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第1章 西挟の砦

第61話 えっ!? どんだけ莫迦正直なんだ!?

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 そこに見えたのは、裸で乱交を繰り広げ、酒らしきものをあおって騒ぐ輪の中心で、手足を綱紐に縛られ四方に馬に引かれようとしてる全裸の美女の姿だったーー。

 四つ裂きかよ。

 「ああ、クソッ! んなもん見せられて放っておける訳無えだろうがよっ!!」

 「「「なんだっ!?」」」

 物陰から飛び出して、剣鉈けんなたを振るう! 野郎どもの声が聞こえたが知らん!

 幸い、レベルが上がってるお蔭で、馬が走りだす前に全部の綱紐を断つことが出来た。

 「がはっ! がはっ! ごほっ!」

 「「「「団長っ!」」」」

 地面に落ちて、咳き込む素っ裸の美女の周りに、おんなじように素っ裸の女たちが駆け寄って来た。乱交で組み敷かれている女たちとは違うようだな。

 「兎人族だと!?」「ぎゃははは! 綱切られてやがる!」「どっから湧いて出やがった!?」「増援か!?」「見ろ、雪毛のおっさんだぜ」「いや、人気ひとけはねえ」「お前ら、残念だったな! ちょっと命が伸びただけだぜ?」「可愛がってやるからよ!」「ぎゃははは!」

 莫迦ばかどもの耳障りな笑い声が、俺を苛立たせる。

 「ごはっ。す、すまない。誰かは、知らないが、がはっ。た、助かった。礼を言う」

 「そりゃどうも。お楽しみだったんなら、わりいことしちまったかと思ったが、問題ねえみたいだな」

 「貴様っ!」「待て、グニー!」

 掴みかかろうとしてくる女を仲間の女が抑えてくれた。それなりに眼福だが、体の表面に見える擦り傷や痣、筋肉を見る限り兵士か傭兵のどっちかだろう。運悪く捕まった口か?

 それよりも。

 「なあ、あんたら盗賊か?」

 周りをむさ苦しい野郎どもが、武器を片手に環を作って逃げれないように寄り始めた。ボリボリと後頭部を掻きながら、気怠けだるそうにいてみる。どんな反応が帰ってくるかーー。

 「我らをあんな奴らと一緒にするな!」

 別の女が吠えた。おぉこわっ。

 女の方は見る限り人族ばかりのようだな。

 「すまんね。状況が呑み込めてない中で、そこの姉ちゃんが裂かれそうだったからよ出てきちまった。確認だが、あんたら含めた姉ちゃんたちは皆仲間か?」

 「いや違う。仲間も居るが、女たちは皆ここにいる盗賊に連れてこられた被害者だ」

 団長と呼ばれた姉ちゃんが手首をさすりながら答えてくれた。まだ手足の感覚が戻らなんだろう。

 「それを言えばあんたらもだろう。どうせ、正義を振りかざして正論をぶつけたら、人質出されてミイラ取りがミイラになっちまった口だな」

 「「「「「ーーーーっ!」」」」」

 そう行った途端、物凄い形相でにらまれた。

 えっ!? どんだけ莫迦ばか正直なんだ!?

 「おお怖え。んなに睨むなって」

 穿ほじられたくない傷に塩を塗っちまったようだ。

 「「「「「…………」」」」」

 「んだよ。当たってるのか? かぁー目出度めでたい頭だね。ま、それだけ聞けりゃ十分だ」

 「お、おい! 何処へ行くつもりだ!?」

 「決まってる。おいたが過ぎる莫迦どもにおきゅうを据えにさ」

 「き、きゅう?」

 あら、灸も通じないのか。参ったね、こりゃ。

 「兎のおっさんが格好付けて、無様に死ぬのを見たら心も折れるだろうさ」「ぎゃはははっ! 違いねえっ!」「おっさん、黙って引っ込んでりゃ死ななかったのによ。運が悪かったな!」「兎人の腿肉ももにくは俺が貰う」「お、大将珍しくやる気じゃねえか!?」

 盗賊の中にも獣人が居るってことか。

 み出しもんは何処に行っても居るってこったな。

 だが、やって良いこととわりいことがあるだろうがよ。

 「ま、お節介の押し売りだ。気にすんな。あと、出来りゃあの話だが、他の姉ちゃんたちを保護してくれると助かる」

 「待て! 何を言ってる!? この人数に1人だと!? いくら獣人といえど、死にに行く気か!?」

 「ああ、心配してくれんのかい? ありがとさん。運が良けりゃ死なねえだろうさ。ま、行ってくらぁ」

 背中に投げ付けられる声に振り返らずに答えると、手を振って姉ちゃんたちと距離を取る。ま、下衆げすの考えそうなことだが、どうせ「殺されたくなかったら」って事をやりに来るんだろうよ。それまで持てば良いがな。

 「何だぁ? 腰の獲物は使わねえのかよ!?」「ぎゃははは! 笑い過ぎて腹が痛え!」

 ざっと見て4、50人は居そうだな。大所帯おおじょたいの盗賊か。

 頭は何処だ? 莫迦どもにゆっくり歩いて間を詰めながら、周囲を観察する。有りがたい事に兎の目は360°の視野があるんだぜ。ちらっと見るだけで大体の配置が見て取れるが、それらしい男は見えねえ。

 逃げたか? まあ良い。

 久し振りに、思いっきり行かせてもらおうかね。

 「因幡流古式骨法術いなばりゅうこしきこっぽうじゅつ、ハクト。してまいる」

 誰に聞かせるでもなく、気持ちの切り替えのおまじないのように小声で名乗りを上げると、俺は無造作に男たちの振り下ろす白刃の下に一歩踏み出したーー。





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