上 下
308 / 333
第5幕 大砂海 序章

第266話 えっ!? それで良いのかよ!?

しおりを挟む
 
 大砂海だいさかい

 見渡す限りサハラ砂漠みてえにサラサラな砂だけの砂漠が広がってんのかと思ったら、意外に岩山とかが点在する砂漠荒野さばくこうやだったわ。

 いや、不平じゃねえぞ?

 むしろありがたいって話だ。

 日中は想像通り灼熱地獄しゃくねつじごくでな、俺とプラムが使いもんにならねえんだよ。俺ら兎人とじんというか、獣人族、特に肉球がある種族はよ、直ぐ火傷やけどしちまうのさ。

 てなもんで、昼夜逆転生活するしかねえだろ?

 昼間は岩山のかげか、砂漠のくぼみに旅の途中で作った四阿あずまやを出して休んで、陽が落ちたら歩くって感じだな。

 ん? 四阿あずまやの寸法? 3パッスス×3パッススだいたい11畳(20㎡)くらいの大きさだな。まあ、たたみなんかねえから、その辺は適当だぞ?

 東西南北に屋根が向いてる寄棟よせむねなんだが、柱を高めにして、屋根と床の間にいわゆる天井てんじょうを付けたのさ。そうさな。屋根と天井の隙間は1ペース半約45cmけて、屋根が焼けた熱を受け止める様にしてみたら、旨い具合だったぜ? 天井の壁もないから風が抜けるだろ?

 屋根は骨粘土ほねねんどでコーティング済みだ。当然、【骨硬化ほねこうか】で固めてある。【白骨化はっこつか】はしてねえから、薄汚れた感じのままだな。だから遠目に見たら、砂漠の色に同化しちまうって寸法すんぽうだ。

 床もそんな感じで2重構造にしてある。接地する面の床から1ペース半約45cm程空けて、本床ほんゆかだ。床から天井までも2パッスス約3mあるから上からも下からも暑くはねえな。まあ陽が昇り始めたら出すから、下の砂が焼けてることはねえんだが、念のためだな。

 熱風はどうにもならんが、魔法のありがた味を味わうには十分さ。暑さには、ヒルダの【火魔法】で何とかなってるからな。【火の守り】って火の粉みたいなもんが振り掛けられるんだが、熱風ぐらいは生温なまぬる微風そよかぜに変えてくれるすぐれもんだ。

 後、今んとこ1回だけだが、運悪く砂嵐すなあらし出会でくわしたぞ。

 ありゃ、テレビで見てたのと大違いだぜ。

 砂埃すなぼこりの壁が地上から1ミーリア約1.5kmくらいまで巻き上がって、茶色い雲が壁みたいな塊で迫って来る怖さわかるか?

 マギーが咄嗟とっさに、【風魔法】で四阿あずまやを【旋風結界せんぷうけっかい】で囲ってくれなかったら吹き飛ばされたね。マギーの魔力が切れる前に砂嵐を乗り切れたのは、幸運以外の何物でもないって言えるわ。本当。

 あ~俺に魔法がどうたらと聞くなよ? 覚える気もねえってのもあるんだが、さっぱりわからんのさ。

 つう訳で、んな生活をかれこれ10日程送ってる。

 ああ、そうそう。

 この砂漠荒野な。俺が居た地球の砂漠のつもりでいたら簡単に死ねるぞ?

 砂の中を、水の中を泳ぐように大型肉食魚サメが泳いで襲い掛かって来るんだぜ?

 思わず「えっ!? それで良いのかよ!?」って叫んじまったわ。いや、砂の中を泳ぐって、そりゃねえだろ!?

 砂の抵抗を抑えるためなのか、円錐形えんすいけいに近い形のサメだったね。さばいてみたが、臭くてえたもんじゃねえ。

 砂鮫すなさめって言うんだと。



 そのまんまじゃねえか。



 鼻っつらは堅い骨みたいなもので覆われてたし、それ以外の鮫皮さめかわ海鮫うみざめとは違って、蛇のうろこみたいな感じだったぜ? 腹なんか本当、蛇腹じゃばらだったしな。姿形はちょいと変わった鮫で、皮は蛇って言うのがこの大砂海だいさかいの常識らしい。

 どういう仕組みか分からんが、砂に血が落ちてると、間違いなく周りに現れやがる。海鮫となんら変わらんと思ったね。

 ん? 他の魚? 居るぜ?

 昼間の炎天下は動けねえから、四阿あずまやから砂鮫の肉を小さくカットして釣り針に付けて垂らしたらよ。魚が食いつく・・・・・・・・のさ。

 小魚だが。それでも半ペース約15cmから1ペース約30cmはあるんだ。



 信じられるかよ?



 流石に魚の種類までは解らんが、共通して蛇皮へびかわだな。

 変な気分だぜ?

 砂の上に釣り糸を垂らしたら魚が釣れるってよ。

 こっちは白身で美味い。皮さえげば、海や川の魚と大した差はねえ様に思う。ま、俺の舌が莫迦ばかになってなければ、の話だがな。

 ん~~後なんかあったか?

 おうおう。忘れてたぜ。

 前から思ってたアドヴェルーザアル憑代よりしろつうのか、出張先つうのか、まあ入れ物を作ったのよ。

 久し振りに創作意欲が爆発したっつうか、良いのが出来たな。

 この世界に居るのかどうか知らんが、四翼竜しよくりゅうってえのを作ってみたのさ。2翼は、今まで通り肩甲骨が翼の延長線になって折りたためる。もう2翼は、翼指竜よくしりゅうって恐竜の中にいる前脚と翼が一体化してて、真ん中の折れ目に指が付いてるっている構造だ。

 材質の骨粘土に、エルフの国の王都で買ってもらってた赤い色粉を混ぜて練り上げたのを使ったんだ。胸の真ん中に、今まで使わずにとっておいた本人の魔石を入れて出来上がりだな。

 翼の皮膜ひまく

 ああ、一応薄く伸ばしたのを張り付けてたんだがな……。

 さっきも言った様に、本人の魔石を入れたらよ……。何つうか……。丸っきり生き物にしか見えねえ状態になっちまったのさ。



 もう一度だけ言うぞ?



 魔石を造った四翼竜しよくりゅうの胸に埋め込んだら、生き物になっちまったんだよ!



 こっちが何でそんなことになったのか聞きたいくらいだぜ。

 こっちの世界に来て色々と奇想天外な場面に出会でくわしたがな、造形物が生物になるなんて初めて見るわ! しかも俺の目の前でな!

 それも今の今の話な。

 ピカーッて赤く発光したら、「あぎゃあぎゃ」鳴きながら飛び出したのさ。

 しばらく、啞然あぜんとする俺たちの頭の上をパタパタと飛んでたらよ、ズズ――ンって地響きと一緒に地面が揺れたじゃねえか!?

 「あ、おいっ!? アル、何処行くんだ!?」

 震動と同時に、外へ飛び出すチビ四翼竜アルを捕まえようと手を伸ばすが、スカッと尻尾をつかみ損ねちまう。

 アルの姿を目で追って、音の発信源であろう方向に自然と目を向けた時――。

 「なんだありゃあ……」

 黒い小山のようなものが砂を押し分け、砂埃すなぼこりを立てながら現れた異様な存在に、俺たちは目を奪われていた――。





しおりを挟む
感想 138

あなたにおすすめの小説

スマートシステムで異世界革命

小川悟
ファンタジー
/// 毎日19時に投稿する予定です。 /// ★☆★ システム開発の天才!異世界転移して魔法陣構築で生産チート! ★☆★ 新道亘《シンドウアタル》は、自分でも気が付かないうちにボッチ人生を歩み始めていた。 それならボッチ卒業の為に、現実世界のしがらみを全て捨て、新たな人生を歩もうとしたら、異世界女神と事故で現実世界のすべてを捨て、やり直すことになってしまった。 異世界に行くために、新たなスキルを神々と作ったら、とんでもなく生産チートなスキルが出来上がる。 スマフォのような便利なスキルで異世界に生産革命を起こします! 序章(全5話)異世界転移までの神々とのお話しです 第1章(全12話+1話)転生した場所での検証と訓練 第2章(全13話+1話)滞在先の街と出会い 第3章(全44話+4話)遺産活用と結婚 第4章(全17話)ダンジョン探索 第5章(執筆中)公的ギルド? ※第3章以降は少し内容が過激になってきます。 上記はあくまで予定です。 カクヨムでも投稿しています。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

異世界で俺はチーター

田中 歩
ファンタジー
とある高校に通う普通の高校生だが、クラスメイトからはバイトなどもせずゲームやアニメばかり見て学校以外ではあまり家から出ないため「ヒキニート」呼ばわりされている。 そんな彼が子供のころ入ったことがあるはずなのに思い出せない祖父の家の蔵に友達に話したのを機にもう一度入ってみることを決意する。 蔵に入って気がつくとそこは異世界だった?! しかも、おじさんや爺ちゃんも異世界に行ったことがあるらしい?

元34才独身営業マンの転生日記 〜もらい物のチートスキルと鍛え抜いた処世術が大いに役立ちそうです〜

ちゃぶ台
ファンタジー
彼女いない歴=年齢=34年の近藤涼介は、プライベートでは超奥手だが、ビジネスの世界では無類の強さを発揮するスーパーセールスマンだった。 社内の人間からも取引先の人間からも一目置かれる彼だったが、不運な事故に巻き込まれあっけなく死亡してしまう。 せめて「男」になって死にたかった…… そんなあまりに不憫な近藤に神様らしき男が手を差し伸べ、近藤は異世界にて人生をやり直すことになった! もらい物のチートスキルと持ち前のビジネスセンスで仲間を増やし、今度こそ彼女を作って幸せな人生を送ることを目指した一人の男の挑戦の日々を綴ったお話です!

性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。

狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。 街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。 彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)

異世界転生!ハイハイからの倍人生

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は死んでしまった。 まさか野球観戦で死ぬとは思わなかった。 ホームランボールによって頭を打ち死んでしまった僕は異世界に転生する事になった。 転生する時に女神様がいくら何でも可哀そうという事で特殊な能力を与えてくれた。 それはレベルを減らすことでステータスを無制限に倍にしていける能力だった...

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

処理中です...