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第一章
第16話 講習を受けました
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本当にざっと規則などの説明をされただけで、講習は終わった。
冒険者というのは、基本的に魔物を討伐するのが仕事で、そのために加護が与えられる。
ただし、頼まれればそれ以外の仕事もやる『なんでも屋』のような一面もあった。
魔物の強さや依頼達成の難易度などにランクが定められていたり、ランクによっては依頼を受けられなかったり、依頼達成を積み重ねればランクが上がったりする。
もう少し細かいことの説明もあったが、大雑把に言えばそういうことだった。
時間にして30分ほどだっただろうか。
ある程度頭には入ったが、わからないことはルーシーに聞けばいいということなので、その都度質問し、確認すればいいだろう。
「では講習を理解し、冒険者になることに同意するのであれば、ここに手を置いてくれ。いまならまだ、引き返せるぞ」
最初に言ったとおり、冒険者は魔物と戦うのが仕事だ。
そのために加護を得る。
なぜ魔物と戦う者を冒険者と呼ぶのかは、話が長くなるとかで省略された。
「そこに触れたら、加護を得られるんですね?」
「その通りだ。そして加護を得たからには、お前は冒険者として戦わなくてはならない」
「わかりました」
部屋の片隅に、石柱が立っていた。
それは短筒が置かれていたもの、あるいは町の門に設置されていたものに似ていた。
手を置くと上端部に設置された石版が、淡く光った。
その光はやがて賢人の全身を包み込んだ。
「お、なんだ?」
やがて光は手を通して石版へと吸い込まれるように消えた。
力が湧き上がってくるように感じた。
「無事、加護は得られたようだな。おめでとう」
「えっと、ありがとうございます」
どうやら、加護を得ることに成功したようだ。
「ふふ、おめでとう」
「ああ」
自分の身体が自分の物でないような、妙な感じだ。
「だいじょうぶ。すぐに慣れるわよ」
考えが表情に出ていたのか、ルーシーは穏やかな口調でそう言った。
「いま受け取った情報から加護板を作成するので、下で待っていてくれ」
職員に促されて部屋を出たふたりは、下に下りるべく歩き始めた。
「おつかれさま」
「ルーシーこそおつかれ。つき合わせちゃって悪いね」
「気にしなくていいわよ。こういうのはたまに復習しといたほうがいいからね。それから……」
ふとルーシーが足を止めたので、賢人もつられて立ち止まる。
「パーティー、組んでくれてありがとうね」
彼女は隣に立つ、自分より少し背の高い賢人を軽く見上げながら、照れたようにそう言った。
「いや、お礼を言うべきは俺のほうだろ。これからいろいろ世話になるんだから」
「そっか。それもそうね」
ルーシーが納得したようだったので、賢人は再び歩き出そうとしたが、1歩踏み出したところで袖をつままれた。
「ん、どうした?」
立ち止まり、振り返ってルーシーを見る。
「えっと、その、大事なことだから最初に言っておくんだけど」
「パーティーのルール的なこと?」
「そうね。そんな感じのこと」
そこでルーシーは、にっこり笑って賢人を見た。
「パーティー、解消したくなったらいつでも遠慮なく言ってね。あたしは平気だから」
そう言った彼女は相変わらず笑顔を浮かべたままだったが、なぜか賢人には、それが泣き顔のようにに見えた。
「それはお互い様じゃないかな。ルーシーもいやになったらいつでも言ってくれよ」
先ほどの職員とのやりとりといい、なにか事情があるのかもしれないが、まだ会ったばかりの女性だ。
少なくともいまは、対等であろうとすればいいだろう。
「そっか。それもそうね」
賢人の言葉に納得したのか、ルーシーは先ほどと同じ返事をした。
「それじゃ、下におりましょうか」
そして歩き始めたルーシーのあとに、賢人も続いた。
(もう、いいかな)
階段を下りながら、賢人はミントパイプを胸ポケットから取り出して咥えた。
途中少し眠くなった講習の途中で吸いたかったが、この世界におけるタバコの立ち位置がわからないので控えていたのだ。
「すぅ……」
ミントパイプを吸うと、少し疲れていた脳がスッキリするのを感じた。
冒険者というのは、基本的に魔物を討伐するのが仕事で、そのために加護が与えられる。
ただし、頼まれればそれ以外の仕事もやる『なんでも屋』のような一面もあった。
魔物の強さや依頼達成の難易度などにランクが定められていたり、ランクによっては依頼を受けられなかったり、依頼達成を積み重ねればランクが上がったりする。
もう少し細かいことの説明もあったが、大雑把に言えばそういうことだった。
時間にして30分ほどだっただろうか。
ある程度頭には入ったが、わからないことはルーシーに聞けばいいということなので、その都度質問し、確認すればいいだろう。
「では講習を理解し、冒険者になることに同意するのであれば、ここに手を置いてくれ。いまならまだ、引き返せるぞ」
最初に言ったとおり、冒険者は魔物と戦うのが仕事だ。
そのために加護を得る。
なぜ魔物と戦う者を冒険者と呼ぶのかは、話が長くなるとかで省略された。
「そこに触れたら、加護を得られるんですね?」
「その通りだ。そして加護を得たからには、お前は冒険者として戦わなくてはならない」
「わかりました」
部屋の片隅に、石柱が立っていた。
それは短筒が置かれていたもの、あるいは町の門に設置されていたものに似ていた。
手を置くと上端部に設置された石版が、淡く光った。
その光はやがて賢人の全身を包み込んだ。
「お、なんだ?」
やがて光は手を通して石版へと吸い込まれるように消えた。
力が湧き上がってくるように感じた。
「無事、加護は得られたようだな。おめでとう」
「えっと、ありがとうございます」
どうやら、加護を得ることに成功したようだ。
「ふふ、おめでとう」
「ああ」
自分の身体が自分の物でないような、妙な感じだ。
「だいじょうぶ。すぐに慣れるわよ」
考えが表情に出ていたのか、ルーシーは穏やかな口調でそう言った。
「いま受け取った情報から加護板を作成するので、下で待っていてくれ」
職員に促されて部屋を出たふたりは、下に下りるべく歩き始めた。
「おつかれさま」
「ルーシーこそおつかれ。つき合わせちゃって悪いね」
「気にしなくていいわよ。こういうのはたまに復習しといたほうがいいからね。それから……」
ふとルーシーが足を止めたので、賢人もつられて立ち止まる。
「パーティー、組んでくれてありがとうね」
彼女は隣に立つ、自分より少し背の高い賢人を軽く見上げながら、照れたようにそう言った。
「いや、お礼を言うべきは俺のほうだろ。これからいろいろ世話になるんだから」
「そっか。それもそうね」
ルーシーが納得したようだったので、賢人は再び歩き出そうとしたが、1歩踏み出したところで袖をつままれた。
「ん、どうした?」
立ち止まり、振り返ってルーシーを見る。
「えっと、その、大事なことだから最初に言っておくんだけど」
「パーティーのルール的なこと?」
「そうね。そんな感じのこと」
そこでルーシーは、にっこり笑って賢人を見た。
「パーティー、解消したくなったらいつでも遠慮なく言ってね。あたしは平気だから」
そう言った彼女は相変わらず笑顔を浮かべたままだったが、なぜか賢人には、それが泣き顔のようにに見えた。
「それはお互い様じゃないかな。ルーシーもいやになったらいつでも言ってくれよ」
先ほどの職員とのやりとりといい、なにか事情があるのかもしれないが、まだ会ったばかりの女性だ。
少なくともいまは、対等であろうとすればいいだろう。
「そっか。それもそうね」
賢人の言葉に納得したのか、ルーシーは先ほどと同じ返事をした。
「それじゃ、下におりましょうか」
そして歩き始めたルーシーのあとに、賢人も続いた。
(もう、いいかな)
階段を下りながら、賢人はミントパイプを胸ポケットから取り出して咥えた。
途中少し眠くなった講習の途中で吸いたかったが、この世界におけるタバコの立ち位置がわからないので控えていたのだ。
「すぅ……」
ミントパイプを吸うと、少し疲れていた脳がスッキリするのを感じた。
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