく。  領地経営、隣国との戦争、反乱、策略、ガーネット教や3大ギルドによる陰謀にちらつく大国の影。様々な経験を経て「最強部隊」と呼ばれたアルス隊は遂に新王国樹立へ。 異能バトル×神算鬼謀の戦略・戦術バトル! ☆史実に基づいた戦史、宗教史、過去から現代の政治や思想、経済を取り入れて書いた大河ドラマをお楽しみください☆

転移術士の成り上がり

名無し
ファンタジー
 ベテランの転移術士であるシギルは、自分のパーティーをダンジョンから地上に無事帰還させる日々に至上の喜びを得ていた。ところが、あることがきっかけでメンバーから無能の烙印を押され、脱退を迫られる形になる。それがのちに陰謀だと知ったシギルは激怒し、パーティーに対する復讐計画を練って実行に移すことになるのだった。

処理中です...