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夫婦はやっと同居中!
40.侯爵家のパーティーへ
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エドワルドから手紙が届いた。
内容は『侯爵家でのパーティーには来るのか?』というもので、『久し振りに会っていっぱい話したい』とも書かれてあった。
後はマドラスの事やシーファスの事にも触れられていた。
でも別に嫌な感じではない。
マドラスは学生時代から好戦的だから、シーファスに喧嘩を吹っかけたりしなかったかと心配する文面と、Aランク冒険者って確かに強くてカッコいいよなという褒め言葉。そしてそんなシーファスに色々これまでの話を聞いてみたいと書かれてあった。
多分どんな強敵と戦ってきたのか聞きたいんだろう。
そう考えるとエドワルドと一緒にシーファスについて熱く語りたくなってきた。
「エドワルドに会うの、楽しみ」
そう言ったら何故かまたシーファスに思いっきり嫉妬されて、腰砕けにされてしまった。
なんでだ?!
***
そんなこんなでパーティー当日。
俺の実家である子爵家とも、今いる伯爵家とも比べ物にならないほど豪華な建物に気圧されながら会場入りする俺達。
パーティーの規模も凄くデカい。
この辺りは流石は侯爵家と言ったところだろうか?
マドラスはクロフォード侯爵家の三男で、どうせ跡継ぎにはなれないからと昔から腕を鍛えて騎士団を目指していた。
口がちょっと悪いのも周囲から舐められないためらしい。
ちなみにエドワルドも伯爵家の次男だから境遇は似たり寄ったり。
ただ俺はエドワルドは文官にも向いてたんじゃないかなと密かに思っていたりする。
でも本人は『将来指揮官とかやってみたい』と言い放ち、『マドラスを部下にするのもいいかもな』と言って笑ってたっけ。
俺も騎士団に誘われたけど、どうしても冒険者の夢を忘れられなくて丁重に断った。
そしたら『わかった。俺が騎士団でしっかり稼ぐから、ライは好きなだけ夢を追いかけてくれ。稼ぎが安定したら絶対迎えに行くからそれまで待っててくれよな』とか言ってくれたっけ。
俺は馬鹿だから言われている意味がよくわからなかったけど、多分エドワルド的エールだったんだろう。
冒険者で食うに困ったら頼ってくれよな、的な?
あの時は普通に笑顔で『家族が認めてくれるかはわからないけど、冒険者頑張るよ!』って答えたんだっけ。
懐かしいな。
そんな俺が今や冒険者として活動していて、且つ旦那がAランク冒険者。
なんて運命的なんだろう?
そんなことを考えながらパーティー会場でシーファスとグラス片手に料理をつまむ。
凄く美味しい。
折角だし手料理の参考になりそうなものも探してみようかな。
そうして暫く経ったところでマドラスとエドワルドが俺達を見つけてこちらへとやってきた。
エドワルドと会うのは本当に久しぶりで、思わず笑顔になってしまう。
「エドワルド!」
「ラインハルト!」
マドラスは金の瞳に赤い髪だけど、エドワルドはエメラルドみたいな翠緑の瞳に艶やかな黒髪の持ち主で、マドラス程ガッチリはしてないけど細マッチョなイケメンだ。
当然女性に良くモテる。
そんなエドワルドが俺に笑顔を向けたものだから、そこかしこで黄色い悲鳴が迸った。
でもそんな声は聞こえないとばかりに俺だけを見てくるエドワルド。
(相変わらずだな)
学生時代、茶化す度に『ラインハルトの方が綺麗だろ?』何言ってんだとばかりに何度そう言われたことか。
「ハル。紹介してくれないか?」
スッとシーファスが耳に唇を寄せて俺が大好きな低音ボイスで囁いてくる。
良い声過ぎてもっと聴きたくなるな。
「あ、えっと、こっちが俺の学園時代の友人のエドワルド。エド、こっちが俺の夫、シーファスだ」
「お噂はかねがね。エドワルド=ウォーカーです。どうぞよろしく」
「シーファス=リムモンドだ。よろしく」
和やかに挨拶を交わし、マドラスの時同様に笑顔で固く握手を交わす二人。
そのことに俺はホッと息を吐いた。
(これなら大丈夫だよな)
シーファスが嫉妬することなく平穏無事にこの時間が過ぎさえすれば何も問題はない。
そう思いながらホッと安堵の息を吐いたところで、視界の端にあり得ない人物の姿が目に留まった。
「え……」
そこにいたのはパーティー仕様に美しく着飾った我が姉、ミシェイラ=カーバンクル。
まさかまさかで本来嫁として嫁いでくるはずだった姉とシーファスがご対面。
これには正直心臓が止まるかと思った。
「ラインハルト?!」
「う…姉さん」
「え…?」
戸惑うシーファスがその声に導かれるように姉へと目を向ける。
大きく見開かれる目に俺の心臓が嫌な音を立てた。
身内贔屓と言われるかもしれないが、姉はどこからどう見ても傾国の美女という言葉がよく似合う女性だ。
性格も明るくて、自ら商会を立ち上げ切り盛りしたいと張り切る行動派。
当然モテる。
なのに言い寄る男達には目もくれず我が道を邁進し続けている。
まあだからこそ両親が勝手に縁談を持ってきたわけなんだけど…。
(どうしよう?これでシーファスが惚れてしまったら)
ないと信じたいけど、当然姉はスタイルだっていいし、跡継ぎだって産めるから俺よりもずっと魅力的だろう。
「ラインハルト。そんな顔すんなよ。ほら、あっちにお前が好きな鶏料理もあるんだぜ?」
「マドラス」
「ラインハルト。逃げるのは良くない。ちゃんと紹介してあげないと」
「エドワルド」
確かにマドラスの言葉にグラッと来て逃げたくなったけど、ここはちゃんと紹介すべき場面だよな。
そう考えグッと腹に力を入れる。
「姉さん。えっと、か、彼が俺の夫の…」
「シーファス=リムモンドです」
「まあ、貴方が?ラインハルトの姉のミシェイラ=カーバンクルですわ」
笑顔で握手する二人。
その姿は先程のエドワルドとの握手シーンと同じはずなのに、なんだか凄く胸がもやもやしてしまう。
「ラインハルトの手紙は読みましたけど、まさか素の姿でここに来るなんて思いもしませんでしたわ」
「ラインハルトは正式な俺の妻なので、正々堂々と隣に立ってもらいたいと思いまして」
「まあ。うふふ。良かったですわ」
和やかに進む会話にソワソワしてどうしても落ち着くことができない。
そんな俺にさり気なくエドワルドがグラスを渡してくれた。
「ライはこっちで俺と話そう。積もる話もあることだし」
「そうだな。俺も同席してやる。二人きりになったらエドワルドが豹変して襲ってくるかもしれねぇしな」
「マドラス?どういう意味だ?お前と一緒にするな」
そんな風に学園時代と変わらず言い合いを始める二人にクスリと笑い、ちょっとだけ和んだのも束の間、姉がするりとシーファスの腕を取って、笑顔で言ってきた。
「ラインハルト。ちょっと愛しの旦那様借りるわね」
「え?!」
「貴方はそこで旧交を深めてなさい。すぐに返すから」
そう言ってあっという間に連れ去られてしまう。
「シーファス?!」
抵抗することなく『後でな』と俺に手を振るシーファスに愕然となった。
なんで?!
やっぱり姉の方が良かったんだろうか?
「ほら、ライ。俺達もこっちで話そうぜ」
そして俺はショックを受けたままマドラスとエドワルドと一緒にその場から離れた。
内容は『侯爵家でのパーティーには来るのか?』というもので、『久し振りに会っていっぱい話したい』とも書かれてあった。
後はマドラスの事やシーファスの事にも触れられていた。
でも別に嫌な感じではない。
マドラスは学生時代から好戦的だから、シーファスに喧嘩を吹っかけたりしなかったかと心配する文面と、Aランク冒険者って確かに強くてカッコいいよなという褒め言葉。そしてそんなシーファスに色々これまでの話を聞いてみたいと書かれてあった。
多分どんな強敵と戦ってきたのか聞きたいんだろう。
そう考えるとエドワルドと一緒にシーファスについて熱く語りたくなってきた。
「エドワルドに会うの、楽しみ」
そう言ったら何故かまたシーファスに思いっきり嫉妬されて、腰砕けにされてしまった。
なんでだ?!
***
そんなこんなでパーティー当日。
俺の実家である子爵家とも、今いる伯爵家とも比べ物にならないほど豪華な建物に気圧されながら会場入りする俺達。
パーティーの規模も凄くデカい。
この辺りは流石は侯爵家と言ったところだろうか?
マドラスはクロフォード侯爵家の三男で、どうせ跡継ぎにはなれないからと昔から腕を鍛えて騎士団を目指していた。
口がちょっと悪いのも周囲から舐められないためらしい。
ちなみにエドワルドも伯爵家の次男だから境遇は似たり寄ったり。
ただ俺はエドワルドは文官にも向いてたんじゃないかなと密かに思っていたりする。
でも本人は『将来指揮官とかやってみたい』と言い放ち、『マドラスを部下にするのもいいかもな』と言って笑ってたっけ。
俺も騎士団に誘われたけど、どうしても冒険者の夢を忘れられなくて丁重に断った。
そしたら『わかった。俺が騎士団でしっかり稼ぐから、ライは好きなだけ夢を追いかけてくれ。稼ぎが安定したら絶対迎えに行くからそれまで待っててくれよな』とか言ってくれたっけ。
俺は馬鹿だから言われている意味がよくわからなかったけど、多分エドワルド的エールだったんだろう。
冒険者で食うに困ったら頼ってくれよな、的な?
あの時は普通に笑顔で『家族が認めてくれるかはわからないけど、冒険者頑張るよ!』って答えたんだっけ。
懐かしいな。
そんな俺が今や冒険者として活動していて、且つ旦那がAランク冒険者。
なんて運命的なんだろう?
そんなことを考えながらパーティー会場でシーファスとグラス片手に料理をつまむ。
凄く美味しい。
折角だし手料理の参考になりそうなものも探してみようかな。
そうして暫く経ったところでマドラスとエドワルドが俺達を見つけてこちらへとやってきた。
エドワルドと会うのは本当に久しぶりで、思わず笑顔になってしまう。
「エドワルド!」
「ラインハルト!」
マドラスは金の瞳に赤い髪だけど、エドワルドはエメラルドみたいな翠緑の瞳に艶やかな黒髪の持ち主で、マドラス程ガッチリはしてないけど細マッチョなイケメンだ。
当然女性に良くモテる。
そんなエドワルドが俺に笑顔を向けたものだから、そこかしこで黄色い悲鳴が迸った。
でもそんな声は聞こえないとばかりに俺だけを見てくるエドワルド。
(相変わらずだな)
学生時代、茶化す度に『ラインハルトの方が綺麗だろ?』何言ってんだとばかりに何度そう言われたことか。
「ハル。紹介してくれないか?」
スッとシーファスが耳に唇を寄せて俺が大好きな低音ボイスで囁いてくる。
良い声過ぎてもっと聴きたくなるな。
「あ、えっと、こっちが俺の学園時代の友人のエドワルド。エド、こっちが俺の夫、シーファスだ」
「お噂はかねがね。エドワルド=ウォーカーです。どうぞよろしく」
「シーファス=リムモンドだ。よろしく」
和やかに挨拶を交わし、マドラスの時同様に笑顔で固く握手を交わす二人。
そのことに俺はホッと息を吐いた。
(これなら大丈夫だよな)
シーファスが嫉妬することなく平穏無事にこの時間が過ぎさえすれば何も問題はない。
そう思いながらホッと安堵の息を吐いたところで、視界の端にあり得ない人物の姿が目に留まった。
「え……」
そこにいたのはパーティー仕様に美しく着飾った我が姉、ミシェイラ=カーバンクル。
まさかまさかで本来嫁として嫁いでくるはずだった姉とシーファスがご対面。
これには正直心臓が止まるかと思った。
「ラインハルト?!」
「う…姉さん」
「え…?」
戸惑うシーファスがその声に導かれるように姉へと目を向ける。
大きく見開かれる目に俺の心臓が嫌な音を立てた。
身内贔屓と言われるかもしれないが、姉はどこからどう見ても傾国の美女という言葉がよく似合う女性だ。
性格も明るくて、自ら商会を立ち上げ切り盛りしたいと張り切る行動派。
当然モテる。
なのに言い寄る男達には目もくれず我が道を邁進し続けている。
まあだからこそ両親が勝手に縁談を持ってきたわけなんだけど…。
(どうしよう?これでシーファスが惚れてしまったら)
ないと信じたいけど、当然姉はスタイルだっていいし、跡継ぎだって産めるから俺よりもずっと魅力的だろう。
「ラインハルト。そんな顔すんなよ。ほら、あっちにお前が好きな鶏料理もあるんだぜ?」
「マドラス」
「ラインハルト。逃げるのは良くない。ちゃんと紹介してあげないと」
「エドワルド」
確かにマドラスの言葉にグラッと来て逃げたくなったけど、ここはちゃんと紹介すべき場面だよな。
そう考えグッと腹に力を入れる。
「姉さん。えっと、か、彼が俺の夫の…」
「シーファス=リムモンドです」
「まあ、貴方が?ラインハルトの姉のミシェイラ=カーバンクルですわ」
笑顔で握手する二人。
その姿は先程のエドワルドとの握手シーンと同じはずなのに、なんだか凄く胸がもやもやしてしまう。
「ラインハルトの手紙は読みましたけど、まさか素の姿でここに来るなんて思いもしませんでしたわ」
「ラインハルトは正式な俺の妻なので、正々堂々と隣に立ってもらいたいと思いまして」
「まあ。うふふ。良かったですわ」
和やかに進む会話にソワソワしてどうしても落ち着くことができない。
そんな俺にさり気なくエドワルドがグラスを渡してくれた。
「ライはこっちで俺と話そう。積もる話もあることだし」
「そうだな。俺も同席してやる。二人きりになったらエドワルドが豹変して襲ってくるかもしれねぇしな」
「マドラス?どういう意味だ?お前と一緒にするな」
そんな風に学園時代と変わらず言い合いを始める二人にクスリと笑い、ちょっとだけ和んだのも束の間、姉がするりとシーファスの腕を取って、笑顔で言ってきた。
「ラインハルト。ちょっと愛しの旦那様借りるわね」
「え?!」
「貴方はそこで旧交を深めてなさい。すぐに返すから」
そう言ってあっという間に連れ去られてしまう。
「シーファス?!」
抵抗することなく『後でな』と俺に手を振るシーファスに愕然となった。
なんで?!
やっぱり姉の方が良かったんだろうか?
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