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夫婦はやっと同居中!
42.吹き飛んだ理性 Side.シーファス
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両親がやってきて俺とミシェイラの双方が固まったが、両親はそれを単純に二人の時間を突然邪魔してしまったからだととらえてしまったらしい。
「お邪魔してゴメンなさいね。でも結婚したのだからちゃんと二人揃って挨拶回りをしなきゃダメよ」
「そうだぞ?ああそうだ。子爵にも挨拶をしておかないとな。ミシェイラさん、ご両親はどちらに?」
「え?!あ、両親は…」
そう言いかけたところでその子爵夫妻までこちらへとやってきてしまった。
「ミシェイラ。さっきエドワルド君からお前がこちらに行ったと聞いてな。おや。リムモンド伯爵ご夫妻もこちらにいらっしゃったとは。ご無沙汰しております」
「カーバンクル子爵。ちょうど挨拶に行こうと思っていたんだ。此度は良い縁が結ばれて非常に喜ばしく思っている」
「え…ああ、その…そう思っていただけたのでしたら良かったです」
ハルの両親はこの結婚が代理婚だと知っているからか、妙に歯切れが悪い。
頼むからこのままなんとか当たり障りなく終わってくれと思いながら、どう収拾をつけるべくか頭を巡らせる。
ここで俺の嫁は彼女の弟だと言えば両親は当然どういうことだと子爵夫妻や彼女に問い詰めるだろう。
そうなれば離婚一直線。
ある意味彼女の思い通りになる。
それにその場合子爵家に非があるから金を返す必要はなくなるし、両親からすれば一番いいと思うかもしれない。
(それだけは避けなければ…)
その流れで被害を被るのは俺とハルだけだ。
折角愛を育んでるのに引き裂かれるなんて冗談じゃない。
「いや~それにしても噂に違わずミシェイラさんはお美しい。シーファスに愛されて益々磨きがかかったのでは?今日のドレスもシーファスの見立てですかな?」
「え?」
「いや、失礼。この朴念仁がこれほど素晴らしいドレスを選べるとも思えませんし、ミシェイラさんの美的センスが優れているんでしょうな。ハハハ!シーファス。結婚してよかっただろう?こんなにできた女性はなかなかいないぞ?」
その言葉に子爵家の面々が固まり、どうやらハルのことを両親は知らないのだと察したらしい。
そして彼らの目が一斉にこちらに向けられ冷や汗が出た。
離婚を回避するにはどうしたらいいんだろう?
焦れば焦るほど答えが見つからない。
「折角こうして両家で集まったのですし、どうです?これからリグモンド家の屋敷に移動しませんか?我々もシーファスが新婚生活を堪能できるよう今は屋敷を出てましてな。こういった機会に戻るのも良いでしょう。ハハハ」
なのに父が上機嫌にそんなことを言い出したものだからたまらない。
「そうね!シーファスとミシェイラさんの新婚生活話をゆっくり聞きたいわ」
嬉しそうにウキウキと声を弾ませ話す母に胃が痛くなる。
そんな二人を横目に、後ろ暗い気持ちがある子爵夫妻は俺の方をチラチラ見遣りながら大人しく追従する。
「い、いいですな。では息子も呼んできましょう」
きっとハルに説明がてらこの居心地の悪い場から一旦逃げ出したいのだろう。
俺だってできることなら逃げ出したい。
「あ、では俺が」
説明するなら夫である自分がと思い、そう口にすれば子爵は大人しく譲ってくれそうになったが、ここで口を挟んだのは両親だった。
「なんだ?ミシェイラさんの弟と知り合いなのか?」
「ええ。彼は冒険者の後輩なので」
ここは一先ずそういうことにしておこうと咄嗟に口にする。
万が一にでも即離婚に繋がらないよう慎重にいかないと。
「なんだそうなのか。妻と義弟双方と仲良くやっているなんて、流石シーファスだな」
最早乾いた笑いしか出てこない。
どうしたものか。
そんな俺にミシェイラがクスリと笑う。
「弟とシーファス様はとても仲が良いのですよ。それこそまるで本当の夫婦みたいに」
(こ、この女っ…!)
子爵夫妻は蒼白になっているが、ミシェイラはどこ吹く風だ。
最終的に離婚になるとわかっているからこそきっとこうして余裕の顔ができるんだろう。
「それなら弟くんも是非一緒に屋敷に連れて行かないとな。色々話も聞いてみたい」
何も知らない両親が笑顔でそんなことを言ってくるが俺の心臓は今にも飛び出してしまいそうだ。
「それなら皆で迎えに行って、ついでにマドラス様にご挨拶してからお暇しましょうか。今回私達を誘ってくださったのはマドラス様だとエドワルド様から伺いましたし」
その言葉にマドラスを恨みたくなった。
このメンツを狙って集めたのはあいつだったのかと怒りに拳が震えてしまう。
けれどなんとかこの危機を乗り越えないと俺達の夫婦生活にピリオドが打たれてしまうし、ここは冷静にと自分に言い聞かせた。
そんなこんなで皆でぞろぞろと元の場所へと戻ると、そこには三人の姿がなく思わずキョロキョロとその姿を探してしまう。
「あ、あそこじゃないかしら?」
そしていち早くハル達の姿を見つけたのはミシェイラだった。
どうやらライトアップされた庭園に出ていたようだ。
見る限り特に何かがあったようにも見えないし、これからのことの方が気にかかると思っていたところで、俺の時が止まった。
何やら言い合いをしていたようなマドラスとエドワルド。
そんな二人をハルがまあまあと落ち着かせようとしていた、ある意味よくある友人同士のやり取りだったはずなのに────。
チラリと一瞬こちらへ向けられたエドワルドの視線に気づいたのはきっと俺だけだっただろう。
そのエドワルドが何を思ったのかそのタイミングでハルを抱き寄せて、その唇を奪いにかかったのだ。
「んぅううぅっ?!」
その表情はどこまでも愛おし気にハルへと向けられていて、まるで俺達に見せつけるかのように情熱的に映った。
「てめぇ!エドワルド!俺の目の前でライの唇を奪うたぁどういう了見だ?!」
マドラスの怒りに満ちた声がその場に響き渡る。
「先に抜け駆けしてライの唇を奪ったのはマドラスの方だろう?何が酔い覚ましだ。抜け駆けするにも程がある」
「抜け駆けしまくってんのはお前の方だろうが!!」
そのやり取りに俺は更に頭が真っ白になり、思考が完全に停止する。
(キス…。誰が?ハルが?誰と?)
今のエドワルドとのものとは別にマドラスともキスをしていた?
いつ?どこで?ここで?
そう考えたら俺のさっきまでの理性は全て吹き飛んでいて、気づけば俺は思い切りその場で叫んでしまっていた。
「ハルは俺の嫁だ────!!」
「お邪魔してゴメンなさいね。でも結婚したのだからちゃんと二人揃って挨拶回りをしなきゃダメよ」
「そうだぞ?ああそうだ。子爵にも挨拶をしておかないとな。ミシェイラさん、ご両親はどちらに?」
「え?!あ、両親は…」
そう言いかけたところでその子爵夫妻までこちらへとやってきてしまった。
「ミシェイラ。さっきエドワルド君からお前がこちらに行ったと聞いてな。おや。リムモンド伯爵ご夫妻もこちらにいらっしゃったとは。ご無沙汰しております」
「カーバンクル子爵。ちょうど挨拶に行こうと思っていたんだ。此度は良い縁が結ばれて非常に喜ばしく思っている」
「え…ああ、その…そう思っていただけたのでしたら良かったです」
ハルの両親はこの結婚が代理婚だと知っているからか、妙に歯切れが悪い。
頼むからこのままなんとか当たり障りなく終わってくれと思いながら、どう収拾をつけるべくか頭を巡らせる。
ここで俺の嫁は彼女の弟だと言えば両親は当然どういうことだと子爵夫妻や彼女に問い詰めるだろう。
そうなれば離婚一直線。
ある意味彼女の思い通りになる。
それにその場合子爵家に非があるから金を返す必要はなくなるし、両親からすれば一番いいと思うかもしれない。
(それだけは避けなければ…)
その流れで被害を被るのは俺とハルだけだ。
折角愛を育んでるのに引き裂かれるなんて冗談じゃない。
「いや~それにしても噂に違わずミシェイラさんはお美しい。シーファスに愛されて益々磨きがかかったのでは?今日のドレスもシーファスの見立てですかな?」
「え?」
「いや、失礼。この朴念仁がこれほど素晴らしいドレスを選べるとも思えませんし、ミシェイラさんの美的センスが優れているんでしょうな。ハハハ!シーファス。結婚してよかっただろう?こんなにできた女性はなかなかいないぞ?」
その言葉に子爵家の面々が固まり、どうやらハルのことを両親は知らないのだと察したらしい。
そして彼らの目が一斉にこちらに向けられ冷や汗が出た。
離婚を回避するにはどうしたらいいんだろう?
焦れば焦るほど答えが見つからない。
「折角こうして両家で集まったのですし、どうです?これからリグモンド家の屋敷に移動しませんか?我々もシーファスが新婚生活を堪能できるよう今は屋敷を出てましてな。こういった機会に戻るのも良いでしょう。ハハハ」
なのに父が上機嫌にそんなことを言い出したものだからたまらない。
「そうね!シーファスとミシェイラさんの新婚生活話をゆっくり聞きたいわ」
嬉しそうにウキウキと声を弾ませ話す母に胃が痛くなる。
そんな二人を横目に、後ろ暗い気持ちがある子爵夫妻は俺の方をチラチラ見遣りながら大人しく追従する。
「い、いいですな。では息子も呼んできましょう」
きっとハルに説明がてらこの居心地の悪い場から一旦逃げ出したいのだろう。
俺だってできることなら逃げ出したい。
「あ、では俺が」
説明するなら夫である自分がと思い、そう口にすれば子爵は大人しく譲ってくれそうになったが、ここで口を挟んだのは両親だった。
「なんだ?ミシェイラさんの弟と知り合いなのか?」
「ええ。彼は冒険者の後輩なので」
ここは一先ずそういうことにしておこうと咄嗟に口にする。
万が一にでも即離婚に繋がらないよう慎重にいかないと。
「なんだそうなのか。妻と義弟双方と仲良くやっているなんて、流石シーファスだな」
最早乾いた笑いしか出てこない。
どうしたものか。
そんな俺にミシェイラがクスリと笑う。
「弟とシーファス様はとても仲が良いのですよ。それこそまるで本当の夫婦みたいに」
(こ、この女っ…!)
子爵夫妻は蒼白になっているが、ミシェイラはどこ吹く風だ。
最終的に離婚になるとわかっているからこそきっとこうして余裕の顔ができるんだろう。
「それなら弟くんも是非一緒に屋敷に連れて行かないとな。色々話も聞いてみたい」
何も知らない両親が笑顔でそんなことを言ってくるが俺の心臓は今にも飛び出してしまいそうだ。
「それなら皆で迎えに行って、ついでにマドラス様にご挨拶してからお暇しましょうか。今回私達を誘ってくださったのはマドラス様だとエドワルド様から伺いましたし」
その言葉にマドラスを恨みたくなった。
このメンツを狙って集めたのはあいつだったのかと怒りに拳が震えてしまう。
けれどなんとかこの危機を乗り越えないと俺達の夫婦生活にピリオドが打たれてしまうし、ここは冷静にと自分に言い聞かせた。
そんなこんなで皆でぞろぞろと元の場所へと戻ると、そこには三人の姿がなく思わずキョロキョロとその姿を探してしまう。
「あ、あそこじゃないかしら?」
そしていち早くハル達の姿を見つけたのはミシェイラだった。
どうやらライトアップされた庭園に出ていたようだ。
見る限り特に何かがあったようにも見えないし、これからのことの方が気にかかると思っていたところで、俺の時が止まった。
何やら言い合いをしていたようなマドラスとエドワルド。
そんな二人をハルがまあまあと落ち着かせようとしていた、ある意味よくある友人同士のやり取りだったはずなのに────。
チラリと一瞬こちらへ向けられたエドワルドの視線に気づいたのはきっと俺だけだっただろう。
そのエドワルドが何を思ったのかそのタイミングでハルを抱き寄せて、その唇を奪いにかかったのだ。
「んぅううぅっ?!」
その表情はどこまでも愛おし気にハルへと向けられていて、まるで俺達に見せつけるかのように情熱的に映った。
「てめぇ!エドワルド!俺の目の前でライの唇を奪うたぁどういう了見だ?!」
マドラスの怒りに満ちた声がその場に響き渡る。
「先に抜け駆けしてライの唇を奪ったのはマドラスの方だろう?何が酔い覚ましだ。抜け駆けするにも程がある」
「抜け駆けしまくってんのはお前の方だろうが!!」
そのやり取りに俺は更に頭が真っ白になり、思考が完全に停止する。
(キス…。誰が?ハルが?誰と?)
今のエドワルドとのものとは別にマドラスともキスをしていた?
いつ?どこで?ここで?
そう考えたら俺のさっきまでの理性は全て吹き飛んでいて、気づけば俺は思い切りその場で叫んでしまっていた。
「ハルは俺の嫁だ────!!」
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