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第2章 骨の谷

第27話 えっ!? 今、何があった!?

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 「ーーーーえっ!? おい……嘘だろ!?」

 何が起きたのか理解できなかった。

 グルルルルルル

 眼の前にあるのは、緋色の鱗に覆われた巨大な鰐を思わせるような生き物の顔だ。鼻の頭に犀を思わせる緋色の角が突き出てる。先程から聞こえるのは喉が鳴ってる音だろう。

 『હું સ્વાદિષ્ટ ખોરાક ખાધો આભાર કહેવું』

 は?

 何だ?

 「何か、言ったのか……?」

 ギロリと緋色の鱗に覆われた顔の中で光る金色の眼に睨まれた俺は、足がすくんでしまい動けないでいた。

 眼と鼻の先に、緋色の鱗に覆われた巨大で凶悪な顔があるんだ。でかい角が左右に1本ずつ後頭部から後ろに伸びてるのが見える。

 今までは【鑑定眼】が勝手に仕事してくれたけど、ピクリとも動かない。

 これは想像だが、レベル差があり過ぎて発動しないということなのか?

 けどコイツは……。

 色々な情報が頭の中を駆け巡るが、俺の頭ん中にあるファンタジー小辞典偏った知識の導き出した答えが竜、それも赤竜レッドドラゴンであると告げていた。

 『神族を連れておるならばと思うたが、竜語をかいせぬとは、所詮しょせん獣は獣か。美味いものが喰えた。礼を言う、と申したのだ』

 「  な  に?」

 耳を疑った。

 さっきの言葉は竜語って事だが、それよりも聞き捨てならねえことを言いやがった。

 眼の前の生物が、生物界の頂点に立つドラゴンだろうが、何だろうが知らねえ、今なんて言いやがった!?

 『貴様の連れの神族は余が喰らうてやった。感謝するが良い。久しく喰らうてない馳走を献じた事に免じて、貴様の命は取らないでおいてやろう。はよね』

 「 ん だ と?」

 『ほう。獣は力の差を見せつければ去るはずだが、貴様はそれに当てまらぬようだな』

 ガラッ

 ぐっ、レッドドラゴンの両目が細められたと思ったら、急に息苦しくなってきやがった。

 肩の上に何か載せられたみたいに重てえ。

 何とか1歩足を前に動かすと、足下の骨が道を塞ぐように俺の前に転がった。

 頭に血がのぼって、怖さよりも先にスピカの事を思った俺の口が、啖呵たんかを切る。

 「言葉が通じるようだから言ってやる。ドラゴンだが、莫迦バカデケえトカゲだか知らねえが、俺の嫁に何してくれとんじゃあっ!! 吐き出せっ! ごらあぁっ!! 【骨爪こっそう】!」

 ダンッと足を踏み込んで右手をいだ――。

 『ふん、つまらぬ』

 手応えがあったのとレッドドラゴンの声が聞こえたのがほぼ同時だったが、俺の意識はそこでブツリと切れてしまったーー。



                 ◆◇◆



 気が付いた時、俺は背中で骨を掻き分け、吹き飛ばしながら骨の谷の入り口に向かって吹き飛ばされている最中だった。

 「ーーーーあぐっ!! えっ!? 今、何があった!? がががっ!?」

 意識が混濁こんだくしてたが、右腕と背中から来る激しい痛みでどうやら競り負けただけでなく、力負けして吹き飛ばされたのだと現状を認識できた。

 この勢いを殺そうにもどうにも出来ない。

 クソッ、どんだけの勢いで吹き飛ばされたってんだよ!

 しばらく身動きが出来そうにないが、右腕と背中の痛みが中々消えそうにない。

 それもその筈だ。

 右腕は関節が増えてあらぬ方向に曲がってる。

 けど、痛みが消えないって事は常時ダメージが蓄積されてるってことだぞ!?

 「ステータス!」

 慌てて状態を確認するためにステータスを開いて、俺は眼をみはった。

 ◆ハクト◆
 【種族】兎人族:雪毛ゆきげ
 【性別】♂
 【職業】骨法使い
 【レベル】Lv516
 【状態】打撲 / 骨折 / 恐慌
 【生命力】3842 / 19842
 【魔力】19920 / 19920
 【力】19772
 【体力】19930
 【敏捷】23083
 【器用】19769
 【知性】20006

 【ユニークスキル】
  無限収納
  骨法 Lv10

 【アクティブスキル】
  鑑定眼 Lv3

 【パッシブスキル】
  回復強化 Lv5
  耐痛 Lv10
  耐魅了Lv1

 【称号】

 【装備】
  ベルト
  ポーチ×2
  ナイフ×2
  手斧×1(破損)
  解体用骨刀×1(破損)
  森躄蟹の草摺(破損)
  森躄蟹の籠手(破損)
  森躄蟹の脛当て(破損)
  森躄蟹の胸当て(破損)

 【所持金】
  0

 恐ろしい勢いで、【生命力】が減っていってるんだ。

 【生命力】2914 / 19842(ピッ)

 ルーレットを回すくらいの勢いでドンドン減ってく。

 【生命力】2307 / 19842(ピッ)

 んな悠長な事を言ってる場合かよっ!

 【生命力】1853 / 19842(ピッ)

 何か手を打たねえと、行き着く先は打撲死。ここの骨の仲間入りなんて死んでも御免だ!

 【生命力】1261 / 19842(ピッ)

 ステータス画面を出したままだから、嫌でも気持ちが焦る。

 【生命力】879 / 19842(ピッ)

 でも、見ない訳にはいかねえだろうがよ。

 【生命力】315 / 19842(ピッ)

 何かねえのかよーー。そうだっ!?

 【生命力】87 / 19842(ピッ)

 「【骨融合】ぉぉぉぉぉっ!!!」

 【生命力】1 / 19842(ピーーーーーー)





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