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第3章 塒と亡骸

第32話 えっ!? どういうこと!?

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 『――さん』



 何処かで懐かしい声が聞こえる。



 『ハクトさん!』



 でも、何処で聞いた声だ?



 『起きて下さい! ハクトさん!』



 聞き覚えのある声と、ツンツンと頭に伝わって来る何かが刺さる感覚で意識がはっきりしてきた。

 そう言えば、火竜にスピカが喰われちまって……。

 スピカ……。

 「そうだ、スピカはっ!?」

 『きゃあっ! ハクトさん!』

 ガバッと上半身を起こすと悲鳴と俺を呼ぶ声が聞こえた。それとパタパタと羽撃はばたく音も。

 それよりも。

 それよりも、だ。

 自分の変化に驚いた。



 「はっ? なんじゃこりゃあぁぁぁぁぁぁ――――――っ!!!」



 ○田○作ばりに驚いたね。

 火竜に丸焼けにされちまった俺は、大火傷状態だったのは覚えてる。

 それも全身だ。

 ケツ?

 知らん。見えてるとこは丸焼けだったって話だよ。

 今思えば“因幡の白ウサギ”状態だったんじゃねえのか、あれ?

 どうか、ザニア姐さんが気付いていませんように……。

 じゃねえっ!!

 全身が2倍に膨らんでるんだよ!

 それも毛が伸びて!

 自慢じゃねえが、それなりに細身の兎男だったんだぜ?

 毛足も短くって、馴染んてたのによ。

 何だよこれ。

 80年台のゴー○トバ○ターズに出てくる、マ○ュマ○マンに兎の耳が生えたみたいになってるんじゃねえか!?

 『ハクトさ~~ん!』

 「ん?」

 そう言えばさっきから誰かに呼ばれてる気がする。

 『ハクトさん! やっとお話が出来るようになりましたぁっ!』

 「スピカ?」

 『はい! スピカです!』

 青い小鳥が舞い降りてくるのが見えた。

 「おおっ!? 話が出来る!?」

 『そうなんです~! 良かった~! 気が付いたらハクトさん大火傷で倒れてるんですもん、何が何だか』

 差し出した右の掌てのひらに降りて、指に顔を擦り寄せてくる仕草に思わず目尻が下がった。

 「ああ、あれな。焦ったんだぞ!? 洞窟の中にデッカイ赤竜が居やがってスピカをパクって喰っちまったんだ。んで焦って、あれこれしてたら体に火が着いてああなっちまったのさ」

 細かいことは時間が経ってからでも良いか。そう思ってザックリと説明することにした。

 俺も形振なりふり構ってられなかったから、良く覚えてねえのが本音だけどな。

 『ふぇっ!? それでこの赤竜? そう言えば昔火竜がどうとか言う話を姉様がしてた気が……』

 「ぷっ、わははは! 忘れてたのか!? そりゃ良い。ま、お互い無事に生き残れたんだ、感謝しないとな」

 翼を広げてあたふたする仕草にこらえ切れなくなって吹き出しちまった。スピカは面白いな。

 『そうですね。あ、感謝といえば、その毛が伸びたのザヴィヤヴァ姉様の【慈愛の手】だと思います』

 「じあいのて?」

 『はい! ザヴィヤヴァ姉様は天候と慈愛を司るのですが、包み込むような愛で癒やすことがお出来になるのです!』

 じあい、慈愛ね。なる程。

 「ということは、この毛は一時的ってことか?」

 『はい、そう思います。でも【慈愛の手】って、姉様滅多に使わない御業みわざですよ? ハクトさんの怪我がそれだけ酷かったってことですね』

 姉上様自ら治して下さったってことか。こりゃ感謝することが増えちまったな。

 ま、元の毛足に戻るって言うなら今はこれでいいか。

 「それにしても、スピカってあんなに沢山姉妹きょうだい居たのな?」

 『ふぇっ?』

 「ああ、赤竜の首刎ねたら俺も力尽きてな、気を失ってる時に夢の中で8人も出てきて礼を言われたんだよ」

 『ええっ!? そうなんですか!? 酷いっ! わたしには全然来てくれなかった!』

 「まあまあ、スピカさんや落ち着きなって。お前さん怒られて反省中の身だろ? おいそれと声も掛けれないのかも知れんぜ?」

 『む……。それはそうですけど……。何か納得いきません!』

 小さな翼を開いたり閉じたりして、不満を顕にする青い小鳥スピカだったが、俺から見れば可愛らしいの一言で終わりだ。小さな女の子が身振り手振りで不満を表現してるのを、傍で見てる親のような感じといえばいいか。

 「はははは。まあ、そのうち連絡が来るかも知れんし。気長に待つこった」

 『はぁ。そうですね。ところでハクトさん』

 「ん?」

 『あちらでずっと土下座している骸骨さんはお知り合いですか?』

 「は?」

 スピカの問い掛けに、その視線の先へ俺も顔を向ける。

 そこに居たのは、見間違えるはずがねえ。さっき俺とザリガニ談義をしてたエルダー・リッチの女が額を擦り付けるような姿勢で、土下座をしていたんだ。

 ただ、状況がどうやっても飲み込めない。

 誰か説明してくれ。

 だから、つい声を掛けてしまったのは仕方のないことだろう。






 「えっ!? どういうこと!?」





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