誰にでもできる異世界救済 ~【トライ&エラー】と【ステータス】でニートの君も今日から勇者だ!~

平尾正和/ほーち

文字の大きさ
上 下
10 / 100
第一章 バチ当たり転送

1-9 待望の休息

しおりを挟む
 えーっと、俺さっき死んだよね? ギルドで。

「おーい、大丈夫ー?」

 あれ、街?
 うしろ見たら、いたよ、えーとアディソンさんだっけ? 門番の人。

「ああ、すいません」

 とりあえず歩こう。
 ってか、この風景、見覚えあるよね。
 うん、落ち着け、俺。

「あ、そこ右に曲がってー」

 そうだよね、ここ右だよね。
 そういや、街に入ってすぐに【――を更新】みたいなの出てたな。
 もしかしてそれって

スタート地点、、、、、、を更新】

 ってことじゃねーの?
 つまり、死に戻りポイントが変化したってことか?
 これは正直助かった!
 でも、よくよく考えたら、世界救えってのに、死ぬ度にあの森からってのはナシだよな。
 セーブポイントみたいなのがあっても、おかしくはないか。

「なーにニヤニヤしてんのさ。入った入った」
「あ、はい、すんません」

 おおっと、また建物の前でニヤついていたらしい。さっきとは別の理由で。
 なんにせよ、俺は再び冒険者ギルドに来たのだった。

**********

 さっきとほぼ同じ流れで、質問をいくつか省きつつホーンラビットの角を売り、後払いで正式登録を済ませる。
 で、このあとだ。
 油断するなよ……。
 〈気配察知〉全開で、人にぶつからないよう階段を目指そう。
 で、歩いてたら、いたよ、さっきのオッサン。
 ちらっと見たら目が合ったわ。
 慌てて目をそらそうとしたら、なんでか知らんけどこっち来たー!

「よう、お前さん新人かい?」
「ええ……、まあ」

 やべぇやべぇ……、怒らせないようにしないと。

「ん? どうした?」

 うわぁ、ビビって変な顔しちまったのかな?

「おいおい、ガンドルフォよぉ、お前ににらまれたら、そうなるに決まってんだろうが」

 ちょっと離れた席に座ってた、連れっぽい人が野次ってきた。

「ああ、すまんな、怖がらせちまったか。なんでか知らんのだが、俺が睨むとみんな変にビビるんだよなぁ……。正直にらんだつもりもないんだが……」
「ああ、いえ、大丈夫です」

 別に睨まれたから怖いんじゃなくて、俺はさっきアンタに殺されたから怖いんだよー!
 自分を殺した相手がいたらそりゃ怖いに決まってんでしょうがっ!!

「俺はガンドルフォ」

 そういうとオッサンは握手を求めてきたので、応じておいた。

「えーっと、俺はショウスケです」

 うわ、腕毛すげぇ!! ってか腕毛ってレベルじゃねぇ!!
 ……ああ、いや獣人だな、このオッサンも。
 よく見ると短い角みたいの生えてるし、たぶん牛かなんかだろ。
 そりゃちょっと押されただけでふっ飛ぶわけだわ。

「まぁ、アレだ。なんか困ったことがあったら、気軽に声かけてくれや。一応Cランク冒険者だからよ」
「ああ、どうもっす」

 あれ、なんかいい人っぽい。
 うん、前回のアレは俺が悪い……というか、運が悪かったな、お互いに。
 殺されたっつーか事故みたいなもんだったし、恨みっこなしにしよう。
 俺はその場でガンドルフォさんと分かれて、階段を上った。

**********

 ギルドの宿泊施設だけど、なんかあれだね、ネットカフェっぽいね。
 薄ーい板で区切られてて、各寝台に簡単な扉が設置されてる感じ。

「209は……っと、ここか」

 とりあえず試しに扉を開けようとするけど、全然開かない。
 言われたとおり、扉の前に冒険者カードかざしたら、「カチ」っと鍵が開いたような音がした。

「よいしょっと」

 うん、普通に開くね。
 区切りの中は結構大きめのベッドと、小さい棚があるくらい。
 ベッドが大きいのは、ガンドルフォさんみたいなでかい獣人がいるからかな。
 意外と清潔な感じだな。

 ちなみにここ、荷物置きっぱなしで長期滞在みたいなことはできないらしい。
 毎日昼前に清掃が入るから、必ず荷物を持って出て行かなくちゃならない。
 でも清掃が終わったあとはすぐに利用可能で、利用回数制限はない。
 ここにほとんど住んでる状態って人も、少なからずいるんだと。
 まあ、俺も当分はここで暮らす感じになるのかなぁ。

「ああ、そういや汗やら泥やらでぐっちゃぐっちゃだな、俺」

 というわけで、浄化施設ってのを使ってみよう。
 このフロアの隅っこのほうにあるって聞いたけど……あ、これだな。
 扉の前でギルドカードをかざしたら、残額が40Gになって、扉が開いた。
 なんかここもネットカフェのシャワー室みたい。
 っつっても脱衣所もなければ、シャワーもついてないんだけどね。

『浄化作業を開始します』

 お、なんかアナウンスが流れた……と思ったら、部屋の壁や天井が淡く光り始めた。
 で、1分もしない内に光が消えた。

『作業終了。ご利用ありがとうございました』

 アナウンスのあと、扉が自動で開いたから外に出た。
 いやー、なんか不思議な感じ。
 シャワー浴びて、綺麗な服に着替えたような気分だわ。
 たぶん魔法だか魔道具だかを使ってるんだろうけど、すげーなこの浄化施設ってヤツは。
 もしスキルとかで似たような効果があるんなら、ぜひ覚えたいところだわ。
 
**********

 さて、すっきりしたところで、寝台に戻ってきた。
 ベッドっつっても簀子すのこみたいなのの上に綿わたも何も入ってない厚手の布をひいてあるだけ。
 枕も、厚手の布を巻いただけのもの。
 掛け布団も、シーツみたいなのだけ。
 まあ無料だし、体のばして寝れるだけありがたいか。
 さーってと、横になろう。
 ……………………。
 ………………。
 …………。
 ……。

「おーい、掃除すっから出とくれよー」

 寝台を囲うパーティションの外から声をかけられて、俺は目覚めた。
 えーっと、清掃が入るってことはもう昼ってこと?

「ふぁあ……すぐ出まーすぅ……」

 頭はボーッとしてるけど、着の身着のまま荷物もカードだけだし、起きてすぐに仕切りを開けて外に出た。
 外には清掃員って感じの、背の低いおばちゃんがいたよ。

「ねぼすけさんだねぇ」
「ああ、すんません。あの、軽く顔洗いたいんですけど、洗面台とかってあります?」
「ああ、そこ曲がってまっすぐいったらあるよ。ほい、これ」

 おばちゃんがタオルくれた。
 タオルっつてもガーゼタオルって感じだな。
 パイル加工されてないや。

「終わったら洗面台の辺りに置いといてよ。どうせあとで行くから」
「どうもっす」
「ほいじゃあ今日1日、がんばんな」

 おばちゃんの指示に従って行くと、壁際に大きな洗面台があった。
 10人くらいは横に並べるかな。
 神社とかにある手水舎ちょうずしゃみたいなのが、半分壁に埋まってる感じ。
 水道の蛇口みたいなのはないけど、奥に溜まってる水を使って顔とか洗うんだろうな。
 昼過ぎだってのに、5~6人くらいいるわ。
 俺は開いてるところに陣取って、軽く顔を洗ってうがいした。
 ああ、歯磨きしたい……。

「あの、すんませんけど、歯磨きとかってどうやってます?」

 俺は近くにいた人に声をかけてみた。

「ん? ああ、売店に洗口液と歯ブラシ売ってるよ」

 ネズミっぽい人が親切に教えてくれた。

「どうもっす」

 軽くお礼を言って、階段を降りた。
 タオルはまだ使うから、このまま借りとこう。
 1階に降りると、待合室みたいなところは8割くらい埋まってて、ほとんどの人が食事していた。
 ってか、ここ食堂だな。
 いまは〈空腹耐性〉を切ってるから、漂ってくる食事の匂いに腹がぐうぐう鳴ってるよ。
 そういや俺、こっちきて腹に入れたの、水と果物だけだわ。
 しかし俺は寝起きに歯を磨かないと気が済まないタチなので、売店を目指す。

「いらっしゃい」
「すいません、歯ブラシと洗口液が欲しいんですが」
「合わせて15Gだね」

 あれ、意外と高いな……。
 でもこれは必需品だしなぁ。

「えーと、カードで」

 カード残額が25Gになる。
 歯ブラシはたぶん獣か何かの毛を束ねて柄をつけたもので、洗口液は100mlくらいの陶器の小瓶をくれた。

「あ、なんか清潔な小物入れみたいなのってあります?」
「浄化機能付きのポーチがおすすめだよ」
「このセットが入るので一番安いのだといくらでしょう?」
「浄化機能付きなら安くても200Gからだね」

 足りねぇ……。
 当分は浄化施設に持って入るか。
 服も綺麗になったし、手持ちのアイテムも綺麗になるはずだ。

 というわけで、浄化機能付きじゃない、ツギハギのあるペラッペラの革の巾着を5Gで買い、カード残額は残り20Gになってしまった……。


 空腹を我慢して2階に戻り、洗面所で『浄化済み』と書かれた棚にあるコップを手に取る。
 洗口液はひと口分の水に、2~3滴垂らすだけでいいんだと。
 洗口液入りの水を口に含む。
 あ、これは元の世界の洗口液と似たような刺激だね。
 ひと通り口をゆすいだあと、歯ブラシで歯を磨く。
 お、なんか高級な感じで、結構磨きやすいな。
 適度な柔らかさで歯茎を傷つけないけど、気持ちいい刺激はあるし、毛先が細いのか、歯の隙間もちゃんと磨けるわ。
 こりゃ元の世界だと500円くらいはするんじゃね?

 歯を磨いて口の中がすっきりした俺は、1階に降りてなにか食べることにした。
 腹が減っては戦ができぬ。
 金も大事だけど、食事だけはおろそかにするわけにはいかんよね。
しおりを挟む
新作始めました!
【ハズレ職】【追放】【覚醒】【賢者】【無双】【ダンジョン攻略】に【成り上がり】【ざまぁ】そして【ハーレム】!
【男の欲望】【全部入り】の【本格】【エロティック】【ハイファンタジー】!!
ハズレ赤魔道士は賢者タイムに無双する
よろしくお願いします!!
感想 31

あなたにおすすめの小説

世界樹を巡る旅

ゴロヒロ
ファンタジー
偶然にも事故に巻き込まれたハルトはその事故で勇者として転生をする者たちと共に異世界に向かう事になった そこで会った女神から頼まれ世界樹の迷宮を攻略する事にするのだった カクヨムでも投稿してます

[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!

どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入! 舐めた奴らに、真実が牙を剥く! 何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ? しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない? 訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、 なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト! そして…わかってくる、この異世界の異常性。 出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。 主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。 相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。 ハーレム要素は、不明とします。 復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。 追記  2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。 8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。 2024/02/23 アルファポリスオンリーを解除しました。

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

追放されたギルドの書記ですが、落ちこぼれスキル《転写》が覚醒して何でも《コピー》出来るようになったので、魔法を極めることにしました

遥 かずら
ファンタジー
冒険者ギルドに所属しているエンジは剣と魔法の才能が無く、文字を書くことだけが取り柄であった。落ちこぼれスキル【転写】を使いギルド帳の筆記作業で生計を立てていた。そんなある日、立ち寄った勇者パーティーの貴重な古代書を間違って書き写してしまい、盗人扱いされ、勇者によってギルドから追放されてしまう。 追放されたエンジは、【転写】スキルが、物やスキル、ステータスや魔法に至るまで何でも【コピー】できるほどに極められていることに気が付く。 やがて彼は【コピー】マスターと呼ばれ、世界最強の冒険者となっていくのであった。

いずれ殺される悪役モブに転生した俺、死ぬのが嫌で努力したら規格外の強さを手に入れたので、下克上してラスボスを葬ってやります!

果 一
ファンタジー
二人の勇者を主人公に、ブルガス王国のアリクレース公国の大戦を描いた超大作ノベルゲーム『国家大戦・クライシス』。ブラック企業に勤務する久我哲也は、日々の疲労が溜まっている中、そのゲームをやり込んだことにより過労死してしまう。 次に目が覚めたとき、彼はゲーム世界のカイム=ローウェンという名の少年に生まれ変わっていた。ところが、彼が生まれ変わったのは、勇者でもラスボスでもなく、本編に名前すら登場しない悪役サイドのモブキャラだった! しかも、本編で配下達はラスボスに利用されたあげく、見限られて殺されるという運命で……? 「ちくしょう! 死んでたまるか!」 カイムは、殺されないために努力することを決める。 そんな努力の甲斐あってか、カイムは規格外の魔力と実力を手にすることとなり、さらには原作知識で次々と殺される運命だった者達を助け出して、一大勢力の頭へと駆け上る! これは、死ぬ運命だった悪役モブが、最凶へと成り上がる物語だ。    本作は小説家になろう、カクヨムでも公開しています 他サイトでのタイトルは、『いずれ殺される悪役モブに転生した俺、死ぬのが嫌で努力したら規格外の強さを手に入れたので、下克上してラスボスを葬ってやります!~チート魔法で無双してたら、一大勢力を築き上げてしまったんだが~』となります

食うために軍人になりました。

KBT
ファンタジー
 ヴァランタイン帝国の片田舎ダウスター領に最下階位の平民の次男として生まれたリクト。  しかし、両親は悩んだ。次男であるリクトには成人しても継ぐ土地がない。  このままではこの子の未来は暗いものになってしまうだろう。  そう思った両親は幼少の頃よりリクトにを鍛え上げる事にした。  父は家の蔵にあったボロボロの指南書を元に剣術を、母は露店に売っていた怪しげな魔導書を元に魔法を教えた。    それから10年の時が経ち、リクトは成人となる15歳を迎えた。  両親の危惧した通り、継ぐ土地のないリクトは食い扶持を稼ぐために、地元の領軍に入隊試験を受けると、両親譲りの剣術と魔法のおかげで最下階級の二等兵として無事に入隊する事ができた。  軍と言っても、のどかな田舎の軍。  リクトは退役するまで地元でのんびり過ごそうと考えていたが、入隊2日目の朝に隣領との戦争が勃発してしまう。  おまけに上官から剣の腕を妬まれて、単独任務を任されてしまった。  その任務の最中、リクトは平民に対する貴族の専横を目の当たりにする。  生まれながらの体制に甘える貴族社会に嫌気が差したリクトは軍人として出世して貴族の専横に対抗する力を得ようと立身出世の道を歩むのだった。    剣と魔法のファンタジー世界で軍人という異色作品をお楽しみください。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

大国に囲まれた小国の「魔素無し第四王子」戦記(最強部隊を率いて新王国樹立へ)

たぬころまんじゅう
ファンタジー
 小国の第四王子アルス。魔素による身体強化が当たり前の時代に、王族で唯一魔素が無い王子として生まれた彼は、蔑まれる毎日だった。  しかしある日、ひょんなことから無限に湧き出る魔素を身体に取り込んでしまった。その日を境に彼の人生は劇的に変わっていく。  士官学校に入り「戦略」「戦術」「武術」を学び、仲間を集めたアルスは隊を結成。アルス隊が功績を挙げ、軍の中で大きな存在になっていくと様々なことに巻き込まれていく。  領地経営、隣国との戦争、反乱、策略、ガーネット教や3大ギルドによる陰謀にちらつく大国の影。様々な経験を経て「最強部隊」と呼ばれたアルス隊は遂に新王国樹立へ。 異能バトル×神算鬼謀の戦略・戦術バトル! ☆史実に基づいた戦史、宗教史、過去から現代の政治や思想、経済を取り入れて書いた大河ドラマをお楽しみください☆

処理中です...