27 / 333
第2章 骨の谷
第22話 えっ!? 関係ないの!?
しおりを挟む歩き出してからどれくらい経っただろうか。
空を見上げてもまだ太陽が中天に来てないから、昼ではないことは判る。
レベルが上がって身体能力も上がったお蔭で、今のところ無駄な戦闘は避けれてると言っていいな。
森鰐、森躄蟹、猪蛇などは寄ってこないというのもあるが、小鬼猿とかは集団心理が働くのか総出で向かって来やがるから逃げるに限る。
やってられるかってんだ。
有効利用できるのは骨だけだぞ?
1回ゴブリンエイプを湖の主へ土産にしてみたけど、見向きもされなかったからアレ以来なるだけ避けてる。
ああ、適当にポイしたら何かが喰ってたよ。
それよりも森躄蟹、猪蛇は貴重なタンパク源だから、眼に入れば狩ってるな。
猪蛇は湖の主の良い土産になるし、森躄蟹は器とかを作るのに重宝するんだよ。
だからのんびり散策気分で歩いてる訳じゃないってこった。
随分山が迫ってくるような感じになってきた。
平坦だった地面も気持ち傾斜が付いてきたしな。
ん?
すんすん
川に沿って山には向かっているんだが少しズレた方角から変な臭いがする。
「何だ? 何か嗅いだことのある臭いだぞ? スピカさんや、ちょっと向きを帰るよっと?」
俺は川を飛び越えてやや西寄りに進路を変えたーー。
◆◇◆
太陽が中天から傾き始めた頃、臭いの元が何なのか判明した。
「古戦場かよ……」
通りで臭ったことがあるはずだ。
田舎の墓地周りの臭いがこれとそっくりだったんだよ。
今思えばあそこも似たような場所だったのも知れないな、と感慨に耽ってしまった。
というか、そんな臭いを覚えていた俺もどうかしてるだろ!?
あと、森の様子も明らかに変わった。
背中を向けてる森は青々とした葉が茂り鬱蒼としているんだが、眼の前から山腹にかけては殆どが枯れ木なんだよ。
枯れ木も山の賑わいって諺があったが、ありゃ間違いだ。
賑わってねえ。
寧ろ向こうが見えてる分だけ物悲しさが先に立つ。
足下に転がってる、無数の白骨死体や戦の道具だったものが景色に溶け込んで一層哀愁を誘ってやがる。
「気が重たくなるな」
これだけの戦死者を出さねえといけねえ戦があったって事だろ?
ピルルル
頭の上でスピカが慰めてくれたような気がした。
ぱふっぱふっ
毛で包まれた両手で頬を挟むように張って、気を取り直すことにする。
俺が原因でこれがある訳じゃねえんだから、気に病むことはねえ。
けど、この戦いで原因が取り除かれてないんだとしたら、まだ危険だってこった。
こんな場所での楽観視は文字通り命取りなり得るって、この1週間で嫌というほど叩きこまれたからな。
「常在戦場だな」
気が緩むことはない。
カラン
乾いた音が近くで聞こえた。
風に吹かれて骨が落ちた音か?
いや、待て。今風なんか吹いてねえだろ!?
ギギギギって油が切れたブリキの人形みたいにゆっくり首を音がした方に動かす。
「はっ!? 今真昼だろ!? えっ!? 関係ないの!?」
思わず突っ込んでしまった。
そうこうしている間にも骨がカラカラと繋がって、骸骨兵が次々に現れるじゃねえか。
「Oh……。まぢかよ」
それも1体や2体の話じゃない。
見渡す限りだ。
俺の頭ん中にあるファンタジー小辞典には、スケルトンは日光に弱いから日中には出ないとあった気がする。
とは言っても、若い頃ドラ○エやF○のシリーズ数作を攻略本片手に遊んだ程度だ。
幽霊や骸骨が夜に出るって思い込んでるのは、日本の妖怪や迷信の類を信じてたからかもな。
「そうは言っても眼の前に出てるんだ、今更聞いてないって叫んでも消えねえだろさ。腹を括るか」
まともに殺り合うつもりはない。
多勢に無勢だ。
眼を凝らすと自然と【鑑定眼】が仕事してくれた。
◆深淵軍隊骸骨◆
【種族】アーミースケルトン
【性別】♂
【レベル】167
【状態】虚弱
【生命力】4179 / 4179(-836)
【魔力】4406 / 4406(-881)
【力】4305(-861)
【体力】4409(-882)
【敏捷】4481(-896)
【器用】4222(-844)
【知性】4175(-835)
【ユニークスキル】
再構築 Lv2
【アクティブスキル】
剣術 Lv2
【パッシブスキル】
日光虚弱 Lv2
暗夜強壮 Lv2
【称号】
【装備】
錆びた長剣
あ~眼の前のこいつのステータスか。
ということは似たり寄ったりって事だ。
種族がアーミースケルトンって……。
軍隊蟻の真似かよっ!
日光で虚弱なのはありがたいが、すんなり通してはくれんだろうな。
まったく、厄介な話だよ。
「あ~、スピカさんや。進む方向はこのままだ。追いかけるから先に行っててくれるか?」
ピルルルッ
頭から飛び立ったのを見送ってから【骨爪】を使う。
「適度に切り刻みながら、押し通るかね。さあて、骨比べといこうか」
ニヤリと口角を釣り上げ髭を振るわせた俺は、白骨の波の中へ躍り出たーー。
0
お気に入りに追加
574
あなたにおすすめの小説
辺境の農村から始まる俺流魔工革命~錬金チートで荒れ地を理想郷に変えてみた~
昼から山猫
ファンタジー
ブラック企業に勤め過労死した俺、篠原タクミは異世界で農夫の息子として転生していた。そこは魔力至上主義の帝国。魔力が弱い者は下層民扱いされ、俺の暮らす辺境の農村は痩せた土地で飢えに苦しむ日々。
だがある日、前世の化学知識と異世界の錬金術を組み合わせたら、ありふれた鉱石から土壌改良剤を作れることに気づく。さらに試行錯誤で魔力ゼロでも動く「魔工器具」を独自開発。荒地は次第に緑豊かな農地へ姿を変え、俺の評判は少しずつ村中に広まっていく。
そんな折、国境付近で魔物の群れが出現し、貴族達が非情な命令を下す。弱者を切り捨てる帝国のやり方に疑問を抱いた俺は、村人達と共に、錬金術で生み出した魔工兵器を手に立ち上がることを決意する。
これは、弱き者が新たな価値を創り出し、世界に挑む物語。
スマートシステムで異世界革命
小川悟
ファンタジー
/// 毎日19時に投稿する予定です。 ///
★☆★ システム開発の天才!異世界転移して魔法陣構築で生産チート! ★☆★
新道亘《シンドウアタル》は、自分でも気が付かないうちにボッチ人生を歩み始めていた。
それならボッチ卒業の為に、現実世界のしがらみを全て捨て、新たな人生を歩もうとしたら、異世界女神と事故で現実世界のすべてを捨て、やり直すことになってしまった。
異世界に行くために、新たなスキルを神々と作ったら、とんでもなく生産チートなスキルが出来上がる。
スマフォのような便利なスキルで異世界に生産革命を起こします!
序章(全5話)異世界転移までの神々とのお話しです
第1章(全12話+1話)転生した場所での検証と訓練
第2章(全13話+1話)滞在先の街と出会い
第3章(全44話+4話)遺産活用と結婚
第4章(全17話)ダンジョン探索
第5章(執筆中)公的ギルド?
※第3章以降は少し内容が過激になってきます。
上記はあくまで予定です。
カクヨムでも投稿しています。
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
異世界で俺はチーター
田中 歩
ファンタジー
とある高校に通う普通の高校生だが、クラスメイトからはバイトなどもせずゲームやアニメばかり見て学校以外ではあまり家から出ないため「ヒキニート」呼ばわりされている。
そんな彼が子供のころ入ったことがあるはずなのに思い出せない祖父の家の蔵に友達に話したのを機にもう一度入ってみることを決意する。
蔵に入って気がつくとそこは異世界だった?!
しかも、おじさんや爺ちゃんも異世界に行ったことがあるらしい?
元34才独身営業マンの転生日記 〜もらい物のチートスキルと鍛え抜いた処世術が大いに役立ちそうです〜
ちゃぶ台
ファンタジー
彼女いない歴=年齢=34年の近藤涼介は、プライベートでは超奥手だが、ビジネスの世界では無類の強さを発揮するスーパーセールスマンだった。
社内の人間からも取引先の人間からも一目置かれる彼だったが、不運な事故に巻き込まれあっけなく死亡してしまう。
せめて「男」になって死にたかった……
そんなあまりに不憫な近藤に神様らしき男が手を差し伸べ、近藤は異世界にて人生をやり直すことになった!
もらい物のチートスキルと持ち前のビジネスセンスで仲間を増やし、今度こそ彼女を作って幸せな人生を送ることを目指した一人の男の挑戦の日々を綴ったお話です!
性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。
狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。
街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。
彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)
異世界転生!ハイハイからの倍人生
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は死んでしまった。
まさか野球観戦で死ぬとは思わなかった。
ホームランボールによって頭を打ち死んでしまった僕は異世界に転生する事になった。
転生する時に女神様がいくら何でも可哀そうという事で特殊な能力を与えてくれた。
それはレベルを減らすことでステータスを無制限に倍にしていける能力だった...
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる