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ただ描くのでは、つまらんな。

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 その夜、ロバートの部屋を訪れたマリステラは、今までで一番怯えた顔をしていた。
 昨夜、ロバート達の誘いを断ったことを気にしているのだろう。

「……あ、あの……さ、昨夜は、勝手を言ってごめんなさい。あの、姉が、久しぶりに一緒に寝たいと言うものだから……抜けだすにも、姉の夫たちが見張っていて無理だったの……ごめんなさい」

 一晩サボった腹いせに何をされるのだろうかとビクビクしながら、上目遣いに許しを乞う少女はひどく可憐で、ロバートとニコラスの心をくすぐった。同情心などではなく、加虐心を。

「そうか。俺たちは別に怒ってなどいないぞ。なぁ、コリン」
「そうそう。別に気にしてないってぇ。貴重な時間が一日無駄になったくらい、別にどうってことないしぃ」
「あ、あの、本当に、ごめんなさいっ」
「あはは、どうして謝るのさぁ、怒ってないって言ってるじゃない。さ、時間がもったいないから、はじめよっかぁ」

 ニコラスは笑いながら、マリステラの腕を掴んで、部屋の奥へと進んでいく。

「……今日はさぁ、ロビン兄さんと二人でお絵かきしてたんだよー」
「お絵かき? ……静物画ですか?」

 マリステラの視線は、三人の足が向かう先にあるテーブルセット――二日前、彼女が乗せられ、尻を犯されたテーブル――に置かれた果物皿へと向いていた。
 台座のついた白い皿にはリンゴやオレンジが盛られ、ふっさりとした葡萄の粒が縁から垂れさがり、そこから少し離れて、デッサン用の木炭が転がっている。

「そうそう。まぁ、二、三枚で飽きちゃったけれど……」

 テーブルを挟んで向かいあう、二脚の肘掛け付きの椅子には、スケッチ帳が投げ置かれていた。
 そのうちの一冊を手に取って、ニコラスはマリステラに差しだした。

「見る?」
「……はい」

 ぱらりとめくって、マリステラは、あら、と目をみはり、またたいた。

「……お上手ですね」
「でしょう? 僕たち、昔っから絵は上手なんだよ。こいつらにも取り柄があったのかって驚いた?」
「いえ、そんな……ですが、本当に、お上手で驚きました」

 そういってマリステラは紙面に目を落とした。
 白い世界に黒い木炭で、瑞々しい果物が見事に描きだされている。
 虹色の瞳に浮かぶ、素直な感嘆の色にニコラスはロバートと顔を見合わせ、満足げに頷くと果物皿から小ぶりの青い林檎をひとつ取りあげた。

「じゃ、ご褒美に剥いて。それで、あーん、って食べさせてよ」
「え?」
「これを使え」
「……はい」

 マリステラが林檎と果物ナイフを受けとって、しょりしょりと剥きはじめる。
 その間に、ニコラスとロバートは果物皿を邪魔にならないところへ片付けて戻ってきた。
 小さな手の中、ぐるぐると剥かれ、つながり伸びた青い皮がユラユラと揺れている。
 最後の一周を回ろうとしたところで、ニコラスが声をかけた。

「終わったら、脱いでテーブルに上がってねー。今度は君を描くから」
「えっ、――っ」

 マリステラが顔を上げ、あ、と眉をひそめる。みるみるうちに白い指に赤い滴がふくれ、ぽたりぽたりと林檎とテーブルに滴った。

「おいおい、刃物を使っている時によそ見する馬鹿がどこにいる」

 みせてみろ、とロバートがマリステラの手首をつかんで覗きこむと、すっぱりと切れ目が入っていた。

「けっこう深いぞ」

 指の付け根を押さえて血をとめながら、ロバートは呆れたように溜め息をつく。

「あーあ、気を付けてよ。血まみれの林檎なんて気持ち悪くて食べられやしない」
「ご、ごめんなさい」
「いいよ。別に、林檎なんていくらでもあるし」

 そう言って林檎を取りあげ、無造作に床に投げ捨てるとニコラスは、マリステラの指にハンカチをきつく巻きつけ、結んだ。

「……ま、ひとまずこれで。帰ってから、きちんと手当てしなね?」
「はい。……ありがとう」
「うん。ということで、早く脱いで。時間がもったいないから」
「……はい」

 マリステラは頷くと、ひそやかな溜め息をついてドレスに手をかけた。



「……義姉上は、義姉上の姉上と違って、身体に無駄がないから、実に描きやすいよねぇ」
「そうだな。胸が平らで、毛もない。描きこむ手間が少なくて、実に良いモデルだ。これが、マレクラブラなら、陰影のつけかたに悩んだろうな。特にあの、牛のようにふくれた胸の辺りは難しそうだ」

 嘲笑う声にマリステラは、きゅっと眉を寄せた。

「……わ、私のことを言うのはかまいませんが、お姉様のことは、侮辱しないでください」
「はは、わかったわかった。バカにするのは、お前だけにしておこう」

 震える声の訴えを笑って流して、ロバートはスケッチ帳に視線を落とした。
 そこには、両手で長い髪をかきあげて、膝立ちで何かにまたがるように大きく脚をひらき、細い身体をくねらせた少女の姿が写しとられている。
 マリステラを知るものが見れば、モデルが誰か一目でわかるほど、それは見事に、はっきりと。

 ――ああ、兄上に見せてやれないのが残念だ。

 ロバートは、ぱらりとページをめくり、白い紙面を指先でなぞると彼女に新たな屈辱を与えるため、口をひらいた。

「……しかし、ただ描くのでは、つまらんな」
「え?」
「あー、確かに。義姉上は美しいけれど、やっぱり、ただ描くんじゃ、つまらないよねぇ」

 にやり、と笑みを浮かべた双子に、マリステラの身体が小刻みに震えはじめる。
 今から更なる辱めを受けるのだとわかってしまったのだろう。

「あ、そうだ! 義姉上にお似合いの小道具があったんだった!」

 わざとらしく手を打ってニコラスが立ちあがり、部屋の隅の棚に行き、黒革の箱を手に戻ってくる。
 ごとん、とテーブルに置くと、びくり、とマリステラが身をすくめた。

「あ、あの……」
「じゃーん! みてみてー! 義姉上の大好きなおちんちんがいっぱいだよぉ?」
「ひっ」

 ごろりと並んだ真鍮製の淫具を目にして、マリステラの顔が引きつった。

「前には入れないでって言ってたけれど、コレならいいよねぇ? 義姉上はどれが好きかなぁ? 残念ながら、どれも僕たちのよりも小ぶりだから、淫乱な義姉上には物足りないかもしれないけれどぉ、まぁ、その分、咥えこみやすいからいいよねぇ。あ、これにしよっかぁ」

 ニコラスは適当な一つを手に取って、同じ箱から取りだした桃色の小瓶の栓を抜き、とぽとぽとまぶしていく。

「……あの、ニコラス、さま……っ」
「ん? わかっているって、もー、義姉上ってば、せっかちなんだからぁ。今、入れてあげるから!」

 大きくひらいた脚の間に淫具を差しいれ、狙いを定めたところで「いやっ」とマリステラが腰を引いた。

「おい、マリステラ。モデルが勝手に動くな」
「でもっ」
「動くな。仕置きされたいのか」
「……はい。ごめんなさい」
「んー、義姉上、いいこいいこ。さー、ニセちんちん入れてあげようね~」
「はい……っ、う、ぅうう」

 ニコラスの指がマリステラの花弁をひらき、ぬるりぬるりと媚薬にまみれた真鍮の雄の切先が割れ目をなぞり、ぐちり、と蜜口に押しあてられる。
 そして、ゆっくりとゆっくりと、ふくれた先端が赤い媚肉を押しひろげ、奥へ奥へと埋めこまれていく。
 ふ、ふ、と息を乱すマリステラは、それでも、指定されたポーズを崩すまいとこらえていた。
 けれど、ニコラスの手元に、こつん、とどこかに突き当たった感覚が届いたときには「んんっ」と甘い呻きがもれて、かくん、とマリステラの腰が逃げるように後ろにそれた。

「……おい、動くなと言っただろうが」
「ご、ごめんなさいっ」
「まあまあ、ロビン兄さん、気持ちよくって腰が動いちゃうんだから、しかたないじゃないか」
「ちっ、仕方ない。尻を振るくらいなら許してやるが、へたりこむようなことがあれば仕置きだからな。頑張れよ」
「っ、は、はいっ、がんばります!」

 こくこくと頷く少女の必死な形相にニヤリと笑いながら、ロバートはニコラスに声をかけた。

「おい、コリン、動かすなら、後ろにまわってやれ」
「はいはい。モデルさんが良く見えるようにね」

 ニコラスはテーブルを周り、マリステラの背後から手を伸ばして細い脚の間から飛びでた淫具の持ち手をつかみ、その下のクランクハンドルに手をかけた。

「あ、あの、そのハンドルは?」
「んー、これさぁ、ただの張り形じゃなくて、ぜんまい細工になってるんだよ」
「えっ」
「どれがどう動くのかは、僕らも知らないんだ。楽しみだねぇ、義姉上? 全部、試してみようねぇ?」
「っ、ぜ、ぜんぶ……!?」
「だいじょーぶ、だいじょーぶ、義姉上、意外と丈夫だから」

 けらけらと笑うとニコラスは、ぐるりとハンドルを回しはじめた。

「――ひっ」

 びくん、とマリステラの身体が震え、ハンドルを回すニコラスの手に、きゅっと抵抗が伝わる。

「あはは、義姉上、締めつけすぎだよぉ。なに? どんなふうに動いたの?」

 ニコラスの問いにマリステラは荒い息をこぼしながら、首を振る。

「教えてくれないと、次にいけないでしょ~? ほら、どんなふうに動いてるのか、教えて?」

 敏感過ぎる少女の反応に笑いながら、ニコラスはハンドルを回す手はとめぬまま、持ち手を握る手を上下に動かした。
 はじめのうちはギチギチときつそうだったが、抜き差しをくりかえすうちにスムーズになっていく。
 喘ぎに混じって、じゅぷじゅぷと響きはじめた水音は、彼女のそこが雄をもとめて蜜をあふれさせていることを能弁に伝えている。

「すっごい音。わっ、ねぇ、義姉上。僕の手にまで垂れてきて、ぐちょぐちょになってるよ? ほら、早く、答えろってば!」
「んんっ、あ、ひゃっ、あぁっ」

 ぐちゅん、ぐちゅん、ぐちゅん、と大きく引き抜いて奥までつきさすのを三度繰り返すと、白い太ももがグッとこわばり、ブルブルと痙攣する。

「あ、イッちゃいそう? ダメダメ、答えてから」

 ニコラスは薄笑いを浮かべ、張り形をぬけおちる寸前まで引きぬいた。
 あ、と切なげな吐息をこぼし、マリステラが身を震わせる。
 そのまま、ハンドルを回すと、蜜口を押しひろげ、浅くかきまわすようにして、ぐいんぐいんと張り形の半ばから先がしなるように回転するのが見えた。

「はは、こんな風になっていたんだな。なぁ、マリステラ。中を掻きまわされて気持ちよかったか?」
「っ、は、はい」
「そっか、じゃあ、次ね」
「えっ」

 ぶちゅんと引きぬかれ、ごろんとテーブルに転がる淫具を、虹色の瞳が未練がまし気に追う。
 
「もー、義姉上ったら、欲しがりさんだなぁ。心配しなくても、次があるって」
「っ、べ、別に、欲しがってなど……」
「今度は、きちんと答えてねぇ。でないと、ずっと寸止めで終わらすから」
 
 適当にとった二本目の淫具に、とろりと媚薬をまぶしながら、ニコラスは満面の笑みで宣告した。
 
 
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