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第2章 骨の谷

第22話 えっ!? 関係ないの!?

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 歩き出してからどれくらい経っただろうか。

 空を見上げてもまだ太陽が中天に来てないから、昼ではないことは判る。

 レベルが上がって身体能力も上がったお蔭で、今のところ無駄な戦闘は避けれてると言っていいな。

 森鰐もりわに森躄蟹森ザリガニ猪蛇いのへびなどは寄ってこないというのもあるが、小鬼猿ゴブリンエイプとかは集団心理が働くのか総出で向かって来やがるから逃げるに限る。

 やってられるかってんだ。

 有効利用できるのは骨だけだぞ?

 1回ゴブリンエイプを湖の主へ土産にしてみたけど、見向きもされなかったからアレ以来なるだけ避けてる。

 ああ、適当にポイしたら何かが喰ってたよ。

 それよりも森躄蟹、猪蛇は貴重なタンパク源だから、眼に入れば狩ってるな。

 猪蛇は湖の主の良い土産になるし、森躄蟹は器とかを作るのに重宝するんだよ。

 だからのんびり散策気分で歩いてる訳じゃないってこった。

 随分山が迫ってくるような感じになってきた。

 平坦だった地面も気持ち傾斜が付いてきたしな。

 ん?

 すんすん

 川に沿って山には向かっているんだが少しズレた方角から変な臭いがする。

 「何だ? 何か嗅いだことのある臭いだぞ? スピカさんや、ちょっと向きを帰るよっと?」

 俺は川を飛び越えてやや西寄りに進路を変えたーー。



                 ◆◇◆



 太陽が中天から傾き始めた頃、臭いの元が何なのか判明した。

 「古戦場かよ……」

 通りで臭ったことがあるはずだ。

 田舎の墓地周りの臭いがこれとそっくりだったんだよ。

 今思えばあそこも似たような場所だったのも知れないな、と感慨にふけってしまった。

 というか、そんな臭いを覚えていた俺もどうかしてるだろ!?

 あと、森の様子も明らかに変わった。

 背中を向けてる森は青々とした葉が茂り鬱蒼うっそうとしているんだが、眼の前から山腹にかけてはほとんどが枯れ木なんだよ。

 枯れ木も山のにぎわいってことわざがあったが、ありゃ間違いだ。

 賑わってねえ。

 むしろ向こうが見えてる分だけ物悲しさが先に立つ。

 足下に転がってる、無数の白骨死体や戦の道具だったものが景色に溶け込んで一層哀愁を誘ってやがる。

 「気が重たくなるな」

 これだけの戦死者を出さねえといけねえ戦があったって事だろ?

 ピルルル

 頭の上でスピカが慰めてくれたような気がした。

 ぱふっぱふっ

 毛で包まれた両手で頬を挟むように張って、気を取り直すことにする。

 俺が原因でこれがある訳じゃねえんだから、気に病むことはねえ。

 けど、この戦いで原因が取り除かれてないんだとしたら、まだ危険だってこった。

 こんな場所での楽観視は文字通り命取りなり得るって、この1週間で嫌というほど叩きこまれたからな。
 
 「常在戦場だな」

 気が緩むことはない。



 カラン



 乾いた音が近くで聞こえた。

 風に吹かれて骨が落ちた音か?

 いや、待て。今風なんか吹いてねえだろ!?

 ギギギギって油が切れたブリキの人形みたいにゆっくり首を音がした方に動かす。



 「はっ!? 今真昼だろ!? えっ!? 関係ないの!?」



 思わず突っ込んでしまった。

 そうこうしている間にも骨がカラカラと繋がって、骸骨兵がいこつへいが次々に現れるじゃねえか。

 「Oh……。まぢかよ」

 それも1体や2体の話じゃない。

 見渡す限りだ。

 俺の頭ん中にあるファンタジー小辞典偏った知識には、スケルトンは日光に弱いから日中には出ないとあった気がする。

 とは言っても、若い頃ドラ○エやF○のシリーズ数作を攻略本片手に遊んだ程度だ。

 幽霊や骸骨が夜に出るって思い込んでるのは、日本の妖怪や迷信の類を信じてたからかもな。

 「そうは言っても眼の前に出てるんだ、今更聞いてないって叫んでも消えねえだろさ。腹をくくるか」

 まともに殺り合うつもりはない。

 多勢に無勢だ。

 眼を凝らすと自然と【鑑定眼】が仕事してくれた。

 ◆深淵軍隊骸骨◆
 【種族】アーミースケルトン
 【性別】♂
 【レベル】167
 【状態】虚弱
 【生命力】4179 / 4179(-836)
 【魔力】4406 / 4406(-881)
 【力】4305(-861)
 【体力】4409(-882)
 【敏捷】4481(-896)
 【器用】4222(-844)
 【知性】4175(-835)

 【ユニークスキル】
  再構築 Lv2

 【アクティブスキル】
  剣術 Lv2

 【パッシブスキル】
  日光虚弱 Lv2
  暗夜強壮 Lv2

 【称号】
 
 【装備】
  錆びた長剣

 あ~眼の前のこいつのステータスか。

 ということは似たり寄ったりって事だ。

 種族がアーミースケルトンって……。

 軍隊蟻アーミーアントの真似かよっ!

 日光で虚弱なのはありがたいが、すんなり通してはくれんだろうな。

 まったく、厄介な話だよ。

 「あ~、スピカさんや。進む方向はこのままだ。追いかけるから先に行っててくれるか?」

 ピルルルッ

 頭から飛び立ったのを見送ってから【骨爪こっそう】を使う。



 「適度に切り刻みながら、押し通るかね。さあて、骨比べといこうか」

 

 ニヤリと口角を釣り上げ髭を振るわせた俺は、白骨の波の中へ躍り出たーー。





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