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第二章
第4話 〈マップ〉を使ってみました
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「簡単でしょ?」
「ああ。じゃあ、武器なんかも収納できる?」
「スロットに空きがあればね」
〈アイテムボックス〉には『スロット』と呼ばれる収納スペースがあり、物によって必要スロットが異なる。
必要スロット数は体積や重量が大きければそのぶん多くのスロットを必要とするのだが、それは物の大きさや重さだけでなく、価値においても変化するものだった。
わかりやすい物だと、貨幣があげられるだろうか。
例えば金貨で1スロットを消費する場合、同じ重さの銀貨なら10枚で1スロット、銅貨なら100枚で1スロット、といった具合にだ。
対して紙幣の場合は、額面に関わらず100枚で1スロット――となるように計算して制作、発行されている――なので、この世界では主に紙幣が現金として使われているのだった。
「あれ、入らないな……」
短筒を〈アイテムボックス〉に収納しようとしたが、失敗した。
なにも起こらない、というより、収納先がいっぱいで入らない、という感覚だった。
ただ、この短筒を収納するのにどれくらいのスロットが必要なのかは、わからなかった。
「ちょっと、貸してみてくれる?」
「ああ」
賢人の手から短筒を受け取ったルーシーだったが、すぐに首を横に振った。
「だめね。少なくとも24スロット以上必要だわ」
〈アイテムボックス〉のスロット数はレベルと同じ数値となる。
レベル24のルーシーなら、スロット数も24という具合にだ。
そして収納物の必要スロット数が、使用者の最大スロット数を超えている場合、それを認識することはできない。
「そっか……」
「これ、かなりいいものだから、大事にしないとね」
「ああ、そうだな」
ルーシーから返してもらった短筒を腰のベルトに差しながら、やはりホルスターは必要だな、と賢人は思った。
「ちょっと話がそれちゃったけど、次は〈マップ〉を使ってみましょうか」
「わかった。たしか〈マップ〉を意識しながら、加護板をタップするんだよな」
「ええ、そうよ」
賢人はルーシーに確認を取りながら、加護板を手に取り、〈マップ〉と脳内で呟きつつ板の表面をタップする。
「お、出た」
表示されたのは、かなり大雑把な地図だった。
「ちゃんと出たわね。ほら、これがあなたの現在位置よ」
隣に立つルーシーが賢人と一緒に加護板をのぞき込みながら、中央の光点を指さす。
そのとき、甘酸っぱい匂いがふわりと漂ってきた。
ふと視線を動かすと、じわりと汗の滲んだルーシーの首筋が目に入った。
すると、先ほど部屋で自分にまたがる彼女の尻や太ももの感触や、心地よい重みなどが思い出され、急速に鼓動が速まるの感じた賢人は、平静を装いながら、左手で胸ポケットからミントパイプを取り出した。
「すぅ…………ふぅー……」
そんな賢人の仕草を察知したのか、ルーシーが振り返った。
顔が、近い。
「どしたの?」
黄色い瞳が、自分を見ていた。
賢人は慌てて、加護板へと視線を向けた。
「い、いや、別に。それより、その、道が、途中で切れてるな」
街から続く街道が〈マップ〉には表示されていたが、それが途中で切れていた。
「加護板を持って歩いた場所しか、記録はされないからね」
道の表示は、ふたりが採取ポイントを求めて草原に入ったあたりで途切れていた。
「加護板を持つ前でも、訪れた街や重要な施設なんかの場所だけは、記録されるけどね」
「なるほど……」
「で、〈マップ〉の基本的な使い方だけど」
スワイプによる表示位置の変更、ピンチイン、ピンチアウトによる縮尺の変更など、使い方はマップアプリとほとんど同じだった。
この世界に来て間もない賢人の〈マップ〉には、いまのところ現在位置を示す白い光点と、街のある青い光点のみが表示されている。
「ん、これは……?」
いくつかの操作を試すなか、ピンチインによってより広域を表示したとき、森の奥に青い光点が表示されていた。
「ああ。じゃあ、武器なんかも収納できる?」
「スロットに空きがあればね」
〈アイテムボックス〉には『スロット』と呼ばれる収納スペースがあり、物によって必要スロットが異なる。
必要スロット数は体積や重量が大きければそのぶん多くのスロットを必要とするのだが、それは物の大きさや重さだけでなく、価値においても変化するものだった。
わかりやすい物だと、貨幣があげられるだろうか。
例えば金貨で1スロットを消費する場合、同じ重さの銀貨なら10枚で1スロット、銅貨なら100枚で1スロット、といった具合にだ。
対して紙幣の場合は、額面に関わらず100枚で1スロット――となるように計算して制作、発行されている――なので、この世界では主に紙幣が現金として使われているのだった。
「あれ、入らないな……」
短筒を〈アイテムボックス〉に収納しようとしたが、失敗した。
なにも起こらない、というより、収納先がいっぱいで入らない、という感覚だった。
ただ、この短筒を収納するのにどれくらいのスロットが必要なのかは、わからなかった。
「ちょっと、貸してみてくれる?」
「ああ」
賢人の手から短筒を受け取ったルーシーだったが、すぐに首を横に振った。
「だめね。少なくとも24スロット以上必要だわ」
〈アイテムボックス〉のスロット数はレベルと同じ数値となる。
レベル24のルーシーなら、スロット数も24という具合にだ。
そして収納物の必要スロット数が、使用者の最大スロット数を超えている場合、それを認識することはできない。
「そっか……」
「これ、かなりいいものだから、大事にしないとね」
「ああ、そうだな」
ルーシーから返してもらった短筒を腰のベルトに差しながら、やはりホルスターは必要だな、と賢人は思った。
「ちょっと話がそれちゃったけど、次は〈マップ〉を使ってみましょうか」
「わかった。たしか〈マップ〉を意識しながら、加護板をタップするんだよな」
「ええ、そうよ」
賢人はルーシーに確認を取りながら、加護板を手に取り、〈マップ〉と脳内で呟きつつ板の表面をタップする。
「お、出た」
表示されたのは、かなり大雑把な地図だった。
「ちゃんと出たわね。ほら、これがあなたの現在位置よ」
隣に立つルーシーが賢人と一緒に加護板をのぞき込みながら、中央の光点を指さす。
そのとき、甘酸っぱい匂いがふわりと漂ってきた。
ふと視線を動かすと、じわりと汗の滲んだルーシーの首筋が目に入った。
すると、先ほど部屋で自分にまたがる彼女の尻や太ももの感触や、心地よい重みなどが思い出され、急速に鼓動が速まるの感じた賢人は、平静を装いながら、左手で胸ポケットからミントパイプを取り出した。
「すぅ…………ふぅー……」
そんな賢人の仕草を察知したのか、ルーシーが振り返った。
顔が、近い。
「どしたの?」
黄色い瞳が、自分を見ていた。
賢人は慌てて、加護板へと視線を向けた。
「い、いや、別に。それより、その、道が、途中で切れてるな」
街から続く街道が〈マップ〉には表示されていたが、それが途中で切れていた。
「加護板を持って歩いた場所しか、記録はされないからね」
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「加護板を持つ前でも、訪れた街や重要な施設なんかの場所だけは、記録されるけどね」
「なるほど……」
「で、〈マップ〉の基本的な使い方だけど」
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