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第1章 深淵の湖

第12話 えっ!? こんなに痛いの!?

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 《レベルが上がりました》

 「は?」

 ピッ

 スピカが左肩に降りて来て首をかしげる。可愛い。

 何かの聞き間違いかと思ったら、念仏のように同じアナウンスが頭の中を流れ始めた。

 《レベルが上がりました。レベルが上がりました。レベルが上がりました。ーーーーーーーーーーレベルが上がりました。レベルが上がりました。レベルが上がりました》

 時間にして5分くらいか。抑揚のないアナウンスを聞き続けるのは苦痛以外の何物でもないな。

 兎に角、レベルは上がったらしい。

 《【骨法こっぽう】のレベルが上がりました》

 「え、まだあるの!?」

 《【骨法】のレベルが上がりました。【骨法】のレベルが上がりました。ーーーーーーーーーー【骨法】のレベルが上がりました。【骨法】のレベルが上がりました》

 このアナウンスは2分も掛からずに終わった。10回位か?

 《【骨抜き】の【熟練度】が2になりました》

 おっと。魔法にも熟練度があるのか。

 数値化してあるのはありがたーー。

 「い」

 ピッ



 「痛ってぇぇぇぇぇぇぇぇぇーーーーーーッ!!!」



 それは前触れ無くやって来た。スピカは驚いてどっか飛んで行く。

 いや前触れはあれか?

 レベルアップのアナウンスか?

 腕が折れた痛みをこらえてたんだが、それ以上の痛みに襲われたもんだから思わず叫んじまった。

 それこそ全身の骨が折れたんじゃねえかってくらいの痛みだ。

 いや、待てまて待て。



 これ・・何の痛みだ?



 更なる痛みで転げまわってる俺の中で冷静に分析してる奴が居る。

 ーーまあ俺だが。

 簡単な流れの御浚おさらいだ。

 森鰐を3匹倒した。

 レベルが上がった。

 激痛がやって来た。



 「があああああああっ! 成長痛ってことかよおおおおおおっ!!」



 痛みで焼き切れそうになってる頭を使って消去法で辿たどり着いた答えがこれだ。

 思わず、内心『えっ!? こんなに痛いの!?』と思ってしまったのはご愛嬌だろう。

 折れた左腕なんか気にしていてられないくらいの痛みなんだよ。

 いや、本当なら少しずつレベルが上がって痛みに慣れるはずだったのが、急にレベルが上がったもんだから、一度に押し寄せたってことか?

 《パッシブスキル【耐痛】を獲得しました》

 《【耐痛】のレベルが上がりました。【耐痛】のレベルが上がりました。ーーーーーーーーーー【耐痛】のレベルが上がりました。【耐痛】のレベルが上がりました》

 暫く転げ回っていたら、痛みが柔らかくなった。

 《【回復強化】のレベルが上がりました》

 いや、完全に痛覚が無くなった訳じゃない。正座してて痺れが切れた時みたいに、小さくて小刻みな痛みがある。我慢できない痛みじゃない。

 「スキルってすげえな」

 これからはこういうスキルを理解して巧く使っていかなきゃならんってことだ。

 ぼーっとする頭を片手で支えながら、身を起こしてその場に座る。

 スキルがどうこうって言う前に、自分の体のことさえ覚束無おぼつかないんだからな。

 先ずは自分を知ることだ。それから森の生態系。

 孫子も言ってただろ。

 『を知り己を知れば、百戦あやうからず。彼を知らずして己を知るは、一勝一負す。彼を知らず己を知らざれば、戦うたびに殆うし』ってな。

 ここじゃ負けたら終わりだ。次はねぇ。

 兎らしく臆病であることと、逆に強くあること。

 これを忘れるなってことか。

 「ステータス」

 ◆ハクト◆
 【種族】兎人族:雪毛ゆきげ
 【性別】♂
 【職業】骨法使い
 【レベル】103(↑102)
 【状態】健康
 【生命力】2388 / 2388(↑2371)
 【魔力】2446 / 2446(↑2430)
 【力】2476(↑2456)
 【体力】2361(↑2355)
 【敏捷】2927(↑2403+510)
 【器用】2350(↑2334)
 【知性】2354(↑2347)
 
 【ユニークスキル】
  無限収納
  骨法:Lv10(↑9)

 【アクティブスキル】
  鑑定眼:Lv1

 【パッシブスキル】
  回復強化:Lv2(↑1)
  耐痛:Lv10(New↑10)

 【称号】

 【装備】
  ベルト
  ポーチ×2
  ナイフ×2
  手斧×1

 【所持金】
  0

 「おおぉ……」

 思い出して自分のステータスを見てみたが、どうやら強くなってるらしい。

 レベルがあるというのは、パッと見で強さの指標にしやすいから助かるな。

 上限が何処にあるのかさえ分からんが……。

 というか、そもそも何が【職業】の下にある【レベル】を上げる要素なのかも分からん。

 ゲームなら経験値なんだろうが、ここはゲームの世界じゃないらしいからな。

 何となく判ってるのはスキルのレベルだ。

 スキルを使って敵を倒す、あるいはスキルが発動する状況で一定時間過ごすと上がってる気がした。

 詳しい奴が居れば聞いてみたいがーー。

 「こんな所に人が居るのか?」

 そうつぶやきながら、俺は辺りを見回した。

 うん、猪蛇と森鰐の死体が1体ずつあるな。

 お、痛みが引いてる。

 折れた腕も痛くない。くっついたのか?

 動かしてみるが問題はない。くっついたらしい。

 流石、異世界。よく解らん。

 おもむろに腰を上げた俺は、朝飯の種を回収することにしたーー。





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