誰にでもできる異世界救済 ~【トライ&エラー】と【ステータス】でニートの君も今日から勇者だ!~

平尾正和/ほーち

文字の大きさ
上 下
23 / 100
第二章 冒険者活動

2-9 魔術の練習

しおりを挟む
 無事に『冒険者基本パック』にある魔術を習得した俺は、習得した魔術が使えるかどうかを確認するため、ハリエットさんに連れられて地下に向かった。
 入った部屋は、魔道講座を受けた部屋の倍くらいの広さで、ちょっと薄暗い。
 魔術の練習をしているのか、先客が数名いた。
 ハリエットさんに促され、俺は床に座った。

「じゃあまずは《灯火》から。使い方はなんとなくわかると思うけど、一応説明するわね」

 そうなんだよな。
 不思議なことに、魔術を習得すると、なんだかそれが当たり前に使えるような気になってるんだよ。

「人差し指を立てて《灯火》と念じてみて。うまく行かなければ口に出したほうがいいかもね」
「はーい」

 とりあえず念じてみる。
 すると、指先にほのかな光を放つ球体が現れた。

「あら、お上手ねぇ。じゃあ消せるかしら」

 灯りが消えるようにイメージすると、フッと光の玉は消えた。

「じゃあ次は、《点火》ね」

 同じように人差し指を立て《点火》と念じると、ライターから出るくらいの小さな火が現れた。
 これも消そうと思ったら、すぐに消えた。

「あらぁ、ショウスケちゃんってば優秀ねぇ。じゃあ次はこれ」

 そう言ってハリエットさんは、洗面器くらいの桶を取り出し、俺の前に置いた。

「ここに《製水》で水を出してみて」

 桶を見ながら《製水》と念じると、桶が水で満たされた。

 ちなみにこの《製水》、空気中の水分を集めて水を作り出す魔術だと思ってたんだが、ぜんぜん違うらしい。
 いや、もともとはそういう原理の魔術だったんだが、それだと、たとえば砂漠みたいな湿気ゼロのところでは使えない、という欠点があるんだわ。

 “本当に水が必要なところで水出せないなんて不便じゃね?”と過去の研究者たちが頭を捻った結果、“じゃあ水のあるところから持ってくればいいじゃん!”っとことで改良されたのが現在の《製水》。
 どういう原理かというと、魔術士ギルドが管理する貯水槽から転移させてんの。
 貯水槽っつっても、ダムみたいなところを何箇所も作ってるらしく、水が汚れないよう、きっちり浄化もされてるんだと。
 万が一のため、海水から淡水を生成する施設も作ってるから、水不足になることはまずないらしい。
 海水の淡水化なんて、元の世界でもなかなか実用レベルに達せないってのにさ。
 しかも分離した不純物から、塩を取り出す施設もついでに作っちゃったらしく、塩の安定供給にも貢献しているんだと。
 さらに、純粋な塩だけじゃなく、海水に含まれるミネラルやらなんやらの旨味成分も合わせた、旨味塩的なものも精製できるんだとか。

 ……すごくね?

 どうりで、この世界の料理レベルが高ぇワケだわ。

 っと、話が少し脱線してしまったが、この《製水》って魔術、名前も効果も〈水魔術〉って感じだけど、実際は転移を使った〈空魔術〉なんだな。
 でも元の原理の名残で、名前は《製水》のままなんだとさ。

 こんなふうに、大規模な施設を管理することで、魔術士個人に掛かる負担を軽減するってのも、魔術士ギルドの大切な役目らしい。

「じゃあ次は、《加熱》でその水を温めてみましょう」

 桶の水を見ながら《加熱》と念じる。
 かなり時間がかかったけど、風呂くらいの温度にはできたよ。
 もう少しうまく魔力を込めるなり、時間をかけるなりすれば沸騰させることも可能らしい。

「じゃ、次は《冷却》ね」

 お湯になった桶の水を、冷やしていく。
 これも時間かかったけど、うすーく氷が張るくらいにまで冷やせた。
 頑張れば、冷凍も可能みたいだ。

 この《加熱》と《冷却》は熱を操ってるだけだから、どっちも〈火魔術〉だ。
 やろうと思えばひとつにまとめられるのだが、そこをあえて《加熱》と《冷却》に分けることで、効率をよくしてるってわけ。

「次は《乾燥》ね。これどうぞ」

 ハリエットさんが手ぬぐいを渡してくれたので、桶の水に浸して軽く絞った後、《乾燥》と念じてみた。
 少し時間はかかったが、ちゃんと水気はとれてたよ。

「じゃあ最後に、《止血》ね」

 ハリエットさんに渡されたナイフを使って、手の甲に軽く傷をつけた。
 ツーっと血が流れてきたので、《止血》と念じてみる。
 出血が止まったところで、ハリエットさんが手ぬぐいを渡してくれた。
 血を拭ってみると、傷は開いたままだけど、血は完全に止まっていた。

「《止血》はあくまで応急処置だから、回復魔術や傷薬で処置することを忘れないでね。あと、太い血管を切った場合には効果が薄いし、仮に血を止められても、長時間経過するとその先が壊死することもあるから、気をつけて」

 そう言って、ハリエットさんが俺の手の甲に、そっと手を乗せてくれた。
 ちょっとひんやりとした、柔らかい手だった。
 その手を外すと、傷は綺麗に消えていた。
 たぶん回復魔術を使ってくれたんだと思う。

「《収納》は収納庫の契約をしないと使えないから、後日頑張ってね。もし契約後にうまく使えないときは、お手伝いするわ。まぁ、ショウスケちゃんってば優秀だから、問題ないと思うけど」
「ありがとうございます」

 立ち上がった俺は、激しい立ちくらみを覚え、倒れそうになる。
 ハリエットさんが優しく支えてくれた。

「大丈夫? 魔力酔いかしらね」

 ちょうど顔が、おムネに当たる形になった。

(こ……これがラッキースケベってやつか!)

「ショウスケちゃん? 立てる?」
「あ、はい、もう勃って……、いやいや立てます」
「ふふ……。どうする? ウチ、泊まってく?」
「え……?」

 一瞬変なことを想像してしまったが、これはあれだ、寝台で寝て魔力回復するかって意味だな。

「あの、大丈夫です」

 1,000Gの借金が増えた今、10Gだって節約しないと。
 頑張って冒険者ギルドまで行こう。

 MP枯渇ってわけじゃないから、気をしっかり持ってればちゃんと歩ける。

「ショウスケちゃん、また来てね。いつでもおねーさんが魔術教えてあげるから」
「はい、また来ますね」

 魔術教えてくれるっつっても、覚えるのは有料だけどなー。
 ま、余裕ができたら攻撃系の魔術も覚えたいし、ここにはちょくちょく訪れることになるだろうな。
 ハリエットさんもいるしね、ふへへ。

「あと、これからもダジギリの根、よろしくねぇ」
「了解です」

**********

 魔術士ギルドを出たが、まだ全然明るい時間だった。
 ハリエットさんが言ってた『魔力酔い』ってのは、魔力が枯渇しなくとも、一気に魔力消費すると出る、悪酔いに近い症状のこと。
 MPが0にならなくても、短時間で一気にMPを消費すると、起こるものなんだろうな。
 ただ、MPが0になるわけじゃないから、ちょっと時間を置けば自然に回復する。

 冒険者ギルドに戻るころには、魔力酔いも落ち着いてきたし、ぎりぎりランチの時間に間に合ったので、とりあえず食事をすませる。
 とはいえ、疲れていることに変わりはない。
 この日の清掃は終わっていたので、そのまま寝台に直行し、俺は午後から翌朝まで、ぐっすり眠った。
しおりを挟む
新作始めました!
【ハズレ職】【追放】【覚醒】【賢者】【無双】【ダンジョン攻略】に【成り上がり】【ざまぁ】そして【ハーレム】!
【男の欲望】【全部入り】の【本格】【エロティック】【ハイファンタジー】!!
ハズレ赤魔道士は賢者タイムに無双する
よろしくお願いします!!
感想 31

あなたにおすすめの小説

[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!

どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入! 舐めた奴らに、真実が牙を剥く! 何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ? しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない? 訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、 なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト! そして…わかってくる、この異世界の異常性。 出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。 主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。 相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。 ハーレム要素は、不明とします。 復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。 追記  2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。 8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。 2024/02/23 アルファポリスオンリーを解除しました。

魔法少女のなんでも屋

モブ乙
ファンタジー
魔法が使えるJC の不思議な部活のお話です

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

いずれ殺される悪役モブに転生した俺、死ぬのが嫌で努力したら規格外の強さを手に入れたので、下克上してラスボスを葬ってやります!

果 一
ファンタジー
二人の勇者を主人公に、ブルガス王国のアリクレース公国の大戦を描いた超大作ノベルゲーム『国家大戦・クライシス』。ブラック企業に勤務する久我哲也は、日々の疲労が溜まっている中、そのゲームをやり込んだことにより過労死してしまう。 次に目が覚めたとき、彼はゲーム世界のカイム=ローウェンという名の少年に生まれ変わっていた。ところが、彼が生まれ変わったのは、勇者でもラスボスでもなく、本編に名前すら登場しない悪役サイドのモブキャラだった! しかも、本編で配下達はラスボスに利用されたあげく、見限られて殺されるという運命で……? 「ちくしょう! 死んでたまるか!」 カイムは、殺されないために努力することを決める。 そんな努力の甲斐あってか、カイムは規格外の魔力と実力を手にすることとなり、さらには原作知識で次々と殺される運命だった者達を助け出して、一大勢力の頭へと駆け上る! これは、死ぬ運命だった悪役モブが、最凶へと成り上がる物語だ。    本作は小説家になろう、カクヨムでも公開しています 他サイトでのタイトルは、『いずれ殺される悪役モブに転生した俺、死ぬのが嫌で努力したら規格外の強さを手に入れたので、下克上してラスボスを葬ってやります!~チート魔法で無双してたら、一大勢力を築き上げてしまったんだが~』となります

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號
ファンタジー
 不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

ド田舎からやってきた少年、初めての大都会で無双する~今まで遊び場にしていたダンジョンは、攻略不可能の規格外ダンジョンだったみたい〜

むらくも航
ファンタジー
ド田舎の村で育った『エアル』は、この日旅立つ。 幼少の頃、おじいちゃんから聞いた話に憧れ、大都会で立派な『探索者』になりたいと思ったからだ。 そんなエアルがこれまでにしてきたことは、たった一つ。 故郷にあるダンジョンで体を動かしてきたことだ。 自然と共に生き、魔物たちとも触れ合ってきた。 だが、エアルは知らない。 ただの“遊び場”と化していたダンジョンは、攻略不可能のSSSランクであることを。 遊び相手たちは、全て最低でもAランクオーバーの凶暴な魔物たちであることを。 これは、故郷のダンジョンで力をつけすぎた少年エアルが、大都会で無自覚に無双し、羽ばたいていく物語──。

家の猫がポーションとってきた。

熊ごろう
ファンタジー
テーブルに置かれた小さな瓶、それにソファーでくつろぐ飼い猫のクロ。それらを前にして俺は頭を抱えていた。 ある日どこからかクロが咥えて持ってきた瓶……その正体がポーションだったのだ。 瓶の処理はさておいて、俺は瓶の出所を探るため出掛けたクロの跡を追うが……ついた先は自宅の庭にある納屋だった。 やったね、自宅のお庭にダンジョン出来たよ!? どういうことなの。 始めはクロと一緒にダラダラとダンジョンに潜っていた俺だが、ある事を切っ掛けに本気でダンジョンの攻略を決意することに……。

処理中です...