上 下
9 / 333
第2幕 深淵の森 序章

第8話 えっ!? これでどうすりゃ良いの!?

しおりを挟む
 
 「おい、嘘だろ――」

 そこに居たのは体高5mはあろうかという、牛に似た角を生やしたバカデカイ蛙だった――。

 さっきの「深淵しんえんぬし」のステータス画面の内容がパッとチャンネルを変えるように変わった。

 俺の眼は立派な牛のような角を生え出させた巨大な蛙から離せられなくなってる。

 というか、コイツにとっちゃ俺も餌だろうから、危機的な状況に変わりはない。

 いや、前門の虎、後門の狼ならぬ、前門の蟒蛇うわばみ、後門の牛蛙うしがえる(?)だわ。

 一体どういうとこだよ、この森は!

 最初の大鼠おおねずみだけで結構驚いたってぇのに、もうお腹いっぱいで吐きそうだよ!

 ◆深淵蛙◆
 【種族】オックスフロッグ
 【性別】♂
 【レベル】?
 【状態】正常
 【生命力】? / ?
 【魔力】? / ?
 【力】?
 【体力】?
 【敏捷】?
 【器用】?
 【知性】?

 【ユニークスキル】
  ?

 【アクティブスキル】
  ?

 【パッシブスキル】
  ?

 【称号】
  ?

 チラッと画面を見たら思った通り「?」マークだらけだった。

 気になったのは、こいつにも“深淵”という言葉が入ってるってことだ。

 この場所のことか?

 地名とか、森の名前とかかもしれないが、憶測の域をでないからこれ以上考えるのを止めた。

 止めざるを得なかったと言うべき……か。

 ああ、危機は脱してなかったってことさ。

 シュルシュルと三又に分かれた舌が巨大な蟒蛇の口から出入りしてるのが見えた。

 「追いつかれちまったな……」

 ピッ ピィィィ~~

 俺の左肩にスピカが降りてきてがっくりと肩を落とす。

 いや、スピカさんや。そんなにちっちゃい体でガッカリすんなよ。

 可愛くて思わず笑いそうになるだろうが。

 バキバキと音がして木の幹に突き刺さった黒い舌が引き抜かれて、その反動で木が折れるのを横目に見た。

 ――俺に来るのか!?

 と思ってたら――。

 グエエ――――ッ!!

 ジャ――――――ッ!!

 獲物がそれぞれ変わったらしい。

 「おい、スピカさんや、このままどさくさに紛れて逃げるぞ」

 ピッ!

 うなずくスピカの仕草に思わず笑みがこぼれたが、この場を離れるというという決定を覆す気はサラサラ無いので、俺たちはそそくさと茂みの中へ飛び込んだ――。



                 ◆◇◆



 俺の感覚ではあれから15分位は走っただろうか、けどいまだに森の中から抜けられずに居る俺たち。

 スピカは食うもの困らんだろうが、俺は困る。

 そもそも兎人間は肉食なのか? それとも草食なのか?

 手に持つ大鼠の肉を見て俺は悩んでいた。

 生食は避けたい。

 近代ニッポンでよわい50まで育ってきた俺は、素材をそのまま食べる行為に慣れていない。

 刺し身は別だが、サバイバルキャンプは苦手だ。

 田舎のじいちゃんに教えてもらったのは主に獣のさばき方で、薬草の見分け方とか調理の仕方なんか聞いてもいない。

 どうしたもんかな。

 そこまで思ってふと思い出し、再度自分のステータスを見てみることにした。

 「ステータス」

 ◆ハクト◆
 【種族】兎人族:雪毛ゆきげ
 【性別】♂
 【職業】骨法使い
 【レベル】1
 【状態】健康
 【生命力】17 / 17
 【魔力】5 / 16
 【力】20
 【体力】5
 【敏捷】14(9+5)
 【器用】16
 【知性】7

 【ユニークスキル】
  無限収納
  骨法:Lv1

 【アクティブスキル】
  鑑定眼:Lv1

 【パッシブスキル】
  回復強化:Lv1

 【称号】

 【装備】

 【所持金】
  0

 「逃げまわってるだけだったからな、何も変わってるとこはないよな」

 まあ判かってた事だけど、もう1つ気になるものをまだ触ってないんだ。

 ――"無限収納"。

 使い方がさっぱり分からん。

 何処にあるのかも分からん。

 何が入ってるのかも分からん。

 ステータスに書いてあるからるには在るんだろうが――。

 「なあ、スピカさんやどうすりゃ良い?」

 ピルルルルル

 機嫌良さそうにさえずるスピカを指の背で撫でてから、色々と試してみることにした。

 「オープン、ラーク、開けごま、無限収納……」

 何にも起きん。

 はあ、使い方ぐらい説明してくれてもいいだろうに……。

 この肉、持ち続けてると手の熱で傷んでくるんだよな。

 こう、ポケットみたいにズボッと入れれば――。

 「え? 空間に手が入った?」

 穴が開いてる……。

 「じゃあ何か? 特に言う必要もなくて、収めたいって思えばいいってことか?」

 ピルルルル

 スピカさんや、そうならそうと言っておくれ。

 って、まだ話しできないんだから仕方ないか。

 ガクッとなりそうなのを懸命にこらえて、穴を広げてみる。

 「おお~、凄いな。真っ暗で何処が底か分からんぞ。ん?」

 視線の先に蓋のない木箱に入った物が見えた。

 取ろうと手を伸ばしたら、勝手に近づいてきたぞ。なる程。こう使えば良いのか。

 両手を突っ込んで箱を抱え出すと、空間から出たところで急に重さを感じることになる。

 おっとっと。中にある間は重さを感じないのか。便利だな。

 それよりも気になったのが50㎝×50㎝×50㎝の木箱の中身だ。

 何かの本2冊。

 薪1束。

 ナイフ2本、鞘付き。

 手斧1本、鞘付き。

 ベルト1本。

 ベルト用ポーチ2個。

 火打ち石2個。

 油瓶1本。

 毛布1枚。

 小さな巾着袋に入った麦粒1袋。

 肉焼き台1基。



 ――えっ!? これでどうすりゃ良いの!?



 中身を取り出して店を開いた俺は、言葉を失った――。





しおりを挟む
感想 138

あなたにおすすめの小説

スマートシステムで異世界革命

小川悟
ファンタジー
/// 毎日19時に投稿する予定です。 /// ★☆★ システム開発の天才!異世界転移して魔法陣構築で生産チート! ★☆★ 新道亘《シンドウアタル》は、自分でも気が付かないうちにボッチ人生を歩み始めていた。 それならボッチ卒業の為に、現実世界のしがらみを全て捨て、新たな人生を歩もうとしたら、異世界女神と事故で現実世界のすべてを捨て、やり直すことになってしまった。 異世界に行くために、新たなスキルを神々と作ったら、とんでもなく生産チートなスキルが出来上がる。 スマフォのような便利なスキルで異世界に生産革命を起こします! 序章(全5話)異世界転移までの神々とのお話しです 第1章(全12話+1話)転生した場所での検証と訓練 第2章(全13話+1話)滞在先の街と出会い 第3章(全44話+4話)遺産活用と結婚 第4章(全17話)ダンジョン探索 第5章(執筆中)公的ギルド? ※第3章以降は少し内容が過激になってきます。 上記はあくまで予定です。 カクヨムでも投稿しています。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

元34才独身営業マンの転生日記 〜もらい物のチートスキルと鍛え抜いた処世術が大いに役立ちそうです〜

ちゃぶ台
ファンタジー
彼女いない歴=年齢=34年の近藤涼介は、プライベートでは超奥手だが、ビジネスの世界では無類の強さを発揮するスーパーセールスマンだった。 社内の人間からも取引先の人間からも一目置かれる彼だったが、不運な事故に巻き込まれあっけなく死亡してしまう。 せめて「男」になって死にたかった…… そんなあまりに不憫な近藤に神様らしき男が手を差し伸べ、近藤は異世界にて人生をやり直すことになった! もらい物のチートスキルと持ち前のビジネスセンスで仲間を増やし、今度こそ彼女を作って幸せな人生を送ることを目指した一人の男の挑戦の日々を綴ったお話です!

性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。

狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。 街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。 彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)

異世界転生!ハイハイからの倍人生

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は死んでしまった。 まさか野球観戦で死ぬとは思わなかった。 ホームランボールによって頭を打ち死んでしまった僕は異世界に転生する事になった。 転生する時に女神様がいくら何でも可哀そうという事で特殊な能力を与えてくれた。 それはレベルを減らすことでステータスを無制限に倍にしていける能力だった...

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

神の宝物庫〜すごいスキルで楽しい人生を〜

月風レイ
ファンタジー
 グロービル伯爵家に転生したカインは、転生後憧れの魔法を使おうとするも、魔法を発動することができなかった。そして、自分が魔法が使えないのであれば、剣を磨こうとしたところ、驚くべきことを告げられる。  それは、この世界では誰でも6歳にならないと、魔法が使えないということだ。この世界には神から与えられる、恩恵いわばギフトというものがかって、それをもらうことで初めて魔法やスキルを行使できるようになる。  と、カインは自分が無能なのだと思ってたところから、6歳で行う洗礼の儀でその運命が変わった。  洗礼の儀にて、この世界の邪神を除く、12神たちと出会い、12神全員の祝福をもらい、さらには恩恵として神をも凌ぐ、とてつもない能力を入手した。  カインはそのとてつもない能力をもって、周りの人々に支えられながらも、異世界ファンタジーという夢溢れる、憧れの世界を自由気ままに創意工夫しながら、楽しく過ごしていく。

処理中です...