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第3章 塒と亡骸
第37話 えっ!? 艶々になるもんなの!?
しおりを挟むあれから小一時間くらいだろうか。
骨を粘土に変えてせっせと形作り、莫迦でかい解体用の風呂を作ることが出来た。
子どもの為に庭で水を張る水遊び用のプールの巨大版って言ったら分かるか……。まあ、そんな形のものが出来上がった。ん~直径20mくらいか?
この世界の度量衡は分からんから、今はメートル法だな。
「おし、こんなもんだな」
「主君は何者なのだ?」
ヒルダはその間、スピカのお守りさ。掌に載せてスピカをうたた寝させてるのを横目に、俺が仕事してたって話だ。「骸骨でも横座り出来るんだな」と思ったのは内緒だぞ?
「何者って、見ての通り中年の兎オヤジさ。ちと貰った技術が面白いだけだ」
他に魔法は使えんしな。
「確かに、主君のステータスを見る限り他に魔法はなかったが……」
「ま、そういうこった。さて。物を出す前に、ヒルダ。どっちでも良いから人差し指出してくれるか?」
「ん? これで良いか、主君?」
「ああ、感想を聞かせてくれるとありがたい。【骨譲渡】」「あくぅっ! しゅ、主君、こ、くふんっ、これは!?」
Oh……。骸骨なのに声が色っぺぇな、おい。
【骨譲渡】。【骨錬成】と【骨融合】の熟練度上がれば、俺が取り込んだ骨を分けることが出来るって書いてあったスキルだ。いや、魔法なのか?
で、スピカに試す訳にもいかねえし、自分じゃ意味ない。丁度良いところにヒルダが居るじゃねえか。ま、これは後からする布石でもあるんだが、今はこれでいい。問題なく譲渡できたみたいだしな。
ん~量は正直どれくらい移ったのか判らなねえ。
「ああ、俺が体内に貯め込んだ骨をヒルダへ分けたんだが、どうだ? 何か体調に変化が起きたか? 違和感は?」
「しゅ、主君。そういうことをギリギリで思いついたように試さないでくれ。吃驚するではないか。体が、かあっと熱くなったぞ」
「すまんすまん。他に試せる奴が居なかったんでな。つい。で、どうだ?」
「……いや、体が熱くなった事くらいで、特に可怪しな事はないぞ」
横座りのまま、外套の襟を左右に開いて肋骨を見せるサービスは要らんぞ、ヒルダさんや。俺にはそんな趣味はねえ。
特に肋骨をじっくり見たい訳でもない俺は、ステータスを開き【骨法】に目を凝らして増えた内容を確認することにした。どかっと腰を下ろして一息つく。
◆骨法◆
Lv1:骨抜き(熟練度8)(↑2)
Lv2:骨飛礫(熟練度5)
Lv3:骨接ぎ(熟練度5)
Lv4:骨形成(熟練度8)(↑4)
Lv5:骨錬成(熟練度8)(↑4)
Lv6:骨融合(熟練度8)(↑4)
Lv7:骨爪(熟練度5)(↑2)
Lv8:骨譲渡(熟練度1)
Lv9:骨人形(熟練度1)
Lv10:粉骨砕身(熟練度7)(↑6)
Lv11:――――(熟練度ー)
Lv12:――――(熟練度ー)
Lv13:骨切り(熟練度1)
Lv14:骨細工(熟練度1)
Lv15:骨粗鬆掌(熟練度1)
Lv16:白骨化(熟練度1)
Lv17:――――(熟練度ー)
Lv18:――――(熟練度ー)
Lv19:骸骨騎士(熟練度1)
Lv20:――――(熟練度ー)
開示されていないスキルもある。
『これは、熟練度が上がらないと出てこない仕組みのようですね』
気が付くと、ヒルダの掌から俺の頭に戻って来たスピカが覗き込んでいた。
熟練度がここでも絡んで来るんだな。まだ出てないスキルは、Lv1から10までのどれかに対応してるってことか。地道に上げていけば出てくる仕組みなら問題ない。
熟練度ついでに思い出したことがある。それは、熟練度が上がれば消費魔力がかなり抑えられるってことだ。【骨形成】で言えば、8分の1になったといば分かるか?
1回魔力30使っていたのが約4で済むようになったって事だ。正直助かった。
それに、と【骨法】を改めて見る。
開示されたスキルはそれなりに使えそうだ。【骨きり】や【骨細工】は解体や骨粘土の形成後に役立つだろう。【骨粗鬆掌】は、完全に【粉骨砕身】と同じ思考レベルだと伺える。スキルを掌底打で放てるらしい。骸骨騎士は後だ。それよりも気になるモノがる。
【白骨化】・・・骨から汚れやくすみを抜き取り純白にする――とある。
それを読んでチラッとヒルダに視線を向けた。スピカの視線もヒルダに向いてる気がする。
「試してみるか」
『ですね!』
乗り気のようだ。
「ヒルダ」
「何だ、主君?」
横座りのままこちらに向くヒルダ。
「素朴な疑問なんだが、殺されたのは何時の話なんだ?」
「女神ザニア様の話では、300年前らしい。吾にしてみれば、つい昨日の事のようだがな」
300年!? そりゃ骨も汚れるはな。
「これは相談なんだが、その300年分の汚れが落とせるのなら落としてみたいと思うか?」
「む。そう言われれば、吾は沐浴もしてこなかったな。しかし、今日の今日までそういう感覚はすっかり抜け落ちていたのだから、奇麗になれば嬉しいぞ?」
袖を捲くって、腕や指先を観察するヒルダ。ああ、綺麗な尺骨と橈骨だよ。けどな、そんなサービスは要らんからな。
「そっか。よっと。じゃあ、ひとつやってみるか」
「は? 主君?」
「【白骨化】。おおっ!」『おおっ!』
「主君、また何を試し――えっ!? 体が白く!?」
まだ座ったままのヒルダの頭に手を置いて【白骨化】を使うと、そこから見る間に汚れが消えて、白い真っ白い骨が見え始めたじゃねえか!?
それが徐々に下へ下へ広がっていく。凄え。
ヒルダも、腕が白くなりだしたことで、自分の変化に気が付いたようだ。
ヒルダの全身が真っ白になるまでものの数分だった。
しかもよく見たら、足下に転がる純白の風化した骨じゃねえ。漂白したぱっさぱっさの白い骨でもねえ。骨なのに潤いも十分乗って艶があるのさ。
えっ!? 艶々になるもんなの!?
そう思って二度見しても仕方ねえくらいに、陽光を浴びてキラリと美しく輝く髑髏を、俺たちは呆然と眺めていた――。
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