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第4章 旅の仲間

第50話 えっ!? 知らない!? 本当に!?

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 見上げた視線の先で羽撃はばたいていたのは、闘魚にがっしりと太い足の爪を喰い込ませた、真っ赤な竜だったーー。

 「れ、赤竜レッドドラゴンかよ……」

 竜は珍しいってヒルダが言ってたじゃねえかよ。

 『ハクトさん!』「主君、戻るのだ!」「ハクト、早く!」

 「ちぃっ!」

 ギャオオオオー―――!!

 《【粉骨砕身】の【熟練度】が8になりました》

 赤い鱗に覆われた竜が吠える中、久し振りに頭の中でアナウンスが流れる。急いで岸辺に戻るべく丸太を蹴ったが……、追ってくる気配はねえな。

 『ハクトさん、良かった!』

 「主君、ご無事で何より!」

 「ハクト危なかった。あんな奴、森に居なかったのに……」

 岸辺に着くと2人1羽が駆け寄って来たが、それどころじゃねえだろ。返事もせず湖面を振り返ると、そいつは獲物を掴んだまま、その場で羽撃いて俺らを見詰めていやがった。

 値踏みかよ……。そう思ってたら【鑑定眼】が思い出したように仕事し始める。

 ◆飛炎竜◆
 【種族】フレイム・ワイバーン
 【性別】♂
 【レベル】4315
 【状態】正常
 【生命力】? / ?
 【魔力】? / ?
 【力】?
 【体力】?
 【敏捷】?
 【器用】?
 【知性】?

 【ユニークスキル】
  ?

 【アクティブスキル】
  ?

 【パッシブスキル】
  ?
  ?

 【称号】
  ?

 「は? ワイバーン? ドラゴンじゃねえのかよ……」

 「主君、ワイバーンと言ったのか!?」

 「お、おう、フレイム・ワイバーンだとさ」

 「あ、帰ってく!」

 詰め寄って来たヒルダの勢いにたじろぎながら鑑定の結果を口にすると、その横でプルシャンが空を指差した。これ以上は仕掛けて来ないってことか。

 ワイバーンの飛んでいく方向を目で追うと、何のことはねえ、直ぐ横、深淵の森の際にそびえ立つ山に消えてった。

 「おいおい。横の山、こんなに物騒だったのかよ」

 愚痴りたくもなる。

 「い、いや、吾も遠征の時には1匹たりとも目にしておらぬ」

 「わたしも知らない。あんな奴、初めて見たよ」

 2人の反応を見る限り、嘘を言ってるようには見えねえ。だとすれば、始めからあの山にワイバーンが居たってことになる。ワイバーン……か。ファミ○ンで遊んだF○にも出てたな。あれは確か縞々しましまだった覚えがあるが……。そこまで考えて、急にあの時の声が頭の中で響き渡った。

 『莫迦ばかな!! 早まるな! 余を殺せば均衡が崩れるのだぞ!!』

 「……これもその余波、か?」

 「ん? 何だ、何か知ってるのか、主君?」

 「秘密は良くない。ハクト、言う」

 「知ってるといえば知ってるのことになるのか? まあ気にすんな。大したことじゃ無えよ」

 「「ふあぁぁぁっ!?」」

 覗き込んでくる2人の頭に手を置いて、ガシガシと撫でてやったら可笑しな声を上げやがった。どうした!?

 良く分からんが、ここに長居する必要もなくなったな。

 「おし、【粉骨砕身】が効いてる内にぶっ飛ばして洞窟に帰るぞ。ヒルダは脇に抱えていくことにして、スピカはヒルダの懐な?」

 「主君、何だかわれは雑な扱いではないか?」

 頭を抑えながら髑髏しゃれこうべで上目遣いをしてくるヒルダ。

 『分かりました!』

 「んや。スピカを任せるんだ。ちゃんと守れよ?」

 できるだけ、素っ気なく特別であることを臭わせる。スピカはサッとヒルダの肋骨の中へ入るのが見えた。器用なもんだ。

 「も、勿論だ! 主君、感謝する!」

 チョロいな。

 「ハクト、わたしは?」

 「お前さんは、おんぶだな」

 「お前じゃない、プルシャン!」

 お前っていうと、そう言って頬を膨らませた。可愛らしいな。スピカには負けるが、別嬪べっぴんさんによく似合う。まあ、名前を付けてもらったら、それで呼ばれたいわな。

 「ああ、悪い悪い。プルシャンはおんぶって言っても分らんよな。ヒルダ。おんぶの実演するから、俺の背中に乗ってくれるか?」

 「主君、言いにくいのだが……」

 「ん?」

 「おんぶとは何なのだ?」

 しゃがんでヒルダを待つが、来たのは質問だった。

 「えっ!? 知らない!? 本当に!?」

 その問いにカクカクと首を上下に振る2人と1羽。マヂかよ。おんぶ分からねえのか!?

 「い、いや、ほら、赤ん坊を背中におんぶするだろうが?」

 「何を言ってるのだ、主君。赤ん坊は胸に抱くに決まっているではないか。そう言えば、何処だかの国では、布の帯のような物で包んで胸で抱いていたな」

 何とまあ……「欧米か!」と突っ込みたくなるな。中東系の様式もありそうだが、おんぶは無えのかよ。おんぶは、アジアとアフリカだけか? いや、待て。ヒルダは良いとこの出だ。そりゃ、赤ん坊は抱くか、綺麗なベビーベッドだろう。知らねえのもうなずける。

 「わたしは知らない。子育てはオスの仕事だから」

 ああ、魚は大概そうだよな。というか、人としての常識ってもんが全部無えんじゃ……。こりゃ大変だぞ。ヒルダに丸投げするか?

 それは後で考えるとして、今はおんぶだ。

 「背負せおうから、ヒルダ、俺の背中に体を預けろ」

 「ああ、背負われれば良いのだな?」

 背負うのは通じるんかい!

 心の中で突っ込みながら、俺の首に骨の腕を回してきたヒルダを背負しょい上げる。

 「こんな感じだ。間違っても俺の首を力いっぱい絞めるなよ? 落ちない程度で良いから」

 「分かった」

 「ヒルダ、下ろすぞ?」

 「うむ。主君の背中はふわふわして心地良いな」

 「そりゃどうも。今は時間がねえ。間違ってなけりゃ、今のは偵察だ。そのうち戻って来る。それが、1匹なのか群れなのかは知らねえが、危ないのは確かだろうさ。ほら、ヒルダはつんいだ」

 「よつんばい?」

 聞き返すヒルダに、クラっとしかけた。それも分かんねんのか!?

 「わんこのような姿勢になれって言ってんの。プルシャンは背中に体を預けろ」

 「わ、わんこ!?」「分かった!」

 狼狽うろたえながら四つん這いになるヒルダを右腕に抱え、プルシャンを背負しょって尻に左手を回す。くすぐったそうにしてたが無視だ。形の良い尻の感触が左腕に伝わって来て、違うとこに血が集まりそうになるのを何とかこらえ、地面を蹴って俺は宙に舞ったーー。





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