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第4章 旅の仲間
第51話 えっ!? 喚んだの俺だよね!?
しおりを挟む【粉骨砕身】の熟練度が1つ上がったお蔭で、森の上を跳んで洞窟に帰れた。
改めて兎の獣人の潜在能力に驚かされたよ。
何たって、脚力が尋常じゃ無え。
魔法でブーストしてるとは言え、「数時間掛けて山から降りて来たのは何だったんだ!?」って言いたくなるくらい、あっという間さ。森の木の何本かは、跳び台にして蹴り折っちまったがな。そりゃそうだろ、一飛びで洞窟まで帰れるかってんだ。
とは言っても問題がなかったわけじゃ無え。
ん? ああ、俺の体じゃ無えよ。ちゃんと【骨接ぎ】して事なきを得たさ。【骨接ぎ】の熟練度も2つばかり上がったしな。
問題は、思ってた通りプルシャンだ。
あいつ、俺の背中で小便しやがった。
いや、態とじゃねえんだがよ、やっぱり人の姿になったという弊害がな……。
ほら、闘魚の姿で居た時には水の中に色々垂れ流しで問題なかった訳だ。その感覚で俺の背中を濡らしたってこった。
まあ、ヒルダに生活魔法で洗って乾かしてもらったがよ。
プルシャンが何歳なのかは知らねえが、長いこと湖に居たから主になってたんだと思うだ。それが急に人間の姿になったもんだから、感覚が違うのはしょうがねえ。
んな訳で、ヒルダに丸投げしてやった。
だってそうだろう? 女の細々したことまで俺が知るわけ無えだろうが。
用の足し方を手取り足取り教えてたら、俺の理性が先に飛んじまうわっ!
ま、俺が言うよりもスピカの方が乗り気だったからな。2人に任せたって訳だ。
何だかんだ言いながらヒルダとプルシャンは良いコンビになりそうな気がする。『喧嘩ができるほど仲が良い』って言うし。ひょんな事から俺の従者になったんだ。仲良くしてもらいたいって思うのは自然なことだと思うぜ?
眼の前の問題を丸投げ出来たお蔭で、気になることに集中できる。
恐らくだが、深淵の森周辺にあった食物連鎖のピラミッドが崩れちまった。
――原因は……俺、だ。
先に手を出したのは赤竜だがよ、あいつを殺したのは俺だ。
あいつは『均衡が崩れる』と言った。つまり、これから誰がピラミッドの天辺を獲るか、抑えつけられてた奴らが動き出すって事だろう。現に今まで姿を見せたこともなかったワイバーンが、湖まで出張って来やがったのが良い証拠だ。
ここにあいつが居た事も知れ渡ってるはず。
あいつの存在が消えたことくらい、そこそこ力を持った奴は気付いただろうさ。
……問題はいつ来るか、だ。
ここは相変わらず危険だと、ここへ来た奴らに芯まで教えこむには力が要る。
考えてみれば、皆攻撃ばっかで守りが居ねえんだよな。
俺は、遊撃タイプ。
ヒルダは後方支援という名の火力。剣を使いたいって言ってたが、そりゃ後回しだ。刀の握り方は知ってても、剣の握り方は微妙に違うからな。
プルシャンもあの性格を見るに間違いなく突っ走る方だろう。
【骨人形】は骨を操れるが、聞ける命令は1つだ。ワイバーン相手じゃ蟻と象で使い物にはならん。それに今の所操れるのは1体だけだしな。
なら、気になってた骨法という名の魔法を使う時だろう、と思ったわけよ。
3人は今洞窟の中に入った。外に居るのは俺だけだ。
こういうのは外で試さねえとな。
「【骸骨騎士】」
骨法使いから骨法師に強制的にジョブチェンジして覚えた魔法だ。ヒルダ謂わく、神殿で転職オーブに触らずにジョブチェンジすることがあり得ないとか。
俺はこれしか知らんから、どうでも良いんだが、ヒルダにとっては大事らしい。
いや、世の中的に俺の方が可怪しいのか……。
そこら辺の常識もプルシャンと一緒に教えてもらわねえとな。
そんなことを考えていると、足元の骨が【骨形成】を使ってねえのに、ぐにゃりと潰れひと塊になりやがった。結構な量の骨が、粘土のなったようだな。
「うおっ」
って、思ったら更に骨を飲み込んで、莫迦でかい玉ができた。そう、だな。大玉転がしで使えるような、玉と言ったら分かるか?
と言っても、直径3mくらいある。玉の中も骨が詰まってるとしたら、相当な量だが……。
うん、まあ、間違いなく詰まってるわな。これだけ足元の骨が無くなりゃ、嫌でも分かるさ。
ポッカリと空いた縦穴と、その穴の底で蠢く骨粘土の大玉を見ていると、乾いた笑いが自然と漏れた。
「うん、そうだな。これにも【白骨化】試してみるか。よっと」
思い立ったらなんとやらだ。
骨の大玉の横に飛び降りで、試してみる。
「【白骨化】」
ヒルダの時みたいに、手を置いた所から汚れが消え、純白な大玉へと変わっていく。ものの数分で全体が真っ白になった。相変わらず凄えもんだな。
ぐにゃり
そう思っていると大玉の曲線が歪み、波打ち、そして一気に縮み始めたじゃねえか。まるで生きてるみたいに……。
次の瞬間大玉が閃光を放ち、俺の目を眩ませた――。
聞いて無えぞ。
「おおっ!?」
視力が戻った俺の前に居たのは、2m以上はあろうかという慎重で真っ白な全身鎧に身を包んだ騎士だった。ああ、騎士かどうかは判らんが、俺の中でイメージした騎士みたいな格好をしてるのさ。
いや、【骸骨騎士】って言うからには騎士で良いのか。
面と一体型の兜の両側面上部から、クワガタを思わせるような角が俺に向かって生え出てる。Tって字に見えなくもない。面は、X状の隙間が開いてるだけだ。
……結構迫力がある。
鎧のデザインも、西洋風というよりは、RPGの中で出てくるような鎧に近いんじゃねえかと思うぜ? 腰回りなんかスカートかと思うような形をしたデザインだからな。勿論、布じゃなく骨だというのは見りゃ判る。
おまけに、各パーツが小さく組み合わさって、可動域がかなりあるっていうのが分かるんだ。肩当てもかなり大きめで襟のようなものも見える。この大きさで、全身鎧はかなり威圧感があるな。
「が、骸骨騎士で良いんだよな?」
俺の問いに、小さく肯く。
「話せるか?」
首を横に振る。話せねえのか。
「俺の言うことは判るな?」
肯く。
「武器はあるのか?」
頷いた骸骨騎士が、何を思ったか急に両手を左右の骨の中へ突っ込んだじゃねえか。急に動くなって!
慌てて、穴の外へ飛び出る。崩落に巻き込まれちまったら堪らん。
そしてガラガラと骨を崩しながら取り出ししたのは、何と3m近い斧槍と身長と変わりない大きさの凧型の盾だったよ。いや、カイトシールドってもっと小さい物じゃなかったか?
その2つを左右の手に持って、骨を砕きながら登ってきた骸骨騎士。
無言で近づいてくるって、怖えな。
自分が喚びだした者だって分かってても、ぶるっちまうぜ。無言の迫力ってやつだな。そう思った瞬間だった――。
目の前に来た骸骨騎士が、でかいカイトシールドを持ち上げたかと思うと、俺に向かって振り下ろしてきやがったんだ!
えっ!? 喚んだの俺だよね!?
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