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第5幕 大砂海 序章
第266話 えっ!? それで良いのかよ!?
しおりを挟む大砂海。
見渡す限りサハラ砂漠みてえにサラサラな砂だけの砂漠が広がってんのかと思ったら、意外に岩山とかが点在する砂漠荒野だったわ。
いや、不平じゃねえぞ?
寧ろありがたいって話だ。
日中は想像通り灼熱地獄でな、俺とプラムが使い物にならねえんだよ。俺ら兎人というか、獣人族、特に肉球がある種族はよ、直ぐ火傷しちまうのさ。
てなもんで、昼夜逆転生活するしかねえだろ?
昼間は岩山の陰か、砂漠の窪みに旅の途中で作った四阿を出して休んで、陽が落ちたら歩くって感じだな。
ん? 四阿の寸法? 3パッスス×3パッススくらいの大きさだな。まあ、畳なんかねえから、その辺は適当だぞ?
東西南北に屋根が向いてる寄棟なんだが、柱を高めにして、屋根と床の間にいわゆる天井を付けたのさ。そうさな。屋根と天井の隙間は1ペース半は空けて、屋根が焼けた熱を受け止める様にしてみたら、旨い具合だったぜ? 天井の壁もないから風が抜けるだろ?
屋根は骨粘土でコーティング済みだ。当然、【骨硬化】で固めてある。【白骨化】はしてねえから、薄汚れた感じのままだな。だから遠目に見たら、砂漠の色に同化しちまうって寸法だ。
床もそんな感じで2重構造にしてある。接地する面の床から1ペース半程空けて、本床だ。床から天井までも2パッススあるから上からも下からも暑くはねえな。まあ陽が昇り始めたら出すから、下の砂が焼けてることはねえんだが、念のためだな。
熱風はどうにもならんが、魔法のありがた味を味わうには十分さ。暑さには、ヒルダの【火魔法】で何とかなってるからな。【火の守り】って火の粉みたいなもんが振り掛けられるんだが、熱風ぐらいは生温い微風に変えてくれる優れもんだ。
後、今んとこ1回だけだが、運悪く砂嵐に出会したぞ。
ありゃ、テレビで見てたのと大違いだぜ。
砂埃の壁が地上から1ミーリアくらいまで巻き上がって、茶色い雲が壁みたいな塊で迫って来る怖さ解るか?
マギーが咄嗟に、【風魔法】で四阿を【旋風結界】で囲ってくれなかったら吹き飛ばされたね。マギーの魔力が切れる前に砂嵐を乗り切れたのは、幸運以外の何物でもないって言えるわ。本当。
あ~俺に魔法がどうたらと聞くなよ? 覚える気もねえってのもあるんだが、さっぱり解らんのさ。
つう訳で、んな生活をかれこれ10日程送ってる。
ああ、そうそう。
この砂漠荒野な。俺が居た地球の砂漠のつもりでいたら簡単に死ねるぞ?
砂の中を、水の中を泳ぐように大型肉食魚が泳いで襲い掛かって来るんだぜ?
思わず「えっ!? それで良いのかよ!?」って叫んじまったわ。いや、砂の中を泳ぐって、そりゃねえだろ!?
砂の抵抗を抑えるためなのか、円錐形に近い形のサメだったね。捌いてみたが、臭くて食えたもんじゃねえ。
砂鮫って言うんだと。
そのまんまじゃねえか。
鼻っ面は堅い骨みたいなもので覆われてたし、それ以外の鮫皮は海鮫とは違って、蛇の鱗みたいな感じだったぜ? 腹なんか本当、蛇腹だったしな。姿形はちょいと変わった鮫で、皮は蛇って言うのがこの大砂海の常識らしい。
どういう仕組みか分からんが、砂に血が落ちてると、間違いなく周りに現れやがる。海鮫となんら変わらんと思ったね。
ん? 他の魚? 居るぜ?
昼間の炎天下は動けねえから、四阿から砂鮫の肉を小さくカットして釣り針に付けて垂らしたらよ。魚が食いつくのさ。
小魚だが。それでも半ペースから1ペースはあるんだ。
信じられるかよ?
流石に魚の種類までは解らんが、共通して蛇皮だな。
変な気分だぜ?
砂の上に釣り糸を垂らしたら魚が釣れるってよ。
こっちは白身で美味い。皮さえ剥げば、海や川の魚と大した差はねえ様に思う。ま、俺の舌が莫迦になってなければ、の話だがな。
ん~~後なんかあったか?
おうおう。忘れてたぜ。
前から思ってたアドヴェルーザの憑代つうのか、出張先つうのか、まあ入れ物を作ったのよ。
久し振りに創作意欲が爆発したっつうか、良いのが出来たな。
この世界に居るのかどうか知らんが、四翼竜ってえのを作ってみたのさ。2翼は、今まで通り肩甲骨が翼の延長線になって折り畳める。もう2翼は、翼指竜って恐竜の中にいる前脚と翼が一体化してて、真ん中の折れ目に指が付いてるっている構造だ。
材質の骨粘土に、エルフの国の王都で買ってもらってた赤い色粉を混ぜて練り上げたのを使ったんだ。胸の真ん中に、今まで使わずにとっておいた本人の魔石を入れて出来上がりだな。
翼の皮膜?
ああ、一応薄く伸ばしたのを張り付けてたんだがな……。
さっきも言った様に、本人の魔石を入れたらよ……。何つうか……。丸っきり生き物にしか見えねえ状態になっちまったのさ。
もう一度だけ言うぞ?
魔石を造った四翼竜の胸に埋め込んだら、生き物になっちまったんだよ!
こっちが何でそんなことになったのか聞きたいくらいだぜ。
こっちの世界に来て色々と奇想天外な場面に出会したがな、造形物が生物になるなんて初めて見るわ! しかも俺の目の前でな!
それも今の今の話な。
ピカーッて赤く発光したら、「あぎゃあぎゃ」鳴きながら飛び出したのさ。
暫く、啞然とする俺たちの頭の上をパタパタと飛んでたらよ、ズズ――ンって地響きと一緒に地面が揺れたじゃねえか!?
「あ、おいっ!? アル、何処行くんだ!?」
震動と同時に、外へ飛び出すチビ四翼竜を捕まえようと手を伸ばすが、スカッと尻尾を掴み損ねちまう。
アルの姿を目で追って、音の発信源であろう方向に自然と目を向けた時――。
「なんだありゃあ……」
黒い小山のようなものが砂を押し分け、砂埃を立てながら現れた異様な存在に、俺たちは目を奪われていた――。
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