3 / 7
どうか捨てないで。
しおりを挟む「ふざけやがって……今さら……ふざけやがって」
ぶつぶつと繰りかえしながら、ジャックは私のささやかな胸をつかみ、つんと寒さにとがった薔薇色の先端をひねりあげた。
「っ、ぅう、ぁあっ」
ぐりぐりと嬲られて響く、強い刺激は痛みのようで、少しの甘さが混じっているようで、じわりと視界が滲む。
このような状況でも、心のどこかで嬉しいと思ってしまう自分がいた。
たとえ、世界の強制がなかったとしても、公爵家の娘である私がジャックと結ばれる未来は望めなかっただろう。
会ったこともない男に嫁がされ、散らされるはずだった純潔を、今夜、彼に捧げられるのならば、きっと悔いはない。
たとえ、彼にとっては、ただの復讐だとしても。
「乳首ひねられて感じてるのか? この淫乱が……!」
冷たくなじる声に涙があふれ、ギュッと目をつむり顔を反らすが、がしりと頬をつかまれ、正面へと戻された。
「逃げるなよ。復讐させてくれるんだろう? 全部、ちゃんと見て、受けとめてくれよ」
胸から腹へと滑る骨ばった手が脚の間へと潜りこみ、くちゅりと響いた水音に、ジャックの眉がひそめられる。
恥ずかしさのあまり消えいりたくなった。
「……さすが、高貴なお嬢様は、ずいぶんと感度がよろしいことで。犬だの屑だの役立たずだの罵っていた相手に触られて、何でこんなに濡れてるんですかねぇ?」
なぁ、教えてくれよ――と言いながら、ジャックはわざと音を立てるようにして、ぐちゅぐちゅと割れ目をなぞり、ひくつく蜜口に指を差しいれた。
異物感とぴりりとした痛みに、ひぐ、と息をのみ、逃げようとした腰をつかまれ、狭い入り口をほぐすようにかき乱される。
「ぅ、っうう、あ、おねが、もっとやさし、くっ」
急いた動きに息を喘がせて乞えば、ぴたりとジャックの手がとまり、ホッとしたのは一瞬で。
ぐちりと指が抜け、膝をつかまれて、広げられたと思うと鋭い痛みが私を貫いた。
きゃあ、と上げた声はジャックの手のひらに遮られた。
「っ、きっつ」
は、と熱い息をつき、ジャックは獰猛な笑みを浮かべた。
「なぁ、痛いか? 痛いよな? あなたが襲ってこいっていったあの女……なんて名前だったか……あの御令嬢にあなたが与えようとしたのと同じ痛みだよ。自業自得だ。……くそっ、何が、嫁にいけない身体にしてこいだ……人の気も知らないで……!」
がしりと腰をつかまれ、突きあげられて、もがいたつまさきが宙をかく。
脱げた靴が転がり、ぱしゃんと水の音が響いた。
「はぁ、……はは、ざまあみろ」
「ジャック……っ」
「残念だったなぁ、愛する王子様にとっておいた純潔を、こんな犬に奪われて。くやしいよなぁ? ……目ぇ閉じないで、ちゃんと見ろよ! 今、あなたを抱いてるのは俺なんだよ!」
ジャックの言葉にも動きにも容赦がなかった。
憎しみを恨みをぶつけるように、獲物を貪るように、がつがつと腰を叩きつけられ、ボロボロと涙があふれる。
心も身体も引きさかれそうに痛かった。
「ぁ、うっ、ぅう、ごめんなさ――」
「謝られても許せるかよ。何もかも、今さらすぎるんだよ!」
「ご、ごめんなさ……っ、ごめんなさい……!」
「謝るなって、言ってるだろう!」
それでも謝罪の言葉をこぼすと、片手で喉をつかまれ、絞めあげられた。
「っ、ぐ――」
息がとまり、頭の芯が白くかすんでゆく。
「あなたの情けなんていらなかったのに……!」
がくがくと揺れる視界で、黒く燃えるジャックの瞳を見つめる。
「俺にだって伝手くらいあった! あなたが、あんな業突く張りの婆の足元に這いつくばる必要なんてなかったんだ! 今さら天国に、少しでも近付こうとでも思ったのか? 今さら、やさしくなんてしやがって! 最後まで屑でいてくれれば、俺は、さっぱりあなたのことなんて忘れて、あなたを捨てられたかもしれないのに!」
怒りに染まった顔が歪み、ふっと指の力が緩んだ。
「捨てられたかも、しれないのに……っ」
ぎりり、と奥歯を噛みしめて、ジャックは呻くように呟いた。
「……あなたが俺を捨てても、俺はあなたを捨てられない」
夜の湖のように揺らいだ瞳から、ぽたりと落ちた熱い滴が私の頬を濡らした。
「……愛してる。ずっと、どうしても、あなたを愛しているんだ」
「捨てないで」
気付けば、そう口にしていた。
「イライザ、さま……?」
「どうか捨てないで。あなたとずっと、一緒にいたい」
今度こそ、世界にも邪魔をされずに彼だけを愛したい。
まなざしに願いをこめて伝えれば、漆黒の瞳が見開かれて。
ふ、と息をのみ、大きく身を震わせて、ジャックは私の腰を強く引きよせた。
「ぁああっ」
深みをえぐられ叫んだ唇にジャックの唇が重なって、くしゃりと頭を背を強くかきいだかれながら。
私は、身の内で爆ぜる彼の熱を感じていた。
1
お気に入りに追加
151
あなたにおすすめの小説
【完結】アラサー喪女が転生したら悪役令嬢だった件。断罪からはじまる悪役令嬢は、回避不能なヤンデレ様に溺愛を確約されても困ります!
美杉。祝、サレ妻コミカライズ化
恋愛
『ルド様……あなたが愛した人は私ですか? それともこの体のアーシエなのですか?』
そんな風に簡単に聞くことが出来たら、どれだけ良かっただろう。
目が覚めた瞬間、私は今置かれた現状に絶望した。
なにせ牢屋に繋がれた金髪縦ロールの令嬢になっていたのだから。
元々は社畜で喪女。挙句にオタクで、恋をすることもないままの死亡エンドだったようで、この世界に転生をしてきてしあったらしい。
ただまったく転生前のこの令嬢の記憶がなく、ただ状況から断罪シーンと私は推測した。
いきなり生き返って死亡エンドはないでしょう。さすがにこれは神様恨みますとばかりに、私はその場で断罪を行おうとする王太子ルドと対峙する。
なんとしても回避したい。そう思い行動をした私は、なぜか回避するどころか王太子であるルドとのヤンデレルートに突入してしまう。
このままヤンデレルートでの死亡エンドなんて絶対に嫌だ。なんとしても、ヤンデレルートを溺愛ルートへ移行させようと模索する。
悪役令嬢は誰なのか。私は誰なのか。
ルドの溺愛が加速するごとに、彼の愛する人が本当は誰なのかと、だんだん苦しくなっていく――
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
王子好きすぎ拗らせ転生悪役令嬢は、王子の溺愛に気づかない
エヌ
恋愛
私の前世の記憶によると、どうやら私は悪役令嬢ポジションにいるらしい
最後はもしかしたら全財産を失ってどこかに飛ばされるかもしれない。
でも大好きな王子には、幸せになってほしいと思う。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結】悪役令嬢の反撃の日々
アイアイ
恋愛
「ロゼリア、お茶会の準備はできていますか?」侍女のクラリスが部屋に入ってくる。
「ええ、ありがとう。今日も大勢の方々がいらっしゃるわね。」ロゼリアは微笑みながら答える。その微笑みは氷のように冷たく見えたが、心の中では別の計画を巡らせていた。
お茶会の席で、ロゼリアはいつものように優雅に振る舞い、貴族たちの陰口に耳を傾けた。その時、一人の男性が現れた。彼は王国の第一王子であり、ロゼリアの婚約者でもあるレオンハルトだった。
「ロゼリア、君の美しさは今日も輝いているね。」レオンハルトは優雅に頭を下げる。
悪役令嬢はモブ化した
F.conoe
ファンタジー
乙女ゲーム? なにそれ食べ物? な悪役令嬢、普通にシナリオ負けして退場しました。
しかし貴族令嬢としてダメの烙印をおされた卒業パーティーで、彼女は本当の自分を取り戻す!
領地改革にいそしむ充実した日々のその裏で、乙女ゲームは着々と進行していくのである。
「……なんなのこれは。意味がわからないわ」
乙女ゲームのシナリオはこわい。
*注*誰にも前世の記憶はありません。
ざまぁが地味だと思っていましたが、オーバーキルだという意見もあるので、優しい結末を期待してる人は読まない方が良さげ。
性格悪いけど自覚がなくて自分を優しいと思っている乙女ゲームヒロインの心理描写と因果応報がメインテーマ(番外編で登場)なので、叩かれようがざまぁ改変して救う気はない。
作者の趣味100%でダンジョンが出ました。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【コミカライズ】今夜中に婚約破棄してもらわナイト
待鳥園子
恋愛
気がつけば私、悪役令嬢に転生してしまったらしい。
不幸なことに記憶を取り戻したのが、なんと断罪不可避の婚約破棄される予定の、その日の朝だった!
けど、後日談に書かれていた悪役令嬢の末路は珍しくぬるい。都会好きで派手好きな彼女はヒロインをいじめた罰として、都会を離れて静かな田舎で暮らすことになるだけ。
前世から筋金入りの陰キャな私は、華やかな社交界なんか興味ないし、のんびり田舎暮らしも悪くない。罰でもなく、単なるご褒美。文句など一言も言わずに、潔く婚約破棄されましょう。
……えっ! ヒロインも探しているし、私の婚約者会場に不在なんだけど……私と婚約破棄する予定の王子様、どこに行ったのか、誰か知りませんか?!
♡コミカライズされることになりました。詳細は追って発表いたします。
【完結】リクエストにお答えして、今から『悪役令嬢』です。
野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
恋愛
「断罪……? いいえ、ただの事実確認ですよ。」
***
ただ求められるままに生きてきた私は、ある日王子との婚約解消と極刑を突きつけられる。
しかし王子から「お前は『悪』だ」と言われ、周りから冷たい視線に晒されて、私は気づいてしまったのだ。
――あぁ、今私に求められているのは『悪役』なのだ、と。
今まで溜まっていた鬱憤も、ずっとしてきた我慢も。
それら全てを吐き出して私は今、「彼らが望む『悪役』」へと変貌する。
これは従順だった公爵令嬢が一転、異色の『悪役』として王族達を相手取り、様々な真実を紐解き果たす。
そんな復讐と解放と恋の物語。
◇ ◆ ◇
※カクヨムではさっぱり断罪版を、アルファポリスでは恋愛色強めで書いています。
さっぱり断罪が好み、または読み比べたいという方は、カクヨムへお越しください。
カクヨムへのリンクは画面下部に貼ってあります。
※カクヨム版が『カクヨムWeb小説短編賞2020』中間選考作品に選ばれました。
選考結果如何では、こちらの作品を削除する可能性もありますので悪しからず。
※表紙絵はフリー素材を拝借しました。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
美食家悪役令嬢は超御多忙につき
蔵崎とら
恋愛
自分が悪役令嬢だと気が付いているけれど、悪役令嬢というポジションを放棄して美味しい物を追い求めることにしました。
そんなヒロインも攻略対象キャラもそっちのけで珍しい食べ物に走る悪役令嬢のお話。
この作品は他サイトにも掲載しております。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結】婚約破棄寸前の悪役令嬢に転生したはずなのに!?
21時完結
恋愛
現代日本の普通一般人だった主人公は、突然異世界の豪華なベッドで目を覚ます。鏡に映るのは見たこともない美しい少女、アリシア・フォン・ルーベンス。悪役令嬢として知られるアリシアは、王子レオンハルトとの婚約破棄寸前にあるという。彼女は、王子の恋人に嫌がらせをしたとされていた。
王子との初対面で冷たく婚約破棄を告げられるが、美咲はアリシアとして無実を訴える。彼女の誠実な態度に次第に心を開くレオンハルト
悪役令嬢としてのレッテルを払拭し、彼と共に幸せな日々を歩もうと試みるアリシア。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる